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真紀美は念願の209系に乗ることができた。 座り心地は103系より硬めだ。ドア上の次駅表示板は、「蒲 田」と言う表示を何度も点滅させていた。そして車掌のアナウンスが・・・。 車掌:「おはようございます。ご利用の電車は、品川・東京・田端・赤羽・浦和方面の大宮行きです。蒲田を出ますと、大森・大井町・品川の順に、終点まで各駅に停車致します。まもなく発車時刻となります。ご乗車のままでお待ちください。」 新鮮とした車掌の声が、真新しい車内の中を響き渡った。 そして発車メロディが鳴る。有名な蒲田行進曲だ。始発らしく2コーラス鳴らした。 とうとう発車だ。ドアが閉まったとき、ドアの方から音が3回鳴った。ドアチャイムだ! 真紀美は心の中で思った。 真紀美:(この電車、最先端の技術を採用した電車だわ。私がこんな電車に乗っているなんて、信じられない!) 発車時、今まで聞いたことがない音が・・・!VVVFだ。 真紀美は、このまま興奮を抑えきれず、終点の大宮まで行ってしまった。 折り返しなので、209系をパシャリと撮った。 今度の電車は、磯子行きだ。方向幕や車内の細部などを撮ったりした。 そして、磯子行き乗車。蒲田まで乗車した。蒲田で降りた真紀美。時刻を確認すると、10時ちょっとすぎだった。 日曜日で波高も仕事がお休みなので、早速家に帰って波高に報告しようとした。が・・・、波高が居ない。今日は特別な用事がないから、ずっと家に居ると言っていたはずなのに・・・。 真紀美は急な用事が入ったんだと思い、夜まで待っていた。が、なかなか帰ってこない。 時計を見上げると、既に23時を回っている。 真紀美:「遅いなぁ〜、お父さん。どうしたんだろう?」 ふと思った瞬間、黒電話が鳴った。 真紀美は恐る恐る電話に出た。 真紀美:「はい、長谷川ですけど・・・。」 警察:「夜分に恐れ入ります。蒲田警察署の者なんですが・・・。」 真紀美:「はい、何かありましたか?」 警察:「大変言いがたい話なんですけども・・・。」 警察官は数秒間無言のままだった。そして・・・。 警察:「実は、20時頃に南蒲田の交差点でですね、環八通りから第一京浜に向かう大型トラックが人を轢きましてね・・・。」 真紀美:「はい・・・・・・。」 警察:「その被害者の身元を確認しましたところ、波高さんであることが判明しましてね・・・。」 警察からそう言われた瞬間、真紀美は頭の中が真っ白になり、手から受話器が落ちた。 しばらくして、真紀美は受話器を持ち直した。 警察:「もしもし?大丈夫ですか?」 真紀美:「はぃ・・・、大丈夫です・・・・・・・・。」 警察:「一応、ご本人確認の為に署まで来てもらいたいのですが、よろしいですか?」 真紀美:「・・・・・・・はい。」 警察:「ではお願いしますね。」 そう言って警察は電話を切った。 真紀美は途端に涙が一滴、ポロリ、と床に落ちた。しばらくはその場で大粒の涙を流してしゃがみこんでしまった。 しばらくして落ち着いた真紀美は、自転車で蒲田警察署の方へ全速力で走った。 警察署に到着した真紀美は、重たい足でゆっくりと入口に踏み入れた。 霊安室の方へ足を運んだ。 霊安室の扉を開けると、手前の椅子には、北品川に住む、波高の父と母がわざわざ来てくれていた。 波高の母:「あら、真紀ちゃん、波高がこんなことになって非常に残念だわ・・・。」 波高の母は涙ながらにそう言った。 波高の父:「私の所にも連絡があって、咄嗟に着替えて、北品川の駅に向かったのさ。最終に間に合ったからよかったけど、間に合わなかったら、波高に会えていなかったかもしれない。」 波高の父は歯を食いしばって言った。 真紀美:「・・・父の為に、わざわざ遅い時間に駆けつけてくれてありがとうございました。」 真紀美は目頭に涙を溜めながら言った。 真紀美は波高の眠っている所へ近づいた。本当に波高だった。大粒の涙をボロボロこぼした。 真紀美:「なんで死んじゃうの・・・。なんで先に死んじゃったの・・・。ねえ、返事してよ・・・。」 波高の母:「真紀ちゃん、現実を受け入れたくないのかもしれないけれど、現実を自分の体で受け止めないと駄目だよ。」 波高の母はハンカチを片手に持ちながら言った。 数日後・・・、波高の告別式の日・・・。 家から波高が火葬場まで運ばれる。 真紀美は、波高の顔を撫でて、こう話かけた。 真紀美:「お父さん、209系は私の彼氏にする!」 真紀美はそう決心したのだ。209系は波高がとても気にしていた車両だったから・・・。 そして、波高が見守ってくれている、そう思ったから・・・。 真紀美は209系を彼氏として、ずっと愛し続けることを決心した。 第3章へ続く...
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