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ラプンツェル(3幕) ラプンツェル ハンス(ラプンツェルの父) エルゼ(ラプンツェルの母) 王子 王子の従者 魔女ゴテル 畑の野じしゃたち 森の木たち 第1幕 第1景 小さな農家の室内。奥には窓。左手に出入り口。右手に寝室へ通じるドア。 手前には質素な木のテーブルとイス。 (エルゼ、台所で鍋を火にかけている。窓から外をながめため息。ふくらんだ腹をなでる) (ドアが開き、夫のハンスが帰ってくる) ハンス ただいま。腹がへった。 エルゼ おかえりなさい。疲れたでしょう。スープがかまどの上で煮えたぎってるわ。 (ハンス、かまどの上のスープのふたを取って見る) ハンス ひょおお。うまそうだ。 エルザ やけどしないでね。あんたはとてもせっかちなんだもの。 ハンス ああ、だいじょうぶ。おまえのつくったスープを一刻も早く書き込みたくてさ。ああ、腹が鳴る、おまけによだれもしたたり落ちそうだ。 (ハンス、どっさりといすにすわる) (エルゼ、スープを皿についできてテーブルに乗せる。パンもナイフで切ってのせ、ハンスの向かいにすわる。ハンスは食べ始めるが、エルゼはそんな夫を見ているだけ) ハンス どうしたんだい。さっきからため息をついてばかり。 エルゼ なんでもないわよ。お腹がすいてるんでしょう。さあ、あんたはたっぷりおあがりなさい。あたしのことは気にしないで。 ハンス おまえはうそをついている。目は暗く沈み、頬にはうれい。さあ、話してくれ、なんでも包みかくさず。 エルゼ とても言えないわ。こんな馬鹿なこと。心配かけるもの。女は愚かだなんて思わないでね。あさはかだなんて考えないで。こらえきれないこの衝動。切ないくらいに思いつめてる。 ハンス なんだって、おまえをたぶらかしてるのはどこのどいつだ。これからすぐにいって、首根っこをしめあげ、こうしてくれようか、それともこう・・・ エルゼ 勘違いしないでよ。そそっかしいったらないわ。あんたは正直者だけど単純なのがたまにキズね。15の年からあんたに夢中。ほかのだれも目に入らないの。 (ハンスの頬に口づけする) ハンス じゃあ、いったいどうしたんだ。 エルゼ (窓にかけよる) ほら、見てよ。 (ハンス、そばにいってやさしくエルゼの肩をつかむ) エルゼ なにが見える。 ハンス 何がって。 エルゼ あんたにはあれが見えないの。 ハンス つまらない畑が広がってるだけさ。 エルゼ (いらだたしげに)畑にはなにが植わってて? ハンス つまらない野じしゃが植わってるだけさ。 エルゼ つまらないだって? ハンス ああ、どこにでもあるラプンツェル。 エルゼ どこにでもあるラプンツェルですって つまらないラプンツェルですって あんたには見えないの その目は節穴なのね。 あんなに青々と葉をしげらせ おいしそうなにおいをさせている ああラプンツェル おおラプンツェル。 これまで見たこともないくらい ああラプンツェル おおラプンツェル とてもがまんできない ああラプンツェル おおラプンツェル 切ないくらいに思いつめてる 切れ切れの 時の彼方から わたしを呼ぶのはだれ 七色の虹のかけはし 思いをこめて ああラプンツェル おおラプンツェル おまえの愛の声が胸にひびくの ハンス ラプンツェルが食べたいだって? だけどあれは魔女ゴテルの畑。だれも近づけない。入ったら、すぐに殺されてしまうだろう。 エルゼ わかってるわ、魔女の畑だってことぐらい。だからよけいに食べたくなる。それが人間ってもの。もう、気が狂いそうなの。青々とした葉の一枚でも口にいれられたらねえ・・・。 ハンス そんなに思いつめてちゃ、お腹の子にさわるってものだ。さあ、少しゆっくり休んだらどうだ。 (ハンス、エルゼの肩に手をあて上手のドアを開ける) (エルゼ、隣室へ) (呆然と窓の外を見つめつづけるハンス) 野じしゃたちの歌 ああラプンツェル おおラプンツェル さあいまこそ ラプンツェル わたしを食べたいだろう 誘惑のあまいにおい おまえの心惑わす ああラプンツェル おおラプンツェル おまえはとても がまん出来ない さあラプンツェル おおプンツェル 闇の中から 声が聞こえる 闇の中から 呼ぶのはだれ (だんだん小さくなる) 第2景 農家の一室(前と同)。風の吹き荒れる音。 (上手のドアからエルゼが入ってくる。はだし。足どりが乱れている。錯乱した様子) エルゼ ハンス、ハンス。いないわ。どこ、どこに行ったのかしら・・・まさか。 (ドアがばたんと開き、嵐の吹き荒れる音とともにハンスが入ってくる) エルゼ ハンス。どこに行ってたの。 ハンス しーー。 (エルゼに近寄りながら袋の口をあける) エルゼ それはもしかして。 