島さとし(嶋聡)の「大風呂敷のススメ」

松下幸之助に学び、ソフトバンク社長室長3000日の後、多摩大学客員教授を務める元衆議院議員「島さとし」のブログです。

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小説「光の道」 第50回 脱官僚、政治主導の挑戦

 一九五五年の保守合同から始まった民自党政権は、良くも悪くも官僚主導の政権であった。選挙もなく、世論を気にかける必要もない官僚が、長期的視野に立って政策を遂行する。これは、最近のアジア中進国の躍進を見てもわかるように効率的ではある。
 大臣さえも、官僚たちは一年から二年で変わる「お客さん」。副大臣、政務官に至っては、「盲腸」と揶揄されるありさまであった。

 それが政権交代で変わった。
 政権交代直後、二〇〇九年九月一六日、鷹山内閣は閣僚懇談会で「政・官の在り方」を申し合わせた。
 前文で、「政と官の関係を見直し、政治主導を確立することで、真の民主主義を実現することで、真の民主主義を実現する必要がある」と謳い、「基本認識」で「政は、行政が公正かつ中立的に行われるよう国民を代表する立法権者として監視責任を果たすとともに、議院内閣制の下で、国務大臣、副大臣、政務官等として政府の中に入り、責任をもって行政の政策の立案・調整・決定を担うとともに官を指揮監督する」としたのである。

 大臣、副大臣、政務官から構成される「政務三役会議」が名実ともに、各省の意思決定機関となった。
とりわけ注目されたのは、中原総務大臣が主導する総務省政務三役会議であった。なんといっても、中原大臣の方針で、二〇一〇年一月から、すべてインターネット中継がなされることになったのである。
 政務三役会議には、局長などの総務省幹部は入ることが出来ず、インターネット中継を通じて様子をみるという不思議な状況になっていた。

 早瀬は、ライブドア本社の役員会議室で、松沢、武田とともにプロジェクターで大きく写されたインターネット中継を見ていた。さすがに画面はまだ粗いが、そんなに広くないテーブルを囲んだ政務三役が座っているのがよくわかった。椅子の白いカバーが目立っていた。

「それでは、只今より政務三役会議を開催します。まず、中原大臣から御挨拶をお願いします」 
 司会進行を務めるのは地方自治、行政管理担当の渡部幸二副大臣である。そのほか、政務官二人、地方自治担当の首相補佐官の計六名が出席していた。
 
総務省は、旧自治省、旧郵政省、旧総務庁が一緒になった官庁である。地方自治と情報通信がなぜ一緒なのか理解できないとよく指摘される。なかなか一体化が進まず、トップである次官の下に総務審議官なるポストを三つつくって仲良く分け合っている。

「本日から、この政務三役会議は全面公開ということになりました。政治家が政治決断をするという場所なので、他の省では原則非公開となっています。私の全面公開という方針には斎藤副大臣から慎重論が出ましたが、最終的に皆さん賛成いただき、本日の全面公開に至りましたことをうれしく思います。
 国民の協力なくして、私たちの改革は進みません。その為には、我々が何を考え何をしようとしているかを国民の前にオープンにしなくてはなりません。政務三役の議論を国民の皆様に聞いていただき、国民の応援という推進力を得て、政治を進める。これが真の政治主導の姿かと思います。よろしくお願い申し上げます」

 早瀬の横で、ネット中継を見ていた武田が拍手した。
「中原大臣、すごいですね」
「ああ、『光の道』のような既得権力との戦いは、議論をオープンにして、国民の支持を取りつけるしかないということだろう」

 自治体職員が実際の職務より高い給料をとる「わたり」問題への厳格対処。斎藤副大臣の韓国情報産業視察報告など、初めての全面公開のせいか、少しぎこちなく、低調な議論が続いた。

 流れが変わったのは、三〇分が経過し、もう会議が終わるかと思ったときの中原大臣発言である。
「斎藤副大臣、先週行われた情報通信タスクフォースの報告はないのですか。私は出席できなかったのですが」

「はい。寺谷座長のもと、出席者がそれぞれ光ファイバーの利活用が重要であるという発言が出ました。電子政府とか、電子教科書、遠隔医療など、社会生活上必要不可欠なサービスがないと普及は加速しないということでした。私の韓国視察報告も利活用の観点からさせていただきました」
 ネット中継の向こうで見つめているであろう、斎藤の支持母体、JT社員を意識した発言だった。

「JTの新浦社長が『光の道』について発言されたとか」
 うつむき加減だった斎藤副大臣が、顔をあげ、カメラを意識して勢い込んで話はじめた。
「はい。光事業自体は、膨大な赤字。海外の投資家からは光ファイバー整備にとりくむことに対して『あなたたちはクレージーだと』言われるそうです。あくまで、個人的な意見だがと前置きして、『アクセスには色々な手段があっていい。光だけに特化するのはおかしいし、携帯だけでいいと言っている若者に無理やり光を押し付けるようなことになりかねないのでは』と言われておりました」

「寺谷座長は、どう言われましたか」
「座長ですから、あまり意見を言われなかったように記憶していますが」
少し笑みをたたえながら、中原がカメラレンズをじっとみつめた。こうすると、画面を見ている人は直接に訴えかけられているような気持ちになる。

「先日、寺谷座長から、電話がありました。こういう時代ですから、一挙にパラダイム転換をする必要があると、ライブテレコムの宋社長が発言された。私も同感である。国のインフラ基盤である、通信インフラ基盤を一気に、この数年以内に方向づけることが重要だと話したとのことでした。日本という国の将来をみつめたとき、私も三〇〇パーセント同意します。これからは、いかにしたら、『光の道』が実現できるかという観点から、政務三役会議で議論していきたいと思います。そして、衆知を集める意味でも国民の皆さんのご意見を直接承りたい。私もツィッターを始めておりますので、どうかフォローしていただき、ご意見を頂ければと思います。よろしくお願いします」
 
ネット中継の下に、中原大臣のツィッターのアカウントが流れた。武田が、なれた手つきで中原大臣をフォローした。

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