島さとし(嶋聡)の「大風呂敷のススメ」

松下幸之助に学び、ソフトバンク社長室長3000日の後、多摩大学客員教授を務める元衆議院議員「島さとし」のブログです。

グリーン革命の条件

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 ラスベガスでルーレットの必勝法を自慢げに語っていたギャンブラーがいた。
「私はすぐに賭けたりしない。じっとゲームを見ている。そうすると赤が連続して出ることがある。たとえば5回赤が出るまで待つ。そのときに黒に賭ける。これが必勝法だ」
 このギャンブラーの必勝法は正しいか。

 東洋大学の「政策デザイン」の講義でこんな「行動科学」的質問をした。案の定、正しいというひとが多かった。 答えは誤り。次に赤が出るか黒が出るかはそれぞれ独立しているからだ。

 この逆のケースもある。二千十一年に大きな原発事故が起きたからしばらく起きないという予測だ。

 関西電力は福井地裁での敗訴は読み込み済みだったという。したがって、一審判決がでた2日後の5月23日に関電の経営陣が官邸に駆け込み菅官房長官に「原発再稼動」を依頼したという。

 関電の監査法人は「来春までに再値上げしないと繰り延べ税金資産を取り崩さざるを得ない」と言っている。「債務超過」も現実のものとなってくる。

 といっても再値上げを統一地方選を控えて官邸が認めるかどうか。「最値上げ反対、まずは身を切る改革」をとのキャンペーンは統一地方選では効くはずだ。となると「再稼動」を政治がしてくれることを願うしかない。

 この前提には、日本に大きな原発事故はしばらく起きないというなんともいえない楽観論があるような気がする。事故が起きたときの経営者責任を考えたら、経営陣が「再稼動」を依頼するなどということはありえないからだ。関電経営陣は「ギャンブラーの過ち」に陥っているのでないか。大規模原発事故は関電経営陣が考えているように「しばらく起きない」かも知れないし「今日、起きる」かも知れないのだ。

 経営とは5年先、10年先を読んで今何をするかの手を打っていくことだ。原発再稼動に走り回るより脱原発依存の新しいビジネスモデルを考えるべきときではないだろうか。

 

 

東京電力福島原発の吉田所長が3月11日、非常用復水機(IC)の仕組みをよく理解しておらず、誤った対応をしたと率直に語っている。

 政府事故調査委員会の聴取で、「ここは私の反省点になる。思い込みがあった」とする。ICが実際に作動したのは20年間で初めてであり、「訓練、検査も含めてIC作動を長年にわたって経験したものは発電所内にいなかった」とした。

 福島第一には原発が6基あった。同時多発危機に一人の人間が対応できる限界がある。

 3月12日の私の日記抜粋
「枝野官房長官の記者会見、緊張感に満ちていた。原子力発電所、最悪の状況かもしれない」

 インフラを担う通信会社の社長室長として、旧知の政権中枢の政治家から情報を収集していた。いっこくもはやく、復旧がせきむだったからだ。

 携帯電話に政権中枢の人々の番号があった。発信を次々とした。彼らもまた、情報を欲していたのだろう。電話にでるか、すぐにコールバックがあった。

 そのやりとりから「原子力発電所、最悪の状態かもしれない」と予測していた。

 誰から聞いたか書いていないし忘れたが、日記には「メルトダウン?」と記してある。

 「お父さんラーメン、赤十字を通じて1万5千食。病院の医師、スタッフの食事に使うとの事。これならいい」

 当時、販売促進用に犬の「お父さん」ラーメンがあった。営業から「被災地に送りたいが、どうすればいか」との問い合わせがあった。
 
 私は議員時代、党代表室の「危機管理監」もしていた。その経験から単にラーメンを袋のまま送っても調理できないとどうしようもないから、調理できる場所をと指示していた。病院なら調理場所があるだろうと「これならいい」と書いたようだ。

 社長室長室で携帯電話、メールで情報を収集し、微力ながら少しでもお役に立ちたいと必死に動いていたことを思い出す。

「コンビニにおにぎりもラーメンもなし。品川(東海道線)、動いているといっても本数が少なく、待ちが多し」

 日本全体が混乱していた。誤対応を真摯に語った吉田所長。私たちはこの教訓を生かさなくてはならないと思う。





 

 大飯原発の再稼動認めずという判決が福井地裁で出された。

 判決は優先すべきは「生存にかかわる人格権」であり、発電の一手段でしかない原発はそれよりも優先度を低く置くべきだとする。
 電気代と住民の安全を同列に考えるべきではないと指摘し、安全性を確保できなければ原発を運転すべきでないと判断した。

 私は国会議員9年を経験し、ビジネス界に入った。その間、八年。経団連の常任幹事会に孫社長の代理として出席していた。

 常任幹事会といっても200名以上は毎回出席する昼食会形式。前には会長以下、日本の主要企業の代表が副会長として10名程度並ぶ。
 政府への政策提言などが副会長会議で原案が決められ、常任幹事会で承認される。意見は求められるが、シャンシャン総会で終わることが多い。

 経団連は「電力コスト」が高くなって経営が困るからとの理由で「原発再稼動が最優先課題」が基本方針である。2012年、大飯原発をどうするかの議論華やかなりし時、原発再稼動を求める提言案が常任幹事会に提出された。

