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戦前編より続き、これからは、単年度別。
ただし、この年は、新作公開本数も極端に少なく、百本弱。で、順位・コメントありの映画は、2本のみ。 1位 「わが青春に悔なし」 黒澤 明 原節子 藤田進 大河内伝次郎 杉村春子
あっと驚く珍品映画。戦後の<新思想>を描く映画が、なんと1910・20年代かと見まがう、無声映画のテクを全面採用。当時としても、これは映像的に古い映画だったのではないか。 そしてほほえましい点もないではなく、原節子の夫のシーン(デートから逮捕に至る)は、これぞヒッチコック映画。実にお手本的なまでに見事なマクガフィン効果こそ、黒沢がヒッチコック的真の映画作家ともいうべきであろーか。 【補足】黒沢とヒッチコックは、その立ち位置が、すごく、似ている。 1 ともに娯楽映画でその才を発揮し、<ジャンル映画中興の祖>として、素晴らしい。 2 その映画テクは、だれにでも、コピペ応用可能な、映画テクとして、残っている。職人のきわみ。逆に言えば、<真のオリジナルな芸術>は、だれも真似しようが、ない。まねをしたら、あ、それはベートーベンだ、ピカソだ、小津だ、清順だ、谷崎だ、何だ、物まねだね、そうなってしまう。黒沢とヒッチコックが<開発した>映画テクは、だれにでも応用可能な<ジャンル映画の文法>として定着した。黒沢もヒッチコックも、だから、職人である。ゲージツ家では、ない。詳しくは、特集「黒沢映画の正体」にて。 なお、無声映画のような素朴なつくりなのは、敗戦直後の、録音事情の粗末さを、何とかそう見えないようにしようという、黒沢の、緊急策なのかもしれない。電力事情の悪化を逆手にとった、意図的先祖がえりとすれば、素晴らしい。これぞ危機管理能力の鏡か。 2位 「大曾根家の朝」 木下恵介 杉村春子 長尾敏之助 徳大寺伸 小沢栄太郎 単純につまらない。【補足】いかにも、敗戦後の<時代と寝る>促成左翼・木下らしい、やっつけ仕事か。 以下は、コメント・順位ともになく、まあ、FJ会員でも、見ている人自体が少ない年か。
「ある夜の殿様」 衣笠貞之助 長谷川一夫 藤田進 大河内伝次郎 山田五十鈴
【補足】いわゆるグランドホテル形式のハリウッド的小喜劇。平常心なのか、アメリカさんに、こびたのか。 「歌麿をめぐる五人の女」 溝口健二 坂東簑助 田中絹代 坂東好太郎 川崎弘子
【補足】いっぽう、ミゾケンは、時代にも、アメリカにも、こびない、反時代的な映画を作る。すばらしい。個人的には、傑作「月夜烏」の飯塚敏子が、好み。 「女性の勝利」 溝口健二 田中絹代 桑野通子 高橋豊子 内村栄子
【補足】ミゾケンの、女を描く、その一点が、時代の変化を無化する。男と違って、女の(時代による)変化は、「流行」の違いのみ。戦前の大日本帝国主義、戦後のアメリカ式民主主義、その大変化の一切が、ミゾケン的女の描き方において、無効とされる。ミゾケンは、その時代時代の風俗を描きつつ、しかし、時代の違いを、作風には、一切反映しない。<時代と寝る>木下ゲイ介との、なんという違い。ただ、個人的には、田中絹代(弁護士)とクワミチ(被害者)の、キャラは、ギャクじゃん、とも思わないではない。 「わが恋せし乙女」 木下恵介 原保美 井川邦子 東山千栄子 勝見庸太郎 【補足】なんという、思い切りのいい、アメリカ映画っプリ。さすが木下。時代と寝まくる寝まくる。まあ、そういう木下の甘さも、きらいじゃないよ。 「ニコニコ大会 追ひつ追はれつ」 川島雄三 森川信 空あけみ 山茶花究 幾野道子 日守新一 【補足】戦前作慰問映画コメディを、松竹もタマがないので、しれっと出した。馬鹿馬鹿しいのが、よい。 「煉瓦女工」 千葉泰樹 矢口陽子 三島雅夫 三好久子 小高たかし
【補足】これも戦前作だが、妙なきまじめさがあり、黒沢明「一番美しく」の主演女優、兼、後の黒沢明夫人である、矢口陽子の真の代表作。ただ快匠・千葉泰樹としては、生硬に過ぎたか。 「民衆の敵」 今井 正 藤田進 河野秋武 花柳小菊 江川宇礼雄
【補足】これは、今でも未見。 「明日を創る人々」 山本嘉次郎 黒澤 明 関川秀雄 藤田進 高峰秀子 薄田研二 森雅之
【補足】黒沢「素晴らしき日曜日」と並ぶ、数少ない中北千枝子主演作、ただし内容は平凡。三人の監督がかかわったが、内容的には見るべきものもない、組合映画、つまり御用映画。黒沢が、そのフィルモグラフィーから抹消したのもむべなるかな。 |

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