【お金は知っている】“極ミニ経済”が告げる反強欲主義2018.12.28新鮮で安い野菜をまとめ買いする主婦
暮れ行く平成30年(2018年)をにぎわすのは日産自動車のカルロス・ゴーン前会長の報酬隠し・特別背任容疑と、華為技術(ファーウェイ)問題などを抱えながら禁じ手の「親子上場」を果たしたソフトバンクの公開価格割れだろう。
いずれも「強欲」資本主義である。巨額のカネがいくら特定の企業や個人に集中しても、国内に流れ、循環すると、国民経済は成長するので、つじつまが合うものだが、前記の場合は国内には回らない。それは20年以上にも及ぶ慢性デフレ日本の特徴といえる。
「カネは天下の回り物」とする日本人の気風はいつの間にか消失したのだろうか。ならば経済は0%前後の成長を今後も続けるのも無理はない、と漫然と思うのだが、最近訪ねた高知の道すがら、首都圏などでは見たことがないショッピング風景に出くわした。
車道の脇に、にわか仕立ての祠(ほこら)のようなコーナーがあり、そこに野菜と袋詰めになった果物が置かれている。トマトは中玉3個で一袋。マジックで書かれた値段は「百円」。無人で、代金は四角い貯金箱の中に入れる。小さな鍵がかかっているし、簡単には持ち出せないように台にしっかりと固定されている。
さっそく100円玉を入れて、トマトをいただく。冬でも南国だけあって、日差しをたっぷりと浴びた真っ赤な完熟の味はまさに絶品。様子を見ていると、お客さんが10分間で2、3人。いずれも地元の人で、70歳くらいの男性は奥さんに頼まれて駆けつけてきた。車で20分の距離にある主婦は週末のまとめ買いで、「新鮮、安全、安心。値段は高知市内のスーパーの10分の1だよ」と手にいっぱい野菜を抱えて満面の笑顔だ。
このミニ版産地直販方式は「良心市」と呼ばれる。文字通り相手の良心を信頼する無人販売所で、ネットで検索してみると、高知県では戦前からあり、全国では高知県が圧倒的に多いという。注意して見ると、確かに国道、地方道の至るところにある。
背後の畑から仕入れるので輸送費はゼロ、人件費も施設費もかからないので、超激安になるのだが、地元の警察駐在所の「速報」が貼られている。カネを払わないで持ち帰る不届き者がいるので駐在所が警戒していると書いている。商品の追加のためやってきたオーナーさんの農夫は、「1円だけや、100円硬貨に似ている韓国のウォン硬貨が入っているときもある。でも、お巡りさんの警告書のおかげで、不正は少なくなった」。
良心市1件当たりの売り上げは1日平均2000〜3000円程度だが、高齢化した農家でも対応できる。農協ルートの規格に合わない果物や野菜も喜んで買ってくれる。
地元民の善意と喜捨に支えられる四国遍路の街道文化の影響によるとも言われるが、良心市は経済とは何か、を伝えてくれる。カネはわずかな規模でも円滑に循環すれば、生産者も消費者も全員がハッピーなのだ。極めてローカルなミニ経済社会が告げる。強欲なグローリズムは無用なのだと。(産経新聞特別記者・田村秀男)
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コメント(2)
編集委員 田村秀男 ゴーン流株主資本主義の正体日曜経済講座 文字サイズ
![]() 平成30年は日産自動車のカルロス・ゴーン前会長による報酬過少記載事件で暮れそうだが、事件は日本経済全体の視点でとらえる必要がある。「強欲ゴーン」は企業は株主のものであるという株主資本至上主義の産物であり、同主義こそが日本の長期停滞の元凶となっているからだ。
「株主資本」とは、資本金や経営を通じて生まれた剰余金の合計のことで、株主の持ち分とみなされる。企業は株主のものという米英の考え方はおのずと「株主資本」を最重視するので、「主義」が語尾に付く。日本の場合、経営者、従業員、下請け・系列、地域社会が一体となる「共生」の考え方が伝統的なのだが、平成バブル崩壊を受けて反省機運が高まり、政官民が株主資本主義への転換へと舵を切った。
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【田村秀男のお金は知っている】ファーウェイが排除される真の理由とは? 中国のサイバー攻撃体制
トランプ政権が米国や日本を含む同盟国の政府調達市場から締め出しを図る中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)は正念場に直面している。