ハンス そうだ。 エルゼ ラプンツェル! (もどかしげに袋の中から、ラプンツェルを次々に取り出す) なんて、おいしそうなの。青々としたラプンツェル。 これも、これも。 ハンス ああ、みんなおまえのものさ。 (エルゼ、興奮したようすでお勝手で野じしゃを洗い、皿に盛る。テーブルに乗せ、塩をふり食べる) (ハンス、のぞきこむ。エルゼ、一人で食べ続ける) エルゼ あんたって、なんて素敵なの。頼りになって、勇気があって、そして。 ハンス ああ、おまえのためなら泥棒だって・・・ エルゼ (叫ぶ)泥棒だって・・・盗んだのね。魔女の畑から。 あたしに食べさせるため。 ハンス ああ、おまえに食べさせるために。 エルゼ こわい。なにか恐ろしいことが起こりそう。 ハンス 俺たちは同じ穴のムジナ お日様の下で けなげに働いてきた けれどこの過ち 消すことなど出来ぬ かたぎのハンスは昨日でおしまい 今日からおれは泥棒 二度と戻れない 日を避けて暗いすみかにひそむ みんなおまえのため エルゼ 罪を犯したあたし 食べたいといった自分を憎むわ。 愛が罰せられる なぜ、あんな言葉を 汚れたこの口、この手を消してしまいたい 信じられない 食いしん坊のあたし ごめんなさいハンス この罪は消えない。 野じしゃたち (小さく) かたぎのハンスは消えた 正直者のハンスは消えた 罪におびえる哀れな子羊 第3景 (ドアが自然に開き、魔女が立っている) ハンス うわぁぁぁ (あわててドアを閉める。ドア、また自然に開く) (魔女が部屋に入っている) 魔女ゴテル 匂うねえ。何を食べてたんだい。 エルゼ (慌てて皿をうしろに隠し) いいえ、何にも。 魔女ゴテル ウソお言いでないよ。その皿をお出し。くんくん、ああ、こりゃあ、あたしの畑のラプンツェルに間違いない。盗んだんだね。いったい、どういうつもりなんだい。あたしが丹誠込めて育てたラプンツェルだよ。 ハンス、エルゼ めっそうもない。 魔女ゴテル ちゃんとわかってるんだ。あたしが特別の肥料をやって育ててるのさ。ほら、南の国の果物の匂いがするだろう、ああ、フルーティーなこの香り。 (袋からたくさんのラプンツェルを取り出す) さあ、意地汚いおまえの女房にもっと食べさせてやるがいい。そのあとで、たっぷり後悔するがいい。 食いしん坊の報い 悔やんでも悔やみきれないこの愚かさ 人間なんてそんなもの 女なんてそんなもの 人間なんて虫けら以下よ いくら泣いてももう遅い いくら悔やんでももう遅い。 食いしん坊の報い たっぷり思い知るがいい。 ハンス、エルゼ (たじたじとなって、匂いを嗅ぐ) たしかに。 魔女ゴテル ああ、はははははー。引っかかったね。白状したようなものさ。フルーツの香りのするラプンツェルだって。そんなものあるわけがない。 ハンス、エルゼ (顔を見合わせる) どうぞ、お許しください。二度といたしません。 ハンス お願いです、女房はつわりがひどくて、何も食べられないんだ。 ただ、ただ、畑のラプンツェルが食べたいと・・・。 魔女ゴテル みーんな、あたしのものさ。食べたいからって、盗んでいいと思ってんのかい。泥棒は死ぬんだよ! さあ、こっちへおいで、ハンス。森のオオカミに食べさせようか。それとも真っ赤な毒キノコでひと思いに・・・。 (ハンス、エルゼ手をついてあやまる) ハンス 命ばかりはお助けください。なんでもします。 毎日、皿洗いに、草取り、畑をたがやし、牛のように働きます。 エルゼ お願い。ハンスの命を奪わないで。もともとは、あたしが悪いんだ。 魔女ゴテル ふーん、なんでもすると言ったね。 ハンス、エルゼ はい。 魔女ゴテル それなら、(エルゼの腹をじろじろ見る) あんたのお腹から、産まれてくる赤ん坊をもらおう。それでどうだい。 エルゼ それだけは。あたしたちの大事な赤ん坊です。 魔女ゴテル だったら、ご亭主の命をもらうよ。それがいやなら赤ん坊をよこすんだ。 わかったね。赤ん坊が産まれる日には必ずここにやってくる。 忘れるんじゃないよ。 (魔女、立ち去る) (ハンス、エルゼ、悲嘆にくれて泣く) 第4景 室内の隅にベッド。窓の外は激しい嵐。 寝間着を着て横になるエルザ。隣に産まれたばかりの赤ん坊。赤ん坊の泣き声。ベッドのはしに腰をかけ、赤ん坊とエルゼを見守るハンス。 いきなり一陣の風とともにドアが開き、魔女が入ってくる。 二人はっとして振り向く。 魔女ゴテル
