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経済はだれにでも分析できる。そして、国内の政策や世界の外交・安全保障・軍事も経済を通してその真偽を見抜ける。
http://www.sankei.com/premium/news/170527/prm1705270006-n1.html
2017.5.27 10:00
【田村秀男のお金は知っている】トランプ大統領の信認低下が景気を壊す
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米国の株価と個人消費の推移
 トランプ米政権は23日、議会に2018会計年度(17年10月〜18年9月)予算教書を提出した。米国の予算は政府ではなく議会が作成と決定権限を持つ。このため「デッド・オン・アライバル」(教書は議会に到着した途端に死ぬ)と称されるが、新大統領が議会を動かす絶好の機会だ。今回は議会に到着する前に、死に体になっている。「期待感なき予算教書」(23日付ウォールストリート・ジャーナル電子版)とみなされる始末である。(夕刊フジ)

 理由は、トランプ大統領が外遊中でワシントンに不在であるばかりではない。米連邦捜査局(FBI)のコミー前長官の罷免をきっかけにした「ロシア・ゲート」疑惑などトランプ大統領への信認が揺らぎ、オバマ前政権の医療保険制度改革(オバマケア)の撤廃、大型減税、大規模なインフラ投資など、政権の目玉となるべき政策や予算項目の実現が怪しくなっているからだ。そんな不安から、昨年秋の大統領選以降、続いてきた株式市場の熱狂「トランプ・ラリー」は冷える一方だ。

 気掛かりなのは経済全般へのマイナスの影響だ。米景気は08年9月のリーマン・ショックの1年後には底を打ったが、その後しばらく回復速度が遅かった。昨年から次第に力強さが出てきている。政権への信頼性の喪失とともに失速しかねない。

 グラフは、米株価と個人消費の推移である。米個人消費は株価への感応度が極めて高いことが見て取れる。統計学の手法である相関係数を毎年末までの10年間単位で算出してみると、13年末以降は一貫して0・7を上回っている。相関係数は最大値が1だが、0・7以上は相関関係が極めて強いと判定される。日本の場合、株価と個人消費の相関係数は極めて低い。アベノミクスが始まった12年12月以降でみても0・27だ。相関関係がほとんどない水準である。

 米国の個人消費は株価によって左右される。株価が上がれば個人は財布のヒモを緩めて消費に向かい、株価が下がれば消費を我慢する。米国の国内総生産(GDP)の7割は個人消費が占め、同6割程度の日欧をしのぐ。米景気は株価動向で決まるのだ。

 気になるのは日本を含む世界への影響だ。米株価に牽引(けんいん)されてきた世界の株価はすでに上昇基調が崩れているのだが、米実体景気が減速するようだと、世界経済の楽観ムードが怪しくなる。消費税増税による需要減からようやく回復してきた日本経済も例外ではないだろう。

 今後の景気の最大の鍵になるのは、米株価であり、その株価を動かすのはトランプ大統領の政策への信頼性だろう。トランプ氏がロシア・ゲートの重苦しい霧を解消させる、外交で大成果を挙げる、あるいは低水準の世論の支持率をぐいと押し上げる起死回生策に成功すれば、議会への影響力を強めて政策の実現可能性を高め、市場の評価を取り戻せるのだろうが、まだ見通し難だ。(産経新聞特別記者・田村秀男)

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http://www.sankei.com/premium/news/170520/prm1705200022-n1.html
2017.5.20 10:00
【田村秀男のお金は知っている】習近平氏による党と中国企業のための「一帯一路」 追従する米欧の愚


「一帯一路」参加国のGDP推移
 今週初め、「一帯一路サミット」と称する国際会議が北京で開かれた。「一帯一路」とは習近平中国共産党総書記・国家主席が唱道する欧州、中東、アフリカ、中央アジア、東南アジアを陸と海のインフラで結びつける経済圏構想だ。(夕刊フジ)

 会議では習氏が合計7800億元(約12兆8000億円)のインフラ整備資金を追加拠出すると表明した。同構想の推進を自身の権力基盤固めの手段にしているだけに、習氏はロシアのプーチン大統領らの出席者に気前のよいところをみせた、というところだろうが、ちょっと待て。そんなカネをどう捻出するのか。

