というわけで、先週、「仁」が、終わった。
やはり、なかなか、面白かった。快作である。
しかし、前シリーズの最後で、全ての謎が明らかに、とさんざん嘘の宣伝(いかにもTBSらしいでっち上げ捏造)をしたあげく、謎を一個も解明せず、各方面から、ペテン師、鳩山か菅か、という非難を浴び、今度こそは、完結しないと、あとがない、と臨んだ完結編で。
さんざん嘘をついたあげく、もう、ここで完結しなきゃ、と。のっぴきならぬ、逃げ場なし。というわけで、完結することが、完結編のゆいいつの目的になった。
おかげで、途中経過の微妙なニュアンスをすっ飛ばしても、完結に邁進する、味のなさもあった、完結編で。それでも、よく、やった、という思いは強い。力技で、完結させた。
後半は、じっくり描写も、それなりに復活し、毎回毎回、力作であった。毎回、泣けた。
濃密な展開、瑣末な描写もそれなりに忘れず、まさに濃縮果汁還元100パーセントの充実であった。ま、ストレート果汁100パーでは、なかったものの。
内野聖陽の坂本龍馬、絶品。これは、日本エンターティンメント史上最強の坂本龍馬であろう。「人たらし」龍馬を、ここまでこゆく、うれしく、とらえたら、もって銘すべしだろう。
綾瀬はるかの、けなげな武家娘、これも絶品。いまどきの若手アイドル女優で、古風なけなげさ、明るい力強さを、体現できる演技の出来る女優がいたことの、奇跡。
その笑顔、その演技、そのものが、まるで天然由来の消毒剤のごとき、清潔感のある大沢たかおも、絶品で。
まるで勝海舟そのものとも思わせた小日向文世、まるで生きている西郷隆盛そのものかと思われる藤本敏宏、綾瀬の母・麻生祐美、そのほかの多くの脇役たちも、皆々絶品でした。
というところで、まことに申し訳ないが、いささかのいちゃもんを(笑)。それが、ぼくの役回り?なので。といっても、このドラマのスタッフに、まるで罪はないのだが。むしろ、逆だ。
というのも、タイムスリップものの結末としては、もう、これっきりしか、ないのか、という。
この種のジャンルの傑作、ハインライン「夏の扉」の、別の時代で彼女をゲットして、<現代>に彼女を連れてきて、ハッピーエンド、なんて、1950年代的お気楽さも、「バック・ツゥ・ザ・フィーチャー」の、コメディかつジュブナイルな能天気さも、もはや、無理。ヤノット・シュワルツ「ある日どこかで」の、幻影(妄想)のなかでの、再会、というのも、夢落ちみたいで、ダメ。
まぢめに、タイムスリップものの結末を考えると、もはや、別の時代から女の子をゲット、なんていう<植民地主義>の楽天さは、もう無理。あの時代でも、この時代でも、女の子と、ウホウホ、というのも、無理。あ、ここでいう女の子は、ホントの女の子と、別の時代の財宝と、両方、指すんだけどね。
まぢめな男が、タイムスリップの果てに、あっちの時代でも、こっちの時代でも、ウハウハ、というのは、もうありえない。この種の物語の原点にして、頂点である、ジャック・フィニィ「愛の手紙」のような、図書館などでの資料、そして現実のお墓で知る、苦い結末しか、もう、ありえない。
かそけき薄れはてた資料、かつての解像度の低い写真資料、そこにしか、手がかりは、ない。そういう、苦い結末。もう、それしか、タイムスリップもののエンドは、ないのだ。そういう苦い制約。
原作の、かつての仁友堂が、仁友堂大学になり、仁友堂大学付属病院になり、橘咲は、その創始者であるという、<派手な結末>は、おそらく、この「仁」には、合うまい。
このドラマの、仁友堂というのは、当時の<土着的な結社>であり、その医師たち、山田順庵たちはそれなりに出世したとしても、あくまでも、医学誌の脚注たる存在でしかなく、橘咲も、自宅でささやかな医院を作る存在でしかなかったという、慎ましやかな結末こそ、このドラマに、ふさわしい。仁友堂が<土着的>な<結社>に、過ぎないという、ナイスな選択こそ、「仁」というドラマの決着としては、ベスト。むしろ<仁友堂大学>などと、大仰にならないことこそが、美しい。
そういう意味で、ゆいいつの着地点に、美しく着地した、このドラマの脚本家、演出家、プロデューサーたちを、たたえたいと思う。
蛇足その1 綾瀬はるかは、おそらく本作の功績を持って、けなげな武家娘の似合う、おそらく唯一の存在として、再来年の大河ドラマ「八重の桜」に、バッテキされたのかと、思う。で、あるならば、脚本・森下佳子こそ、その大河ドラマにこそ、ふさわしいだろう。幕末の話なので、内野龍馬、その他も、ゲスト的に出してもらえると、うれしい。
蛇足その2 今回、いくらか検索した中では、<三朝四朝又朝朝>なるブログの「仁」感想が面白かった。とくに9話の龍馬暗殺のシーンは、あまりにパッパッパッと、進行するので、ボンクラなぼくには、何がなんやら、わからず。<三朝四朝又朝朝>の、わかりやすい連続分解写真で、初めて、よくわかりました。そのほか、最終回の分析なども、面白く、毎回毎回、目からうろこでありつつ、素晴らしいブログで。おすすめ。
●追記●蛇足その3 今期のラストテーマ(平井堅歌唱)は、ついになじめず。毎度毎度、緊張感あるドラマのラストに、この癒し系な歌い出しは、ついぞ合わず。ドラマの緊張感を脱力させるね、この歌は。
前回のミーシャの、ドラマの緊張感を倍増する、名曲(「仁」の世界にジャスト・フィット)のあとだけに、なおさら。おそらく、スタッフとしては、ミーシャ=中谷美紀のシャープさ、今回=大沢たかおのやさしさ、とそれぞれ対応したのだと思うが、どっこい、毎度毎度「仁」のラストは、緊張感あふれるものが多く、やさしさほのぼののラストじゃないんだよね。何か一話完結で毎度事件が解決、レギュラーみんなが、シャシャンシャンのドラマなら、この曲も合うのだが。毎度未解決の緊張を残したラスト(最終回ですら、そう)に、この癒し系は、まったく合わない。
毎度毎度、ミーシャの歌が恋しくなるという、誤算でしたね。
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