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情報通信業界を震撼させたと言われた「光の道論争」から3年がたった。来年、2014年は包括検証の年である。総務省前次官が、「ブロードバンド普及率は98%で世界一」とある議員の朝食会で胸をはったが、これはあくまで中継地点までの「整備率」。実際に家で使われている「普及率」は54%でしかない。
結局、NTTからアクセス回線を分離して、中立な「光アクセス会社」をつくるという抜本的な改革が既成勢力の反対でできなかったため、日本のITインフラは変わらないままに終わった。もし、3年前にNTTの完全分離をしていたら、医療、教育、行政分野での新産業が花開き、日本は第4次IT革命のトップランナーになっていたにちがいない。
今回、メキシコに行って驚いた。私たちが提言していた中立的なネットワーク会社を、メキシコ政府が創ろうとしていたのである。
独占を禁止し、50%以上のシェアの会社を分割する権限を持つIFT(連邦通信機関)を創設。さらに、「公共通信ネットワーク」を整備し、そのネットワークの上で、新事業者を参入させ、競争を促すというのだ。
政府の土地、建物および利用権はその公共通信ネットワークに現物出資。光ファイバは国有電力会社がもっているものを供出させる。さらに、私たちの提言よりすごいのは、携帯の時代にあわせ、テレビの地デジ化により利用可能になった700メガヘルツのプラチナバンド、90メガヘルツをその公共通信ネットワークにもたせるというのだ。
日本で言えばNTTグループ並みの公共通信ネットワーク公社を、現在のアメリカン・モバイルグループに対抗する形で構築。2014年末までにスタート、ネットワーク整備98%を2018年までに終わらせるという。そこにMVNOで新規事業者を参入させようという抜本的な大改革である。
外資規制も撤去されるので、すでにイギリス、バージングループのサ―・リチャード・チャールズ・ニコラス・ブランソンや、スペインのテレフォニカが関心を示していると報道されている。
IFTの上級幹部と話したが、皆、理想に燃えていた。ただ、マキャベリではないが「新しい制度を導入することは、何よりも困難な企てであり、実行に危険が伴い、成功が不確かであるのを銘記すべきである」という思いは自分の「光の道」の経験からも禁じえなかった。
大風呂敷で抜本的な改革をもたらそうとするものは、旧態のものを決定的に敵に回し、新体制で栄える可能性があるものからは、中途半端な支持しかえられないからである。
世界一の金持ちである「カルロス・スリム」率いるアメリカン・モバイルグループの力はすさまじく、これからどう手を打ってくるかである。
ところで、メキシコで、テオティワカンのピラミッドに行った。頂上に登り、願い事を叫ぶとかなえられるとのことだった。小泉元首相ものぼり「郵政民営化」と叫んだとか。今なら「原発ゼロ」とでもいうのだろうか。
IFTのメンバーがなそうとする「大通信改革」が成功するよう祈らざるを得なかった。
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