島さとし(嶋聡)の「大風呂敷のススメ」

松下幸之助に学び、ソフトバンク社長室長3000日の後、多摩大学客員教授を務める元衆議院議員「島さとし」のブログです。

大風呂敷の論理

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「大風呂敷経営進化論」を某雑誌の書評欄で取り上げてくださることになり、インタビューを受けた。

 「今の日本の経営者は縮こまってしまっています。だから、大風呂敷を広げて実現せよととくこの本は意味がありますね」とお褒めいただいた。

「これは、社長室長八年三千日の卒論のつもりで書きました。孫社長はよく『大ぼら』と言われます。大ぼら経営とはいえないので『大風呂敷』としました」と話したら大笑いされた。

 元祖大風呂敷といえば、幕末の東北、水沢に生まれ、明治から昭和の激動期に百年先の未来と世界全体を視野にいれていた後藤新平である。

 台湾、満州を旧慣調査を実施しながら科学的に経営し成功させた。関東大震災の復興院総裁として大風呂敷な都市計画を作った。馬車とか大八車の時代に44メートル幅の昭和通りをつくり、当時は批判された。しかし、今になるとこの先見性が理解されている。

 後藤新平の言葉の中で一番すきなのは「人は日本の歴史に50ページ書いてもらうより、世界史に1ページを書いてもらうように心がけなくてはならぬ」というものだ。

 ソフトバンクは私が社長室長を勤めた八年三千日の間に、ベンチャー企業から営業利益1兆円を達成するまでに飛躍した。ところが、孫社長は「あくまで通過点」という。

 私には、後藤新平のように日本の歴史でなく、世界史を意識しているように思えるのである。
 

 孫社長も松下塾長も戦国時代と明治維新が好きである。人間がたぎって行動しているからであろう。

 孫社長はよく織田信長と武田信玄、勝頼を比較する。

「武田信玄は、自分の領土から360度に戦いをしている。東西南北全部の相手と戦っている。信長は、自分の尾張の国から京都までの一直線のところにある敵としかほとんど戦っていない。

・・天下をとる、天下布武というビジョンに志をもったのか、それとも自分の領土を安全に拡大するということに志を持ったのか、それの決定的違いです」

        「事を成す」 井上篤夫 P112 

 限られた自分の人生の中で、目標を決めたら一直線に進む。それ以外のことは、戦いを避けていく。もっと言えば、「何をやらないかを決める」。これが、孫社長の成功の要諦の一つだと思う。

 ジャック・ウェルチがGEのCEOに就任した。GEの将来を徹底的に分析、考えた。GEは世界一をめざす。目標達成のために必要なことは、自分がやりたかった事業の海外展開ではなかった。

 利益は上がっているが、世界で1位あるいは2位になる可能性のない事業から手を引くことであった。

 撤退は進出より難しい。撤退を決めることができるのはトップだけである。現場に聞けば、継続というに決まっている。

 人生でも同じである。何か一つに集中する。ほかの事はやらない。それが、仕事を早く完遂する成功の要諦である。



 

 「貞観政要」は帝王学の書とされる。名君の誉れ高い唐王朝2代目の大宗(利世民)と重臣たちの政治門答集である。徳川家康や明治天皇が座右の書とした。

 貞観10年、太宗が重臣たちに尋ねた。

 「帝王の業、草創と守成といずれが難き」
  帝王の事業の中で、創業と守成といずれが困難であろうか。

 私が政界から転じ、ソフトバンクに入社したのは2005年11月のことである。そのころのソフトバンクは、通信事業者としては、いまだ創業期であった。

 ヤフーBBでADSL事業、日本テレコムの固定事業がメインで、まだ携帯事業に参入していなかった
数字で見ると、売上高1.1兆円。営業利益は赤字であった。2006年にボーダフォンジャパンを買収したが、買収時点の国内シェアは16%に過ぎなかった。

 08年、iPhoneをいち早く導入。純増トップを続け、ウィルコム、イーアクセスを買収し、国内形携帯市場でのシェアは30%となり、トップのNTTドコモの40%が視野に入るようになってきた。

 この間の私の仕事は、国営独占企業からスタートしたNTTにかかった非対称規制を維持し、ソフトバンク、KDDI、イーアクセスなどの競争事業者が力を発揮できる政策環境をつくり上げる事だった。ソフトバンク一社の利益を超え、競争事業者のために働き、日本経済を活性化しようとしたのが結果としてよかった。

 昨年、ソフトバンクはスプリントを買収。日本にお客様が3600万人、アメリカに6000万人。アメリカとあわせるとドコモを抜いた。

 ソフトバンクは「創業」期を終え、「守成」期に入ったとの報道も増えてきた。

 ソフトバンクは海外事業への展開をはじめた。その意味で「守成」にはいったというのは、浅い見方で、新たな、創業期に入ったのかもしれない。

 私は、民主党代表の補佐役として、政権交代を目指して戦略を練ってきた。ビジネスに転じてからは、NTTに対抗するソフトバンクの社長室長として知恵をめぐらせた。3.11以後は、自然エネルギー推進で既存電力事業者と対峙した。

