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2018.6.24 08:00
【田村秀男の日曜経済講座】米中貿易戦争、日本はどうする 毅然とトランプ政権に付け
知的財産権侵害をめぐり、7月6日に米トランプ政権が500億ドル相当の中国製品に25%の制裁関税を適用すれば、中国の習近平政権は同額の報復関税を同日から実施する。米国はさらに中国からの輸入品2000億ドルに追加制裁をほのめかす。米中貿易戦争がいよいよ本格化する。日本はどうすべきか。
米中が制裁と報復の応酬を繰り広げる中、上海、ニューヨークのみならず世界の株式市場がざわつく。世界の国内総生産(GDP)の22%相当を輸出または輸入が占める。2017年では、世界の輸入市場シェアは米国13%、中国10%強に上る(日本は4%弱)。米中合わせて世界全体の輸入市場の4分の1近くを占めるのだから、経済減速懸念は無理もない。
日本経済への影響はどうか。グラフを見ると、米中への日本の輸出総額は拮抗(きっこう)しているが、製造業国産化に執念を燃やす習政権は半導体などハイテクの輸入を抑え、莫大(ばくだい)な国家補助金を投じて国有企業をてこ入れしている。日本の半導体の輸出は圧倒的に中国向けが多いが、米国の対中輸入制限は日本の半導体メーカーにとっては対米輸出増のチャンスになりうる。中国向けには製造装置の輸出が増えるだろう。試されるのは企業の柔軟思考だ。
欧米日のメディアの多くが批判する先はもっぱら、貿易戦争を先に仕掛けたトランプ政権だ。代わりに、自由貿易ルール違反のデパートのはずの中国が擁護されるという皮肉な結果が生まれている。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のコラムニスト、マーティン・ウルフ氏はトランプ氏の対中国強硬策について、「米国が築き上げてきた貿易制度を支える非差別主義や多国間協調主義、市場ルールの順守といった原則に反する。米国は自分たちを恥じるべきだ」(FT5月9日付)とかみついた。
米メディアも、対中制裁関税が米産業界にとって打撃になるとしばしば警告する。トランプ氏は鉄鋼・アルミの輸入制限などに関し、同盟国や友好国までやり玉に挙げるため、「世界を乱す米国、危機に対応できるのか」(ウォールストリート・ジャーナル6月21日付)と自重を求める。
これらメディアは、先のカナダで開かれた先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)での、トランプ氏と欧州やカナダの首脳との対立を見て、「G7の亀裂」と大々的に取り上げた。その通りなら米国は孤立し、中国が漁夫の利を得る。「戦争」である以上、味方がいなければ敗北しかねない。
では、肝心のサミット宣言の貿易項目はどうなっているのか。「市場指向的ではない政策・慣行および強制的な技術移転又はサイバーによる窃取等の不適切な知的財産権の保護」「市場歪曲(わいきょく)的な産業補助金および国有企業による貿易歪曲的な行動」「鉄鋼の過剰生産能力」を問題視し、新たに強固な国際ルールを構築する必要性を強調している。名指しにこそしてはいないが、標的は中国だ。
ホワイトハウスが19日に発表した「米国と世界の技術・知的財産を脅かす中国の経済侵略」と題した報告書の骨子はG7の貿易宣言とほぼ同一内容だ。G7サミットは米国の対中観を反映し、「内輪もめ」は表面だけで水面下で中国に対する結束で一致したのだ。日本がとるべき道筋ははっきりしている。サミット宣言通り、中国の一連の不公正貿易慣行に対し米欧と共同歩調で厳しく対応することだ。
進め方に問題がないわけではない。サミット宣言は「国際ルール」を強調している。具体的には世界貿易機関(WTO)ルールということになるが、WTOはこれまでの中国の不公正慣行是正に無力だった。国際官僚が寄り集まったWTOがルールをいじったところで、ルール無視常習犯の中国を従わせることができるはずはない。強制力を持つ覇権国家の米国をもり立てることが先決だ。多国間ルールはあくまでも補完手段だ。
日本が対中関係悪化を恐れる必要はない。対米貿易戦争で窮地に立つ習政権は、日本をこれまで以上に重視せざるをえない。早い話、カネの面では、対外債務を急増させないと、外貨を確保できなくなっている。対米貿易黒字を2000億ドル減らせば、国際収支は赤字に転落しかねない。
輸出挽回のため人民元を切り下げると、巨額の資本逃避が起きる。習政権は日本との通貨スワップ協定締結を急いでいるが、金融市場危機に備えるためだ。安倍晋三政権はトランプ政権と対中戦略をすり合わせながら、毅然(きぜん)と習政権に対峙(たいじ)するだろう。
(編集委員)
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