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さて、これから私が何を論じるかと言うと、TPPの個々の問題ではなく、TPPの背景にある歴史的経緯、民族性、思想的問題を深く掘り下げて考えたいと思います。TPP問題一つをとっても賛成派と反対派の意見が様々入り乱れ、あまりに多くの情報が出回っていますから、なかなか判断しがたいところがあろうかと思います。浅学菲才の私が申すのは僭越の謗りを免れないと思いますが、やはりここは問題の本質を思想的に根源的に問い直さなければならないと思う次第です。
昨年10月8日に菅直人前首相がTPP参加を検討する旨を表明して以来、私はすぐに「これはおかしい!」と感じ、ほとんど誰もはっきりとTPP反対を表明されていないときに、私はこれを記事にいたしました。(一番最初の記事は昨年11月9日。もっとも、労働力の自由化はアメリカがTPPにおいて実現したいと思っているのではなく、米倉経団連会長ら製造企業が外国の安い労働力を得たいがために望んでいるということでした。この点お詫びして訂正させて頂きます。) 当時反対を唱える人がほとんどいない中、なぜ私が直感的に「TPPは何かおかしいゾ!」と思ったかというと、当初からマスコミの報道が尋常ではなかったからです。それまでTPPなんて言葉は誰も聞いたこともなかったはずなのに、マスコミが突然盛んに「TPP、TPP」と叫び始め、いきなり我が国の「最重要の検討課題」と位置付けられるようになったためです。
しかし、普通に考えて「貿易の自由化」であれば、基本的に二国間でお互いの国の利害を調整しながら、FTA(Free Trade Agreement, 自由貿易協定)やEPA(Economic Partnership Agreement, 経済連携協定)を結べばよいだけのことです。ところが、どういうわけか産経新聞を含めてマスコミはそれまでのFTAやEPAの交渉を全部すっ飛ばして、突如として「TPPなる多国間協定に参加しなければならない」と極めて断定的に論じ始めるようになりました。
なぜこうも我が国の「最重要の検討課題」は上の方で勝手に決められてしまうのでしょうか?
五箇条の御誓文には、「広く会議を興し、万機公論に決すべし」と記されています。ところが、TPPは国民的議論を踏まえて提案されたのでもなければ、国会議員が国会での議論を積み重ねて提案されたわけでもありません。突如、菅総理が国民の誰も聞いたこともない「TPP」に参加すると表明して以来、マスコミが「我が国の最重要課題」として位置づけ、TPP参加の大合唱を始めたのです。どう考えても異常です。
五箇条の御誓文の「広く会議を興し、万機公論に決すべし」の精神と照らし合わせても、全く理にかなっていません。「万機公論に決すべき」の精神とは真逆に、それまでのFTA交渉やEPA交渉を全部すっ飛ばして、突如としてTPPなるものに我が国は国民全員が従わねばならない、と上の方で勝手に決められてしまうのです。
私は今年1月の記事にも書かせて頂きましたが、これは何もTPPに限った話ではありません。はっきり言ってしまえば、日米構造協議、金融ビックバン、規制緩和、郵政民営化、構造改革、年次改革要望書・・・すべて我が国が検討すべき最重要課題は常に「天」(=アメリカ様)から与えられているのです。決して、五箇条の御誓文にあるような「広く会議を興し、万機公論に決すべし」の精神で、議論が進められているわけではありません。
※参照
TPP 事を急いではいけません(高市早苗議員が語る) (2010/11/23)
経団連会長、TPP参加で労働力として移民奨励(2010/11/9)
我が国においては、日米構造協議、金融ビックバン、規制緩和、郵政民営化、小さな政府、構造改革、年次改革要望書・・・すべて取り組むべき最重要課題は「天」(=アメリカ様)に与えられ、政治家、官僚、学者、マスコミはほとんどみな暗黙のうちに「アメリカ様の御意向に沿わなければならない。アメリカが言い出したら、もう従うほかないのだ。」と考えてきたのではないでしょうか?
