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「債務の長城」が成長を阻む 田村秀男
2019.3.5
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中国全人代に臨む習近平国家主席(右)と李克強首相=5日、北京の人民大会堂(共同)
中国全人代に臨む習近平国家主席(右)と李克強首相=5日、北京の人民大会堂(共同)
李克強首相が5日開幕した全国人民代表大会で発表した今年の中国の実質経済成長率目標は6%台前半。1%前後の成長にあえぐ日本にとっては高水準の成長というわけだが、だまされてはいけない。
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2019年03月18日
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【田村秀男のお金は知っている】中国「6%成長目標」は真っ赤な嘘なのか 信憑性を検証 記者会見する李克強首相(中央)=15日、北京の人民大会堂(共同)
https://www.sankei.com/premium/news/190316/prm1903160002-n1.html?fbclid=IwAR28yxaNqrtXhuPOQZ2B5S_Gs7iGq0gbu21Sc_QAXqp8ggT2YTp7maRA6w0 李克強首相が全国人民代表大会(全人代)の冒頭で、今年の国内総生産(GDP)の実質成長率目標を6%台前半と発表した。これは「真っ赤な嘘」ではないのか。論証を試みることにしよう。
党がカネ(金融)とモノ(投資)を支配する中国式市場経済システムでは、正常な市場経済国家では需要と供給の関係で決まるはずのGDPの変動率を操作しやすい。インフラ、生産設備、不動産開発など固定資産投資は党中央が立てた計画通り、カネを発行し、配分できる。
投資を前年に比べて二十数%増やすと、GDPはやすやすと二ケタ成長を遂げ、日本のGDPを抜いたのがリーマン・ショック後の2010年で、今や日本の3倍にもなりそうだ。が、膨れ上がったコンクリート構築物の多くは、金融面で見れば収益を生まない不良資産、すなわち収益見通しが立たないバブル資産と化す。
そこで13年から国家統計局が発表している中国のセメント生産に着目してみた。セメント統計は各地の工場の報告に基づき、党地方官僚にはごまかす動機がほとんどないので、信憑(しんぴょう)性は高い。
拾い出してみると、リーマン後のピーク時で年間二十数億トン、今でも年間20億トン前後のペースである。実に、米国が20世紀の100年間に生産したセメント量を2年間で投入し続けていることになる。コンクリートの巨大な塊は金融債務となって年々、累積していく。
セメント生産をGDPの主要項目と付き合わせてみたのがグラフである。中国のGDP項目のうち固定資産投資が4割以上を占めると先述したが、その変動率はGDPの供給部門別の建設動向と連動する。建設はセメント生産を伴うのだから、やはりセメントの前年比増減率と共振するはずだ。
ところが、セメントのトレンドは17年以降、GDPの建設部門とは逆、大きく下に振れている。セメントは生コンクリートの原料だが、生コンはすぐに固まってしまうので建設作業に即応せざるをえない。つまり建設需要とほとんど時間差がなく合致するのが生コンであり、セメント生産がトレンドからかい離するのは不自然だ。
セメント生産データの信憑性は党官僚が鉛筆をなめるはずの建設や固定資産投資データよりもはるかに真実に近い。とすれば、固定資産投資データそのものが虚偽だということになる。すると、6・5%を超す17年以降のGDP成長率は嘘の固定資産投資の水増しによって、不当にかさ上げされている公算大である。
李首相は全人代でインフラ投資と減税の財政面での景気てこ入れを約束したが、インフラという政府による固定資産投資の数値のアップを帳簿上だけにとどめる、という操作は大いにありうるだろう。他方で、債務バブル対策は進めざるをえない。地方政府には財政支出の一律5%削減を要請済みで、金融は量的引き締めだ。政策は支離滅裂、米中貿易交渉決裂ともなれば、債務バブルは崩壊、チャイナリスクの爆発となりかねない。(産経新聞特別記者・田村秀男)
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【田村秀男のお金は知っている】中国が進む道…「元暴落」「悪性インフレ」「深刻不況」
2019.3.9 10:00 プレミアム 経済
●G フG中国の実質成長率と人民元発行量カラー
https://www.sankei.com/premium/news/190309/prm1903090005-n1.html?fbclid=IwAR3NzHeXzQSg4oPIan2a14f6zVIcxkgyXUdAI2dhNhPdDV4yeb68uzSqSnI中国の実質成長率と人民元発行量に対する外貨資産比率の推移
北京で5日に開幕した中国の全国人民代表大会(全人代、共産党が仕切る国会)で、李克強首相は今年の実質経済成長率目標を6%前半だと発表したが、そんな数値は人為的にどうにでもなる。
自由市場の日米欧などと違い、モノとカネを共産党中央が仕切る中国では経済成長の操作は簡単だ。国内総生産(GDP)の4割以上を占めるのはコンクリートや鉄鋼などを材料とする固定資産投資で、前年比で二十数%増やすと、GDPを二桁台も伸ばせる。
2008年9月のリーマン・ショック後、世界でいち早く高度成長に回帰し、投資が萎縮したままの日本のGDPを抜く経済超大国になった秘訣だが、需要がないとインフラや不動産などへの開発プロジェクトへの投資は収益を生まず、経済発展に寄与どころか足かせになりかねない。貸し手にとってはバブル、つまり不良資産と化す。
