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一九五七年から五八年にかけて、ジェムデット・ナスルで紀元前二八〇〇年頃の碑銘が発掘されました。のちのシュメールの文章に照らし合わせた結果、シュメール語であることが判明されました。
碑銘はたったの三音節からなっています。それは「en、lil、ti」であります。はじめの「en」と二番目の「lil」をあわせて「Enlil」となるので、すなわちお馴染みの暴風神「エンリル」を表しています。鍵となるのが三番目の「矢」の記号で記された音節であります。
シュメール語で「矢」は「ti」と発音されていました。「ti」は武器であると同時に人生をも表す記号でありました。したがって碑銘「En-lil-ti」は「エン・リルは人生である」あるいは「神が人生を与え給う」というふうに解釈されたゆえであります。
いままで述べたようにシュメール神話における主神「エンリル」の暗喩名は「五十」という数字であります。「五十」という数字はシリウス星系の周期を意味する数字であります。
そして時代が下るとバビロニアの星座表記には、「矢」、あるいは「弓」、ともに「大犬座(あるいはその一部)」を表す記号となっています。大犬座の首星といえば、シリウスであります。 このように「En-lil-ti」の意味は「エン・リルは矢の星である」をも意味することになると考えられます。
もちろん「矢」という星は人類の創造主の居場所として、人生そのものを表すことも理解できます。中国語では漢字の「矢」の音価は〔shi〕であるが、これと同音の字のひとつ「誓」があります。「誓う」を意味する言葉であります。
上古の時代では、「矢」は「誓」の一番古い形として使われていました。「神に誓うこと」を「矢」をもって表していました。「矢」そのものを「誓う」という「誓約の儀礼」に用いられたのであります。
「誓」は「矢」を折る形に従い、そして「言」を加えた字形になっています。このように「矢」そのものは「神」と同一視されたのであります。
信仰の視点からみると、「光陰矢の如し」のもうひとつ別の訳文は「矢(という星)は時を決める」になります。まさに、「矢」は主星を五十年という周期で廻って、「目の星」と呼ばれ、そして「時を決める」役割を果たしているシリウスBをも含めて表しています。
見方を変えてみると、ドゴン族の神話のなかのキーワードとして、「三連星」、「五十」、「目の星」、「半魚人」、「縮退物質」など、同じような概念をシュメール神話のなかに存在することになります。人類最古の文明であるといわれ、メソポタミア文明には「シリウス信仰」の特徴が明らかに含まれています。
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