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経済はだれにでも分析できる。そして、国内の政策や世界の外交・安全保障・軍事も経済を通してその真偽を見抜ける。
2018.8.11 10:00
【田村秀男のお金は知っている】円高リスクを招く黒田日銀 追い込まれると横文字に頼る「エリート」http://www.sankei.com/premium/news/180811/prm1808110004-n1.html
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日米実質金利差と円相場
 小賢しい「エリート」は追い込まれると、往々にして横文字に頼る。日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁が7月末の金融政策決定会合後に強調した「フォワードガイダンス」もその例である。直訳すれば「金利の先行きの指針」で、従来の低金利維持のためだという。(夕刊フジ)

 そもそも中央銀行による金融政策というものは、洋の東西を問わず当面の市場金利の誘導を目的としている。あえてカタカナで言うのは、真の狙いを隠すためではないか、と疑いたくなる。

 黒田総裁はガイダンスについて、「当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持する」と説明。「現状維持」と言えば済むはずだが、横文字を引っ張り込んだ以上、あまり知られたくない変数を紛れ込ませていてもおかしくない。「“悪魔”は細部に宿る」。総裁発言をチェックすると、現在はゼロ%前後に誘導している長期金利を0・2%まで上昇してもよい、というくだりが見える。

 償還期間10年の国債利回りを基準とする日本の長期金利は、米金利上昇の影響を受け、市場では先高観が漂っている。そんな中で、一般的な融資よりも国債の運用に頼るメガバンクは収益悪化に遭遇し、日銀に対し不平不満たらたらだ。そこで、日銀は「これからは金利上昇の余地あり」というシグナルを送った。が、建前はあくまでも「現状維持」である。

 日銀は白川方明(まさあき)前総裁時代末期の2013年1月、安倍晋三政権との間で脱デフレに向け、物価安定目標と称する2%のインフレ率実現の共同声明に署名した。安倍首相はその早期達成を確約する黒田氏を高く評価し、同年3月に日銀総裁に抜擢(ばってき)した。ところが、黒田日銀はそれに失敗し続け、2期目に入っても2%達成の意欲が見受けられない。

 デフレ圧力が続く原因は14年4月からの消費税増税で、増税実行に向け安倍首相の背中を強く押したのは財務官僚上がりの黒田氏である。増税に伴う景気への悪影響は金融政策でカバーできるが、増税しない場合の金利暴騰リスクには対応できない、と論じ首相をビビらせた。増税の結果、アベノミクスは失速、デフレ圧力が再燃した。

 黒田氏はその後、マイナス金利導入に踏み切るなど「異次元緩和」を追加してきたが、不発続きだ。2%達成を無期限延期せざるをえないのは、財務省の増税路線に黒田氏が肩入れしたためだ。

 異次元緩和によって、唯一成果が認められるのは超円高の修正だ。グラフは、長期金利からインフレ率を差し引いた実質金利の日米金利差(米国分マイナス日本分)と円ドル相場の推移である。異次元緩和開始当初は日本の急速な金利低下に従って円安局面に転じたが、消費税増税後は物価下落とともに日米金利差が一挙に縮小し、円安傾向が止まり、現在に至る。

 日銀がこのまま金利の上昇を容認し、デフレ圧力が去らない場合どうなるか。黒田総裁はしきりに「海外からのリスク」を口にするのだが、円高リスクには対応できそうにない。(産経新聞特別記者・田村秀男)

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2018.7.28 10:00
【田村秀男のお金は知っている】貿易戦争、韓国は中国の道連れに…「トランプ弾」中国金融市場を直撃

中国、韓国の株価と通貨の対ドル相場
 中国に対するトランプ米政権の制裁関税は中国の金融市場を直撃、このトランプ弾の破片が真っ先にどこに飛び散るかチェックしてみたら、韓国である。政治・経済両面で中国に従属度合いを高めている韓国は対米貿易戦争で窮地に立つ中国の道連れになる運命なのだろうか。(夕刊フジ)
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 グラフは、中韓の株価と人民元、韓国ウォンを指数化し、最近までの推移を追っている。5月21日(月曜)を基準日としたのは、前週末の18日(金曜)にワシントンでの米中交渉が決裂し、貿易戦争懸念が高まったからだ。以来、人民元、上海株とも下落が止まらない。ウォンは人民元と同調する形で下落し、韓国株価総合指数も上海株価総合指数に共振して下がる。

 上海株が下がるのは、対米輸出が大きく減り、企業収益が悪化するとの懸念の高まりによる。中国当局は輸出減退を食い止めるため、人民元の下落を容認するしかないが、市場介入によって小幅な変動にとどめ、急落は避けたい。他方で、景気の下支えのために、金融緩和する結果、元売り圧力は高まるばかりで、下落に歯止めがかからない。資本逃避も加速しつつあり、海外からの借り入れによって外貨準備を維持するしかない。元安で対外債務負担は増える。中国はトランプ弾によるショックを回避できないのだ。