女の子が産まれたようだね。祝福してあげよう。あたしの可愛い娘や。 さあ、とっとと赤ん坊をよこすんだ。 (激しい雷鳴の音。稲光。エルゼ、悲嘆にくれながらおくるみにくるんだ赤ん坊を差し出す) エルゼ 早く連れていって。この子の顔を見てるとつらいんです。 (魔女、うなずきながら赤ん坊を受け取る) 魔女ゴテル ふーん、南十字星のような目をしている。刈り入れまぎわのトウモロコシのような髪。なんて、きれいな女の子なんだ。 名前は、野じしゃ、そうラプンツェルがいい。 さあ、いこう、ラプンツェルや。おまえは今日からあたしの娘。魔女ゴテル様がたっぷり可愛がってあげるからね。 (魔女、赤ん坊に頬をすり寄せながらゆっくり立ち去る) (野じしゃたちのかすかな歌声が聞こえる) 野じしゃたち ああラプンツェル おおラプンツェル あの子は魔女の娘 (ハンス、エルゼ、抱き合って泣く) |
新作オペラ「ラプンツェル」3幕
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第2幕 第1景 (森の中。木々の向こうに塔が建っている) 野じしゃたちの歌 ラプンツェルは、はや17歳 月さえも 恥じてうつむく美しさ 生まれたときから魔女の娘 本当の父さん、母さん知らず 炊事、洗濯、水くみと、魔女のためにせっせと働く ああ、かわいそうな娘 この子にあわれみを あの美しさ 黄金の髪 朝の光受けて きらめく小川のように 目をいる光の束となり肩に波打つ ああラプンツェル おおラプンツェル あの子は魔女の娘 (王子と従者が歩いてくる) 従者 王子様、私はもう一歩も歩けません。 王子 歩かないなら、森に置いていくまでだ。 きっと、夜になればオオカミどもがエサの匂いを嗅ぎつけて、うようよやってくるだろう。 従者 王子様、意地悪は言いっこなしですよ。 だいたい、王妃様の言いつけを守らずに、お城を抜け出して森の中を探検してみようなんて言い出したのは王子様なんですから。まったくなんて深い森なんだ。くそったれめ。 王子 まったくこの国の森は暗い。 従者 まるでわたしの頭のなかのようです。 王子 おまえは、良いヤツだが愚かだ。そして、森は神秘に充ちた世界だ。 従者 私には人間のいる世界のほうがましです。 王子 まったく俗物そのものだな。 従者 俗物でけっこうです。あ、王子様、あの木と木のあいだを、今、黒いものが駆け抜けていきましたよ。 王子 母親と子供のキツネだよ。狩りの練習をしてるのさ。 従者 くわばら、くわばら。わたしはてっきり、森に棲む悪い妖精かと思いましたよ。 王子 だいたいおまえは怖がりすぎなんだ。 (後ろを向き、顔の上に葉の付いた枝かぶせてふり返る)あ、ははははっは。 従者 ひぃいいいいい。王子様、驚かさないでくださいよ。 王子 まったく、どうしようもないな。あははははっはは。 従者 王子様はお人が悪い。 王子 し、塔だ。だれかいる。 (塔の上の窓からラプンツェルの顔がのぞく) 王子 ああ、なんて美しい娘なんだろう。あんなところに。 ラプンツェル 小鳥たちよ、手のひらにお乗り 小鳥たちよ 窓のそばにお出で こちらにきて手のひらにお乗り パンくずをあげよう おまえたちは自由 空かけまわり 広い世界を知っている あたしにどうぞ教えておくれ 塔の外には何があるの 小鳥たちよ 手のひらにお乗り そして歌っておくれ この世のありったけの幸せ どうか教えておくれ 愛について ラプンツェル 愛、愛ですって。なぜそんな言葉を思いついたのかしら。 (走り寄ろうとする王子。引き留める従者) (ラプンツェルは塔の中に姿を消す) 王子 美しい娘さん、君はだれなんだ。待ってておくれ。すぐにそこに行くよ。 (王子、壁を登ろうとして滑り落ちる) 従者 王子様、おやめください。けがをされますぞ。 王子 どこかに、塔の入り口はないのか。 従者 (塔を一回りする) これだけ探してもネズミ一匹入れそうなすき間も見つからない。あの娘はどうやって上ったのだろう。まさか、鳥になって空から舞い降りたんでは・・。 王子 馬鹿なことを言うな。必ず入り口があるはずなんだ。もっと頭を使うんだ。 従者 王子様、どうぞおやめください。この塔はどこか怪しゅうございます。だいたい森の中にこんな塔が立ってること自体妙です。魔物の住みかかも知れません。もし、そうならどんな厄災がふりかかってくるか知れたものではありません。 王子 どんな災難だって構うものか。喜んでそれを受けよう。あの娘に会うためなら。 従者 ひーー。 (おびえながら指さす)あれですよ、あれー。 (魔女がほうきに乗ってやってくる) (王子、従者の首をつかむように、あわてて木の陰にかくれる) 魔女ゴテル やれやれ、やっと塔が見えてきたよ。 (ほうきに)さあ、さっさと進むんだよ。なんて能なしなんだ。 おや、ごめんよ。すねたのかい。;;;;まったくおまえときたら、ロバより鈍重で、蛇より気むずかしいときてるんだから。 おまえの背中に乗ってたら、夕方になっちまうよ。 