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火球 ケータイ投稿記事

汗を垂らしながら踏切を渡ったところだった。

トオルは反射的に身体をかがめ、首をすくませた。
影は暗く、大きい。

見上げると巨大な鳥が空を覆い、翼は視界からはみ出るほどだった。

両翼は何キロも隔てられ。
コウモリのような爪。
ボロボロと翼から落下する、小山のような、しかし遥か小さく見える岩石たちの落下音。

トオルは救いを求め、
周りを見回した。

しかし街は静寂に包まれ、
人っ子一人いない。

翼の風切り音。
こぼれ落ちたがいにぶつかる岩の破砕音。

せめて鳥の視線から、
トオルは逃げだしたかった。

だが空を覆う巨大な鳥はトオルを逃さなかった。
一瞬静寂が訪れた。
えんげする鳥が見えた。トオルは身を委ねる。

と、
開かれた口から、火球が轟音と砲口と共に発射される。
始めてトオルは行動した。

大気が揺らぎ、
空がパチパチ鳴る。

ともかく逃げる。
ゆっくりと、しかし確実に火球がトオルに迫る。
 
何をしても逃れられないのだろう
 
トオルはともかくも走り出した。
全速力で、トオルは走る。

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見る夢の実体 ケータイ投稿記事

懐疑が夢を、現実へと誘った。

フェンスによじ登り、鉄条網越しに旋回し黒に乱反射するヘリを認めた時、
記憶が作動したらしい。

この電線には高圧電流が流れている。

その後どうやって、フェンスを乗り越えたかは、記憶がきれいさっぱり間引いた。

次の瞬間ぼくらは、壁際に身を伏せていた。

建物の陰に回り込む時間はなかった。

歩兵がサブマシンガンを抱え、辺りを警戒しながら近づいてきた。

彼らとぼくらを隔てるものは、尖った建物の、影の陰影のみ。

歩兵が何事か騒いでいる。

そしてとうとうぼくらは彼らに、発見された。

ここで目が覚めた。

或いは覚めたという記憶ごと、夢の一部なのかもしれない。

水を飲んだ気がする。

ただその時ぼくは、まるで今もターゲットにされたままのような、
砂を噛みしめ続けるような、
イヤな感覚に捕らわれられたままだった。

だから寝床に潜り込むとすぐに、無意識はぼくに夢の続きを見せた。

そんなにすぐに、ぼくがレム睡眠に到達しえたのか、
わからない。

ぼくの無意識は、夢の結末をぼくに、どうチョイスし見せたか。

サブマシンガンで一斉掃射される直前、相手は横からこめかみをヒットされ、人形のように横に転がった。

歓声が上がる。

次は後ろの奴。
次は先に、ヘリの操縦士をいってみよう。

実態のないスナイパーが、的確にピンポイントをヒットする。

宿り主に不快を与えたと自覚した無意識は、落としどころを探し、斯様に意識に披瀝した。

現実にかえって、
消えかかっていた夢を、もう一度この様にコトバで手繰り寄せてみると、ズルズルと鮮やかな光景の記憶が、次々と鮮明に蘇る。

あれっ、コレじゃ、現実の記憶と、何一つ変わらないじゃないか。

そう、
もしかしたら蓄積された記憶すら元々、このようにセルフィッシュなものかもしれない。

さすれば、
現実とは?

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教科書〜ウォッチ ケータイ投稿記事

不勉強な学生だった。

特に高校生時代。

つまらない授業中は、見ず聞かずに寝ているか、弁当を食っているか、本を読んでいた。

ただ学年代わりの時期になると、国語の教科書だけは、楽しみに授業が始まる前に、目を通すのが通例だった。

収録されている小説はまず、ハズレがなかった。

小僧と神様

山月記

走れメロス



等々。

いわゆるレトリック。
今でもぼくのそれは、
現代国語の教科書体験が、
ベースの一つになっている気がする。

中でも、時々、強烈に思い出す、
小作品がある。

数ある教科書体験のなかでも、
最も印象深い小昨品は?
と問われれば、その小昨品がダントツだ。

ただ残念ながら、題名がどうしても思い出せない。
今では、題名を思い出す努力はもう、放棄してしまっているが。

それは、アメリカのFRONTIER時代。
開拓者の、生活を紹介したものだった。

星が瞬きを失う前に起きる。
外は強烈な冷気。
時折風と、鶏の声と、牛の気配を背に、火のそばで、座りまどろみからゆっくりと身体が、起き上がってくるのを待つ。
夜露をしのぐ天幕のはためき。