 中国経済に対し、韓国はかなり深く浸かっている。韓国の対中輸出は全輸出の25%を占め、国内総生産(GDP)の1割弱に相当する。日本の対中輸出のGDP比は2・7%、米国の場合は0・7%に過ぎない。米国と日本の株価に上海株下落の影響がほとんどみられないのは当然だ。

 問題はこれからだ。トランプ政権は中国からの輸入品に対し、2000億ドル分について追加関税を発動する準備を進めているばかりでなく、さらに3000億ドル分も上積みして、対中輸入すべてに高関税をかけると示唆している。トランプ弾が巨大化するに従って、中国の金融市場は崩落危機が高進しかねない情勢だ。グラフが示す通り、これまで韓国当局はウォン相場を人民元に連動させてきた。ウォンの対人民元相場が安定すれば、対中貿易がやりやすい。また、対ドル相場が同一幅で下落すれば、輸出市場での中国製品との競合が不利に陥らずに済むからだ。

 人民元急落に付き従えば、とんでもない災厄に見舞われる。韓国が依存する海外投資家はウォン安を嫌う。外資が韓国市場から手を引くと、韓国は外貨危機に陥りかねない。下手すると、1997〜98年のアジア通貨危機の再来になる。韓国が最後に頼れるのは強い国際通貨円を発行する日本しかない。もとより人民元の中国はあてにならない。韓国経済界はもともと、自国の脆弱(ぜいじゃく)な金融事情を踏まえ、日本との通貨スワップ協定復活を熱望してきたが、韓国政府は政治的面子を意識して日本への要望を避けてきた。文在寅(ムン・ジェイン)現政権はどうするか。(産経新聞特別記者・田村秀男)

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検証 米中貿易戦争

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https://www.sankei.com/premium/news/180722/prm1807220010-n1.html
2018.7.22 08:00
【田村秀男の日曜経済講座】米中貿易戦争の行方 「恐竜」中国直撃のトランプ弾
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 「米中貿易戦争」とかけて、米映画「ジュラシック・パーク」シリーズ第1作と解く。巨大な富と技術を持つ米国が昔、消滅した「中華帝国」という恐竜を再生、繁殖させたところ暴れ出し、封じ込めに転じるというのが、トランプ政権の対中強硬策だからだ。今、上映中のシリーズ最新作は、恐竜を再絶滅の危機から救おうとする物語のようだが、さて、眼下の米中ドラマはどうなるのか。

 2012年秋に中国の最高権力者となった習近平氏は「偉大な中華民族の再興」を掲げた。25年にはハイテクの全面的な国産化を達成し、35年には国内総生産(GDP)で米国を抜いて世界一になる目標を立てている。軍事面でも南シナ海の岩礁を占拠して埋め立て軍事基地を建設している。ユーラシア大陸とその周辺までを包含する現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」をぶち上げ、高利の借款を供与してアジア各地で港湾などのインフラを建設し、相手国が払えなくなると“接収”する帝国主義路線だ。

 中国の膨張を支えてきたのは米国である。1990年代のクリントン政権は、中国をグローバル経済に取り込むとして、世界貿易機関(WTO)に加盟させ、輸出の拡大機会を与えた。以来、歴代政権はこの路線を踏襲し、2008年9月にリーマン・ショックが起きた後は中国の貿易黒字拡大の加速を容認してきた。その結果、どうなったのか、グラフを見よう。

 中国の発券銀行である中国人民銀行は自身が決める基準交換レートによってドルを買い上げ、人民元資金を発行し、国有商業銀行、国有企業、地方政府へと流し込む。生産設備や不動産開発など国内投資が盛んに行われ、経済の高度成長を実現する。最大のドル供給源は米国の対中貿易赤字である。その累積額は人民銀行資産を押し上げ、GDPの拡大と連動することが、グラフでは一目瞭然だ。

 この通貨・金融制度は西側資本主義国と決定的に異なる。日銀などの場合、金融市場から国債などの証券買い上げに合わせて資金を供給する。外貨資産はほとんどない。伝統的に紙切れの通貨を信用しない中国の人々は金またはドルを選好する。人民銀行の総資産のうち3分の2を外貨資産が占めるのも、人民元にはドルの裏付けがあることを誇示しないと、信用が失われるからだ。

 そこに対中制裁関税というトランプ弾が撃ち込まれる。今月6日の第1弾は340億ドルだが、間もなく160億ドルが追加されるばかりではない。トランプ大統領は2000億ドルの巨弾を用意しているばかりか、さらに3000億ドルも上乗せすると示唆している。制裁対象となる対中輸入は5500億ドルに上り、実際の輸入額5200億ドルを超える。トランプ氏は全ての対中輸入に高関税をかけるつもりなのだ。となると、中国の金融経済への衝撃は計り知れない。