あたしはいじわる魔女ゴテル だれも知らぬ者はない この世はあたしの思うまま ほうきにのって空かけ回り 疲れりゃわが家が待っている (魔女、ほうきから降り、塔の下に歩み寄る) 魔女ゴテル (塔の上に向かってささやくように) ラプンツェルやラプンツェル おまえの髪の毛下げとくれ (塔の上の小窓からするすると金色の髪が降りてくる。ゴテル、髪を伝わってのぼり塔の中に姿を消す) 王子 流れる黄金の髪。なんて美しいんだ。あんなものを使って塔を上るなんて。 第2景 (魔女ゴテルとラプンツェルの声のみ) (王子と従者は塔の下で塔を見上げている) 魔女ゴテル (塔の上からかすかに) さあ、娘や中におはいり。窓のそばからできるだけ離れてるんだ。 ラプンツェル お母さん、もう少し小鳥の声がききたいの。 魔女ゴテル この世は悪にみちている。娘や、さあ中におはいり。 ラプンツェル (ぐずぐずと)りんごの木に白い花が咲いたのよ。エニシダの花も満開・・・ 魔女ゴテル 娘や。言うとおりにするんだ。これ以上、ぐずぐず言うと、おしおきだよ。 たったひとりで、オオカミのいる夜の森につかいに出すよ。 ラプンツェル (震えながら)こわいわ。お母さん、二度とそんなこと、口にしないで。 魔女ゴテル わかったとも。さあ中にお入り。あたたかいスープはできてるかい。あれがなによりの楽しみでね。おまえとふたりじゃがいもにバターをそえて、ラプンツェルのサラダもたっぷり ああ、こたえられないおいしさ。喉がなるわ。 野じしゃたちの歌 ラプンツェルは、はや17歳 月さえも恥じてうつむく美しさ 本当の父さん、母さん知らず 生まれたときから魔女の娘 炊事、洗濯、水くみと 魔女のためにせっせと働く ああ、かわいそうな娘 この子にあわれみを 第3景 王子 金色の蛇のような髪 恥じらう横顔 娘さん、君はだれなんだ もうなにも考えられない これが恋というものなのか あの清らかさ 流れる黄金の髪 朝の光受けてきらめく 小川のように 空にかかる月よ 星よ 僕の心をわかってくれ あかつきの光が あざやかに照らし出す ぼくの切ない思い もしも願いがかなうなら 森の木々よ 草よ 愛してると伝えておくれ 黄昏のもやいの中で きみをまた思い出す あの清らかさ 流れる黄金の髪 ああ 僕の心の叫びをどうか聞いてくれ 王子
(名残惜しそうに塔を見上げて) きれいな娘さん、明日もきますよ。またお目にかかりましょう。 陽が沈み、陽が昇り、美しい顔がまた朝日の中に輝くのを僕は見るだろう。 露にぬれた白い花のように。明日まで待てるだろうか。 月を見ながら一晩中君を思ってるよ。 (王子、去る。従者、慌ててあとを追いかける) |
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第2幕 第4景 魔女の家の中、エプロンをして汚い身なりで働くラプンツェル。 魔女ゴテルがやってきて、がみがみとしかりつける。 魔女ゴテル さあ、ここの床をもっときれいに磨くんだよ。洗濯はすんだのかい。何しろあたしは、きれい好きなんだから。 ラプンツェル はい、お母さん。 魔女ゴテル おや、少しはましになったじゃないか。 ラプンツェル はい、お母さん。 魔女ゴテル 埃なんて落ちてはいないだろうね。 ラプンツェル はい、お母さん 魔女ゴテル 湯はわいてるかい。たっぷり用意するんだよ。 世界一美しい魔女、ゴテルさまが湯につかるのさ。 ラプンツェル はい、お母さん。 魔女ゴテル 石鹸はあるだろうね。それからいい匂いのする薬草にカミツレ。 魔女の美貌をたもつ おまけに若さもたもつ 魔女がみにくいなんてだれが言ったの ガマのような ぶつぶつ顔のおばあさん やつらのハナをあかしてやるわ ゴテルさまの美貌に 世界中がひれふすのよ さあ、おいで、かわいい娘や。 ラプンツェル はい、母さん。 魔女ゴテル、ラプンツェル 娘や、手をお出し(魔女) はい、母さん(ラプンツェル) なんてすべすべした手なんだろう(魔女) 顔をよく見せて(魔女)。 はい、母さん(ラプンツェル) アザミのような澄んだ目、野ばらのように可憐な唇(魔女) さあ、今度は髪をとくんだよ。さあ、ぐずぐずしないで(魔女) はい、母さん(ラプンツェル) (ラプンツェル、かぶっていた頭巾をぬぐ。黄金の滝のように流れ出す髪。 魔女、目がくらみ2、3歩あとずさりする) 魔女ゴテル (まぶしそうに顔をおさえる)もういいよ。そんなものさっさとおしまい (ひとりごと)なんて、きれいな娘なんだ。まるであたしが嫉妬してしまうほどだ。野茨のような頬。グミのような唇。そして、あの黄金の髪のといったら。あの娘は、だれにも会わせやしない。 魔女ゴテル じゃあ、あたしはこれから湯をあびてくるよ。 その間に、皿をきれいに洗っておくんだよ。汚れ一つなく、鏡のように顔がうつるほどにね。 ラプンツェル はい、お母さん。 魔女ゴテル 一生この塔の中で、あたしの小間使いとして働くのさ。