産経新聞と言えどもその点は同じで、アメリカに対して思想的に深く掘り下げて考えるということがまるでありません。産経の「主張」の欄で個人的見解として述べられることはあっても、アメリカの政治思想や経済思想について深く掘り下げた記事はほとんど見たことがありません。唯一の例外は田村秀男氏の分析記事ですが、あの田村氏にしても結局TPP賛成です。産経新聞は「とにかく属国でもいいから、何が何でも日本をアメリカ側に組み込んでしまえ。支那に制せられたら、それが一番最悪だから、日本国政府にはつべこべ言わずアメリカに従わせろ。」と腹をくくっているのであろうか、と思います。
別に産経新聞を批判したいのではありません。産経新聞には私の友人もいますから、むしろ親近感を抱いているくらいです。ただ、我が国はいつもアメリカ様が日本に対して望むとおりに勝手に「最重要課題」を決められてしまい、私たちはあくまでその範囲の中で「考えさせられている」ということを認めざるをえないと思います。そして、私たちは今回のTPP問題でも国民挙っててんやわんやの議論をさせられているのです。
しかし、こう言ったからと言って、私は決して闇雲にアメリカを批判しているわけではありません。むしろ、我が国の方こそが自ら唯々諾々と卑屈にアメリカ様の言う通りに過剰に従いすぎていると申し上げたいわけです。むしろ、問題は外にあるのではなく、内にあると思います。
確かにアメリカは強大な国であり、我が国にとって死活的に重要な同盟国であります。アメリカに対して我が国の要求を押し通すなどというようなことは簡単なことではありません。しかし、だからと言って、我が国の力をあまりに軽んじることもまた自虐的すぎ、実に愚かなことであると思います。
現状としてアメリカの経済はすでにボロボロであり、アメリカの強大な軍事力にしてもそれを支えるハイテク・ローテクの技術は実はかなりの部分が日本の技術力によって支えられているわけです。また、我が国は東アジアにおいても、南アジア(インド洋)においても、中東においても、自衛隊を機動的に動かすことにより、日米同盟は強化され、我が国のアメリカに対する発言力を増すこともできるようになります。我が国が主権国家の意識を強く持ち、為すべきことを為して交渉に当たれば、いくらでも対米交渉のカードはあるわけです。(もちろん、核武装も一つの重要なカードです。)
我が国政府にそのような優れた交渉能力を要求するのは酷かと思いますが、しかし、ちょっと知恵を絞ってやれば、なんでもかんでもアメリカの言われるままに、あそこまで卑屈に唯々諾々として従うだけということはなくなるはずなのです。
私は元々そういう認識があったので、昨年菅総理が突如としてTPP参加を表明し、マスコミがこぞって賛成論を唱え始めたとき、私が「これはどうもおかしいゾ!」と直感したわけです。何もTPPに限った話ではありません。関岡英之氏が指摘する通り、そもそも日米構造協議に始まり、その後20年続けられてきた「構造改革」が基本的にすべてアメリカ様の御意向に沿って進められてきたのです。さらに逆のぼって言えば、ニクソンショックとそれに続く変動相場制への移行、プラザ合意から始まっていたとも言えます。
いずれにしても、私たち国民が意識するとしないとに関わらず、我が国は現状として政界、官界、学界、マスコミ、ほとんどすべてが暗黙の裡にアメリカ様の御意向に従っているという「閉ざされた言語空間」の中にあるということだと言えると思います。江藤淳氏が指摘された「閉ざされた言語空間」というのは何も歴史認識だけのことではなく、経済についても我が国では極めて「自虐的な思考」「盲目的なアメリカ崇拝」が支配的になっていると言えると思います。
関岡氏の指摘する通り、このような我が国の情けない実態は何もTPPに始まったことではありません。
アメリカの日本占領に始まり、日米構造協議、日米間の新たな経済パートナーシップ、成長のための日米経済パートナーシップ、年次改革要望書、TPP・・・いつもアメリカ主導で我が国が取り組むべき「課題」が決定され、我が国はそのレールの上で「考えさせられ」、てんやわんやの議論をしなければならなくなっています。そして、我が国の国柄(家族的会社経営、三方よしの経営哲学、共存共栄の精神、教育勅語・五箇条の御誓文の精神)までも含んだ「構造改革」をさせられてきた・・、否、むしろ我が国が自ら積極的にそれをやってきたのです。(自己検閲とよく似た精神なのだろうと思います。)
アメリカはTPPだけ目論んでいるわけではありません。東日本大震災の1か月後には、アメリカ(クリントン国務長官)は「復興のための官民パートナーシップ(PPP)」を日本にもちかけ、復興利権にありつこうとしているし、さらにTPPが失敗した時に備えて「日米経済調和対話(EHI)」まで持ちかけています。TPPはあくまでアメリカのグローバル化戦略(対日戦略)の中の1つに過ぎません。
しかし、アメリカは必ずしもそれを卑怯なやり方でしているわけではないのです。なぜならば、年次改革要望書と言い、TPPと言い、日米経済調和対話と言い、アメリカは具体的な内容をかなりはっきりと公表しているのです。年次改革要望書と日米経済調和対話については、なんと米国大使館HPに堂々とその内容を公開しているのです!(年次改革要望書の内容については、関岡氏が問題を指摘して以来、大反響があったためか、現在はHPから削除されています。)
そもそもアメリカは自国の外交方針をはっきりと表明する国です。アーミテージ報告書にしても、ブッシュ政権誕生以前から、外交戦略を如何にするかということを前々から内外に向けて闡明していたのです。欧州諸国からすれば、「自らの手の内をさらけ出すとは馬鹿だ」と思うそうですが、伝統的にアメリカはそういう国なのだそうです。岡崎久彦元大使によると、情報分析するに当たっては、米国政府の公式文書、要人の発言、あるいは条約を見れば、基本的にアメリカ政府の考えは分かると指摘されています。特殊なスパイ活動をしたり、特別な人脈で極秘に情報を得てこなくても、今なら大概のことはインターネットで調べれば分かってしまうのです。
だから、年次改革要望書、日米経済調和対話でも、アメリカは日本に対してどう臨むのかを堂々と公表しているのです。ところが、これほど重要なことを我が国のマスコミは全然伝えないし、政府も絶対にひたかくしにしているのです。これだけ情報があふれかえる時代ですから、マスコミが重大な問題として報じない限り国民のほとんどは無関心のままです。マスコミが報じない限り、問題は一向に国民に認識されません。TPPは原則的に参加国にしか詳しい交渉内容が明かされないことになっていますが、しかしアメリカ政府から日本政府には重要な情報は伝わっているはずであり、英語の資料もちゃんとあるのです。ただ、国民に知らせないようにしているだけなのです。
※参照 チャンネル桜「大道無門」
そう考えていくと、結局アメリカばかり悪いとは決して言えないのです。 日本の側、特に上層部(政治家、官僚、学者、マスコミ)が自ら好んでアメリカ様からの御宣託をありがたく頂戴し、自らシッポを振って忠実たらんとしていることの方がはるかに深刻な問題です。日本的価値を放棄し、アメリカ崇拝に走る彼らこそ、私はむしろ問題なのだと思うのです。「敵は内に在り」と言った方が良いのではないかと思います。
今回も拙い記事を読んで頂き、ありがとうございます。
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