同社日本法人は12月14日付は「製品のセキュリティ上の懸念に関する根拠のない報道について」と題し、「製品を分解したところ、ハードウエアに余計なものが見つかった」とか、「バックドアに利用される可能性」に触れた一部の報道について、「まったくの事実無根です。日本に導入されているファーウェイの製品はファーウェイならびに日本のお客様の厳格な導入試験に合格しております」と疑惑打ち消しに躍起となっている。バックドアとは、情報を抜きとるための裏口を指す。
ファーウェイは世界170カ国・地域で事業展開し、2017年度の売上高は9兆9000億円で、日本のNECの同2・8兆円の3倍以上だ。日本での部品などの調達額は今年約6800億円にも上るもようだ。特に提携関係にあるパナソニック、村田製作所、住友電気工業、京セラなどが集中する関西経済界は米中ハイテク摩擦の行方に気をもむのも無理はない。
いくらファーウェイが釈明しても米国などが納得しないのは、次世代通信技術「5G」の覇権争いという側面以前に、同社の正体が中国共産党および人民解放軍の支配下にあるとの確信があるからだ。
米下院情報特別委員会は12年、メンバーが深センの本社に乗り込み、幹部にインタビューし、主に同社と共産党、軍、政府との結び付きについて質問したが、回答が非協力的だったとして、疑惑を強める報告書をまとめ、米政府の通信調達市場からのファーウェイ締め出しを導いた。
その2年後、米軍情報筋が明らかにしたのが本図である。ファーウェイは設立が1987年だが、80年代初め、最高実力者トウ小平が「4つの使命」という党指令を発し、「自主技術」「海外との合作」「国家防衛」「情報浸透」を重点策とした。「情報」については、無線、衛星、ネットワーク、半導体などの技術を担う企業の育成を図ることとし、情報通信機器4社が創立された。
「巨龍」「大唐」「中興」「華為」で、前2社は解散し、もはや存在しないが、中興は今の「ZTE」、華為は「ファーウェイ」へと変貌、飛躍を遂げた。
共産党中央が共産共義青年団・政府のインテリジェンス部門、人民解放軍とファーウェイ、ZTEを直轄し諜報、サイバー攻撃、軍事技術開発が一体となって展開される。民主主義国家では不可能な、まさに恐るべきデジタル戦総動員体制である。5G技術で米国に先駆けているともいわれるファーウェイはまさにその中核を担うと目される。
米当局の要請によってカナダで逮捕された孟晩舟副会長兼最高財務責任者(CFO)は真相を知りうる人物だ。習近平国家主席がいかなる手段を取ってでも、身柄の米国への引き渡しを阻止しようと焦るはずだ。(産経新聞特別記者・田村秀男)
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【産経の本】『日経新聞と財務省はアホだらけ』 バカげたトライアングルを暴露
2018.12.22 09:12 ライフ 本
【産経の本】『日経新聞と財務省はアホだらけ』
『日経新聞と財務省はアホだらけ』
「『高橋、○時だから豆をまいてこい』。すると豆をぱっとまくわけです。つまり豆とは新聞に提供するネタ。『ハトの豆まき係』というのは広報担当のことで、エサをあげるということです」
日経新聞と財務省出身の両著者が古巣の欺瞞(ぎまん)を語り尽くす本書。
日本を代表する経済紙である日経が親中路線で中国の実態を報じず、米中貿易戦争ではトランプ大統領に説教。記事の見出しは「灰色を青にする」もので、経済学も覇権争いも分かっていないと徹底批判。記者のレベル、企業統治の言行不一致についてもボロクソだ。
さらに財務省、日経新聞、学者のバカげたトライアングルがいかに日本経済の本質を置き去りにしたかを指摘。「増税しても大丈夫」「デフレにはならない」との“論調”はこんなことで生まれているのかと驚愕(きょうがく)の告白が満載だ。
記者は学がないのに平気で金融政策をトンチンカンに報じ、学者はリスクを確率で語らず文学的表現に終始。消費税増税が「省是」の財務省は軍隊並みの規律、マスコミへの絨毯(じゅうたん)爆撃で外堀内堀を埋めて政治家やメディアを搦(から)め捕っていく。権威の裏側の暴露で、デフレ脱却できない日本のアホな構造が浮き彫りになる。(高橋洋一、田村秀男著/産経新聞出版・880円+税)