あ、はははは。それがラプンツェルを食べたものに対する呪いというものさ。 (せっせと皿を片付けるラプンツェル。終わると床をほうきではく) 野じしゃたちの歌 ラプンツェルは、はや17歳 月さえも恥じてうつむく美しさ 本当の父さん、母さん知らず 生まれたときから魔女の娘 魔女をお母さんと呼ぶ 炊事、洗濯、水くみと 魔女のためにせっせと働く 魔女ゴテルのために ああ、かわいそうな娘 この子にあわれみを (身だしなみを整えた魔女ゴテルが現れる) 魔女ゴテル じゃあ、あたしは出かけてくるからね。 (髪をおろすラプンツェル) 魔女ゴテル いいかい、決して塔から出てはいけないよ。 (ラプンツェル、髪をおろす。魔女、髪を伝って下におりる) 第5幕 (王子と従者、塔の下にやってくる) 従者 どんな災難が、降りかかってくるやもしれませんぞ。 王子 喜んでそれを受けよう。あの娘に会うためなら。 従者 王子様、あなたはすっかり狂ってしまわれてる。 王子 ああ、そうさ。狂おしいほどにあの娘に恋をしてるんだ。 従者 ああ、王妃様がどんなにお嘆きになるでしょう。 王子 しいい。(塔の下に走りよる) 王子 ラプンツェルや、ラプンツェル、おまえの髪の毛さげとくれ(囁くように)。 ラプンツェルや、ラプンツェル、おまえの髪の毛さげとくれ(じょじょに大きく)。どうか、頼むから。 ラプンツェル お母さんのお帰りだわ。 (ラプンツェル、窓のそばに来て気のない様子で髪を下ろす) 王子 ああ、降りてきた。娘さん、いまのぼっていくよ。待ってておくれ。 (王子、登り切り、塔の中へ) ラプンツェル あ、あなたはだれなの。 王子 娘さん、どうかこわがらないで。怪しい者じゃないんだ。 一目見てから、君に恋してしまったんだ。 ラプンツェル 恋してる? 王子 そうなんだ。塔の下で君を見てからね。ちょっとだけ、話をきいてくれないか。それがすんだら突き落とされてもいい。だから目をそらさずに僕を見ておくれ。 昨日君は、小鳥に話しかけてただろう。いったい何を話してたの。 ラプンツェル それは・・・ 王子 それは・・・ ラプンツェル 寂しくて、たまらないから、だれかに話しかけたかったのよ。夕方になるといつもそうなの。あたしはなぜここにいるのかしら。どうしていつも一人なのかしら。だれか友達がほしいわ、って。 王子 娘さん、君はなぜここにいるの。不思議だと思ったことはないかい。あんな魔女とたった二人で。 ラプンツェル お母さんのことを悪くいわないで。 王子 ごめんよ。君のことが可哀想になったんだ。外の世界を見てみないかい。僕なら君を外に連れ出せる。 ラプンツェル 外の世界を・・・。わからない。お母さんが、「塔から決して出てはいけないよ。外には悪者ばかりだから」って。 王子 外は素晴らしいものだらけさ。君は、魔女にだまされてるんだ。 ラプンツェル 外の世界に・・・。どうしてそんなにあたしに優しくしてくれるの。 王子 それは・・・君を愛してしまったからさ。 青いまなざし 初めて君を見たときから心は震え 麗しい姿追い求めてきた 野に咲く花よりもなお可憐なその姿 夜ごとまたたく月に光る石 胸さわぎする青いまなざし 何かの意味を込めて僕を見つめる もうほかのなにもほしくはない ああラプンツェル おおラプンツェル どうぞ怖がらないで 愛してると言ってくれないか ラプンツェル あなたは、お母さんとは、ずいぶん様子がちがうのね。すらりとした体。たくましい胸。 それにあなたの目は、晴れた日の空のような色をしている。 そして、あなたの口はなんて好ましい形をしてるんでしょう 王子 それは、君にあえたうれしさに、笑っているからさ。 ラプンツェル 笑う? 笑うってどういうこと? 王子 君は笑ったことがないの。 ラプンツェル あるかもしれない。ないかもしれない。 でも、いまはわかる。あなたを見ていると、自然にほころんでくるこの口。 あふれる胸の思い。何かを歌いたくて、むずむずしてくるの。 王子 それを愛という。 ラプンツェル 愛。愛する?愛する? わからないわ。まだひとを愛したことがないから。 小鳥が歌いたくなるようなもの?それが愛してるってこと。 でも、あなたはすぐに消えてしまうのかしら。 王子 ずっとここにいるよ。君のそばに。 ラプンツェル さっきから心臓がどきどきしてるの。胸から飛び出しそうだわ。あたしは病気なのかしら。 王子 君が僕を愛してるからさ。 ラプンツェル あなたこそ奇跡 あなたを見てると胸がしめつけられる あなたがいれば、なにもかも変わる あなたこそ奇跡 バラ色の世界 震えながら見てるわ 灰色にぬりこめられた世界に住んでいたの そうじ洗濯いやではないけれど ときどき手をとめ考えていたわ なにかが訪れて世界がすっかり変わる 信じられない こんな日がくるなんて うれしいけど怖い、あなたに会わなければ あなたこそ奇跡 バラ色の世界 震えながら見てるわ 王子 そうなんだ、それが愛。 ラプンツェル これが愛・・・ (二人、抱き合う) 王子 ああ、きみはなんて美しいんだ。 暗転