 私の人生は、常に創業期のリーダーとともにあった。逆に言えば、私に才能があるとした、創業期のリーダーとともに働くときに一番、発揮されるといえる。

 「創業と守成、いずれが難き」と問われれば、私は間違いなく「創業」と答える。なぜなら、「創業」は、天才的なリーダーとリーダーを支える側近、幕賓がいなければ、とうていできないことであることを身にしみてしっているからである。



 


 

 

 

  ベンサムは「最大多数の最大幸福」という言葉をオックスフォードのコーヒー店で何気なくよんでいた、ブリーストーリーの「政府随想禄」から発見したという。

 「それを見たとき、アルキメデスが水力の原理を見出したときのように、おもわず恍惚として『発見した』と叫んだ」と記している。

 政治家からビジネス界に入って、もっとも変わったことは、土曜、日曜が原則休みになったことであるビジネス界に入ってから、土、日は筋トレと脳トレに励むことにした。

 タニタの体組成計ではかると、4月19日の私のデータは、身長183センチ、体重84.2キロ、体脂肪率23.9%となっている。脂肪量20.1キロ、筋肉量は60.8キロ。
 実は、現在、ダイエット中。半年前の10月には、体重89.4キロ。体脂肪率24.6%、脂肪量22キロだった。

 5キロほど減ったので、まあ良しとしたいところだが、筋肉も減ってしまった。当時は、筋肉が63.9キロもあったのに、3キロ以上減ってしまったのだ。難しいところである。

 さて、脳トレである。脳は筋トレとちがって、使えば使うほどいいとのことなので、神保町の古書店街にいって「世界の名著」「日本の名著」を500円から800円で買い集めている。

 「自然は人類を苦痛と快楽という、二人の主権者の支配の下においてきた。我々が何をしなければならないかということを指示し、また我々が何をするであろうかということを決定するのは、ただ苦痛と快楽だけである」
            
     ベンサム  道徳および立法の諸原理序説

 この功利主義は、18世紀のイギリス政治に大きな影響を与えた。快楽と苦痛は数学的に計算可能であり、立法すなわち統治の原理もこれに従って行われるべきであるとしたのである。

 この思想は21世紀の今でも大きな影響をもたらしている。しかし、疑問もある。この疑問を私は東洋大学の学生の諸君と議論している。





 



 
 

 21世紀を迎えるにあたって、アメリカの研究財団が「過去千年間で人類社会に大きな影響を与えた人物百人を選んだ。残念ながら、日本の織田信長も歴代総理大臣もその中に入っていない。東洋人で上位に入ったのはチンギス・ハンだけである。

 人類社会に影響をあたえる偉大な人物とはどんな人なのか。グーテンベルクやエジソンのようにライフスタイルを変えるような技術開発をした人もその一人であろう。孫社長によると、「スティーブ・ジョブズ」はライフスタイルを変えたのだから、そこに入るということだ。

 マルチン・ルターのように9宗教改革をした人。ヨーロッパ金融界の中心となったネイサン・ロスチャイルドや、自動車王ヘンリーフォードのような事業家。ナポレオンやビクトリア女王などであろう。

 孫正義社長がインタビューに答えて面白いことを言っている。

「中国は長い年月、何百年間も世界でナンバー1の時代があったわけですね。アメリカも世界でナンバー1のポジションをずっと体験している。かつてのスペイン、イギリス、ローマ帝国も世界のナンバー1を体験している。世界のナンバー1を体験した人たちというのは、自分たちの歴史の中にその成功体験を持っているから、世の中の人類の新しいステージをつくろうという大きなスケールでものを考えることができる。

 子供のときから読んでいる歴史の教科書の中にも、そういうスケールでものをなしとげたヒーローがいるわけです。

 ところが、日本の歴史の教科書の中に出てくるヒーローというのは、織田信長にしろ、秀吉にしろ、日本国内を制覇したという話です」

 つまり、日本史だけ見ていては「小さい、小さい」ということです。
日本史の教科書に50ページ書かれるより、世界史に1ページ書かれる仕事をしたいと言ったのが後藤新平である。まさに、大風呂敷の元祖にふさわしい。


 今、日本は世界に先駆けて「脱原発」をできるかどうかという分岐点に立っている。小泉元総理が、「西ではドイツが、東では日本だ脱原発を掲げ、新たな成長をとげうることを証明すればいい」と語った。

 日本に「脱原発」を成し遂げるリーダーが現れたら、「人類社会に大きな影響を与えた人物」のリストに掲載されるに違いない。

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