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【ビジネスアイコラム】金融理論の貧困がデフレを招く 伝統に固執 視点を変えられぬ日銀
2017.11.29 06:10
■伝統に固執 視点を変えられぬ日銀
アベノミクスが始まって以来もう5年だが、肝心の脱デフレのめどが立たない中、「日銀理論」に固執してきた白川方明前日銀総裁時代までの日銀主流グループが息を吹き返している。日銀理論とは貨幣の供給によってインフレをコントロールできない、という見方だ。
典型は元日銀金融研究所長で法政大学客員教授の翁邦雄氏だ。氏は26日付の日経新聞朝刊で「日銀がマネタリーベース(資金供給量)を増やすだけで物価が上がるという直接的な波及経路はない。日銀は将来の物価が上がるという『期待』を生むとしたが、多くの国民はマネタリーベースとは何かを詳しくは知らないだろう。だからインフレ期待も生まれない」と言い切った。
中央銀行がおカネをじゃんじゃん刷れば、物価は必ず上がると岩田規久男日銀副総裁らリフレ派エコノミストは主張するのに対し、翁氏ら日銀理論派は一般国民がそう思うはずはないと断じるわけだ。
黒田東彦総裁の日銀は年間で最高80兆円もの資金を追加発行しながら、5年間という中長期間でも継続的にインフレ率をプラスに持っていけない。物価動向は異次元緩和前とほとんど変わらないのだから、なるほど、論争の軍配は日銀理論派に上がりそうだが、ちょっと待てよ。このマネー論争は土俵、すなわち問題設定を間違えているのではないか。
金融資産市場が実物市場である国内総生産(GDP)を圧倒する金融資本主義の現代において、中央銀行資金がGDPの主要素である物価に直接作用するとは考えにくい。中央銀行資金は金融機関に供給されるのだから、カネの資産市場である金融市場に向かうのは当然だ。物価がうんぬん、とばかり口角泡飛ばしても平行線をたどる不毛論争になってしまう。
現実に即した視点とは何か。まず、米国に目を転じればよい。米連邦準備制度理事会(FRB)は2008年9月のリーマン・ショック後、3次にわたる量的緩和政策をとり、短期間でドルの発行量を2倍、3倍と急増させた。ドル資金は金融市場に注入され、当初は紙くずになりかけた住宅ローン証券化商品の相場を支え、次には米国債相場を押し上げて長期金利を下げ、最終的に株価を押し上げた。個人や年金の金融資産の多くは株式関連であり、株価の上昇は家計の懐をよくする。企業は株式市場で有利な条件で設備資金を調達できる。FRBがカネを大量発行すれば実需が好転し、物価を押し上げ、日本のようなデフレに陥らずに済んだわけだ。もし、FRBが日銀理論に毒されていたら、とんでもないデフレ不況になって世界を巻き込んだはずだ。
日本では家計が保有する金融資産の大半は現預金で、株式関連資産の比率はわずかだ。企業も平成バブル崩壊に懲りて、株式を中心とする財テクはご法度だ。つまり、米国のような量的緩和の実物経済への波及効果はゼロではないとしてもかなり薄い。
異次元緩和の唯一と言ってもよい効果は円安だ。円安は企業収益をかさ上げし、株価を押し上げるのだが、株が上がっても上記の理由で家計消費が増えるとは限らない。円安で企業の輸出が増えるとGDPが好転するのだが、円安は断続的だし、先行きは不透明だから、企業は慎重で増えた収益を設備投資や雇用よりも、内部留保の積み増しに充当する。実需が増えないのだから、物価は上がらないのは当たり前だ。
日本の停滞を決定づけるのは増税と緊縮財政だ。アベノミクス第2の矢は「機動的財政出動」と銘打ったが、財政出動は初年度だけで、14年度は消費税増税と公共投資などの削減に踏み切った。以来、税収が増えても民間に還流させない緊縮財政を基調にしている。政府が民間需要を萎縮させるのだから、物価が上がるはずはなく、デフレに舞い戻りだ。
脱デフレ失敗は黒田日銀自ら招いた面がある。黒田氏は消費税増税実行を安倍晋三首相に迫り、金融緩和だけで脱デフレを実現できると大見えを切った。その背後にはリフレ派、日銀理論派とも「金融理論の貧困」があることを見逃すべきではない。(産経新聞編集委員 田村秀男)
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2017.11.26 08:00 http://www.sankei.com/economy/news/171126/ecn1711260004-n1.html
【田村秀男の日曜経済講座】インフレ目標2%は非現実的 カネを増やしても物価は上がらない