 中国の国際収支(経常収支)黒字は1200億ドルにとどまる。対米黒字が大幅に減れば、中国の対外収支は赤字に転落するばかりではない。金融の量的拡大に支障をきたし、引き締めざるを得ず、従来のような高成長は不可能になる。不動産市場は崩落し、金融機関は巨額の不良債権を抱える。国内金融を維持するためには海外からの借り入れに頼るしかなく、「一帯一路」の推進どころではない。海外ハイテク企業買収も軍拡予算も冷水を浴びる。

 既に中国経済は減速しつつある。挽回策は人民元の切り下げによる輸出のてこ入れとドルの裏付けのない資金の増発による金融緩和だが、いずれも人民元の国内信用を損なわせる。当局が15年夏に、人民元を切り下げると、一時は年間ベースで1兆ドルの資本逃避が起き、外貨準備が急減した。以来、習政権は資本規制を強化し、日本人など外国人は中国から外貨を持ち出せなくしたが、それでも年間2000億〜3000億ドル規模の資本逃避が続いている。トランプ弾は弱り目にたたり目である。

 最近、北京発で独裁権力を握った習氏に対する党内の批判の高まりを示す情報が飛び交う。「米中貿易戦争」を受け、動揺する金融経済システムからみて大いにありうる話だ。

 冒頭の話に戻す。トランプ氏は「ジュラシック・パーク」シリーズ最新作のように恐竜中国の救出に向け、制裁の手を緩めるだろうか。それとも、習氏が白旗を上げるだろうか。拙論はいずれの筋書きも不可能だとみる。中国の膨張を止めるまでトランプ氏は譲らない一方で、習氏は強気で一貫しないと国内政治の立場が危うくなるからだ。

(編集委員)

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https://www.sankei.com/premium/news/180721/prm1807210006-n1.html
2018.7.21 10:00
【田村秀男のお金は知っている】米国への貿易報復は中国大衆の胃袋に跳ね返る 

米国の追加制裁に反発する中国の華春瑩副報道局長(共同)
 広東料理など、中国庶民の大好物といえば、鶏の足や豚の胃袋。筆者にとっても、とりわけ鶏足はグロテスクな見かけと違って、香辛料で味付けされるとゼラチン状になって、舌がとろける。それがここにきて、思わぬところで供給に支障をきたしかねない情勢になってきた。米中貿易戦争である。(夕刊フジ)

 今月6日、トランプ米大統領が知的財産権侵害に対する報復の第1弾として340億ドル分の対中輸入品に対して25%の追加関税を発動したのに対し、習近平政権はただちに同額の対米輸入品に同率の報復関税をかけた。

 報復品目には農産物が多く、大豆やトウモロコシが代表的だが、よほど品目探しに苦労したのか、鶏の足や豚の内臓まで加えた。いずれも米国内ではほとんど消費者に見向きもされずに、廃棄されていたのだが、巨大な中国需要に合わせて輸出されるようになった。習政権は、屑(くず)に値がついて、ほくほく顔だった米国の養鶏農家に打撃を与え、養鶏地帯を選挙地盤とするトランプ支持の米共和党議員への政治的メッセージになると踏んで、報復リストに加えたのだろうが、国民の胃袋も直撃される。

 どのくらいの量の鶏足が米国から対中輸出されているのかは不明だが、国連食料・農業機構(FAO)統計(2016年)では鶏の飼育数は中国の50億羽に対し、米国は20億羽に上る。そのうち約1割の足が中国向けだとすると、約4億本が中国人の胃袋におさまる。

 それに対して高関税が適用されると、輸入が減り、かなりの品不足に陥る。13億羽の鶏を生産するブラジルが代替源になるかもしれないが、増産態勢が整うまでには長い時間がかかるはずだ。すると、需給の法則で鶏足の値が上がることになる。

 中国人全体の食にもっと広汎で深刻な影響が及びそうなのは、もちろん大豆である。米国の対中大豆輸出量は昨年3300万トンで、同5000万トンを超えるブラジルに次ぐが、中国の国内生産は1400万トンに過ぎない。米国産は中国の大豆総需要のうち、約3割を占める。輸入大豆は搾って食用油になり、粕が豚や鶏の餌になる。米国の大豆産地が鶏と同様、中西部のトランプ支持基盤とはいえ、その輸入制限は、胃袋と家計を直撃する。

 折も折、中国経済は減速局面に突入し、上海株価の急落が続く。トランプ政権は10日には2000億ドルに上る追加制裁品目を発表した。中国の対米輸入1600億ドルを大きく上回り、報復しようとすれば対米輸入全品目を対象にするしかなくなる。

 17日付の産経新聞朝刊によれば、中国の国営メディアは習氏への個人崇拝批判を示唆、習氏の名前を冠した思想教育も突然中止されるなどの異変が相次いでいるという。米国との貿易戦争に伴って景気悪化で所得が下がるうえに、胃袋も満たせないと大衆の不満は募る。そこで独裁権力を強める習氏への党内の批判が噴出する気配だ。(産経新聞特別記者・田村秀男)

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