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汗を垂らしながら踏切を渡ったところだった。
トオルは反射的に身体をかがめ、首をすくませた。 影は暗く、大きい。 見上げると巨大な鳥が空を覆い、翼は視界からはみ出るほどだった。 両翼は何キロも隔てられ。 コウモリのような爪。 ボロボロと翼から落下する、小山のような、しかし遥か小さく見える岩石たちの落下音。 トオルは救いを求め、 周りを見回した。 しかし街は静寂に包まれ、 人っ子一人いない。 翼の風切り音。 こぼれ落ちたがいにぶつかる岩の破砕音。 せめて鳥の視線から、 トオルは逃げだしたかった。 だが空を覆う巨大な鳥はトオルを逃さなかった。 一瞬静寂が訪れた。 えんげする鳥が見えた。トオルは身を委ねる。 と、 開かれた口から、火球が轟音と砲口と共に発射される。 始めてトオルは行動した。 大気が揺らぎ、 空がパチパチ鳴る。 ともかく逃げる。 ゆっくりと、しかし確実に火球がトオルに迫る。 何をしても逃れられないのだろう
トオルはともかくも走り出した。
全速力で、トオルは走る。
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