島さとし(嶋聡)の「大風呂敷のススメ」

松下幸之助に学び、ソフトバンク社長室長3000日の後、多摩大学客員教授を務める元衆議院議員「島さとし」のブログです。

東洋大学講義録

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 ソフトバンクは13年度決算で売り上げ6.7兆円、営業利益1兆900億円となった。日本で営業利益1兆円を超えた企業はNTT.トヨタ、そしてソフトバンクの3つしかない。

 東洋大学でケインズの「アニマルスピリット」やシュンペーターの「企業家」などの講義をしている。孫社長は「アニマルスピリット」を持った「企業家」の生きた見本であると思えてくる。

 そう考えるとソフトバンクが1兆円企業になった道のりは、シュンペーターのいう「新結合」、イノベーションの連続であった。

 携帯電話事業に参入し、「光の道」を提言しNTTと戦い続けたのは新結合の「五、新しい組織の実現・・あるいは独占の打破」そのものである。スプリントを買収し発展経路をアメリカ市場を求めたのは「三、新しい市場の開拓」である。

 「日本ではスマートフォンは普及しない」という通説に反しiPhone を導入したのは「一、消費者の知らない製品」を導入したものである。ただし、自分で開拓したのではなくアップルからの日本独占販売権をえたものではあるが。

 自然エネルギー事業への参入もイノベーションである。電力の新しい生産方法ということで「二、新しい生産方法」の導入にあたる。化石エネルギーや原子力でなく、太陽光、風力を使うのは「四、原料の新しい供給源の獲得」にあたる。

 孫社長は企業者としてこのイノベーションを遂行してきた。社長室長としての私の仕事はイノベーションが容易に遂行できるような政治、行政環境を整えることにあった。

 シュンペーターは「企業家は群生的に現れる」という。「一人あついは数人の企業者の出現が他の企業者の出現を、またこれがさらにそれ以上の益々多数の企業者の出現を容易にするという形で作用する」からである。 『経済発展の理論』下 (岩波) p218

 孫社長の決断、行動を身近に経験したものとしていつか学問的に分析してみたいと思っている。多くの企業者が現れることが日本経済復活につながると思うからだ。期待していただきたい(笑)
  

 東洋大学での講義はケインズ、シュンペーター、ドラッカーなどの経済学、経営学を基盤にしながらソフトバンクでのビジネスの経験から得られたことを話している。

 孫社長は「営業は科学である」という。営業と言えば体育会のノリの単なる根性論と思われがちだが、ビッグデータを駆使し科学的に分析し戦略を練っている。これを私なりにさらに深めると「営業は行動科学である」ということになる。

 行動科学、行動経済学が世に知られるようになったのは2002年、プリンストン大学のダニエル・カーネマン教授がノーベル賞をもらってからであろう。
 行動科学を一言で言えば「経済は勘定でなく感情で動く」というものである。

 人間の決断、行動は合理的推論や計算だけでなく、感情や直感によって影響される。ところが、標準的経済学では人は合理的な計算や推論によって行動を決定する「経済人」(ホモ・エコノミカス)と想定されている。
 経済政策が誤るのは「人情の機微」を理解しない、つまり行動経済学に依拠していないからである。これが「政策デザイン」を流れるテーマである。したがって、前半部は「公共政治学」を講義し、後半部は「行動科学」を講義している。

 ということで、先週火曜日の講義でこんな学生さんにしてみた。

「あなたは今、値段はかなり高いが豊富な機能のついた携帯電話(スマートフォン)を使っている。親がリストラにあい、経済状況が厳しくなりました。あなたは、値段の安い基本的な携帯電話に買い換えたいですか?」

 結果は9対1で、そのままスマートフォンを使い続けると言うものだった。

 カーネマンは「今、持っているものを失うことは痛みが大きい」という。新しくスマートフォンを得たときの喜びよりも失ったときの痛みが大きいというのだ。

 「自分が所有するようになったら、所有物に高い価値を感じる」これを保有効果と言い、人間は損失回避の行動をとるとダニエル・カーネマンは言う。学生さんも納得していた。講義終了後「行動科学って面白いですね。先生はどこか他で行動科学専門の講義をしていないのですか」と聞きにきた学生がいたほどだ。

 ところで、保有効果の実例としてヤフーBBがADSLのモデムを無料で配布していたことを話した。だが、だれもそのことを知らず「ポカン」としていた。彼らはそのころまだ4−5歳だったのだ。

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 東洋大学で「政策デザイン」の講義を担当している。受講生は250名。非常勤講師の講座としては人気講義でないかと思っている。
 ケインズ、シュンペーター、ドラッカーなどの経済学、経営学を基盤に、いかに日本経済を復活させるかという「政策デザイン」を講義している。だが、学生に人気があるのは脱線気味に話す孫正義社長とのエピソードや、ソフトバンクの経営戦略のようだ。

 政治からソフトバンク社長室長に転じた2005年11月。ソフトバンクの売り上げは1.1兆円、営業利益は赤字であった。私の入社後、ソフトバンクは成長を開始した。
 「私の入社とともに、ソフトバンクは急成長したんです」というのは私がよくいう冗談である。上のグラフは奇跡の成長を示したものである。

