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高校の卒業式を迎えた。
受験した大学はすべて、落ちた。
たいして受験勉強もしてないし、当たり前だ。
卒業式の日、サークルの解散式をやった。
僕の横には、いつも寄り添うようにケイがいた。
今も、写真が一枚残っている。
僕が手を振りながら話す横で、身を寄せて座るケイ。
彼女は、つまらなそうに自分の爪を見て黙っている。
その夜、ケイを家まで送った。
ケイの家は、隣の駅で少し距離があったが、わざわざ回り道した。
ふたつの駅を中心に拡がる住宅街の間には、まだ田んぼが拡がってた。
暗い夜道で、ケイが突然立ち止まった。
「ん?」
僕が振り返ると、ケイは泣いていた。
「どうした?」
僕が肩に手をやると、ますますケイは泣きじゃくった。
僕はケイを抱き寄せた。
ケイは僕の腕の中で、激しく泣いていた。
街灯もまばらな、田んぼの中のアスファルト道。
僕たちは、ずっと何も言わないで抱き合っていた。
僕はケイの髪の毛に頬ずりし、頭をなでていた。
ケイは僕の胸の中で泣きやんで、静かになった。
ケイが、ふと自分から身を離した。
僕の顔を見上げ、それから静かに目を閉じた。
僕の前に、目をつぶる彼女の唇があった…。
彼女は、求めていた。
僕のキスを…。
まだ、一度もかわしていないキス。
ケイにとっても、僕にとっても、生まれて初めてのキス…。
僕は、迷った。
彼女は、静かに目を閉じたまま、待っていた。
僕は、彼女を引き寄せた。
そして…。
再び、彼女を抱き寄せて、ケイの頭を撫でた。
僕の肩までしかないケイの、おでこにキスをした。
彼女の髪の生え際に、ずっと唇を押し当てていた。
彼女は、目をつぶったまま、じっとしていた。
僕も、彼女を抱えたまま、じっとしていた。
遠くの電車の音と、田んぼのカエルの声が、やたら耳に響いた。
…………
4月、新しい生活。
ケイは高校2年になり、僕は浪人生になった。
予備校にも行かず、僕は自宅で受験勉強を始めた。
高校が自宅の近くだったので、しょっちゅう顔を出していた。
ケイは、バトミントン部で張り切っていた。
時々、夕方、いつものように遠回りして、彼女の家まで送っていった。
自宅での受験勉強は、僕には苦ではなかった。
むしろ自由に時間を使えて、自分にはケイがいることが励みになった。
ケイと以前のようには逢えなくなったけど、何も変わってないと思ってた。
僕はケイを、いつも愛しく思っていた。
ケイも、いつも僕をとびきりの笑顔で迎えてくれていた。
まさか…。
突然の別れが訪れるとは、思ってもいなかった…。
(つづく)
(次回、最終回)
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