女衆が鍋の蓋をあけ、整然と並ぶ蒸したポテトに、チーズを振りかける。
ホクホクのポテトの香りがます、眠気を払う。

天幕の下から、コーヒーの香りが、四方に発散される。

パンが焼けてきた。
すると女衆が、火にフライパンをかざしラードを落とす。

この頃には身体は目覚め、視線はフライパンに釘付けになる。
そして…。

鍋にベーコンが放られる。
ジャーと鳴り、飛び散る飛沫と、香り。
隣に卵が落とされる。

腹が必ずグウと鳴る。

そして…。

バターがタップリ染み込んだパンに焼きたてのベーコンを乗せ、かぶりつく。

咀嚼が終わる頃、コーヒーをすすり、芋に塩を振ってかじりつく…。

このシーンを迎えるたびに、溢れる唾液を抑えられない。

実はその後、どんなコトバが紡がれ、
何が書いてあったか?
覚えてはいない。

ありふれた一日が、
書いてあったような気がする。

ただぼくには、
その朝食が、
この上なく魅惑的で、
この上なくぜいたくなものに、
感じられたのだ。

ベーコンという、
サシの多いバラ肉の燻製を、
食べるに最もふさわしい、
シュチエーションと、
この上ないロケーション。

いつしか…

いつしか、記憶には香りが付与され、
風にハタメク天幕には緑の色が、
平原の先に見える山から吹きおろされる風が、
鍋からは焼けたベーコンの香りが、鼻腔をくすぐるようになった。

実体験を超えてしまった読書体験。

それらの感触を、
さらに確かめたくて今、
ぼくはコロラドにいる。

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脈動〜ウォッチ ケータイ投稿記事

疲れた・・・。

しきりに彼が言い出した。
それはそうだよね。
帰宅は毎晩、24時を過ぎてるもの。

帰るとフロに飛び込んで、
ザーッと湯が溢れる音が、銭湯のように反響してくる。

その音は、日増しに大きく長く、いつまでも続く。

おかしいな〜
お湯の量はいつも一定のはずなんだけど…

空に近い湯船に足し湯して入ると、固い茶色い剛毛が浮くようになるし。
ベランダへ出るドアに平行して寄せたベッド。

寝入った彼のイビキは、長くゴウとうなり、持ち上がる布団は小山のようだ。

部屋の電気を消して、ワタシは床からその小山を眺めた。
月明かりがすごくキレイだ。
「いおう、いあえあぁぁ〜」
「なに?」
「におうって言われた」
「ねえ、コトバが不明瞭だよ」
「グルルゥゥ〜、スカピィ〜〜」
「ダレに言われたの?におうって」
「となりに座っているオンナの子」
「で、どうしたの」
「たべようかとおもった」
「ダメだよ、たべちゃ!」
「…」
「休むの?」
「う〜」
そしてふとんがゆっくり盛り上がる。

しばらくしたら、小山が裏返った。

目の前に足が突き出される。

くっさ〜〜

酸っぱい尿の臭いっていうの?
そしてキノコが生えてきそうな臭いがまじって。

見ると、風呂に浮いていた剛毛が、ところどころのすね毛に、生え代わってる。

なんかヘンだわ。
彼、ヘン。

さっきは、肉、焼かずに食べちゃったのよ。
お腹減ったんだね。
お箸も使わずにさ〜
ガブリって、
飲んじゃった。

そういえば…
そういえば彼、最近まったく出かけなくなった。
寝ては起きて、グルルゥゥ〜と歩き回る。

なんかね〜
もう無理なんじゃないかな〜?
何がって?

う〜ん

全て!

この狭さ
この距離とか
この家。
この空間が。

ほら起きた。
と思ったら、
決意して、こちらを向いた。

あれ、
目が、
血走ってる。

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肘打ち男〜ウォッチ ケータイ投稿記事

大きな音がした。
女は、誰かまた倒れたのかと思い、前かがみになって、車両を見渡した。
割と混んでいる。
誰も倒れてないし。
特に変わりも、ないし。
視線を戻す瞬間、ドアを挟んで右斜め前に座る若い男と目があった。

一駅が過ぎ、女に睡魔がにじり寄ってきた。
瞼を閉じる瞬間、また音がした。

女はそれを目の端で、はっきり見ていた。
先ほど目が合った男が、座席の端に据え付けてあるアクリル板に、すごい勢いで肘打ちを入れるところを。

見たにも関わらす、女は閉じかけていた瞼を開け、反射的に男を見てしまった。

また、目が合った。
血走った、コワい目だった。

そのまま女は、硬く瞼を閉じた。

眠れない。
鼓動が鼓膜の下あたりで、小太鼓を叩いている。
眠気がとんだ頭で、女の思考は勝手に駆け出した。

おかしい。
ヘン。
危ないよ。
きけーん。
前の乳母車、赤ちゃん入ってるじゃない。
若夫婦、固まっちゃってるよ。
って、きけーん。
これ、
"君子危うきに近寄らず"だよね。
あたしだけは、そんな目には、合わないって皆、思ってるんだよね。
それで、やられちゃうんだ。
これ、カンが働いたってやつだよね。
よし、動こう。
逃げようっと。

女は次の駅で、ドアが開き乗降が終わった瞬間、立ち上がって電車を降りた。

女は小走りにホームをかけると、後ろ車両の扉が閉まる瞬間、また電車に乗った。

割と空いていた。
隣の車両に続くドアに、おそるおそる目をやる。
男の姿は見えない。
座るとすぐ女は瞼を閉じた。

電車が新小平のトンネルに入った、

「ガシャン」
ヘンな音が混じった気がして女の意識が湖面に浮上する。

「ダン」
肘打ちの音が、すぐ前から響き、女の身体が踊った。

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