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4時前、君は美容院から帰ってきた。
僕は「おやつ、食べる?」と言い、紅茶を煎れた。
ふたり、食卓に並んで座り、テレビを見ながら、ミルクレープを食べた。
僕は、君が率直に話してくれるだろうと思って、話し始めた。
「僕の中で、どうしてもわからないのは、手帳の中の言葉。
まだ、僕と仲良くやれている時から、好意を交わし合うような会話の記録があるよね。
会話の内容からすると、同窓生じゃないし、僕はあの課長だなと思ってる。
でも、今の君の愛しい人は、違うでしょう?」
君は、どこまで僕が手帳を読んでいるのか、把握しようとする。
「どういうこと?何のこと?」
「会えなくなると淋しいとか、ラブレターまだもらってないとか…。
年度末のお祝いしようと…って、3月から既に始まっている会話のこと」
「あなた、そんなことまで、するんだ?」
「するよ。」
「私のことなんか、どうでもいいくせに。なんで、そこまでするんだろう…」
「前にも言ったけど、妻だから。君に重大な関心を持ってるからね」
君は黙って聞いていたけど、驚くべき言葉を発する。
「みんな、妄想なのよ」
「…え…?」
僕の方が、我が耳を疑ったよ。
「妄想なの。みんな、私の妄想。あぁ、恥ずかしい…。読まれちゃったんだ?」
美容院にいる間に考えた、それが君の言い訳かい?
さっき、目の周りを真っ赤にして、僕の話を一応、受け止めてくれたと思ったのに。
「手帳に書いてあること、みんな、妄想だって言うのかい?」
「そう。みんな妄想。私の勝手な妄想。妄想を手帳に綴っていたの」
「ブルーベリーも、マメゾンも、六本木も、新宿も、奥多摩も、多摩湖も、立川も。
みんな、みんな、事実の記録じゃなくて、妄想だって言うのかい?」
「私の妄想なの。恥ずかしいけど。私が勝手に作った、デートのストーリーなの」
君は笑っている。そこまで、言うかい?
君には、まだ示していないけど、君の画像もあるっていうのに。
全部を妄想だと言い逃れして、本当にそれで、僕を言いくるめられると思ってるのかい?
僕も、随分、馬鹿にされたもんだ。
さすがにムッとしたけど、僕は穏やかに反駁した。
「僕が事実だと思っていることが、君は妄想だと言うんだね?
僕は、明らかに不法行為があったと思ってるけど、君は、そんなの、なかったと」
「そう」君は、僕に笑顔を向ける。
「実際に、夜ドライブと称して車で出かけているし、多摩湖でデートしてたよね?
深夜未明まで家に帰って来なくて、その出かけた先も書いてあるよね?」
「だから、妄想なのよ。みんなひとりでイメージして、ドライブしてただけなの」
そこまでして、彼に被害が及ぶのを防ぎたいってことだね?
「じゃぁ、この3ヶ月間、やたら下着を買ってるのは、どうして?」
「下着ぐらい買うわよ。古いのを処分してるだけよ。」
「恋の妄想で、毎月6万も7万もランジェリー代に費やすと言うんだ?」
「そんなに買ってないと思うけど?そういう気分の時もあるわよ」
「そうすると、まず事実認定を争わなきゃならなくなるね?
双方が言ってることが違うんだから。何が事実経過としてあったかを争うことになる。
僕は、君が素直に認めてくれることを期待してたけど、もう無理だって事だね。
第三者の公正なジャッジを受けるために、やはり裁判にせざるを得ないね?」
「なんで、そういう風になるの?単なる妄想なのに…」
「恋というのは妄想みたいなものということでは、妄想かも知れない。
でも、君が記した手帳の内容が妄想だと言うなら、僕が君に嫉妬妄想してることになる。
僕を妄想呼ばわりするなら、残念だけど、僕も態度を硬化せざるを得ない」
「……」君は黙ってる。
「妄想と言うことにすれば?って彼の入れ知恵かい?
