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https://www.sankei.com/premium/news/180722/prm1807220010-n1.html
2018.7.22 08:00
【田村秀男の日曜経済講座】米中貿易戦争の行方 「恐竜」中国直撃のトランプ弾
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 「米中貿易戦争」とかけて、米映画「ジュラシック・パーク」シリーズ第1作と解く。巨大な富と技術を持つ米国が昔、消滅した「中華帝国」という恐竜を再生、繁殖させたところ暴れ出し、封じ込めに転じるというのが、トランプ政権の対中強硬策だからだ。今、上映中のシリーズ最新作は、恐竜を再絶滅の危機から救おうとする物語のようだが、さて、眼下の米中ドラマはどうなるのか。

 2012年秋に中国の最高権力者となった習近平氏は「偉大な中華民族の再興」を掲げた。25年にはハイテクの全面的な国産化を達成し、35年には国内総生産(GDP)で米国を抜いて世界一になる目標を立てている。軍事面でも南シナ海の岩礁を占拠して埋め立て軍事基地を建設している。ユーラシア大陸とその周辺までを包含する現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」をぶち上げ、高利の借款を供与してアジア各地で港湾などのインフラを建設し、相手国が払えなくなると“接収”する帝国主義路線だ。

 中国の膨張を支えてきたのは米国である。1990年代のクリントン政権は、中国をグローバル経済に取り込むとして、世界貿易機関(WTO)に加盟させ、輸出の拡大機会を与えた。以来、歴代政権はこの路線を踏襲し、2008年9月にリーマン・ショックが起きた後は中国の貿易黒字拡大の加速を容認してきた。その結果、どうなったのか、グラフを見よう。

 中国の発券銀行である中国人民銀行は自身が決める基準交換レートによってドルを買い上げ、人民元資金を発行し、国有商業銀行、国有企業、地方政府へと流し込む。生産設備や不動産開発など国内投資が盛んに行われ、経済の高度成長を実現する。最大のドル供給源は米国の対中貿易赤字である。その累積額は人民銀行資産を押し上げ、GDPの拡大と連動することが、グラフでは一目瞭然だ。

 この通貨・金融制度は西側資本主義国と決定的に異なる。日銀などの場合、金融市場から国債などの証券買い上げに合わせて資金を供給する。外貨資産はほとんどない。伝統的に紙切れの通貨を信用しない中国の人々は金またはドルを選好する。人民銀行の総資産のうち3分の2を外貨資産が占めるのも、人民元にはドルの裏付けがあることを誇示しないと、信用が失われるからだ。

 そこに対中制裁関税というトランプ弾が撃ち込まれる。今月6日の第1弾は340億ドルだが、間もなく160億ドルが追加されるばかりではない。トランプ大統領は2000億ドルの巨弾を用意しているばかりか、さらに3000億ドルも上乗せすると示唆している。制裁対象となる対中輸入は5500億ドルに上り、実際の輸入額5200億ドルを超える。トランプ氏は全ての対中輸入に高関税をかけるつもりなのだ。となると、中国の金融経済への衝撃は計り知れない。

 中国の国際収支(経常収支)黒字は1200億ドルにとどまる。対米黒字が大幅に減れば、中国の対外収支は赤字に転落するばかりではない。金融の量的拡大に支障をきたし、引き締めざるを得ず、従来のような高成長は不可能になる。不動産市場は崩落し、金融機関は巨額の不良債権を抱える。国内金融を維持するためには海外からの借り入れに頼るしかなく、「一帯一路」の推進どころではない。海外ハイテク企業買収も軍拡予算も冷水を浴びる。

 既に中国経済は減速しつつある。挽回策は人民元の切り下げによる輸出のてこ入れとドルの裏付けのない資金の増発による金融緩和だが、いずれも人民元の国内信用を損なわせる。当局が15年夏に、人民元を切り下げると、一時は年間ベースで1兆ドルの資本逃避が起き、外貨準備が急減した。以来、習政権は資本規制を強化し、日本人など外国人は中国から外貨を持ち出せなくしたが、それでも年間2000億〜3000億ドル規模の資本逃避が続いている。トランプ弾は弱り目にたたり目である。

