|
最近、歴女だとか歴男とかいわれているが、かつて私の知人にも歴男がいた。いや、『れきだん』なんて言わないし読みにくいから、『れきお』とでも読むことにしよう。で、この歴男くんは幕末の歴史が好きで、そのころ高山彦九郎にはまっていた。友人たちはみな「高山彦九郎って誰?」と言うので、歴男くんは歴史講義でもするように、みなにけっこう詳しくしかも熱く語ってくれた。それを思い出して、といってもやはりうろ覚えなのでネットで検索してみた。
それによると、寛政の三奇人の一人で、諸国を旅して尊王思想を説いてまわった人らしい。上野(こうずけ、今の群馬県)の人で、彦九郎というのは、字で、名前は正之といった。え、高山正之、どこかで聞いたような、そう、あの変幻自在とかいうコラムの、へえ、同姓同名だったんだ。というかきっと親御さんが高山彦九郎のことが好きだったんだろうなあ、それで生まれた子供に正之と名づけたに違いない。高山彦九郎は戦前、修身の教科書で、楠公と並んでよく載せられた人らしい。人気者の偉人だったかもしれない。
ともかくネット検索すると、頼山陽の著書『高山彦九郎伝』というのがあって、漢文で書かれているものが現代語訳されて出てきた。読んでみると、確かに面白い。まさに奇行の人で、歴男くんの話をだんだん思い出してきた。
彦九郎は諸国を旅して、いろんな人と交流したが、若い時京都を訪れ、三条橋の東で往来の人に、皇居はどちらかと尋ねた。聞かれた人はあちらだと答えた。すると彦九郎はいきなりその場に正座して皇居の方角を伏し拝んで、「草莽の臣、正之でございます」と言ったというのである。まわりで見ていた人はびっくりして人だかりができ、きっと頭がおかしいとでも思ったのかあざわらったというのだが、彦九郎はいっこう気にもとめなかった。いや、実に素敵である。なんか正座して威儀を正した姿で、草莽の臣、正之でございます、だなんて、すごくかっこいい気がするのだが。
さらに面白い奇行は、足利尊氏の墓を訪れ、足利尊氏の墓に向かって、南朝の天皇に対して行った数々の罪状をいちいち数え上げては、尊氏の墓を300回も鞭打って責めたという。本気で尊氏の墓に説教したらしい。もっとも彦九郎が尊王の心に目覚めたのは、高山家が、新田義貞の配下であった新田十六騎の一人、高山重栄の子孫だということを知り、尊王の家柄ということに誇りを覚えたからという。だったら、確かに尊氏の墓を鞭打ちたくなるのももっともな話である。
まあとにかく、こんな感じの人であった。興味をお持ちのかたは、高山彦九郎伝を検索して、読んでいただきたい。この彦九郎が諸国を回って尊王の心を説いて回ったことが、幕末維新にかなり影響を与えたという話である。当時かなり有名になっていて、同じく三奇人の一人蒲生君平は、高山彦九郎を尊敬して、あこがれて旅に出たというのである。
この高山彦九郎の話をしてくれた歴男くんのことを、私たちはその後しばらく、奇人と呼んでおもしろがった。
ところが当時の奇人というのは、すぐれた人という意味で、変な人という意味ではなかったらしい。たしかに非常に純粋で、一徹なところがあり、強い信念で行動するため、常人からみれば奇行に見えるが、高い志がもとにあるのだ、ということなのであろう。もちろん志だけでなく、非常に知性も優れた人たちであったらしい。できれば現代の混迷する政治の世界にも奇人が現れてほしいと祈る心境である。
|
全体表示
[ リスト ]




奇人変人と言う言葉が「四字熟語」として使われ始めてからおかしくなったって事なのでしょうか。
確かに「奇特な人」って場合、意味が違いますものね。
私も同じく現代の混迷する政治の世界に奇人が現れる事を願っています^^
2010/4/8(木) 午前 10:23
時代の先を行く、先見の明をもった人たちが、節目節目に現れるものなのですね。
大変興味深いですね。
今政権を握っている人たちは、言うまでもなく・・・。
皇室を尊ぶ、優れた指導者が待ち望まれます。
2010/4/8(木) 午前 10:54 [ NICK ]
ジョウジさん、ありがとうございます。
そうなんですよね。奇人変人で合わせてインプットされてしまいましたからね。奇という字を調べてみたら、めずらしい、あやしい、という意味のほかに、すぐれている、ぬきんでている、という意味があり、なるほどと思いました。ほんとに皇室を尊ぶということが、指導者の第一条件ですね。
2010/4/8(木) 午前 11:58 [ さざんか ]
NICKさん、ありがとうございます。
確かに日本の歴史は、節目の時期に、ぴったりと必要な人が現れることがありますよね。なんだか小説の伏線のように、人や事件が配されていて、本当に見えない力を感じるときがあります。今の時期にも、そうして必要な人が現れてくれることを待ち望みます。
2010/4/8(木) 午後 0:05 [ さざんか ]
確かに、「奇人」と称される人は決して奇の人ではなく、浅学菲才の庶民には理解の範疇を超える存在の人のことを指しますね。