 通常、海外向け投融資はドル建てで行われる。プロジェクトを実行する国も受注企業もドルを選ぶからだ。7800億元はドル換算で約1100億ドル相当だ。中国の外貨準備は3兆ドル、世界一の規模であり、その一部を充当できるから問題ない、と見る向きもあるだろうが、外貨準備は無きに等しい。中国の外準は対外負債4・6兆ドル、すなわち外からの借金によって支えられている。最近はかなり落ち着いてきたが、中国はことし初めまで巨額の資本逃避に悩まされ、外準は急減してきた。習政権は資金流出を食い止めようとして、企業や個人の外貨持ち出しを厳しくチェックしている。習氏が外貨を大盤振る舞いできるはずはない。

 そこで、追加資金の内訳をよくみると、大半は人民元である。インフラ投資基金を1000億元増額、政策投融資機関である中国国家開発銀行と中国輸出入銀行が合計3800億元を融資、大手国有銀行が人民元建ての3000億元規模の基金を設立するという。何のことはない。党が支配する中国人民銀行が人民元を刷って、国有銀行が融資すればよいだけだ。

 この手口は本来、国内向けに限られてきた。2008年9月のリーマン・ショック後、党中央は人民銀行に命じて人民元を大増刷させ、国有銀行には融資を一挙に3倍程度まで増やさせた。その結果、国内のインフラや不動産開発投資が活発化して、世界でもいち早く不況から立ち直り、高度成長軌道に復帰した。同じ手を今度は「一帯一路」沿線国・地域に使おうという魂胆だ。
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 ではだれがそんな資金を受けとるのか。上記の通り、外国企業は「ドルでよこせ」と要求するだろうが、中国企業なら人民元で構わない。グラフの国内総生産(GDP)を見ても、融資を受ける国の経済力は弱く、人民元でなくてもカネは欲しい。人民元建て債務返済に縛られる政治的代償を払う羽目になる。

 「一帯一路」とは、習氏の「党による党と中国企業のため」のプロジェクト、ビジネスモデルなのだ。

 それでも欲に目のくらんだ欧米企業は北京詣でに余念がない。欧米メディアによれば、米国のゼネラル・エレクトリック(GE)、ハネウエルやドイツのシーメンスなどは主契約者が中国企業でも、その下請けで受注できると踏んでいるというが、ちょっと情けない。(産経新聞特別記者・田村秀男)

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【田村秀男の日曜経済講座】株価にかかる靄の正体 「血気」なき企業が停滞招く
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 米国をはじめ、世界の株価は国際政治情勢の激変をものともせずに上げ潮に乗っている。欧州市場は昨年6月の英国の欧州連合(EU)離脱決定に震撼(しんかん)させられたことをすっかり忘れている。韓国株式市場は北朝鮮の軍事挑発を平時のごとくみなして沸き立つありさまだ。

 ならば、日本の株式市場の展望も良好となるはずだが、いまひとつすっきりしない。うっすらとした靄(もや)がかかったままなのだ。「日経平均株価2万円の壁」を引き合いに出して、そう見なすわけではない。投資家心理というものはうつろいやすいもので、表面的な相場のありさまに振り回されてはならない。

 トランプ米政権の円安警戒はどうか。確かにこれまで日本の株価は円安で高くなり、円高で下がってきた。それでも、トランプ大統領が円高・ドル安に向け、「口先介入」したところで、効き目はつかの間だ。トランプ氏の保護貿易主義もドル高要因だ。トランプ政策目玉の大型減税やインフラ投資計画が米議会で受け入れられれば、米景気回復にはずみがつき、海外からのドル資産買いが急増し、ドル高、すなわち円安に振れるだろう。ただ、政治的イベントが引き起こす市場現象が長続きするはずはない。

 「日本株の靄」は、株式市場を支える土台から発しており、短い期間で一掃できない、根深い構造要因である。グラフは、1980年代後半のバブル経済期以降の金融業を除く日本企業全体の税引き前利益、設備投資動向である。年ごとのデコボコをならして長期的なトレンドを浮き上がらせるために、各年までの10年分を合計し、各年のその値の10年前との増減額をグラフ化した。

 判明したのは、2002年までは経常利益増加額以上の設備投資が増えていたが、03年以降は逆転し、05年以降は設備投資が10年前の水準を下回る点だ。対照的に、経常利益は急増し、その増加幅はバブル期をしのいでいる。