アベノミクスが始まって以来、ほぼ5年がたったが、脱デフレはいまだ成らずだ。日銀が年間で最高80兆円、国内総生産(GDP)の15%相当の巨額資金を追加発行することで世の中に出回るカネの量を増やし、物価上昇につなげるというもくろみははずれたままだ。なぜか。今回は世界のカネと物価のトレンドから考えてみた。
グラフは1970年以降の世界の貨幣(カネ)総量の対GDP合計比と、世界平均と日本のインフレ率の推移である。世界の通貨の基軸であるドルは、71年8月のニクソン米大統領による金の交換停止宣言により、金保有量の束縛から解き放たれた。
80年代にはレーガン政権による金融自由化によって、住宅ローンなどの証券化や金融派生商品(デリバティブ)が続々と登場し、カネの増殖が始まった。冷戦終了後の90年代は、マクロソフトの基本ソフト、「ウィンドウズ95」登場をきっかけにインターネットが地球全体に普及しはじめ、ネットを経由して世界の金融市場が結びついた。
金融のグローバル化によってカネは国境を越えて自由に移動する。ニューヨークやロンドンを拠点とするヘッジファンドによる投機が引き起こしたのが、97年のアジア通貨危機である。その後、カネの膨張は続き、GDPを上回った2008年9月に「100年に1度の大津波」と呼ばれた金融バブル崩壊、リーマン・ショックが勃発した。
米連邦準備制度理事会(FRB)はドル資金をそれまでの2倍、3倍と大量発行して金融市場につぎ込んだ。量的緩和によってカネの総量は増え続けていく。FRBは14年11月に量的拡大を打ち止めたが、日銀は13年4月から量的緩和を柱とする異次元金融緩和政策に踏み切った。
中国人民銀行はリーマン後、ドルの増発分にほぼ見合う人民元を発行し、市中銀行融資を通じてカネの総量を爆発的に増加させていく。リーマン後の世界全体のカネの増加額の約5割が人民元である。こうして世界のカネの合計額は、16年にGDPの1.3倍近くに膨らんだ。
金融の量的緩和政策はGDP、つまりわれわれが暮らす実体経済に比べてカネの量を増やしていけば、物価が上がるはずだという経済理論に基づいている。特にバブル崩壊後に物価が下がり続ける日本のような慢性デフレを防止できるとFRBは踏んだ。米国は確かにデフレに陥らずに済んだが、日本は依然としてデフレから脱却できない。
グラフのインフレ率を見よう。世界のインフレ率はカネの膨張にもかかわらず、長期的には下がる傾向が見える。その間にインフレ率が高騰したのは1970年代の石油危機、80年代末の東西冷戦終結後の経済混乱とともに起きたロシアなどの悪性インフレ、2008年の穀物など国際商品投機という具合で、いずれも一時的な出来事である。インフレ率が下がり続ける「ディスインフレ」の局面がグローバル世界では定着している。カネと物価の相関関係は薄いのが、世界経済の現実なのだ。
低インフレの中で金融は量、金利とも超緩和政策が継続され、カネはますます膨らんでいく。個人消費や設備投資に回らないカネは市場での投機に向かい、株価を押し上げる。世界の株式時価総額がGDP規模を上回ったとき、ITバブル崩壊(00年)とリーマン・ショックが起きたが、今年もどうやらGDPを上回る情勢だ。中国では不動産バブルが頻発している。
日本はどうか。インフレ率はもとより世界平均を大きく下回っている。最近20年間の大半はゼロかマイナスだ。ディスインフレの世界にいる日本が、金融緩和によってデフレから抜け出すことは至難の業のようだ。
国内経済が停滞し、物価も上がらないとなると、家計は消費を控え、現預金をひたすら増やす。企業も内部留保をため込み、賃上げや設備投資にカネを回さない。銀行は国内の資金需要低迷に苦しみ、米国の投資ファンドなど海外向け融資に奔走する。その結果、国際投機マネーがますます太り、新たなバブル崩壊リスクを高める。
異次元緩和だけでインフレ目標2%達成は到底無理だ。政府と日銀は13年1月に宣言した2%インフレ共同目標を見直し、1%程度の現実的な目標に置き換えるべきではないか。政府は同時に、国内で企業、家計合わせて年間約50兆円も増える余剰マネーを政府が吸い上げ、インフラ、教育、防衛技術など成長分野への財政支出を通じて内需拡大に振り向けるべきだ。
(編集委員)
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2017.11.18 10:00
【田村秀男のお金は知っている】バフェット指数が映す株価黄信号 中国の不動産バブル崩壊など世界同時株安のきっかけ多数
世界の株式時価総額のGDP比