 私は沈黙を破って挙手し「原発再稼動が最優先課題とは思わない」と発言した。利よりも義を重んじるのが、経団連の本来の姿ではないのかとも言った。

 残念ながら再稼動推進の提言は、いつもより大きい拍手で承認されてしまった。

 マイケル・サンデルハーバード大学教授は「正義とは何か」でこう語っている。
「善き社会をつくるうえで考えなければならないのは、経済効率とGDPを最大化にすることだけだ」という観念に我々ははまり込んでいた。
・・しかし、今、「何かが欠けている」という意識が芽生えつつある」

 大井原発の判決に戻る。
「関電は、原発の稼動が電力供給の安定性につながるというが、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高いの低いの問題とを並べた議論の当否を判断すること自体、法的には許されないと考える」

 経団連での私の発言に対し、ソフトバンクの営業部門に圧力があったこともあった。なるほど、こうやって意見を封殺するのだなといういい経験になった(笑)

 その後も、エネルギー問題の提言が出るたびに私は原発再稼動推進に反対の意見を発表した。

 何度目かの発言のときである。ドンキホーテのように発言しても拍手多数で原発推進の提言が承認されてしまい、経団連を足早に去ろうとしたとき、話しかけてきた人がいた。

 「嶋さんですね。私は○○です。私は嶋さんの言われることに賛成です」

 徐々に経団連も変わるのではないかと思わせる出来事であった。至誠は天に通ずとの思いで今後も発言して行きたい。

 

 

 

 

 2011年3月14日、福島原発3号機で高濃度の放射性物質を放出するドライベントの準備を進めていたことが吉田調書で分かった。

 福島県が住民に周知するために報道発表がしたいと要請していたが、保安院は「絶対にダメだ」と返事をしたと朝日新聞にある。

 3月16日の私の日記。「政府の発表、信頼がおけず。娘は海津(ふるさと)に預けることを決定した」とある。そのころ、多くの一般情報から、うすうす「情報統制」に気づいていたのだろう。

 昨日の朝日新聞で、福島第一原発の所員の9割に当たる650人が10キロ離れた福島第2原発に避難していたことが分かった。ある意味、戦場放棄、戦線離脱である。

 「フクシマ・フィフティー」が戦っているときの戦場離脱は責められてしかるべきと思う。だが、私は単純に責める気にはなれない。

 私自身、人の親として娘を西のふるさとに避難させた。
 歌人、俵万智さんの「西へ西へと逃げてゆく 愚かな母と笑わば笑え」が胸にしみた。戦場離脱した650人も家族があり、親があるだろう。

 問題は「原発」にある。原発は、「ふるさとも歴史も、そして日本も喪失させてしまうか」、「誰かが死をとして突入するか」という究極の決断を現場社員に迫るのだ。

 原発をつくっていた世界的企業のCEOと原発について話したことがある。
「経営には冒していいリスクと、冒していけないリスクがある。原発は冒していけないリスクであると思う」
 今まで、原発を作っていた企業のCEOの言葉だけに重みがあった。

 原発は社員に「命を賭す」決断を迫る。安易に再稼動をせまる経営陣は、そこまで覚悟しているのだろうか。

 


 

 


 

 政府事故調査会で吉田所長が語った言葉が朝日新聞で公開されている。公にされることを覚悟して語っておられる。事故対応にまさに命を賭して対処された方の言葉から教訓を学ばなくてはならないと思う。

 所員の9割、しかもGMとよばれる管理職まで退避していたとされる。「その後、放射線が急上昇しており、事故対応が不十分になった可能性がある」と朝日新聞は書く。

 3月14日午後6時半ころ。2号機への注水に使っていた消防車が燃料切れで動かなくなったという報告を聞く。細野首相補佐官に電話し、「炉心が溶けてチャイナシンドロームになる」と伝えたと言う。

 3月14日ころの私の日記を読み返してみる。当時は民主党政権であり、私の友人が政府中枢ポストに多くついていた。重要インフラである通信事業社の社長室長として情報収集にあたっていた私は事態は用意ならざるものと感じていた。

 それを孫社長にも伝えたこともあり、ソフトバンク本社は14日から多くの社員を在宅勤務とした。日記には15日の日記には「原発厳しい状況だと認識している。娘は海津(ふるさと)へ避難させたほうがよいと思う」との記述がある。

 3月17日、孫社長が民間主導の「30万人疎開計画」が必要として具体的な計画を練る。枝野官房長官や仙谷議員などと連絡し、18日には官邸に行き仙谷官房副長官らと会議を持つ。

 「(この計画実施のために)誰が金を出すかというのでなく、福島の人々のために、政府が腹をくくってほしい」と孫社長が訴えた。

 これが、3月22日、孫社長との福島訪問につながっていく。

 これから、事実が徐々にあきらかになっていくであろう。原発再稼動を政権が急いでいる今、事実をもっと明らかにして行き、国民に判断をゆだねるべきときと思う。

 ところで、私は3月14日ころ、ツィッターで「毎朝のモーニングティーにミルクは入れないことにします」とつぶやき、炎上を経験した。私としては、自分が集めた情報をもとにつぶやいたのだが、「風評被害」などとたいへんなパッシングにあった。

 しかし、3月19日、福島県周辺の牛乳は「出荷停止」となった。

 今、私たちのなすべきことは「不都合な真実」に目をつぶったり、言論を封殺してしまうことではなく、すべてを公表し、教訓として行くべきことだと思う。

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