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2018.8.25 10:00
【田村秀男のお金は知っている】地鶏の用心棒猫、地方創生での論戦望む
地鶏の用心棒猫。背後は養鶏場=高知県いの町
「わが輩は助っ人猫」である。ちょうど1年ほど前、本欄で紹介されたのだが、元気で地方創生に貢献していることを、帰郷中の筆者を通じて改めて伝えてもらおう。(夕刊フジ)
場所は日本一の清流、仁淀川を見下ろす高知県いの町の山の中。南国の太陽を存分に浴びる地鶏「土佐ジロー」の養鶏場だ。わしら20匹の野良猫軍団が800羽の警護を引き受けている。鶏の天敵のネズミ、蛇や貂(テン)がめったに来なくなり、イノシシや猿も敬遠してほとんど近寄らなくなった。
養鶏場主の西雅志さんは人手をかけなくても、外国人労働者を雇わなくてもいけると考えて、養鶏場を思い切って増設し、規模を2倍にした。わしらにとってみれば、歓迎だ。毎晩、跳んだり跳ねたりして遊ぶ養鶏場を覆うハンモック状のネットが2倍に広がったんだ。
最近の奮闘ぶりをちょっと紹介する。まず、マムシ狩り。仲間の1匹がどじを踏んで顔を噛まれた。すると4匹がマムシ野郎をアタックし、動けなくしてやった。つい数日前に狸(タヌキ)も来たが、見ると怪我していてボロボロ、歩くのがやっとだ。わしらの餌のペットフードを嗅ぎつけたんだろう。西さんは「この狸は先住族で、お前たちのほうが新参者だ」とかばう。もとより、わしらはほとんど動けない獣に意地悪なんかしない。だから、餌を食べられても、わしらは見て見ぬふりをしている。
わしらが鶏を襲いやしないかって? とんでもない。ここでは24羽の雌鳥に対して雄鳥が1羽の割合でいる。一区画の鶏舎には雄鳥が3羽で、ボスが序列2、3位の雄を従えている。敵が侵入してくると、2、3位は一目散に逃げ、ボスだけが俄然(がぜん)立ち向かう。雄の気性は荒く、その蹴爪や嘴(くちばし)で攻撃されたら、わしらとて散々な目に遭う。
ボス鶏の権威は大変なもので、寝場所の鶏舎にボスが入らない限り、2、3位は外で待機するしかない。ハレム単位当たりの雌鶏二十数羽が生む卵はすべて有精卵だが、ボスのパワー入りだ。2、3位は雌達から拒絶されるし、嫌がる雌を追いかけようとしたら、ボスから半殺しにされるんだ。わしら猫族でもぞっとするほどのどう猛さなんだ。
大自然の中で、野生本能そのままに生き、厳選された天然材料の餌を食べる土佐地鶏卵の味も滋養も評判上々だが、地元の悩みも深い。西さんのような地鶏の養鶏家がどんどん減っているんだ。高齢化が進む中で後継者が不足しているんだね。その結果、土佐地鶏のひなに対する需要が減り、ひな生産業者が廃業に追い込まれそうなんだ。せっかくわしらが無給、無休で用心棒を買って出ているのに、これじゃ先細りだと西さんたちが嘆いている。
地方の問題は各地各様だろうが、後継者難は共通しているはずだ。9月の自民党総裁選では元地方創生担当相の石破茂さんが安倍晋三首相に挑戦するらしいが、それならきめ細かい創生策を打ち出して安倍さんにぶつけてほしいね。(産経新聞特別記者・田村秀男)
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日記
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2018.8.18 10:00
【田村秀男のお金は知っている】「万引き家族」を苦しめる消費税増税 経済成長なき市場原理主義に無力感
消費税3%分を差し引いた雇用者報酬と家計消費の前年比増減額
カンヌ国際映画祭最高賞「パルムドール」に輝いた是枝裕和監督の「万引き家族」を見た。(夕刊フジ)
印象に残った風景は下町の裏通りにひっそりと佇(たたず)む古びた駄菓子屋さんだ。にわか妹になった小さな女の子の万引を手助けするお兄ちゃんに、気付いた店主の爺さんがやんわりとさとした。そればかりか女の子にみやげまでもたせた。
万引の技をにわか父さんに仕込まれた少年は思う。「お店がつぶれなければ、いいじゃないか」と。大資本のスーパーならびくともしないだろうが、零細な店はどうかと、かなり気になって仕方ない。
