今日も月はのぼる東の空に

コクーンからパルスへの旅の途中

宮 沢 賢 治

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諸君よ紺いろの地平線が膨らみ高まるときに

諸君はそのなかに没することを欲するか

じつに諸君はその地平における

あらゆる形の山岳でなければならぬ



諸君はこの颯爽たる

諸君の未来圏から吹いてくる

透明な清潔な風を感じないのか



それは一つの送られた光線であり

決せられた南の風である

諸君はその時代に強いられ率いられて

奴隷のように忍従することを欲するか

むしろ諸君よさらにあらたな正しい世界をつくれ

宇宙は絶えずわれらによって変化する

潮汐や風 あらゆる自然の力を用いつくすことから一足進んで

諸君は新たな自然を形成するのに努めねばならぬ



新しい時代のコペルニクスよ

あまりに重苦しい重力の法則から

この銀河系を解き放て



新たな時代のマルクスよ

これらの盲目な衝動から動く世界を

すばらしく美しい構成に変えよ



新しい時代のダーウィンよ

さらに東洋風静観のチャレンジャーにのって

銀河系空間の外にも至って

さらに透明に深く正しい地史と

増訂された生物学をわれらに示せ

衝動のようにさえ行なわれる

すべての農業労働を

冷たく透明な解析によって

その藍いろの影といっしょに

舞踊の範囲に高めよ



新たな詩人よ

雲から光から嵐から

新たな透明なエネルギーをえて

人と地球にとるべき形を暗示せよ 

蛙のゴム靴

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「蛙のゴム靴」より
   宮沢賢治



丁度 花見とか 月見とかいう処を、蛙どもは雲見をやります。

「どうも実に立派だね。だんだんペネタ形になるね。」

「うん。うすい金色だね。永遠の生命を思わせるね。」

「実に僕たちの理想だね。」

雲のみねはだんだんペネタ形になって参りました。

ペネタ形というのは、蛙どもでは大へん高尚なものになっています。

平たいことなのです。

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三、顔を洗わない狸


狸は顔を洗いませんでした。

それもわざと洗わなかったのです。

狸はちょうど蜘蛛が林の入口の楢の木に、二銭銅貨ぐらいの巣をかけた時、すっかりおなかが空いて

一本の松の木によりかかって目をつぶっていました。すると兎がやってまいりました。

「狸さま。こうひもじくてはまったくしかたございません。もう死ぬだけでございます。」

狸がきもののえりを掻き合せていいました。

「そうじゃ。みんな往生じゃ。山猫大明神さまのおぼしめしどおりじゃ。な。なまねこ。なまねこ。」

兎も一緒に念猫をとなえはじめました。

「なまねこ、なまねこ、なまねこ、なまねこ。」

狸は兎の手をとってもっと自分の方へ引きよせました。

「なまねこ、なまねこ、みんな山猫さまのおぼしめしどおり、なまねこ、なまねこ。」

といいながら兎の耳をかじりました。兎はびっくりして叫びました。

「あ、痛っ。狸さん。ひどいじゃありませんか。」

狸はむにゃむにゃ兎の耳をかみながら、

「なまねこ、なまねこ、みんな山猫さまのおぼしめしどおり。なまねこ。」といいながら

とうとう兎の両方の耳をたべてしまいました。

兎もそうきいてると、たいへんうれしくてボロボロ涙をこぼしていいました。

「なまねこ、なまねこ、ああ ありがたい、山猫さま。私のような悪いものでも助かりますなら

耳の二つやそこらなんでもございませぬ。なまねこ。」

狸もそら涙をボロボロこぼして、

「なまねこ、なまねこ。私のようなあさましいものでも助かりますなら

手でも足でもさしあげまする。ああ、ありがたい山猫様。すべておぼしめしのまま。」

といいながら兎の手をむにゃむにゃ食べました。

兎はますますよろこんで、

「ああ ありがたや、山猫さま。私のようないくじないものでも助かりますなら

手の二本やそこらはいといませぬ。なまねこ、なまねこ。」

狸はもうなみだでからだもふやけそうに泣いたふりをしました。

「なまねこ、なまねこ。私のようなとてもかなわぬあさましいものでも

お役にたててくだされますか。ああ、ありがたや。なまねこ、なまねこ。

おぼしめしのとおり。むにゃむにゃ。」

兎はすっかりなくなってしまいました。

そこで狸のおなかの中でいいました。

「すっかりだまされた。お前の腹の中はまっくろだ。ああ、くやしい。」

狸は怒っていいました。

「やかましい。はやく消化しろ。」

そして狸はポンポコポンポンとはらつづみをうちました。


「蜘蛛となめくじと狸」より・・・宮沢賢治

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 「その薄青き波璃の器に」



   その薄青き波璃の器に

   しづかにひかりて澱めるは

   まことや菩薩わがために

   血もてつぐないあがなひし

   水とよばるるそれにこそ




   宮澤賢治 「疾中」より

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