 最近、北京発で独裁権力を握った習氏に対する党内の批判の高まりを示す情報が飛び交う。「米中貿易戦争」を受け、動揺する金融経済システムからみて大いにありうる話だ。

 冒頭の話に戻す。トランプ氏は「ジュラシック・パーク」シリーズ最新作のように恐竜中国の救出に向け、制裁の手を緩めるだろうか。それとも、習氏が白旗を上げるだろうか。拙論はいずれの筋書きも不可能だとみる。中国の膨張を止めるまでトランプ氏は譲らない一方で、習氏は強気で一貫しないと国内政治の立場が危うくなるからだ。

(編集委員)
https://www.sankei.com/premium/news/180721/prm1807210006-n1.html
2018.7.21 10:00
【田村秀男のお金は知っている】米国への貿易報復は中国大衆の胃袋に跳ね返る 

米国の追加制裁に反発する中国の華春瑩副報道局長(共同)
 広東料理など、中国庶民の大好物といえば、鶏の足や豚の胃袋。筆者にとっても、とりわけ鶏足はグロテスクな見かけと違って、香辛料で味付けされるとゼラチン状になって、舌がとろける。それがここにきて、思わぬところで供給に支障をきたしかねない情勢になってきた。米中貿易戦争である。(夕刊フジ)

 今月6日、トランプ米大統領が知的財産権侵害に対する報復の第1弾として340億ドル分の対中輸入品に対して25%の追加関税を発動したのに対し、習近平政権はただちに同額の対米輸入品に同率の報復関税をかけた。

 報復品目には農産物が多く、大豆やトウモロコシが代表的だが、よほど品目探しに苦労したのか、鶏の足や豚の内臓まで加えた。いずれも米国内ではほとんど消費者に見向きもされずに、廃棄されていたのだが、巨大な中国需要に合わせて輸出されるようになった。習政権は、屑(くず)に値がついて、ほくほく顔だった米国の養鶏農家に打撃を与え、養鶏地帯を選挙地盤とするトランプ支持の米共和党議員への政治的メッセージになると踏んで、報復リストに加えたのだろうが、国民の胃袋も直撃される。

 どのくらいの量の鶏足が米国から対中輸出されているのかは不明だが、国連食料・農業機構(FAO)統計(2016年)では鶏の飼育数は中国の50億羽に対し、米国は20億羽に上る。そのうち約1割の足が中国向けだとすると、約4億本が中国人の胃袋におさまる。

 それに対して高関税が適用されると、輸入が減り、かなりの品不足に陥る。13億羽の鶏を生産するブラジルが代替源になるかもしれないが、増産態勢が整うまでには長い時間がかかるはずだ。すると、需給の法則で鶏足の値が上がることになる。

 中国人全体の食にもっと広汎で深刻な影響が及びそうなのは、もちろん大豆である。米国の対中大豆輸出量は昨年3300万トンで、同5000万トンを超えるブラジルに次ぐが、中国の国内生産は1400万トンに過ぎない。米国産は中国の大豆総需要のうち、約3割を占める。輸入大豆は搾って食用油になり、粕が豚や鶏の餌になる。米国の大豆産地が鶏と同様、中西部のトランプ支持基盤とはいえ、その輸入制限は、胃袋と家計を直撃する。

 折も折、中国経済は減速局面に突入し、上海株価の急落が続く。トランプ政権は10日には2000億ドルに上る追加制裁品目を発表した。中国の対米輸入1600億ドルを大きく上回り、報復しようとすれば対米輸入全品目を対象にするしかなくなる。

 17日付の産経新聞朝刊によれば、中国の国営メディアは習氏への個人崇拝批判を示唆、習氏の名前を冠した思想教育も突然中止されるなどの異変が相次いでいるという。米国との貿易戦争に伴って景気悪化で所得が下がるうえに、胃袋も満たせないと大衆の不満は募る。そこで独裁権力を強める習氏への党内の批判が噴出する気配だ。(産経新聞特別記者・田村秀男)
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/180720/mcb1807200609016-n1.htm
習体制揺さぶる「トランプ弾」 大衆の食直撃、矛先は独裁権力に
2018.7.20 06:09