小人には大人の志を知る由も無いのでしょうね。
傑作
2010/4/8(木) 午後 2:19 [ 敬天愛人 ]
高山彦九郎の行ないは立派です。
今の政治家には期待できませんが、私は見習いたいと思います。
傑作
2010/4/8(木) 午後 3:40
こんばんは。
おお、この人は知りませんでした。修身教育で取り上げていましたか。本来知るべき人物ですね。
ポチン
2010/4/8(木) 午後 9:36 [ JJ太郎 ]
敬天愛人さん、傑作ありがとうございます。
なるほど、奇人というのは、規格外の人、でっかすぎる人ということですね。もちろん精神的にですが。、燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや みたいな感じですね。
2010/4/9(金) 午前 3:42 [ さざんか ]
さくらの花びらさん、傑作ありがとうございます。
さくらの花びらさんの発信されているブログも、現代版の高山彦九郎のような感じですよね。諸国を回って尊王思想を説いて回るかわりに、現代では、ネット発信です。みなさん、きっとそういう思いでされているのでしょう。現代のたくさんの高山彦九郎が、時代を動かすことを願っています。
2010/4/9(金) 午前 3:54 [ さざんか ]
JJ太郎さん、傑作ありがとうございます。
ほんとに昔の教育はいろんな偉人を取り上げて紹介していますね。歴史教育は、本来人間を取り上げるべきですが、歴史授業は時間の関係から、どうしても事件中心になってしまうため、修身で、人物を取り上げるのは、実にいいやり方だと思います。
2010/4/9(金) 午前 4:03 [ さざんか ]
歴男とはほど遠い私は高山彦九郎は知りませんでした、他の三奇人の二人は知っていましたが…新田義貞も鎌倉を落とした後は知りません…
ただ歴史は勝者の歴史であり敗者のモノは消さされ真実とは違う点も有ると思います、薩長土肥の人物の偉人とされていますが幕府側にも有能な人物が居たとは思います。
我が地方は児島高徳が戦前の教科書に描かれ文部省唱歌として歌も載っていたそうです
↓良い歌ですよ
http://www.justmystage.com/home/hotaka77/L210-Kojima-Takanori.html
2010/4/9(金) 午前 6:57 [ テラノ助 ]
素晴らしい人物ですね^^
奇人と天才は紙一重でしょう。
傑作○です。
2010/4/9(金) 午前 10:29
テラノ助さん、ありがとうございます。
確かにそういうこともあると思います。いい例は日本の敗戦ですよね。
しかし日本では、後の世の人がけっこう敗者にも光を当てている気がします。北畠親房の神皇正統記などは、北朝方の人々が、涙を流して読んだという話を聞きましたし、正親町天皇の時代に、楠正虎と言う人が楠正成の名誉回復を願い出て認められたという話もあり、また大日本史を編纂した水戸光圀も楠公を忠義の臣として見習うべきとして復活させ、明治天皇も湊川神社を創設せられたそうです。
幕府の老中小栗上野介も、見直されて司馬遼太郎に日本近代の父とか言われたそうですし、東郷元帥も日露戦争の後、上野介の子供たちのもとに行って、上野介のおかげで勝利できたといって子供たちを励ましたという話です。立派な人は、みなちゃんとわかっていて、いつかはだれかが復活させようとしている気がします。そうでない人もいるでしょうが、他の国よりはましなのではと思いますが、どうでしょう。
2010/4/9(金) 午後 4:02 [ さざんか ]
こんのさん、傑作ありがとうございます。
ほんとにそうですね。一般人の測り知れない考えや基準で動かれているのでしょうね。
2010/4/9(金) 午後 4:09 [ さざんか ]
凄いです さざんかさんの歴女ぶりに驚かされます、
確かに日本は敵であっても死者に礼を尽くす他国にない良い風習がありますね、
私は地理的面が有るのか、擁出雲、擁江戸幕府派で時代錯誤しているかも知れません。
2010/4/9(金) 午後 4:29 [ テラノ助 ]
テラノさん、
児島高徳の歌は歌詞だけしか見れなかったですが、いい歌ですね。児島高徳のお話もいい話ですね。児島高徳自身もとても謎に満ちた人物のようで、いろんな説があって面白いですね。太平記の作者という説が一番気に入りました。
2010/4/9(金) 午後 6:33 [ さざんか ]
奇人とは
>非常に純粋で、一徹なところがあり、強い信念で行動する
今では、この様な人はどう呼ぶのでしょうか?昔流に奇人と呼ぶような言葉は思いつきません。その様な方はいなくなり、金で巾を利かす小物人間が増えたのでしょうね!
2010/4/21(水) 午後 2:58 [ 夕日の丘 ]
そうですね、現在そういうタイプの人は思い浮かびませんね。
でもどこかに居るのかもしれませんね。
2010/4/21(水) 午後 10:42 [ さざんか ]