日本の株式市場はグローバル投機の大潮流に翻弄される世界の市場の一角だ。著名投資家のウォーレン・バフェット氏は株式時価総額の国内総生産(GDP)対比とする指標を参考に、株式市場の潮目の変わり目を観察している。(夕刊フジ)
われわれが手元のカネで日々暮らす実体経済に対し、巨額のカネが動かす資産市場を金融経済と呼ぶ。株式市場は金融経済の主役である。実体経済の規模を表すGDPを株式時価総額が上回るのは、株式市場過熱のシグナルだと、バフェット氏はみなした。
この見方の正当性を経済学理論で説明することは難しいが、思想的にはよくわかる。カネというのは本来、実体経済を循環してわれわれの暮らしを良くするはずなのに、中央銀行がいくら通貨を発行しても、カネは金融市場になだれ込み、株価だけを押し上げるのは経済の摂理に反すると考えられるからだ。
卑近な例が日銀による異次元金融緩和だ。年間80兆円、GDPの15%ものカネを追加発行しても、GDPはほとんど成長せず、株価だけが大きく上昇する現状を良いとは、まともな倫理観を持つ者はだれも思わないだろう。
グラフは「バフェット指標」を念頭に作成した。1970年代後半からの世界の株式時価総額のGDP比の推移である。一国単位ではなく、世界全体でみるのは、投資マネーが世界全体をめぐるグローバリゼーションが進んだ80年代以降の現実に即しているはずだ。
71年8月のニクソン声明による金・ドルの交換停止以来、米国は世界のカネの根幹であるドルを金保有量の制限なしに発行できるようになった。続く金融市場自由化により、証券は多様化し発行額が膨らんで、金融経済が実体経済を圧倒するようになった。
金融経済の規模を端的に表すのが株式時価総額で、GDP比が100%を上回ると、米国でバブル崩壊が起きた。99年ピークのIT(情報技術)バブルと2007年ピークの住宅金融証券バブルであり、翌年につぶれ、世界の市場に波及した。
今はどうか。ことしの世界のGDPはもちろん未確定だが、時価総額のほうはロンドンに本部のある「世界取引所連盟」が毎月算出している。最新統計の今年9月のデータは81兆ドルで前年末を11兆ドル以上上回っている。前年の時価総額GDP比は99%だ。ことしの世界のGDPは最近の趨勢からみて1兆ドル前年より増えるとすれば、バフェット指標は106%程度になる。黄信号だ。
留意すべきは投機マネーだ。国境を越えて動き回る投機マネーの規模は世界の外国為替取引額でおよその見当がつく。それは06年時点で国別取引額合計が1日当たりで6・5兆ドルに上る。世界の1日当たり株式取引額の20倍近い。その巨大な潮の流れが引けば世界同時株安が起きる。北朝鮮情勢ばかりでなく、中国の不動産バブル崩壊などきっかけはいくらでもある。(産経新聞特別記者・田村秀男)
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2017.11.11 10:00
【田村秀男のお金は知っている】韓国の株高は誰が見ても異常 日経平均高値に浮かれている場合か、ニューヨーク市場はバブル懸念
日米中韓の株価指数
トランプ米大統領は日本を皮切りに、韓国、中国などを歴訪中だ。北朝鮮の核・ミサイル対策を話し合うが、奇妙なことにこれら関係国の株価は朝鮮半島情勢の緊迫化を尻目に上昇を続けてきた。中でも日経平均株価は7日、1996年のバブル崩壊後最高値を上回った。日経新聞電子版はさっそく「21年前に比べ割高感は解消」と大はしゃぎだが、ちょっと待てよ。(夕刊フジ)
世界の株価を先導するニューヨーク市場ではバブル懸念が生じている。韓国の株高は誰が見ても異常だ。韓国と同じく、世界的な株式投機によって押し上げられている日経平均を楽観視できるはずはない。
グラフは今年初め以来、今月7日までの日米中韓の株価を日ごとに追っている。本欄前回で指摘したように、韓国の株高速度はめざましい。北からの挑発が激化するなかで、前大統領が弾劾され、左派の現政権になろうと、株価はうなぎ上りで、景気回復に支えられているニューヨーク株高をはるか上回る。
韓国株買いの主役は外国の投資ファンドだ。サムスンなど韓国の情報技術(IT)関連株を中心に、3割以上が外国勢によるものだ。外貨不安を抱える韓国は外国からの資本流入の9割近くを外国からのポートフォリオ(株式など証券)投資に依存している。株式バブルの崩壊不安が生じると、巨額の資本流出と通貨ウォンの暴落リスクが高まる。
金融市場の脆弱(ぜいじゃく)さを自覚しているからこそ、韓国経済界は日本に通貨スワップ協定の再開を求めてきたが、慰安婦合意不履行の文在寅(ムン・ジェイン)政権は安倍晋三政権に正式要望できないままだ。代わりに中国・習近平政権に頼み込んで、中韓通貨スワップ協定延長にこぎつけたが、人民元建てで、肝心のドルを融通してもらえるか心もとない。