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【ビジネスアイコラム】国内第一でカネを回せ 「トランプ・マルバニー」から学ぶべき点2018.12.19 08:33
ミック・マルバニー米行政管理予算局(OMB)長官がトランプ大統領の首席補佐官代行に抜擢(ばってき)され、名実ともに大統領側近ナンバーワンになった。氏は1カ月ほど前に来日し、産経新聞との単独取材に応じ、筆者は2度にわたって意見交換することができた。彼は普段は目立たずめったにメディアに登場しないのだが、発言分野は本来の分野である規制緩和や財政問題ばかりでない。担当外の対中貿易戦争についてもためらわずに踏み込んでくる。
先の大統領選前まではトランプ氏に距離を置いていた「外様」のティーパーティー系下院議員だったマルバニー氏がなぜそこまでトランプ氏の信任を得たのか。氏と対談して分かったのは、「小さな政府」に代表されるレーガン流保守主義に「米国第一主義」を結合させた功績である。
1980年代のレーガノミクスやサッチャーリズムは金融市場の自由化が先行し、実物経済を置き去りにした。対照的に、ウォール街はM&A(企業の合併・買収)などで空前の活況を呈した。カネが実物ではなく金融資産にのみ向かうのであれば、カネは金融市場を堂々巡りする中で株式や債券など資産の相場は膨らみ、カネを増殖させる。金融資本はそこで莫大(ばくだい)な売買益や手数料を懐にし、ディーラーや経営トップは巨額の報酬に酔う。
企業経営者は収益を自社株買いに投じて株価を押し上げると同時に、配当金や株主資本の上積みを最優先する。長期投資、雇用者への給与など報酬アップは後回しにする。株主利益を高めるために、経営者は人件費の高い国内での生産をやめ、中国、メキシコなど海外に移転する。
マルバニー氏の規制緩和や減税策の狙いは「税金を使わずに経済を成長させる」。民間が政府規制に邪魔されずに自由にカネを使わせると、カネが企業と家計の間で活発に動いて新しい価値を創造することができるという極めてシンプルな考え方であり、その適用対象を金融経済ではなく、製造業など実体経済に当てはめた。
そのためのイデオロギーというべきが「アメリカ・ファースト」である。歴代の政権が省みなかった中西部の旧工業地帯「ラストベルト」にスポットライトを当てたばかりでなく、内需を支えるモノ、サービス産業を軸にカネを動かすことに成功した。トランプ氏の指導力の下に、マルバニー氏はカネの流れを国内のモノ、雇用や技術に仕向けるのだ。
日本経済がなぜ長期停滞から脱出できないのか。97年度の橋本行革、金融市場自由化(ビッグバン)で金融市場活性化を狙ったのだが、実体経済については緊縮財政・消費税増税との組み合わせで、家計からカネを奪っておいて、カネを返さない。メガバンクはカネを国内に回さず、国際金融市場に流し込む。2000年代初旬の小泉純一郎政権による「構造改革」は2、3周回遅れの「小さな政府」路線である。さすがに増税だけは見送ったが、金融緩和と円安による外需依存で、国内で余ったカネをウォール街に注ぎ込み、米住宅バブルを支えた。このモデルは08年9月のリーマン・ショックで打ち砕かれ、日本経済は先進国の中で最も深刻な打撃を受けた。
12年12月に始まったアベノミクスの「3本の矢」は日本銀行の異次元金融緩和、機動的財政出動、規制緩和による成長戦略だが、14年度には消費税増税と緊縮財政を組み合わせ、8.4兆円もの民間のカネを吸い上げて、国債償還に回し、家計に返さなかった。その結果、デフレ圧力が再燃、家計消費は落ち込んだまま低迷を続ける。国家戦略特区に代表される「規制緩和」は増税・緊縮財政による内需抑制策とのセットなのだから、空砲でしかない。その揚げ句にモリカケという利権疑惑でもみくちゃにされた。やはりカネが実体経済に回らず、マルバニー氏の言う創造性を生まなかったのだ。
日本がトランプ・マルバニー・ラインから学ぶべきは、金融偏重の新自由主義、「小さな政府」ではない。国内の実体経済を刺激し、有り余るカネを国内に回すことだ。「ジャパン・ファースト」を掲げ、そのための規制緩和、財政出動に踏み切る。来年の消費税増税はさっさと凍結すべきだ。(産経新聞特別記者 田村秀男)
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