□■□ひとり静かに思うこと□■□

六白金星、今年は最高の運気の年だとか?ほんまかいな?

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3時30分、僕と長男がテレビを見ている間に、気が付くと妻の姿はリビングに無かった。
妻が楽しみにしていた、Jリーグの対戦カードのはずなのに、

4時丁度、妻はリビングに上がってくる。
顔をしかめ「お腹が痛い。頭も」と身をかがめてトイレに入る。
自分で市販薬を飲み、トイレにまた入ってから、階下に降りていく。

5時15分、僕が静かに階段を下りて寝室のドアを開けると、照明の点いた部屋の中で、妻はケータイを布団の中に急いで隠す。
ベッドで横向きに身を横たえ、メールの真っ最中だったのだろう。

妻の体調を心配して、声をかけようなどと考えた自分が阿呆らしく思えた。
実際に腹痛・頭痛があるのは事実だろう。
しかし、妻がその体調不良を訴え、優しい言葉をかけて欲しいのは別の男なのだ。
下手をすると、体調不良自体も、家族から離れ、ひとり寝室に籠もる口実でしかない。
かつて、妻が腹痛の時には、トイレにも近い和室に布団を敷いて横になるのが通例だった。
今は僕がふと気が付くと、いつでも寝室に下りている。
本当はいつでもケータイを手にして、彼氏とコミュニケーションして繋がっていたいのだろう。 

寝室の入り口側を向いて右向きに寝ているのは、突然夫が来た時に備えての妻なりの防衛姿勢なのだ。
僕と一緒にベッドで寝るときには、妻はいつも入り口側に寝る私に背を向けて、左向きに寝る。
僕の知る限り、寝室の入り口に背を向けて窓側を向いて、ケータイを操作している妻を見たことは無い。
ケータイをいつも左手で操作している妻が、上半身を布団から出して右向きに寝たまま、布団の中に端末を隠そうとするのだから、それはとっても不自然な格好になる。

それでも妻は、出来るだけ自然に見せるために取り繕おうとする。
「なに?買い物行くの?」
「うん、駅前のスーパーまで行ってくる」
僕は上着をクローゼットから出し、「じゃあ行ってくるね」と言い残して部屋を出て行く。
僕はそのまま階段を上がり、リビングを通り抜け、ベランダを通って、庭に出た。
寝室に照明が点いていて、カーテンを閉めていない夕方は、庭に出ると地下のテラス越しによく室内の様子が見えるのだ。
妻はベッドの上で、また窓側に背を向けたまま寝た姿勢でケータイをいじっていた。

僕は、夕食の買い物に出かけた。

6時丁度、僕が買い物から戻ると、程なく妻はリビングに上がってきた。
玄関の物音で夫の帰宅を察知したのか、時計を見て家族の様子を見に来たのかはわからない。
表情は穏やかになっている。

「良くなった?」
「薬で抑え込んでるだけ」
妻は洗濯物を取り込み、手早く畳んで階下に持って行った。
6時18分から40分、妻は寝室に下りたまま上がって来なかった。
またケータイをいじっているのだろうか。

6時58分、妻が寝室から上がってきた。
夕食の準備を始めた僕を見て、二言三言言葉を交わして、パソコンに向かっている次男に声をかける。

7時5分、妻はまた寝室に下りていく。
僕は、夕食の仕上げに入る。
食器を食卓に並べる音を聞いて、妻は上がってくるはずだ。
案の定、妻は僕が食器を並べ始めると、7時13分にリビングに戻ってきた。
メールをするには、少し短い時間しか与えられなかったかも知れない。

夕食を、家族揃って済ませた。
しばらくテレビを見ていたが、8時を過ぎて妻は寝室に下りていく。
珍しい時間だ。
だいたい7時にメールを送信した後は、次は9時頃なのだが。

8時18分、妻は突然着替えてリビングに上がって来る。
「ちょっと行ってくる」と言う。
僕が理解できずにキョトンとしていると、近くの街道沿いのドラッグストアに車で行くと言う。
「9時まではやってるでしょ?」
まっすぐ玄関で靴を履き、すぐに出て行った。

唐突な出来事に、僕の妄想が拡がりだす。
化粧品や薬など、そんなに急いで今晩買いに行かなければならないものがあるだろうか?
すぐ近くに、男が来ているのではないか?
束の間の逢瀬を求めて、飛び出して行ったのではないか?
5分でも10分でも、恋する相手と逢うためなら、多少の危険は犯して出て行くかも知れない。
1時間以上帰って来ないのなら、その可能性は十分にある。
ソファでテレビを見ていた私の頭は、急速に回転し出す。

妻が帰宅したのは、9時5分だった。
家を出て50分足らず…。
ドラッグストアのレジ袋をぶら下げて、妻はリビングに入って来た。
本当に買い物に行っただけなのか…。
そう、僕が結論するのは甘いのだろうか?

10時35分、風呂から出てきた妻と入れ替わりに、僕が風呂に入る。
その間、妻がどうしていたかはわからない。
僕が風呂から出てくると、妻は白ワインをコップで呑んでいた。

11時15分、「寒いから布団に入るね」と言って、妻は寝室に下りていった。
正確な表現だ。
寝るわけではない。
ベッドに横になり、ケータイをいじっているねという宣言だ。
恋しい男へのおやすみメールの時間だ。
12時くらいまでは、暗闇でケータイを操作しているに違いない。

夫や子どもの存在を忘れられる、妻の幸せな時間だ。
邪魔をしてはいけない。
一日の終わりの「おやすみ」というメールを、窓際に立って恋人に送信している妻の姿が見える。
夫の僕に対しては、もう発せられる事の無くなった「おやすみ」。

寝室の暗闇に浮かぶ妻の顔は、見たくない。
僕はノートパソコンを鞄から出し、妻の行動記録を入力する。
だいたい1時半までパソコンに向かう事が、僕の日課になってしまった。

いつか、妻に見せてあげよう。
あなたの夫はね、気付いていたんだよ、と…。


【つづく】

【全50話】

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50話めにはどうなっているのか。

どうして50話で終了したのだろうか?

さ、次を早くお願いしますよ。

2011/6/20(月) 午後 4:42 [ MEME ]


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