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【ビジネスアイコラム】中国「巨大債務爆弾」の脅威
2015.12.23 05:00

 ■雪だるま式に膨張、米利上げでさらに苦境

 米連邦準備制度理事会(FRB)は昨年10月末の量的緩和打ち切りに続いて、12月には利上げしてゼロ金利政策に区切りをつけた。米国は2008年9月のリーマン・ショック後の質量両面にわたる史上空前絶後の超金融緩和に決別したが、世界はそうはいかない。余剰ドルの副産物、巨大債務の泥海にどっぷり漬かっている。中国がその代表である。

 国際決済銀行によると、15年6月末の中国の企業債務(金融機関を除く)残高はダントツの17.2兆ドルで、国内総生産(GDP)で米国の6割程度なのに米国の12.5兆ドルを凌駕(りょうが)している。膨張速度もずばぬけている。リーマン・ショック直後の08年末に比べ3.8倍(米国16%増、日本34%増、他の新興国は6割減)である。

 GDP比は1.6倍である。1980年代後半から90年代にかけてのバブル時代の日本企業のそれは1.4倍(90年)だったので、ぞっとするような規模の金融バブルである。

 もちろん、資本主義経済の成長は債務の増大で支えられる。企業は借金をしては設備投資し、雇用を増やして行く。その結果、需要が創出され、高度成長に導くという好循環となるなら、「よい債務増大」と評価できる。それが「悪い債務」に転化したのがバブル経済である。ちょうど正常な細胞が、がん細胞に変わって増殖するのに似ている。「バブルは破裂してから初めてバブルと定義できる」とグリーンスパン元FRB議長は現役時代に嘆いたほど、「よい」から「悪い」ほうへの転換点の見極めは難しい。だが、中国バブルは目を凝らせばはっきりする。

 中国の企業は製品価格が下落を続けるデフレ病に侵されている。値下がり分をカウントした企業にとっての実質金利は12%にもなり、債務返済できない。返済できないから、貸し手である金融機関にとっては不良債権がどんどん増えていくはずだが、中国側統計では不良債権は低水準のままである。なぜか。

 答えは簡単。不良債権に計上しないからである。党中央が企業と金融機関を支配している中国では、党幹部の指令でいくらでもカネが動く。債務返済できなければ銀行は追加融資したり、返済繰り延べに応じる。さらに国有企業大手は高利回りの理財商品という債務証券を発行して資金調達する。こうして企業債務は雪だるま式に増長を続ける。

 奥の手は株式市場で新規上場や、増資による資金調達だ。この分は債務にカウントされない。6月の上海株暴落の背景には野放図な新規上場の横行がある。あせる習近平政権は市場を統制しながら新規上場を認可するなどと、相変わらずの国際市場ルール無視だ。

 ではいつ、どうやって巨大債務爆弾は破裂するか。恐らくだが、どこかが対外債務を払えなくなった途端にそうなる。

 中国企業の対外債務は1.3兆ドルに上る。大半はドル建てだから、人民元の下落が続くと返済負担がさらに重くなる。16年も米利上げ、ドル高が続けば、いよいよ中国企業は追い込まれる。

 バブル崩壊後はどうなるか。日本の場合、企業債務の裏返しである金融機関の不良債権の処理を遅らせた揚げ句、延々とゼロ成長が続く「空白の20年」に突入した。自業自得かもしれないが、世界にとっての巨大債務爆弾の脅威を考えると、日本は北京にアドバイスすべきかもしれない。(産経新聞特別記者 田村秀男)

【お金は知っている】すべての元凶「緊縮財政」
12.18

 自民、公明両党は2017年4月の消費税率の10%への引き上げに合わせて、加工食品を含む食料品への軽減税率の導入を決めた。さらに月ぎめ購読の新聞にも適用するという。と聞くと、税負担が軽くなるような気がするが、だまされてはいけない。消費税率2%分の年5・4兆円の消費者負担が1兆円程度少なくなるだけの話で、れっきとした増税であり、「緊縮財政」路線に変わりない。

 政府が民間から税を徴収する一方で、公共事業、社会保障などに支出するが、支出増加額よりも税収の増加額が多ければ緊縮財政、少なければ積極財政となる。財務省の財政資金の対民間収支統計によると、安倍晋三政権が積極財政に踏み込んだのは14年4月からの消費税増税前の約1年間だけだ。ことし後半では年間で6兆円以上も増えている税収は、社会保障、公共企業、防衛の3大支出合計の増加額1兆円前後を大きく上回っている。

 グラフは税収、財政支出と実質GDPの伸び率の推移である。税収は大きく伸びているが、実質GDPは14年度に急下降、財政支出の変動率とほぼ完璧に連動している。
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 税収が増えた主因は円安にあり、それに伴う企業収益増と株高の副産物である。民間の所得を政府が税によって取り上げたまま、支出を通じて民間に資金を還元しない状態を続けると民間の需要を圧縮する。「20年デフレ」を引きずった状態での緊縮財政はデフレの泥沼に自ら舞い戻りかねない。

 14年度の実質経済成長率はマイナスに落ち込み、さらに15年度も4〜6月期がマイナス、7〜9月期は改定値が何とかプラスになったが、10〜12月期の足取りは重い。原因はまさに緊縮財政である。

 日銀は異次元金融政策を堅持しているし、場合によっては追加緩和にも踏み切るとの期待は株式など市場関係者に多い。この緩和策は日銀が民間金融機関保有の国債を買い上げて、日銀資金を年間80兆円程度新規供給するのだが、国際通貨基金(IMF)は民間の売却可能な国債保有額は約220兆円で、今後2〜3年以内に日銀政策は限界にくるというリポートをまとめている。日銀緩和偏重のアベノミクスは持続不可能なのだ。

 アベノミクス「第2ステージ」の目玉が法人税実効税率の引き下げだが、税収減を恐れる財務省は赤字の企業にも事業規模に応じて課税する外形標準課税の拡大や設備投資減税の縮小など、事実上の増税を組み合わせる考えだ。何のことはない、これもまた緊縮財政の域を出ない。

 海外からのリスクもある。米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに踏み切ると、新興国などから資金の逃避が加速する。中国は特に危うい。安倍晋三首相は、名目国内総生産(GDP)をあと5年で600兆円、14年度比で110兆円増やそうと大号令をかけているが、そのためには何よりもまず緊縮路線の廃棄が必要ではないか。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

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