今、中国の辺境などでは返済困難になった巨大構築物が至るところで林立し、野ざらしになったままで、あたかも債務バブル版万里の長城だと、米メディアが報じた。
それでも、バブル崩壊後、「空白の20年、30年」とも呼ばれた日本の二の舞いを中国が演じるはずがないとの期待が日本の経済界では根強い。市民の自由な言論や政治活動を警戒する習近平政権は党の強権を行使し、13億人の国民全てを監視できる情報技術(IT)や人工知能(AI)など先端技術開発と投資に全力を挙げる一方で、拡大中華経済圏構想「一帯一路」を推進する。人権無視とはいえ、新分野を中心に投資主導型成長はまだ続く、というわけだが、甘すぎる。
投資にはカネがいる。中央銀行である中国人民銀行が資金を発行し、国有商業銀行を通じて企業や地方政府に供給するのが中国特有の金融なのだが、ただカネを刷るだけの錬金術ならすぐに見破られ、通貨の信用が失われる。
70年前、蒋介石の国民党が通貨乱発のせいで国民の支持を失ったことを共産党は教訓とし、人民元をドルで裏付けている。リーマン後、人民元発行残高の100%相当のドル資産を人民銀行は保有していた。しかし、バブル崩壊不安を背景に資本の流出が激しくなった。ドル資産は大きく減り、海外からドルを借りてようやく3兆ドル台の外貨準備を維持するありさまだ。それでも人民元発行残高ドル資産比は6割まで落ちた(グラフ参照)。
李首相は全人代冒頭で、インフラ投資など財政支出と融資の拡大によって景気てこ入れを図ると表明したが、これ以上のドルの裏付けのない通貨発行は禁じ手のはずだ。あえてそうするなら、バブル債務はますます膨張し、元暴落と悪性インフレのリスクを招く。かといって、投融資を抑制すると不況が深刻化する。そんな背景から、中央政府は地方政府に対し、一律5%の財政支出削減を求めている。人民銀行は人民元発行を手控え、新規融資量を削減している。やることは李首相の発言とは逆だ。さて、全人代はどう議論するのか、みものである。(産経新聞特別記者・田村秀男)
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https://www.sankei.com/premium/news/190302/prm1903020004-n1.html?fbclid=IwAR3vBPrYw8Z1XhLkzBzpcyEOIN3Zptt2WrDaPcAwcZ4GE4HMnXNs78E2mRY【田村秀男のお金は知っている】日本の消費税増税も… リーマン級危機
「4大震源地」を分析 2019.3.2 10:00 プレミアム 経済
●G フG日米英中とユーロ圏の平均株価カラー
先日、筆者も参加した「日本文化チャンネル桜」のネット番組で、「リーマン・ショック級」として、4つの世界経済リスクが取り上げられた。チャイナ・ショック、次に英国の合意なき欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)、3つ目は米景気後退、そして4つ目が今秋からの日本の消費税率10%への引き上げである。
これらのうち、最初の3つが同時進行するなかで、日本が消費税増税に踏み切るなら、リーマン級どころではない超弩級(ちょうどきゅう)のショックが起きてもおかしくない、ということになる。にもかかわらず、今通常国会では何の危機感も緊張感もない。
危機の震源地として挙げられる国・地域別の株価指数をグラフにしてみた。株価はトランプ米政権が発足した2017年1月を100とする指数に置き換えた。一目瞭然、この期間を通じて日米欧の株価は米株価に先導されている。上海株だけは下げ基調一本だったが、今年に入ると米国に連動するかのように回復局面にある。
中国の経済減速は昨年前半から始まり、7月には上海株価は米国の対中貿易制裁を受けて加速していたが、昨年12月にはトランプ政権が追加制裁関税実施を3月1日まで延期すると表明した後、上昇している。同時期に、日米欧とも反転、上昇しているところをみると、世界の株価はやはり米中貿易戦争の行方に大きく左右されることが読み取れる。つまりチャイナ・ショックはトランプ政権のさじ加減で度合いが決まりそうなのだ。
合意なきブレグジットの影響は、株価で見る限り、英国ばかりでなく、EU全体を巻き込むことが歴然としている。EUとの離脱交渉をまとめ切れないメイ英国首相の苦境を、ドイツやフランスも放置していれば、とんでもないことになることを暗示しているようだ。しかも、ドイツ、フランスとも国内で反EUの政治勢力が有権者の支持を増やしているのだから、このままブレグジットでの合意が成立しないようだと、欧州全域の経済混乱は政治不安に拍車をかけるだろう。
米国の好景気は、大型のインフラ投資や減税に踏み切ったトランプ政権が作り出したが、過熱を警戒する米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げによって冷やされた。しかし、FRBが一転して、追加利上げに慎重姿勢を見せるようになって、米株価が戻している。
肝心なのは日本だ。安倍晋三政権は財務省が敷いた増税路線の制約を受け、14年度には消費税率を8%へと大幅引き上げせざるをえなかった。その結果、アベノミクスは失速し、デフレ圧力を再燃させた。そんな大失敗にもかかわらず、今年10月に再び増税し税率を10%へと引き上げる。消費税だけは日本自身の政策判断で決められるのに、既定の増税路線を変えないのは、まさに自殺行為だ。3月中にも可能性が取り沙汰される米中首脳会談による米中貿易戦争休戦に望みを抱くだけでは、責任ある経済大国の資格が問われよう。(産経新聞特別記者・田村秀男)
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記者会見する李克強首相(中央)=15日、北京の人民大会堂(共同)