 今月6日の中国の知的財産権侵害に対する米トランプ政権の制裁関税の発動と、中国・習近平政権の報復の応酬を皮切りに、米中貿易戦争が本格化した。その政治的帰結を考えると、習政権は分が悪そうだとみていたら、北京から、中国の国営メディアが習氏への個人崇拝批判を示唆、習氏の名前を冠した思想教育も突然中止されるなどの異変が相次いでいるというニュースが飛び込んできた。それでも党中央や軍部を完全に掌握しているはずの習体制が傾くはずはないとの見方が圧倒的に多いが、高関税の「トランプ弾」の威力のすさまじさを考えると、さもありなんである。

 トランプ弾の第1弾は6日の中国製品340億ドル(約3兆8000億円)で、次に160億ドル発射が続く。10日にはトランプ氏が2000億ドル分の対中輸入に10%の追加関税をかけると品目を明らかにした。さらに3000億ドル分の輸入を上乗せし、合計で5500億ドルにするとも息巻いている。米国の対中輸入総額は5200億ドルだから、中国からの輸入品全てに報復関税をかけることになる。

 習氏は「殴られたら殴り返す」と強気で、制裁には同タイミングで同額の報復関税で応じる構えだが、中国の対米輸入は6月までの1年間でみても1634億ドルで、2000億ドルにはるか満たない。習氏側は報復弾に事欠くようになるのを、トランプ氏は見越しているのだろう。

 習政権は対米報復第1弾の340億ドルですら品目探しに苦心した形跡がある。大豆や自動車は金額規模も大きいが、他には豚の内臓や鶏の足数億本までが含まれる。いずれも米国内ではほとんど消費者に見向きもされずに、廃棄されていたのだが、巨大な中国需要に合わせて輸出されるようになった。習政権は、くずに値がついて、ほくほく顔だった米国の養鶏農家に打撃を与え、養鶏地帯を選挙地盤とするトランプ支持の米共和党議員への政治的メッセージになると踏んで、報復リストに加えたのだろうが、中国人の胃袋も直撃される。

 中国人の食にもっと広範な影響が及びそうなのは、もちろん大豆である。米国の対中大豆輸出量は昨年3300万トンで、米国産は中国の大豆総需要のうち、約3割を占める。輸入大豆は搾って食用油になり、粕(かす)が豚や鶏の餌になる。米国の大豆産地が鶏と同様、中西部のトランプ支持基盤とはいえ、その輸入コスト上昇や量の不足は、中国人全体の胃袋と家計に影響する。

 トランプ弾の規模が大きくなればなるほど、中国のマクロ経済が受ける打撃は計り知れなくなる。というのは、中国共産党が統括する金融経済モデルは西側先進国と違って、中央銀行である人民銀行が流入外貨、すなわちドルを買い上げては人民元資金を発行し、国有商業銀行、国有企業、地方政府へと流し込む。人民銀行の総資産に占める外貨資産は66%に上る。

 日米欧は国債などの証券を市場から買い上げて資金発行するシステムで、外貨とは無縁だが、中国は外貨頼みだ。その外貨の主源は対米貿易黒字、次は外国からの対中直接投資である。対米黒字はコンスタントに拡大しており、文字通り中国金融を支えている。トランプ氏の作戦はその資金源を断つというわけで、この関税攻勢の実相はカネ版「兵糧攻め」とでも言うべきだ。中国の経常収支黒字は1200億ドルだから、トランプ弾の攻撃が重なれば、国際収支が赤字に転落しかねない。すると、中国の金融システムは機能不全に陥る恐れが生じる。