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第2幕 第6景 (塔の上、王子とラプンツェルが寄り添い合って立っている) 王子 今日もきてしまった。ラプンツェル、美しい人よ。僕は君に会わずには一日も暮らせないんだ。 ラプンツェル あ、小鳥が鳴いてるわ。 王子 小鳥なんてめずらしくないよ。それよりそばに座っていてくれないか。君の頬にもういちど口づけさせてほしいんだ。 王子 君はやわらかい頬をしている。 ラプンツェル あなたの目は空のように青く澄んでるわ。あ、小鳥が逃げてしまう。あたしのお友達。 王子 僕より小鳥のほうが大事なのかい。 ラプンツェル 小鳥たちはあたしの友達なのよ。この塔しか知らないあたしに 話しかけてくれたのは、小鳥たちだけだった。
小鳥たちよ、手のひらにお乗り
小鳥たちよ 窓のそばにおいでパンくずをあげよう おまえたちはなんて自由なの 空かけまわり 広い世界を知っている あたしにどうぞ教えておくれ 塔の外には何があるの 小鳥たちよ 手のひらにお乗り 歌っておくれ この世で一番素晴らしいもの 教えておくれ 愛について ラプンツェル 愛、愛・・・ああ、あたしはもうそれをしってしまった。 でも、愛って悲しいものね。あなたが、帰るときには いつも胸がはりさけそう。 なぜ、いつもいっしょにいられないのかしら。 (王子、うなずく) 王子 別れは愛し合うものにとって百倍の苦しみ。 ラプンツェル あなたがここを去って、永遠にもどって来ない気がするの。 (王子、ラプンツェルを抱きしめる) 王子 はなれられるわけがない。 僕たちはいつも一緒だ。永遠に。 ラプンツェル 永遠に・・・。 (王子、歌う)
これまで生きて
これまで生きて初めて 理想の娘に出会った喜びというより哀しみがおそう 愛とはこんなもの まことの愛とはこんなもの 愛を知らず干からびていたこの胸にうずく 小さな芽生え それが希望というなら なんて悲しいもんなんだ ともにあの橋をわたろう 愛は変える すべてを変える 引き返しはしない。 王子 ここを出ていっしょに暮らさないか。 ラプンツェル でも、どうやって。どうやって降りたらいいの。 あなたはあたしの髪につかまって降りられる。けれど、自分で自分の髪につかまって降りられるわけがない。 王子 それが問題なんだ。 ラプンツェル そうだわ。あなた、ここに来るたびに絹のひもを持ってきてください。編んではしごをつくりましょう。できあがったら、きっとここから降りられます。 王子 絹の糸。 ラプンツェル ええ、じょうぶな絹の糸。 王子 わかった。お安いご用だ。 ラプンツェル 外の世界に出られるのね。 王子 ああ、そうだとも。ふたり一緒に。 僕たちは一生離れずに暮らせるんだ。 (ふたり、抱き合う) 第7景 (王子、塔から降りて森の中を歩いている) (従者が近づいてくる) 従者 王子様、待っておりましたよ。 いつ、あなたがもどってくるかと、草の上ではらはらしながら待っておりました。 王子 来ていたのか。 従者 王妃様が心配しています。日ごと夜ごと、あなたさまがお出かけなので。 おお、あなたは恋をするものの目をしています。あの娘があなたを狂わせたのですね。 王子 黙らないか・・・あ、すまない。 少し静かにしていてくれ。僕は混乱してる。自分でも自分がわからないんだ。 従者 さあ、あちらへ。馬をつないでおきました。 第8景 (声のみ) 魔女ゴテル ラプンツェルや、ラプンツェル、 おまえの髪さげとくれ。 ラプンツェル はい、お母さん。
(塔の中)
魔女ゴテルどうしたんだい。今日はやけに降ろすのが遅かったじゃないか。 ラプンツェル はい、お母さん。 魔女ゴテル さあ、さっさと、湯を沸かして風呂の準備をするんだよ。 魔女ゴテル どうしたんだい。どうしてそこにぼーっと立ってるんだい。 ラプンツェル どういうわけかしら。 お母さんをひっぱりあげるのは王子様よりずいぶん重いわね。 王子様は、瞬きする間もなく上ってらしてよ。 魔女ゴテル なんだって、いまなんてお言いだい。 ・・・この罰当たり目。 ラプンツェル いいえ、なにも。 魔女ゴテル なんだってそんなに震えてるんだい。 ラプンツェル それは、お母さんの顔がこわいからよ。 魔女ゴテル おまえだけは、世間からすっかり引き離したつもりだったのに。 いつのまにか、あいつめとつるんでたんだね。 魔女ゴテル 恋に狂った女は母親を裏切ることだってしかねないさ ああ、そうさ。