島さとし(嶋聡)の「大風呂敷のススメ」

松下幸之助に学び、ソフトバンク社長室長3000日の後、多摩大学客員教授を務める元衆議院議員「島さとし」のブログです。

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小説「光の道」 第11回 社長出席の衝撃

「情報は家族・秘書からもれる」と言われる。
自宅やオフィスにかかってきた電話報告。携帯電話などで大きな声で話す電話での指示などを家族や秘書は、秘密であると思わずに何気に聞いている。
敏腕と言われる記者は女性秘書に誕生日の贈り物、海外出張のお土産などは欠かさない。
まったく悪気なしに、ボスの行き先や電話の相手などを教えてしまう。記者のカンがよければそれだけでわかってしまう。
何度も政府の審議委員などをつとめた早瀬は、先刻承知で「行き先は存じておりますので、お急ぎの用件でしたらこちらから連絡させますので、お電話番号をと」いうように秘書に教育している。
しかし、妻までにはそうはいかない。家でくつろいでいて竹村大臣から携帯電話がかかってきたときなど、大臣との密接な関係を家人に誇るためもあって、「大臣からだ」とわざわざ言って、大きな声で話し始める。

 ヒアリングの件は、早瀬の奥さんが三月一八日の茶会で武田に不用意にもらした一言が発端だった。
「そういえば、四月にまたヒアリングがあるのですって。武田さん、忙しくてお稽古に通うのも大変ですね」
 「桃花笑春風」(桃花春風に笑む)の一行物がかかり、炉縁には高台寺蒔絵。主菓子はわらび餅の茶会であった。
 宋のスケジュールを抑えるのは簡単なことではない。武田がもたらした情報が、社長室に伝えられた。
「この問題は最優先。ここに集中する。私が出席する」
宋の方針が決まると、渉外部は張り切った。

 記者説明会の三日前、三月二二日。松沢が総務省事業政策課の事務局に電話した。
「四月にヒアリングがあるのではという噂を聞いたのですが」
「そうですね。ライブテレコムさんをはじめとして、競争事業者さんからご希望は聞いております。でも、まだ決まっておりません。それに、二月に御社の宋社長をはじめ、各社トップからお話を伺ったばかりですし、今度は技術的な問題も含めてきちんと議論したいので、役員クラスでどうかと考えています」
 JTは、トップが直接対決するヒアリングを「空中戦」といって毛嫌いする。情報通信政策は、長い間、インナーと呼ばれる通信族の議員何名かと、総務省幹部。そしてJT幹部との間で「密室」で決められていた。

 小森政権になって政策決定過程の基本方針が「オープン」とされた。三大キャリア社長揃い踏みなどといわれ、メディアが注目し、国民の前でオープンにされるなどというのは、JTにとって望ましい姿ではない。
したがって、JTはヒアリングが開催されそうという情報を総務省出身の副社長クラスから聞きださせ、出席者をいち早く「役員クラス」と申し入れ、依田社長を出させないというのが基本戦術になっている。
 JTが役員クラスとしてしまうと、新電電もライブテレコムもバランスをとって役員クラスにする。知名度のない役員クラスが出席するヒアリングでは、マスコミの注目度も低い。できるだけ国民の目に触れさせないで、淡々と事業をすすめるというのが国営の独占的インフラ事業社の戦術なのだ。

「そうですか。でも、私どもはJTさんと比べてまだまだ新参者ですし。宋を出します。スケジュール調整の関係もありますので、早く決めていただければと思っております。先日、宋が早瀬座長とあるパーティーでお会いしたので、その旨お伝えしたようです」
「はったり」である。

 めずらしく宋が出席した中原「次の内閣」総務大臣のパーティーで早瀬と会った事は社長室から聞いた。何を話したかを松沢は知らない。挨拶ぐらいだろうと思う。

事実関係の嘘は絶対に言ってはいけない。「会った」のは事実。「その旨お伝えした」のは「ようです」で松沢の類推が入っている。
電話口で総務省事務局があわてている様子が伝わった。早瀬から直接聞いたのではと、誤解したようだ。

「三月二四日に記者説明会を開きます。できましたら、それまでに決定していただけるとありがたいのですが」
 総務省事務局からヒアリングについて内内の打診があったのは、二四日の朝であった。

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