 折しも、中国景気は下降局面に入っている。ドルの裏付けのない人民元を増発し、金融の拡大を図れば、通貨価値は下がる。つまり高インフレになる。中国人は伝統的に紙切れのカネを信用せず、金やドルの保有に走る。それを共産党政権はわかっているからこそ、管理変動相場制度によって、人民元をドルに事実上ペッグさせてきた。既に元売り圧力は高まり、当局による買い支えにもかかわらず、じりじりと元安が続く。資本逃避に加速がかかりそうだ。上海株の下落は企業収益や景気の先行き不安を反映している。

 胃袋も経済も悪くなると、何が起きるか。大衆の不満の高まりであり、独裁権力を固めた習氏に対し矛先が向かう。それを見た党内の反習派が勢いづく。その前兆が見え始めたのだ。(産経新聞特別記者 田村秀男)

2018.7.14 10:00
【田村秀男のお金は知っている】米中貿易戦争、中国びいきのメディアに辟易
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トランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席。貿易戦争の勝者は?(共同)
 米中は6日、貿易戦争に突入した。驚いたのは、メディアの論調だ。トランプ米大統領を「保護貿易主義者」と呼び、自由貿易ルール無視の習近平・中国国家主席に対しては沈黙する。(夕刊フジ)

 7日付の日経新聞朝刊社説の見出しは、「米中は制裁を撤回し対話で摩擦緩和を」で、中身は「様々な手口で技術や情報を奪う中国の知財侵害は悪質だ」などと中国を批判しながら、「だからといって制裁や報復に走るのでは、お互いの首を絞めるだけだ」とくる。けんか両成敗である。最後に、米国の鉄鋼・アルミの輸入制限を引き合いに出し、「日本や欧州が連携し、保護貿易を封じる必要もある」と締めくくっている。「米国=保護貿易」というわけだ。

 朝日新聞の4日付社説は「報復関税連鎖 保護主義に歯止めを」である。米国による「鉄鋼・アルミニウム製品への高関税」と「中国製品に対する高関税」を同列視したうえで、トランプ大統領に対し「保護主義を改めるべきだ」と説いている。

 両紙に限らず、米中貿易問題に関するテレビの討論でも、同様の見解を持つ識者が多いのには、いささか辟易させられる。ミスリードも甚だしい。なぜか。

 「自由貿易」はあくまでも経済学教科書の世界での話だ。関税、非関税障壁をなくし、各国が自国優位の産業に特化して他国と分業して交易すれば、お互いに繁栄するという理論に基づく。基幹産業やハイテクを放棄して他国からの輸入に頼る、コメなどの主食の生産を他国にまかせる、というなら、国家も政府も不要だろう。国内の雇用を犠牲にして、他国でしか生産しないという企業は、本国への寄生同然だ。

 現実の国際自由貿易体制は国家間の競争であり、勝者と敗者を生む。その動力は国家間の政治力学であり、経済学教科書ではない。世界貿易機関(WTO)の自由貿易ルールはそうした国家間の妥協の産物であり、自由貿易の理想郷であるはずはない。メディアや識者がWTO体制、自由貿易を守れと叫ぶのは、ナイーブ過ぎる。

 第二に、中国こそはWTO体制に便乗してやり放題、親中派とおぼしき日経社説ですら認めているように悪質極まるのだが、WTOは無力である。

 中国は本欄で論証してきた通り、対米貿易黒字で稼ぐドルを原資にした金融の量的拡大によって、経済の高度成長を達成したばかりか、軍拡路線を推進し、沖縄県尖閣諸島奪取の機をうかがい、南シナ海の岩礁を占拠、埋め立てて軍事拠点とする。拡大する市場に日米欧企業を引き寄せ、先端技術提供を強制する。周辺の弱小国に輸出攻勢をかけて貿易赤字を膨らませ、返済難になると、インフラを接収する。

 中国が「自由貿易」であるかのように振る舞うのを黙認する。中国を抑え込もうとする「米国第一主義」のトランプ政権をひたすら保護主義と決めつけるメディアは、膨張する中国の脅威が眼中にないようだ。(産経新聞特別記者・田村秀男)
田村秀男の国際政治経済学
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