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昨夜、君は彼と電話で相談したね?
わかってたよ。
僕が入浴中に、君が寝室に降りていった時点で。
「あ〜、彼と連絡取れて、ようやく相談するんだな」って。
だから、今朝、君が10時45分に起きてきた時、君と話そうと決めた。
息子達はまだ起きてこないので、ふたりで並んで朝食をとった。
「こうして、夫婦だけで朝食取るも、かけがえのない時間なのかもね?」
そういう僕に、君は「え?」と言いながら、それ以上何も言わなかったね。
僕は君に、穏やかに話した。
「僕は、君の気持ちを聞きたいんだよ。
嘘じゃなくて、君の本当の気持ちを、君の口から、正直に」
君は、黙っていたね。
もう、言い逃れができないと、覚悟は決めていたんだろうと思う。
僕は、まだ何も、君に証拠を示していないのに。
察しのいい君は、この間の僕の言動から、みんなバレテルことがわかったはずだ。
あくまでも、言質をとられないように、僕がどこまで知っているのか、推し量りながら。
「君は、ずっと、恋をしたかったんじゃない?」
僕は、君に尋ねた。
「自分を、心から愛してくれる人を、求めていたでしょう?ずっと?
『愛してる』って、お互いに素直に言い合える男性、求めていたんでしょう?」
何を言い出すのか?という顔をしながら、君は細く笑ってみせる。
「お父さんは、そうだったってこと?」
絶妙の君の切り返し。
自分のことで、話しが深まるのを回避する、いつもの君の会話術。
「人はいくつになっても、恋をしたいんじゃない?君も?」
「さぁ〜。でも、恋はしてるわよ、ずっと。
小笠原くんとか、手の届かない世界の人への憧れは、常にあるし」
君は、待ち受け画面にしているサッカー選手の名前をあげて、はぐらかす。
11時30分、君は寝室に降りて行った。
長男が起きてきたけど、君は、12分、出てこなかった。
彼とメールしてたんだね。
電話で話せない?とお願いしたんじゃないの?
一度リビングに出てきて、息子と二言三言話して、テレビを見てた。
「今度の土曜日、テニスに行くんだけど。
ガソリンが大丈夫かって、みんな心配してる」と、ソファの僕に聞こえる様に話してる。
そうか、土曜日に彼と会えることになったんだね、良かったね。
12時ぴったりに、君は何も言わずに、寝室にまた降りて行った。
あ〜「12時に」って、彼と通話の時間、決めてたんだなとわかった。
それから、君は42分間、部屋から出てこなかった。
そ〜っと寝室に入っていって、ビックリさせようかとも思ったけど、やめた。
リビングに上がってきた君は「美容室、行っていい?」と僕に尋ねた。
「どうぞ、どうぞ」と僕は言い、君はその場で家の電話を使って、予約を入れた。
君は、いつもそういう陽動作戦の影で、彼と逢い、ホテルに行ってたんだね。
でも、どうしても、わざとらしかったから、わかってたよ、ずっと前から。
13時過ぎ、また寝室に降りて、出てこない君の元に向かう。
君は、ベッドの上で座ってた。
階段の音を聞きつけてか、充電で繋がれたままの携帯は、枕の下に入れていた。
「ちょっと、いいかい?」
僕はベッドの反対側に腰をおろした。
「僕は、君に、素直に話して欲しいんだ。
嘘をつく君じゃなく。
僕の方から聞きたいことはたくさんあるけど、まず、君の口から聞きたい。
今の君の気持ちと、事実経過、説明して欲しいんだ」
君は、力なく笑顔を浮かべながら「何を話せばいいの?」と言う。
もう、君の明確な否定姿勢は、なくなっている。
僕の話を聞き、下をうつむいて、じっと、どう答えるべきか、考えている。
そして、僕に言質を取られない範囲で、答えるのだ。
「これから、どうするの?ってこと。
彼とも、相談してるんでしょう?
メールだけじゃなくて、電話でも話してるでしょう?」
僕は君に問う。
「電話なんて、いつするって、いうのよ?」
君は、一応の抵抗を試みる。
「毎晩でも話してるんでしょう?おやすみって、寝室に入ってから。
僕と寝室を共にしなくなってから、深夜、電話してるよね?僕の妄想ですか?」
君は、黙っている。
「彼と相談してもいいけど、僕とも相談しないと、何も解決しないよ?」
僕が穏やかに君に話しかけると、君は下を向きながら答える。
「例え、そういう人がいても、私は自分のことは、自分で決める」
「でも、愛しい人がいるんでしょう?今?いるよね?」
たたみかける僕に、君は決意したように告げる。
「家を出ようと思う。でも、それは、ずっと前から考えていたこと。
あなたとの会話がまるで無くなってから。他の人は関係ない」
「関係ないことないでしょう?今までの経緯があるんだし。
黙って家を出るなんて、認められないよ。ちゃんと説明してくれなきゃ。
第一、息子たちに、どう言うのさ?」僕は問う。
「そこが、問題ね…」君がつぶやく。
「今までだって、実は、たくさん、そういうこと、あったんじゃないの?