ある日、駄菓子屋さんが廃屋同然、抜け殻のようになった。「忌中」の札を見て、その字の意味を理解できなかった少年は、そうなったのは万引被害ではなく、爺さんが亡くなったためだとは知らず、激しく動揺する。それを機に、万引を絆にした偽装家族の崩壊が始まる。
映画の時代設定は昭和、いや平成のいずれだろうかと迷ったが、経済の観点からすれば今の時代とみていいだろう。「持つ者」がより豊かになり、「持たざる者」がより貧しくなる。競争社会の勝者と敗者の格差が広がり、底辺の者には行き場がない。市場原理主義は民間の活力を引き出すと評価され、1990年代後半から安倍晋三政権に至るまでの日本の基本路線になっているが、何かが欠けている。経済成長なき市場原理主義は社会の無力感を生むという視点がないのだ。
消費税増税と緊縮財政は日本型市場原理主義の産物である。法人減税と政府財政の支出抑制をセットとし、社会保障財源には消費税を充当する。消費税収は社会保障財源となって社会の弱者や低所得層にも配分されると考える向きが政官財、メディアに多いが、それはカネのやりくり計算である家計簿の発想でしかない。国家の経済成長を妨げ、「万引き家族」を受け入れる経済環境を痛めつける。その症状を悪化させるのが消費税増税である。
論より証拠、グラフを見ればよい。2014年度の消費税率の5%から8%への引き上げ後の雇用者報酬と家計消費の前年比増加額から家計の消費税増税分負担額を差し引いてみた。雇用者報酬とは、勤め人が会社などから受け取る給与・ボーナスや社会保険料の合計で、労働需給の逼迫(ひっぱく)を受けて16年から増え始め、今年に入って増加基調が加速している。しかし、消費税増税負担を考慮すると、増加率が力強さを示す前年比3%以上になったのは今年になってからだ。
家計消費のほうは消費税増税後急減したあと、17年からプラスに転じたが、消費税増税負担分を差し引くと、増税前より低いままだ。しかも雇用者報酬とは逆に下向きである。ボーナスは増えたが懐具合は一向によくないと感じる読者諸公が多いはずである。その心理は簡単にぬぐい去られないので、消費は増えない。消費減は猛暑のせいではない。零細商店もスーパーも「万引き被害」ではなく、消費税に苦しめられている。(産経新聞特別記者・田村秀男)
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2018.8.11 10:00
【田村秀男のお金は知っている】円高リスクを招く黒田日銀 追い込まれると横文字に頼る「エリート」http://www.sankei.com/premium/news/180811/prm1808110004-n1.html
日米実質金利差と円相場
小賢しい「エリート」は追い込まれると、往々にして横文字に頼る。日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁が7月末の金融政策決定会合後に強調した「フォワードガイダンス」もその例である。直訳すれば「金利の先行きの指針」で、従来の低金利維持のためだという。(夕刊フジ)
そもそも中央銀行による金融政策というものは、洋の東西を問わず当面の市場金利の誘導を目的としている。あえてカタカナで言うのは、真の狙いを隠すためではないか、と疑いたくなる。
黒田総裁はガイダンスについて、「当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持する」と説明。「現状維持」と言えば済むはずだが、横文字を引っ張り込んだ以上、あまり知られたくない変数を紛れ込ませていてもおかしくない。「“悪魔”は細部に宿る」。総裁発言をチェックすると、現在はゼロ%前後に誘導している長期金利を0・2%まで上昇してもよい、というくだりが見える。
償還期間10年の国債利回りを基準とする日本の長期金利は、米金利上昇の影響を受け、市場では先高観が漂っている。そんな中で、一般的な融資よりも国債の運用に頼るメガバンクは収益悪化に遭遇し、日銀に対し不平不満たらたらだ。そこで、日銀は「これからは金利上昇の余地あり」というシグナルを送った。が、建前はあくまでも「現状維持」である。
