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台湾では一昨年大ヒット、台湾映画史上歴代興収一位の「タイタニック」に次ぐ、第二位。純国産としては、最高ヒットといって言い。もっとも、今年世界的に「アバター」が同じキャメロン監督の「タイタニック」の歴代興収一位を塗り変えるから、いまは台湾でも歴代三位になるのかな。それにしても、キャメロン、次回作作るの苦しいだろうなあ。もう、思い切り意外な脱力作を作るしかないか。
さて「海角七号 君想う国境の南」なかなか面白い。だがきわめて奇妙な構成の映画。
現代台湾で、台湾の青年阿嘉と、日本女性友子との恋愛物語。これに、二人がかかわる素人バンドの結成と練習、その間に合わせ急造バンドのメンバーとなる田舎町の人々の人間模様が絡む。これだけなら、ごく普通のよく出来た娯楽映画なのだが、これに65年ほど前の、台湾人少女友子と、日本人青年教師との恋愛が、絡んでくると、それは、交じり合うのかどうか、その必然性はどうなのよ、という話になってくるだろう。
うまく絡めばよし、絡まねば、異種格闘技の、駄目な試合さながらになるだろう。
これが意外にマッチしていると見た。過去の失恋話が現代の恋愛話を重厚かつ意味ありげなものにするという。しかし、それは、きわめて危うい試みで。
誰かの評で、これは台湾と日本、国と国とのラヴ・ストーリーでもある、と。最後を〆るのは、日本経由で台湾に伝わった、シューマンの「野ばら」の日台大合唱で。歌と恋がつなぐ二つの国の絆。映画としても、あまりに野心的過ぎるよね。 いや、国と国、なんて関係ない。恋する二人に、国籍の違いなんて、重要ではない。これは「ロミオとジュリエット」の一変奏なのだ、と。かつては、それは<許されない恋>であった。日本は戦争に負けて、台湾から夜逃げのように逃げなくてはならない。その屈辱から、ちゃんと旅支度を整えて港に彼を追ってきた台湾人少女友子を避けるように船に乗る日本人青年(中孝介二役)。しかし、その国境は、現代では、らくらくと越えていけるだろう、と。
ところで、ぼくが愛読する某映画系ホームページ「山下さん」(仮名)の本映画評が、いつもの的確ぶりと違って、ひどすぎて、かえって考え込まされてしまう。(記憶による大意では)<日本が植民地としてとっても悪いことをした台湾>(と断言)で、こんな親日的映画が出来たことが、マズ不審らしい。そして「日本人」少女友子がなぜ、台湾に残ったのか、も不審らしい。主人公の青年と、ちんけにして愛すべき町の実力者が「父子」というのも誤認で。ぼくの見る限り、実力者は死んだ親友の未亡人と再婚したいらしく、青年はその未亡人の一人息子なので、<わが子同然>の青年の力になりたいだけなのだ。人間関係や歴史関係のあれやこれやで成り立つ映画で、人間・歴史関係ほぼ百パーセントの誤解に基く映画評を読むと、う〜ん、ぼくのも、それよりもっとひどいこと書いてないか、と我が身を省みたりして。
ヒロイン<現代の友子>を演じる田中千絵(絵は台湾らしく正字体の繪と表記)、北京語のときはギャーギャーわめくようにしゃべり、日本語のときには、とたんにウィスパー・ヴォイスになるのが、笑える。
小学生の女の子(日台ハーフらしい)から80歳の自称人間国宝のじいちゃん(日本語がしゃべれる設定、たどたどしいけど)まで、そして外省人らしい酒屋のアンちゃん、高砂族?のもと特殊部隊などの、オール台湾な、絵に描いたような急造バンド(世話役は田中千絵の友子)、そしてそれに参加する中孝介、これはやっぱり、台湾の国民映画だねー。ヒットするわけだよ。
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