だとしたら、僕は、その男も許し難い。示談の線は、ないね。
彼にも、事実がどうであったのか、裁判所に出頭してもらう必要がある」
「…誰から言われた訳じゃない…私自身の愚かな考えよ…」
「でも、あくまでも、妄想と言うんだね?」
「そう、妄想…。愚かな私の、かわいそうな妄想よ」
論理が破綻していても、君は言い続ける。
「自分なりに一生懸命考えたのかも知れないけど、その戦略は、明らかな間違いだよ。
妄想であると言い続けるなら、僕はまず、事実認定を争うことになる。
第三者じゃないとジャッジできないから、裁判沙汰になるのはやむを得ない。
妄想だという君の戦略は、僕の神経を、すごく逆なでしてしまったよ?」
「……」君は黙ってる。
手帳の内容を妄想と言うことにしようという浅はかな考えを、もう後悔している。
でも、君からすれば、当然のことだろう。
そうでもしないと、細かいデートの内容まで、すべて僕に話さなきゃいけなくなるし。
「もし、あくまで妄想だと言うなら、話しても仕方ないし、これ以上はやめよう。
もし、嘘で言い逃れしようとしましたと君が謝罪するなら、また話しましょう。
ただし、その時は、手帳の記載内容について、きちんと説明してもらうけど」
君は顔を伏せてうつむき、黙っている。
僕は、君に声をかける。
「もし、今回のことが、君にとってリベンジというなら、それは成功しているよ。
僕は、この1ヶ月間苦しんできたし」
君は意外なことを聞くというように「そうなの?」と答える。
「君からすれば、まだまだ足りないのかも知れないけど、もう十分にリベンジしてるよ。
君は気づいていないだろうけど、僕はこの1ヶ月で5キロ痩せたし。
食欲無くても、食べなきゃと思って食べても、みんな下痢で出ちゃうし。
何より眠れないし。デート中の君の妄想が頭を離れず、ずっと不眠で早朝覚醒だし」
「そうなんだ?私のことで苦しむなんて…。私のことなんて、関心無いはずなのに」
「妻だから…。君は、今でも僕の妻ですから。心中穏やかなはず、ないでしょう?」
「……」
「この出口が見えない生殺しは、もうイヤなので、早く結論を出したいと思ってるよ」
「結論って、お金なの?結局?」
「裁判で争うとなれば、慰謝料請求ってことになるだろうけどね。
でも、お金は結果で、やっぱり気持ちでしょう?
僕は気持ちの整理をつけたいし、君から謝罪して欲しいっていうのが一番だね」
「……」
「君からすると、自分が謝罪するにはあたらない、リベンジだからってなるか?」
「…そうね」
「昔のことはともかく、今君がしてること、裁判で正当性は認められないよ」
それから、君は、ずっとその場所で、椅子に座ったままだった。
ずっと、頭を深く垂れ、背中を丸めて座っていた。
君は悩んでいる。考えている。色々な想いが去来している。
裁判は困る。彼に被害が及ぶのは困る。でも赤裸々には話せない。どうしたら…と。
もう君に、悩んでる余裕はないんだよ。
君が、どこまで正直に話せるかだ。
実は僕が既に証拠を握っているけど、君がまだ僕に知られていないと思ってることまで。
それは、君にとって口にするのも憚られる内容を含んでいるけど…。
第4弾で、僕に火を点けてしまったね。
僕は、次の段階に進まざるを得ないね。
家の中でふたりで結論は出せそうもないし。
裁判で君の恥ずかしい行状を明らかにするしか、なさそうだね。残念だけど…。
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いよいよですね!!
そう一ヶ月で5キロお痩せになったんですか??
そうとうな苦しみですね!!
2011/4/25(月) 午前 9:05
はじめまして。
ノ−サイドです。
余計なお世話ですが裁判での決着がいいとはとても思えません。
子供さんのことを考えれば余計です。
2011/4/25(月) 午後 2:33 [ の-さいど ]
裁判は余計だとおっしゃる方もいるんですね。でも我が国において復讐は認められないですしどうすればいいのでしょうか。子供のことがあるから何があっても辛抱して耐えるわけですか。そんな不本意なことありますか。お子さんだって法治国家の在り方くらい理解してると思いしどちらが悪いかわかってると思いますがね!お子さんは母の部分だけを見ていかれたらいいと思います。
2011/4/25(月) 午後 2:58 [ che*r6*69*00* ]
che*r6*69*00* さん
裁判が「余計」と言っているわけではありません。
最終的な決着としてリュウさんがそれを選択されるのは今の状況から理解できます。
ただもう少し穏やかなものを考えられないだろうかと私は思っているだけです。
2011/4/25(月) 午後 5:07 [ の-さいど ]