|
「なぜ人を殺す? あんたは本当に殺したい人間を殺していないね 私は本当に殺したい人間を殺したから悔いはないよ」 実際の事件を題材にした佐木隆三の同名長編小説の映画化 「復讐するは我にあり」とは新約聖書(ローマ人への書第12章第19節) 「主いい給う。復讐するは我にあり、我これを報いん」からの引用で ひどい行為をした者は自ら犯した罪により いずれ神によって裁かれるという意味 タバコ集金の現金輸送車が襲われ 柴田(殿山泰司)と馬場(垂水悟郎)の惨殺死体が発見 現金41万円余が奪われ、目撃証言などにより榎津厳(緒方拳)が 容疑者として浮かびあがります 殴り殺した後、手についた血を小便で洗い流す 首を絞めた後、失禁した被害者の股をそっと拭く 淡々とした巌の行動には、何の動揺も窺えません 厳はバー「麻里」のママ、千代子(絵沢萌子)を強姦、関係を強要し
その2ヵ月前には、ストリッパー上りで食堂を経営している
幸子(白川和子)と同棲していました
そして宇高連絡船の甲板に靴と、幸子と両親宛ての遺書が見つかり 投身自殺の形跡があったものの、警察は偽装を疑い
別府市で旅館を経営する厳の実家を訪れます
そこで父の鎮雄(三國連太郎)、病身の母かよ(ミヤコ蝶々)
妻の加津子(倍賞美津子)は捜査の協力をすることを誓います
一家は長崎の五島列島の出身で、熱心なカトリック信者でしたが 戦時中、軍に船を供出するように命令され 網元をしていた父親が軍人によって、神ではなく 天皇陛下への忠誠を誓わされる場面を目撃してしまいます
16歳から詐欺、窃盗を繰り返し少年刑務所へ その後も犯罪と服役を繰り返し アメリカ軍の軍服を着て米兵の真似をする その間に加津子と結婚 加津子も入信したものの、巌に愛想をつかし離婚
しかし尊敬する義父の懇望に従い再び巌と入籍します
巌は出所する度に、そんな父と加津子との仲を疑います やがて浜松に現われた浜松に現われた巌は 大学教授と称して貸席「あさの」に腰をすえます
千葉では裁判所や弁護士会館に顔を出し
老婆から息子の保釈金だと大金をだまし取り
偶然知り合った弁護士(加藤嘉)を殺して金品を奪います
巌の正体を「あさの」の女主人ハル(小川真由美)や
その母、ひさ乃(清川虹子)は気づき始めますが
それでもハルは巌との肉体関係に溺れ、一緒にいたいと願う
元殺人犯のひさ乃も巌に金を渡し逃そうとします
そんな母娘さえ巌は絞め殺し 家財を質に入れ、逃亡資金にしてしまうのです
わずかな金のために、理由のない殺人を繰り返す だけど、女にモテる、恐ろしいほどに それは大学教授、弁護士など社会的ステータスの高い人物に 女性が弱いということを知っているからでしょうし 不幸な生い立ちだったり、苦労している女に近づき 言葉巧みに同情するようなそぶりを見せるからです その同情を、愛だと感じてしまう 嘘かも知れないと 危険かも知れないと分かっていながら 離れられないばかな女 巌の心の底には愛のかけらもないというのに
あるのは父親への強烈な憎しみだけなのです
父親を、神を、冒涜する行為を続けることが、巌の生きる理由 巌はそうして父親を超えようとしたのかも知れません
だけれど、結局父親に敵わなかった 巌の処刑後、別府湾を望む丘で父親と加津子は 巌の骨片を骨壺から空に向って投げつけます ふたりはこのあと結ばれる、そんな気がします 禁断の果実ほど甘美なものはないのだから 今村昌平監督が独自の徹底した取材を重ね 実際に起こった犯行現場で、ドキュメンタリー・タッチに撮影 犯罪心理の不条理さを浮き彫りにして 主人公の人間性に説得力を持たせたということ
犯罪映画の傑作のひとつでしょう 【解説】allcinemaより
佐木隆三の同名ノンフィクションを、「神々の深き欲望」の今村昌平監督が映画化。5人を殺害し全国を逃走した男の、犯罪を積み重ねた生い立ち、数々の女性遍歴と父との相克を描く。日豊本線築橋駅近くで専売公社のタバコ集金に回っていた柴田種次郎、馬場大八の惨殺死体が発見され、現金41万円余が奪われていた。やがて、かつてタバコ配給に従事した運転手・榎津厳が容疑者として浮かんだ……。 |

>
- エンターテインメント
>
- 映画
>
- 映画レビュー