 入社直後にボーダフォン買収。2006年、「10年以内にNTTドコモさんを抜きます」と孫社長が語った。ソフトバンクの幹部でさえ「また社長の大風呂式が始まった」としか思わなかった。しかし、私は「10年以内にNTTドコモさんを抜きます」という孫社長の「思い」を、補佐役である社長室長としてなんとか実現させたいと思った。
 
 思わないことは実現しない。まずは「思う」こと。これが、政経塾で松下幸之助塾長から学んだことである。

 「思い」を政治家出身として解釈しなおした。NTTドコモのような国営から出発した企業でなく純粋な民間企業が「ナンバー1」になる。これは日本経済を一段階発展させたことになる。

 2013年度、ソフトバンクの売り上げは6.7兆円、営業利益は1兆円を超えた。10年以内でなく8年で「思い」を達成し、私は社長室長を卒業した。

 MBA的思考で考えたら、10年以内でNTTドコモさんを抜くなどは笑い話であったろう。ケインズが言うように「将来を左右する人間の決意は・・厳密な数学的期待値に依存することはできず」アニマル・スピリット(血気)によるというのである。
 「思い」とはこのアニマル・スピリットにほかならない。

 孫正義社長のアニマル・スピリットに導かれた決断。学生たちはその「物語」にわくわくとし、その決断をスムーズに進行させるための私の動きを興味深く聞く。
 そして、この講義を通して私が学生に訴えたい「思い」はシンプルである。
「青年よ、アニマル・スピリッツを抱け!」

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 哲学者、井上円了が創設した東洋大学で「政策デザイン」の講義をしている。

 アダム・スミスが国富論で市場の「見えざる手」を賛美しつつ、道徳感情論を書き、経済学と政治哲学を融合した講義をめざしている。形式も「これからの正義の話をしよう」のサンデル教授に学び、対話形式である。

 今期の受講者は250名。もちろん必修ではない。非常勤講師の講義としては人気講義(?)のせいか、すでに6年目である。

 今回の講義は、「市場の失敗と政府の役割」。公共財、独占・寡占市場を講義した。
 
 アダム・スミスの国富論の中に「同業者というものは、楽しみや気晴らしのために集まったときでさえ、人々をあざむく悪巧みや価格引き上げのための共謀について話し合っているのだ」とある。

 この文を紹介したら「国富論ってこんなあざといこと書いてるのか。面白いな」という声が聞こえた。知的興味を持つことが第一である。

 地域独占の電力事業を解説した後、核廃棄物処理場決定について話した。

 スイス政府が核廃棄物処理場の場所を探していた。ある村が候補になった。
「あなたの村が核廃棄物処理場の建設地と連邦議会で決められたら賛成しますか」とのアンケートに51%の住民がYESと答えた。

 政府は、51%を上積みすることを目標に一人当たり年間6000ユーロ補償金を払うという施策をとった。年間、72万円として1ヶ月6万円。4人家族で24万円。悪い話ではない。

 どうなったかと学生に聞いてみた。賛成が増えるとしたのが7割。減るとしたのが3割だった。

 答えは、25%と半減。

 「へぇー」という声。減るとした男子学生、女子学生に理由を聞いた。二人とも「お金を払うということは危険だということ。だから、反対が増えた」と答えた。皆、同感のようだった。

 実は、スイスは違った。意見を変えた一番の理由は「お金で買収されたくなかったから」というものだった。市民としての責任感から、処理場を引き受けようとしたのに、金銭取引に低められたことに憤慨したというのが理由だったのだと報告されている。

 学生の一人が「日本人は卑しいよな」と遠慮ない感想をもらした。

 講義はまだ3回目。始まったばかりである。日本人は、本来「正義」を重んじる国民のはずである。いつから、それが減衰したのか。また、復活は可能なのかを探求して行きたいと思っている。

 


 




 

 

 東洋大学経済学部での「政策デザイン」の講義がスタートした。議員時代からの知人であった松原聡教授からお話をいただき、6年前から春学期に週1回講義をしている。

 社長室長の時代には、急な出張で休講などで迷惑をかけたこともあったが、これからはそんなことも少なくしたいと思っている。講義はサンデル教授にまなんで、対話型。授業中に学生からの意見を聞いて進めてゆく。

 ケインズによると思想は、20代前半に創られるという。1980年代前半は、サッチャー、レーガンに始まる市場主義勝利の時代の始まりであった。政経塾ではハイエク、フリードマンなどを研究し、来塾されたガルブレイス教授に「ケインズは死んだのではないですか」と意見をぶつけたりした。今から思うと汗顔のいたりである。

 学生たちに一つの問いをした。
アメリカ、フロリダがハリケーンに襲われた。そのとき、ガソリンスタンドで、普段は2ドルの氷が一袋10ドルになった。この便乗値上げを君たちはどう思うか

1.災難時に便乗値上げをすること道徳的には許されない。政府は価格統制すべきだ

2.便乗値上げはよいシグナルである。人々は、氷が高く売れると思い、フロリダに運ぶ。それが見えざる手である。

 結果は、2が7割以上であった。

 経済学部の学生であるので、アダム・スミスやフリードマンを知っていたのであろう。私もちょっと前までそうであった。

 政治家9年、ビジネス界8年を経て、私の思想は少しずつ変わってきている。リーマン・ショック、東日本大震災の経験から市場だけが公共善を実現するための手段だという思考を考え直しつつあるのだ。

 今年の「政策デザイン」のテーマは「市場勝利主義の時代を超えて」である。学生諸君との議論が楽しみである。

 

 

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