君の言う、僕たちが一応仲良くやれていた時期にも?」
妻は、怪訝な顔をし、心外なことを言われたという表情をする。
「どういうこと?そんなこと、あるわけないでしょう?」
「君は、異性とふたりだけで食事するだけでも、“そういうこと”って言ったでしょう?
“そういうこと”は、あったよね、今まで?同窓生を含めてさ」
君は下を向き、答えない。
やはり、今の男との前に、同窓生との恋仲があったのだろう。
「そうなんだろうな〜と思いながら、僕は君を送り出してたよ。
深夜帰って来ても、おかえりって迎えていたよ。
2004年以降、君の頻回なメールの相手は、ひとりじゃなかったと思うし。
わかっていたけど、言わなかっただけだよ。知らないと思ってた?」
君は、黙っている。
君が、黙っているときは、事実として認めたということだろう。
もっとも、裁判とか、第三者がいる場では、「認めた覚えはない」と言うだろうけど。
同窓生の、サトウとか、タカシマとか、時々、逢っていたんだろうね?
「そういうこと、あなたは、どうなの?
女性と待ち合わせて、ふたりだけでお酒飲むなんて、ふつうにしてたんでしょう?」
君は、多少の反撃を試みる。
「相手が異性なだけでしょう?それで恋仲になる訳じゃない」僕は答える。
「僕は知りたいんだよ。君の手帳に書かれていること」
手帳を見られていることを知り、君の表情はこわばり、下を向く。
「いつから、どんなきっかけで、親しくなったのか?
今の君の率直な気持ちは、どうなのか?
他にも聞きたいこと、たくさんあるけど」
妻の目の周りは、真っ赤に紅潮している。
涙が出るのを、必死に抑えているからだ。
「家を出ることは、前から考えていたこと…。
他の人は関係ない…」
君は、また同じ事を繰り返す。
守りたいんだね、彼を…。
「家を出て、どうするの?彼の元に行けるの?」
無理だよね、彼にも家族があるし。
「私に頼れる人なんて、この世界中にひとりもいない。
私、ひとりで生きていく…」
たぶん、そういうことになるんだろうけどね、それじゃ都合のいい逃避だよ。
「ただ、家を出るって訳にいかないよ?離婚するにしてもね。
“ただ家を出る”なら、僕は、裁判を起こさなきゃいけなくなる。
公正なジャッジを、他人にゆだねることになるけど、それでいいの?
君は、長年にわたる僕へのリベンジだって訴えるだろうけど、裁判じゃ通らないよ、絶対」
もし、裁判になったら、僕はすべての資料を公表することになる。
まだ、君には、何も証拠は示していないけれどね。
君の手帳のコピーや、興信所のVTRの記録。
食事をし、車の中で話し、ラブホテルに入り、5〜6時間後に出てくる君と彼の姿…。
君は、一応、今でも、僕の妻だから。
そこまで、君の行状を、白日の下に晒したくない。
できれば、きちんと説明してもらって、彼も含めて、金銭的に示談にしたい。
それが、歪んでしまった僕の、君への最後の愛情のつもりだ。
家の電話が鳴り、ふたりのベッドを挟んでの会話は、途切れる。
長男が出てくれた。
お墓のセールスの電話だったらしい。
僕たちはリビングに上がり、君は長男に明るく声をかけ、美容室に行く準備をする。
出がけに君は、和室にいる僕に会釈をする。
「すみません。中途半端で。予約を入れてしまっているので…」
僕は「また、一緒に話しをさせて下さい」と笑顔で丁寧に答える。
「ハイ。行ってきます…」
「行ってらっしゃい…」
第3弾は、こんな風に終わった。
第4弾は、どんな風になるだろう?
君の手帳のことが、もう俎上に上ってしまったし…。
君は、悩み考えるだろうが、僕も考えなきゃいけない。
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お互い他人のような言葉使いですね
愛が冷めるってこんなことなんでしょうね〜
でもリュウさんはあくまで紳士だし優しいね
だからよけい辛いぽち!
2011/4/23(土) 午後 1:53