昔あたしがそうだったように 女はいつだって健気 悪魔に身も心もささげた サタンめを愛してしまったから ただの人間の女から こちらの世界に身を売ったのさ 魔女に成り果てたあたし 女はいつだって健気 あたしはいつだって健気 悪いのは男よ 悪いことならなんでもやる ひとをあやめることもへいき あのひとの喜ぶ顔が見たいから 女はいつだって健気 あたしはいつだって健気 悪いのは男よ 魔女ゴテル さあ、お嬢ちゃん。ここへきて何もかも洗いざらい話すんだよ。 あんたをだまくらかしたのがどんな男かってことを。 ラプンツェル (震えながら)いいえ、そんな人いません。 魔女ゴテル おまえは嘘をついている。 ラプンツェル (震えながら)いいえ、嘘なんてとんでもない。 魔女ゴテル ちゃんとわかってるのさ。おまえのその顔、その体。震えてるじゃないか。嘘つきと裏切りのバツは知ってるだろうね。 (魔女ゴテル、ラプンツェルの長い髪を腕の中にたぐり寄せ、はさみで切る) ラプンツェル お母さん、ごめんなさい。どうぞお許しください。 魔女ゴテル いや、許すわけにはいかないね。 おまえはこれから荒れ野にいって、一人で暮らすんだ。 それが恩知らずの罰ってもんさ。さあ、来るんだよ。 ラプンツェル ああ、王子様。 (暗転) 第9景
翌朝。魔女ゴテルは塔にとどまり外の声に耳を澄ませている。 (しばらくして) 王子 ラプンツェル、ラプンツェル。 魔女 (ラプンツェルの声音で)あなた、待ってましたわ。 (ラプンツェルの切った髪をするすると下ろす) 王子 ラプンツェル、すぐ行くよ。 魔女ゴテル (ラプンツェルの声音で) あなた、早く、早く登ってきてね。 王子 もう、ちょっとだ。 魔女ゴテル もっと、もっと早くよ。 (王子、見上げて、魔女に気づきはっとする) 王子 おまえは・・・ 魔女ゴテル いまごろ気がついたのかい。もう遅いんだよ。さあ、ここがあんたの墓場さ。 (小刀で髪を切る。王子、地面に転落する) (王子、ふらふらと立ち上がる) 王子 ああ、見えない。何も見えない。ラプンツェル、おまえはどこにいるんだ。 魔女ゴテル 目が見えなくなったんだね。ざまあ、見ろ。 王子 暗闇だけが僕の前にある。ここはどこなんだ。苦しみの門の入り口なのか。 (よろよろしながら手探りで森の中へ去る) |
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第3幕 第1景 野じしゃたちの歌 ラプンツェルは はや19歳 月でさえ 恥じてうつむくその美しさ 本当の父さん、母さん知らず 魔女は娘を荒野に置き去りにした 手は荒れ果て、金色の髪はくすみ 王子に会える日だけを待っている 後悔に胸ははりさけ、悲しみが身をさいなむ 愛の記憶だけを頼りに生きる ああ、かわいそうな娘 この子にあわれみを あの美しさ 輝く黄金の髪 目をいる光の束となり肩に波打つ (森の中。目の見えなくなった王子、杖をつき、ぼろぼろの服を着てふらふらと歩いている) 王子 ラプンツェル、おまえはどこなんだ。 待っててくれ、いま行くよ。 森の木たち なんだって、王子が来たって? あれが王子だって。 ウソお言いじゃないよ。 王子は輝くばかりの美丈夫 アポロンだって真っ青 あんな姿のいい人はいない。 あははは、あれは王子じゃないよ。乞食さ。 ほーら、乞食さん、そっちじゃないよ。 ふらふらしないで、まっすぐ歩くんだ。 王子 ああ、なにも見えない。 ラプンツェル。君はどこなんだ。もし聞こえるなら返事をしてくれ。 第2景 (木の枝を杖代わりに、足をひきずりさらに森の奥に踏み迷っていく王子) (大きな木の前でばたりと倒れる) 王子 もう一歩も動けない。 僕はここで死ぬのか。この木の葉が死の寝床に、この木が僕の墓石になるだろう。ラプンツェル、見ることがかなわないなら、せめて君のやさしい声をもう一度聞きたかった。 小鳥の声 チュルルル。 王子 ああ、小鳥が鳴いている。まるで少女の歌声のようだ。 おーい、小鳥さんたち、待ってくれ(立ち上がる)。一人にしないでくれ。 遠くから歌声(じょじょに大きくなる)
小鳥のように