 節目になった02、03年には小泉純一郎政権(当時)の構造改革路線による株主重視型の米国型資本主義への移行が始まった。90年代のバブル崩壊期に企業収益減と連動して株価は下落を続けてきた。企業は設備投資を抑制して、リストラを進め、収益力の回復に努めたことがうかがわれる。その結果、株価は持ち直したが、08年9月のリーマンショックのあおりで急落し、底をはった。12年12月発足の第2次安倍晋三政権によるアベノミクス開始後、株価は異次元金融緩和に伴う円安と企業収益増とともに急速に持ち直した。

 日本の株価は上述した通り、円相場動向に振り回される。企業収益は大幅に改善しているのに、株価を押し上げる決定要因にはならない脆弱(ぜいじゃく)さがつきまとう。それこが現在の株式市場の実相である。

 よくよく考えてみれば、もたつく株価は嘘をついているわけではない。経済実体を反映している。資本主義国家のダイナミズムは本来、「アニマルスピリッツ」(血気)と呼ばれる企業家の設備投資意欲から生まれる。現代経済学の祖、J・M・ケインズの「一般理論」が説く世界では、投資に伴う予想収益率が高く、しかも金利が低ければ、血気が企業者の間に沸き起こるはずなのだが、今の日本では設備投資を見送り利益を増やして株主におもねる企業が大多数を占める。

 国内景気は、ここにきてようやく14年4月からの消費税増税によるデフレ圧力が和らいでおり、一部業種では人手不足が深刻化している。株価は上がって資産家は潤っても、景気には無縁、賃金は上がらず、格差社会だ。庶民感覚からすれば好景気の実感はない。事実、実質経済成長率は16年で1%に過ぎない。企業は依然として正規雇用者に対する賃上げに慎重だ。設備投資をせず、利益の内部留保を増やす経営姿勢がそうさせるのだ。

 投資不足は、日本産業力の縮小均衡を意味する。製造業の場合、高収益を稼ぎ出している企業が多いとはいえ、肝心の国内では成長部門への投資が後回しにされている。米ウエスチングハウス(WH)の大型買収に余剰資金をつぎ込んだ東芝のように、買収した海外子会社で巨額の損失を出す失敗例は少なくない。

 米国はどうか。本グラフと同様の手法で10年単位で企業利益と設備投資をチェックしてみたら、リーマン後から利益増加額が設備投資を上回っている。日本と違うのは、投資は増勢基調を持続している点だ。企業家の血気は衰えてはいない。米株価が上がるのも無理はない。

(編集委員)

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【田村秀男のお金は知っている】日米おびき寄せる習AIIBの振る舞い 虚構に過ぎない世界最大の外準…「救いの手」出すADBのナゼ

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アジア開発銀行の主要国別融資残高
 借金王Cが突如、借入先のA銀行とそっくり同じビジネスモデルのI銀行をつくった。「当銀行は資金不足でお悩みのみなさんの需要に応じます。A銀行よりも有利な条件で貸しますよ」と。(夕刊フジ)

 A銀行は「Cさん、それならあなたに貸したカネをそっくり返済してください」と要求するかと思いきや、「Cさん、あなた自身もおカネに困っているからI銀行をつくるのですね。わかりました。もっと貸してあげますよ」と返事した。

 そればかりか、信用力も審査能力もなく、看板のうえで閑古鳥が巣くうI銀行に、「それじゃ私たちのお客さん相手に、協調して貸し出しましょう」と救いの手。I銀行の頭取はこうして、大ボスのCに対し、「早くもこれだけの成果を上げました」と報告し、Cを大いに喜ばせた。

 こんなお人よし銀行が実在する。ドラマの一幕が4日、横浜市の「パシフィコ横浜」で演じられた。第50回アジア開発銀行(ADB)年次総会である。

 もうおわかりだろう。A銀行とはADB、Cとは中国の習近平国家主席、I銀行とはアジアインフラ投資銀行(AIIB)のことで、横浜でもっとも尊大に振る舞い、大々的に自己宣伝したのは中国代表の肖捷財政相である。肖氏はAIIBを先兵とする中華経済圏構想「一帯一路」推進のための関係国首脳会議(14日、北京)への参加を日米などADBメンバーに強く求めた。

 とはいえ、AIIBには上述した通り、カネは欲しいが出したくない国ばかりが集まる。世界最大の貸し手である日本と、国際金融市場の元締めである米国が参加していないために、信用格付け機関がそっぽを向くので、市場で債券発行できない。

