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【正論12月号】特集・弾圧国家の恐怖 経団連は“中国信仰”を捨てよ 監視社会の国に利用されていいか 産経新聞特別記者・田村秀男

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※この記事は、月刊「正論12月号」から転載しました。ご購入はこちらへ。
 筆者がこれを書いている10月20日の時点では、25日から訪中する安倍晋三首相は習近平国家主席(共産党総書記)との会談で、カネ、技術、第三国でのインフラ・プロジェクトという広範な日中協力で合意する流れになっている。首相周辺の政官の親中派が、経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)ら経済界と足並みをそろえた結果だ。米国に限らず欧州、アジアも「巨大市場中国」の幻想から覚めつつあるというのに、日本だけが中国信仰にしがみついている。驚くべきことに、安倍首相と習主席の会談に合わせて合意する項目は、トランプ政権の対中封じ込め策に相反する内容も含まれる。トランプ政権の対中強硬策で窮地に陥る習政権の日米離反工作にまんまと乗せられるとは、危うい、危うい。

 ■米国の対中最後通告
 米中貿易摩擦がエスカレートする中で、事実上の対中最後通告だとも評されるのが、10月4日のペンス米副大統領のワシントン・ハドソン研究所での講演だ。
 その主なポイントは、(1)習政権の先端技術国産化計画である「中国製造2025」は技術の窃盗や知的財産権侵害を伴う(2)習氏の進める中華経済圏構想「一帯一路」はマネーパワーを駆使した「債務外交」であり、海外のインフラを接収して軍事基地化する(3)中国は米国のIT(情報技術)を利用して市民監視を徹底するネットワークを整備、「オーウェリアン・システム」を構築しようとしている、である。
 オーウェリアンとは、英国の作家、G・オーウェルが小説「1984年」(1949年)で全体主義国家による市民監視社会の到来を予見したことにちなむ用語。習政権はITネットに人工知能(AI)技術を組み合わせて、情報の検閲システムを高度化し、中国の一般市民ばかりでなくチベット、新疆ウイグルなどの少数民族を弾圧、さらに米国、日本を含む全世界を監視対象に組み込みかねないと、米国内で警戒されている。

 これに対し、10月19日の時点で日中首脳会談で合意が見込まれる主な分野は以下の通りだ。
 *日中両国でイノベーションや知的財産について協力を進めるための新たな枠組みづくり
 *上限3.4兆円の日中通貨スワップ協定の締結
 *一帯一路沿線の第三国で日中企業によるプロジェクト共同受注
 トランプ政権による対中締めつけ強化によって、米国のハイテク企業買収や技術取得が困難になる中、中国が狙うのは日本企業である。情報通信、AI、自動車の自動運転、画像認識、ロボットなどに関し、日本の研究機関からの技術開発協力を政府間協定によって恒常化させる。その見返りに、日本の産業界は「中国製造2025」関連の設備の受注を期待する。
 「知的財産権保護」についても協議することになっているが、これまで中国の侵害行為に目立った抗議をしてこなかった日本政府が対抗措置条項を中国側に呑ませられるとは、だれも信じないだろう。また、中国側によるハイテク提供の強要を可能にする投資や合弁の契約を改めさせる日本側の意志は強くない。トランプ政権のように国家ベースの対中制裁措置をとれるようにするためには、日本側の法的整備が必要だが、立法府の国会議員や法案を作成する官僚にはその気すらない。


 中国の司法や裁判制度は検察と同様、党の支配下に置かれており、中国当局に中国企業の知的財産権侵害を訴え出ても、徒労に終わる。日経、朝日などのメディアは世界貿易機関(WTO)の「自由貿易ルール」を重視するが、WTOの紛争処理はジュネーブの国際官僚の机上の空論に過ぎず、実効性がないことは日本の官僚も企業も知っている。

 今回の日中合意では、「知的財産権の侵害防止が進むかは中国側のやる気次第」という現状を変えられないだろう。日本企業は「将来の市場シェア獲得」という甘い期待だけを頼りにしており、特許やノウハウを盗まれても泣き寝入りするしかない今の仕組みを一変させようとの意気込みは経済産業省からも、経団連からも伝わっては来ない。

 日本が中国との政府間協定で中国によるハイテク窃取、知的財産権侵害を実質的に容認すれば、米国側の対中締めつけ策は不発になりかねない。中国側のことだ、「米企業が技術提供に応じないなら日本企業の技術を採用する」と脅しつけることだろう。



 ※続きは月刊「正論12月号」でお読みください。ご購入はこちらへ。


 ■田村秀男氏 昭和45(1970)年、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、日本経済新聞社に入社。経済部、ワシントン特派員、香港支局長などを歴任して退社。平成18(2006)年に産経新聞社へ入り、特別記者・編集委員となる。現在、論説委員を兼務する。
田村秀男の国際政治経済学
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