小鳥のように歌いながら 悲しみかくし顔をまっすぐにあげて暮らしてきたの 王子 あ、あちらからも。いや、あれは小鳥じゃない、人間が歌ってるんだ。 なんて透明な澄んだ声だ。命が清められるようだ。 歌声つづき ずっとあなたを待っている 聞こえるかしら そばにいたら返事をして あなたに会うまで くじけはしない 両手のなかに抱く幼子 命にかけてまもるの あなたとあたしの愛のきずな かけがえのない命 ああ、あなたはいまどこに 恋しい人よ どうかご無事で 王子 この声は・・・ (茂みの奥からラプンツェルが現れ、王子を見て立ちすくむ) ラプンツェル ・・・ 王子 もしかして、そこにいるのはラプンツェルかい。 (ラプンツェル、走りより王子の手をとって自分のほおに押し当て、ぽろぽろと涙をながす) 王子 これは・・・涙なんだね。(ラプンツェルの手をにぎりながら、その手を自分の目に当てる)。きみの涙はあたたかい・・・。 あ、これは。見える、ラプンツェル、君の顔が見えるよ。夢じゃないだろうね。きみは・・・ ラプンツェル あなたは・・・王子様 (王子 君は・・・ラプンツェル) (二人の声、同時に) 王子 ああ、ラプンツェル。 もう会えないかと思っていた。 ラプンツェル あたしも。 王子 もう一度よくおまえの顔を見せてくれ。 (はっとして) 髪はどうしたの? ラプンツェル 森の妖精にあげてしまったわ。妖精たちは七色の光の織物をつくってるの。でもただひとつ金色の糸が足りないのですって。あたしの髪をとても喜んでくれて、お礼にと、赤ん坊に牛の乳をくれたのよ。 王子 赤ん坊だって。 ラプンツェル ええ、そうよ、あなたにそっくりな双子の男の子。 王子 ひょっとして。(うなずくラプンツェル) ラプンツェル あたしとあなたの子供。僕たちは、パパとママになったんだね。あははは、なんて愉快なんだ。 (ラプンツェル、両手に二人の赤ん坊をかかえてきて王子の腕に) 王子 この子たちは君にそっくりだね。 ラプンツェル いいえ、あなたに瓜二つ。 王子 あはははは。 ラプンツェル 二人に似たあたしとあなたの子供。 王子 幸せになろう。 第3景 (一陣の風が吹き抜けていく。はっとする二人) (魔女ゴテルが、ほうきに乗って飛んでくる) 魔女ゴテル 見つけたぞ。ここにいたのかい。ラプンツェルを連れていこうったってそうはさせないよ。 王子 きょうこそおまえをやっつけてやる。 魔女ゴテル ひひひひ・・・めしいた身であたしを倒そうっていうのかい。 (ほうきが槍にかわる) (王子杖がわりにしていた剣をかまえる) 魔女 さあ、かかっておいで。 (ふたり戦う。魔女たじたじとなる) 魔女 おまえは、おまえは、目が、目が見えるんだね。 王子 ああ、そして僕は国一番の剣の使い手だ。 (魔女たおれる。魔女に剣をつきつける王子) 魔女ゴテル ラプンツェルや、ラプンツェル。あんたのママのことを哀れんでおくれ。 あんなにおまえを愛して育てたんじゃないか。 ラプンツェル 王子様、おかあさんを助けてあげて。どんなにひどい女でもあたしの母親にはちがいないわ。 (振り向く王子。そのスキに、魔女ゴテル、王子の剣を奪う) 魔女ゴテル あ、はははは。油断したね。二人まとめて血祭りにあげてやる。二人であの世でゆっくりおねんねしな。 ラプンツェル お母さん。お願い王子様をささないで。 魔女ゴテル だれがあんたの母さんのものか。生まれてすぐにあたしが奪い去ったのさ。あんたのほんとうのお母さんはね、もうとっくにあんたのことなんて忘れてるよ。 ラプンツェル なんですって。あたしのほんとうのお母さん。 (従者が木の陰からそっと現れる。後ろから魔女の体にロープをかける。 王子と二人で魔女をしばりあげる) 魔女ゴテル なにをするんだ。ええい、こんな綱などあたしの魔法で・・・あ、あ、効かない。 従者 この綱は、森の妖精に特別に編んでつくってもらったもの。おまえの魔力でもほどくことはかなわない。 王子 これから森の中を永遠にさまようがいい。それが、二親から赤ん坊をうばった罪のつぐないだ。 (魔女ゴテル、よろよろと森の中にさまよい込んでいく) 第4景 (王子、プンツェルはたがいに抱き合い、そばに従者、ぼろをまといながら立っている) 従者 王子さまーー、やっと見つけることができました。わたくしめは、ずっとあなたさまのことをお探ししていたんですぞ(声をあげて泣く) 王子 泣いている場合じゃない、さあ、しゃんとするんだ。 これからラプンツェルの本当の親をさがすんだ。 ラプンツェル あたしの本当のお父さんとお母さん。 (王子、ラプンツェル、赤ん坊を抱き見つめ合う) 王子 ああ、そうだとも。僕たちの結婚式に出てもらうために。これから国に帰って婚礼の準備だ。世界一美しい后と、二人の息子たちのために、おめでとうといってくれ。 従者 (赤ん坊を受け取り大事そうにだく) おお、なんという幸せ・・・(赤ん坊が激しく泣き出す。あわてる従者。大笑いする王子とラプンツェル) 王子、ラプンツェル
いつかきっと
いつかきっと幸せになると信じていた金色の長い髪 色あせても 二人の願いは 永久(とわ)に たとえ引き離されても 道にまよっても いつか必ず会えると信じていた 二人の願いは 永久(とわ)に ああラプンツェル おおラプンツェル 命かけてまもる 幕
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