 そこで習政権は最近、もっぱら猫なで声で、「一帯一路は参加国みんなの繁栄のためで、中国のワンマンショーではありません」と呼びかける。4月7日の米中首脳会談では、習国家主席がトランプ大統領に参加を促し、日本に対しては親中派の二階俊博自民党幹事長に働きかけると同時に、世耕弘成経済産業相に一帯一路会議招待状を送付した。中華経済圏でのインフラ受注の利権をちらつかせて日米をおびき寄せる魂胆だ。

 世界から集めたカネで中国周辺のインフラ建設を進め、中国国有企業が受注するという実態が丸見えで、この3年余りの一帯一路プロジェクト1600件以上に47社の国有企業が関与している。

 3兆ドル(約340兆円)規模の世界最大の外貨準備を保有しているから、中国の資金力に不安はないと見る向きもあるが、その外準なるものは4・6兆ドルの対外負債、すなわち借金に支えられる虚構に過ぎない。しかも、中国からの資本逃避は昨年で7000億ドル以上にのぼった。

 習政権が強気でいられるのは、財務官僚上がりの中尾武彦ADB総裁の対中融和姿勢のおかげだ。ADBの融資先では中国が最大で、AIIB設立後も借り入れは膨らんでいる。トランプ政権がADBの増資を拒否するのも無理はない。(産経新聞特別記者・田村秀男)

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http://www.sankei.com/premium/news/170429/prm1704290007-n1.html
2017.4.29 10:00
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【田村秀男のお金は知っている】日本以上に株式上昇 韓国「金正恩バブル」はちょっと気味悪い


韓国株価とウォンの対ドル相場の推移
 嵐は来ないと見込んだうえでの狂宴なのか。嵐とは朝鮮半島有事のことで、北朝鮮の朝鮮人民軍創建85年の記念日の25日は当面の「Xデー」とみられていたが、核実験もミサイル発射もなく、日韓の株価が跳ね上がった。(夕刊フジ)

 同日に限らず、メディアが連日、緊迫したニュースを流しているのにマーケットに重苦しさはみられない。日本がそうなるのは「平和ぼけ」の表れといえなくもなさそうだが、首都ソウルが北緯38度線からわずか40キロメートルしか離れていない韓国の方では、日本以上に株価が上昇し続けているのには、正直驚かされる。

 韓国の場合、朴槿恵(パク・クネ)前大統領が罷免、訴追という異様な政治状況が続く。5月9日に投票が予定されている大統領選挙では北朝鮮寄りの発言を繰り返す左派系最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)氏が最有力候補になっている。「親北」だからといって、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が核やミサイルを韓国にぶっ放さない、攻め込まないという保証は全くない。不可解だ。

 韓国経済界を代表するサムスングループの事実上のトップ、李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長や幹部4人が贈賄、着服などの容疑で起訴されている。やはり財閥大手のロッテグループは中国市場から締め出しを食らっている。

 米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備に反対する中国が、その用地を提供したロッテを狙い撃ちにした。韓国向け旅行ツアーの停止など、北京からの韓国に対する「経済制裁」はロッテにとどまりそうにない。

 グラフは、今年初め以来の韓国総合株価指数と通貨ウォン相場の日ごとの推移である。1月6日に北の4回目の核実験、2月7日には核弾頭搭載用長距離弾道ミサイルの発射実験と挑発が続いたが、株価は下がらない。

 代わりに目立ったのはウォン安だ。ウォン安とともに株価が上昇気流に乗ったのは3月初めで、3月6日に北京がロッテの23店舗の閉鎖を命じても、総合株価下落は一瞬だけだった。以来、株価が下がるときはウォン相場が上がったときだけである。国内総生産(GDP)に対する輸出比率が約42%(日本約16%)にも上る韓国は通貨安が企業収益や経済全体を押し上げる度合いが極めて高い。従って株価が上がるのも無理はないように見えるが、ちょっと待てよ。

 トランプ政権の剣幕に押されて習近平政権が北朝鮮から譲歩を引き出し、緊張緩和に進む情勢に転じた場合どうなるか。有事不安の中で行き過ぎたウォン安は是正されてウォン高に転じる。すると韓国の景気や株価にはマイナスだ。

 皮肉な見方をすれば、韓国経済にとっては、中国が米国の圧力を適当に受け流す結果、北のならず者が居座り、緊張が長引くほうが好ましいということになりやしないか。でもその場合の株価は「金正恩バブル」、ちょっと気味悪い。(産経新聞特別記者・田村秀男)

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