中国と韓国はともに企業と家計を合わせた債務を急増させてきた。今年3月末の同債務の国内総生産(GDP)比は中国2・1倍で、日本のバブルピーク時の水準並みだ。韓国は同1・9倍で、1997〜98年のアジア通貨危機時の1・6倍をはるかに上回る。ともに債務不安を抱えている中韓は互いに相手を助けるゆとりはない。
ニューヨーク市場はどうか。金融バブル論の権威でノーベル経済学賞受賞のロバート・シラー氏は米メディアなどでバブル化を警告しているが、グローバル市場のもと、崩壊が米国発とは限らない。96年12月、当時の米連邦準備制度理事会(FRB)のアラン・グリーンスパン議長は米株式について「根拠なき熱狂」と警告したが、まもなく起きたのはアジア通貨危機で、巡り巡ってニューヨーク市場に波及した。
トランプ氏の韓国、中国の訪問は本人が意識せずとも、金融市場不安とは無縁ではない。北朝鮮との武力衝突が避けられないともなれば、ソウル市場が揺らぐ。米中の貿易戦争勃発となれば米市場が動揺する。日経高値に浮かれるのは愚かだ。(産経新聞特別記者・田村秀男)
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2017.11.4 10:00
【田村秀男のお金は知っている】中韓通貨スワップ全く効力なし、外国の対韓金融商品投資7000億ドル超の1割未満
韓国の対外負債の推移
来週はトランプ米大統領が日韓中などアジアを歴訪し、北朝鮮が俎上に載る。追い込まれる金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の出方次第で半島情勢が緊迫化する。そこで、なぞなぞ。日米韓の平均株価のうち年初来、10月末までに最も上昇したのはどれでしょう?(夕刊フジ)
答えは韓国。10月30日時点で今年1月初めに比べ、韓国株価総合指数は27%上昇し、米ダウ工業平均の17%、日経平均の12%を大きく上回っている。前大統領の弾劾に加え、北はミサイル発射に加えて核実験にも踏み切り、「ソウルを火の海にする」とまで息巻く。ところが、政局混乱も北からの脅威もどこ吹く風と言わんばかりに上げ相場が続いてきた。
韓国株購入の主力は海外勢である。外国の投資ファンドの安定した買いに国内の投資家もつられる。それにしても、景気の復調が顕著な米国を上回るスピードで韓国株価が上がるとは、驚きである。バブルや暴落の不安はないのだろうか。
グラフは韓国の対外負債(海外にとっては対韓金融資産)の推移を、2008年9月のリーマン・ショック前から追っている。一目瞭然、負債は09年3月を底に急増を続け、今年6月末には2倍近く膨らんだ。その間の負債増加分の実に87%は外国からのポートフォリオ(株式など金融商品)投資が占める。海外の投資ファンドによるポートフォリオ投資は極めて投機的で、強欲そのものである半面で、逃げ足も速いはずである。
韓国は20年前、外国からの短期借り入れに依存していたために、アジア通貨危機に巻き込まれた。それを教訓に、韓国経済界は対外負債の長期化を図ってきたが、リーマン後は投機的な売り買いが可能な金融商品を通じた資金流入に偏重してきた。
これまでは幸いなことに、外国の投資ファンドは「朝鮮半島有事」にひるむことがなく、強い国際競争力を誇るサムスンなど輸出企業に投資してきたのだが、本物の緊急事態とみれば、一斉に引き揚げかねない。となると、ウォンは暴落する。
そんな不安におびえる韓国経済界は以前から日本に対し日韓通貨スワップ協定の再開を求めてきたが、「慰安婦」合意を履行しない韓国に対して、日本政府は応じないままだ。
それに加えて、10月10日には中国との通貨スワップ協定が期限切れになったが、中国は韓国の懇請に対し3日後にスワップ協定延長に同意し、契約にサインした。さらに、中韓は10月31日、米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の韓国配備を巡って悪化していた両国関係の改善で合意したと伝えられる。中身は不明だが、ソウルの北京への従属関係が一層強まるのは不可避だ。
中韓スワップは人民元建てで、たとえ全額ドルに換金できても約560億ドルで、外国の対韓金融商品投資7000億ドル超の1割にも満たない。政治的対中屈従の代償は不確かだし、あっても極めて少ない。最後は日本に泣きつくのだろうか。(産経新聞特別記者・田村秀男)
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