日銀は白川方明(まさあき)前総裁時代末期の2013年1月、安倍晋三政権との間で脱デフレに向け、物価安定目標と称する2%のインフレ率実現の共同声明に署名した。安倍首相はその早期達成を確約する黒田氏を高く評価し、同年3月に日銀総裁に抜擢(ばってき)した。ところが、黒田日銀はそれに失敗し続け、2期目に入っても2%達成の意欲が見受けられない。
デフレ圧力が続く原因は14年4月からの消費税増税で、増税実行に向け安倍首相の背中を強く押したのは財務官僚上がりの黒田氏である。増税に伴う景気への悪影響は金融政策でカバーできるが、増税しない場合の金利暴騰リスクには対応できない、と論じ首相をビビらせた。増税の結果、アベノミクスは失速、デフレ圧力が再燃した。
黒田氏はその後、マイナス金利導入に踏み切るなど「異次元緩和」を追加してきたが、不発続きだ。2%達成を無期限延期せざるをえないのは、財務省の増税路線に黒田氏が肩入れしたためだ。
異次元緩和によって、唯一成果が認められるのは超円高の修正だ。グラフは、長期金利からインフレ率を差し引いた実質金利の日米金利差(米国分マイナス日本分)と円ドル相場の推移である。異次元緩和開始当初は日本の急速な金利低下に従って円安局面に転じたが、消費税増税後は物価下落とともに日米金利差が一挙に縮小し、円安傾向が止まり、現在に至る。
日銀がこのまま金利の上昇を容認し、デフレ圧力が去らない場合どうなるか。黒田総裁はしきりに「海外からのリスク」を口にするのだが、円高リスクには対応できそうにない。(産経新聞特別記者・田村秀男)
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2018.7.28 10:00
【田村秀男のお金は知っている】貿易戦争、韓国は中国の道連れに…「トランプ弾」中国金融市場を直撃
中国、韓国の株価と通貨の対ドル相場
中国に対するトランプ米政権の制裁関税は中国の金融市場を直撃、このトランプ弾の破片が真っ先にどこに飛び散るかチェックしてみたら、韓国である。政治・経済両面で中国に従属度合いを高めている韓国は対米貿易戦争で窮地に立つ中国の道連れになる運命なのだろうか。(夕刊フジ)
グラフは、中韓の株価と人民元、韓国ウォンを指数化し、最近までの推移を追っている。5月21日(月曜)を基準日としたのは、前週末の18日(金曜)にワシントンでの米中交渉が決裂し、貿易戦争懸念が高まったからだ。以来、人民元、上海株とも下落が止まらない。ウォンは人民元と同調する形で下落し、韓国株価総合指数も上海株価総合指数に共振して下がる。
上海株が下がるのは、対米輸出が大きく減り、企業収益が悪化するとの懸念の高まりによる。中国当局は輸出減退を食い止めるため、人民元の下落を容認するしかないが、市場介入によって小幅な変動にとどめ、急落は避けたい。他方で、景気の下支えのために、金融緩和する結果、元売り圧力は高まるばかりで、下落に歯止めがかからない。資本逃避も加速しつつあり、海外からの借り入れによって外貨準備を維持するしかない。元安で対外債務負担は増える。中国はトランプ弾によるショックを回避できないのだ。
中国経済に対し、韓国はかなり深く浸かっている。韓国の対中輸出は全輸出の25%を占め、国内総生産(GDP)の1割弱に相当する。日本の対中輸出のGDP比は2・7%、米国の場合は0・7%に過ぎない。米国と日本の株価に上海株下落の影響がほとんどみられないのは当然だ。
問題はこれからだ。トランプ政権は中国からの輸入品に対し、2000億ドル分について追加関税を発動する準備を進めているばかりでなく、さらに3000億ドル分も上積みして、対中輸入すべてに高関税をかけると示唆している。トランプ弾が巨大化するに従って、中国の金融市場は崩落危機が高進しかねない情勢だ。グラフが示す通り、これまで韓国当局はウォン相場を人民元に連動させてきた。ウォンの対人民元相場が安定すれば、対中貿易がやりやすい。また、対ドル相場が同一幅で下落すれば、輸出市場での中国製品との競合が不利に陥らずに済むからだ。
人民元急落に付き従えば、とんでもない災厄に見舞われる。韓国が依存する海外投資家はウォン安を嫌う。外資が韓国市場から手を引くと、韓国は外貨危機に陥りかねない。下手すると、1997〜98年のアジア通貨危機の再来になる。韓国が最後に頼れるのは強い国際通貨円を発行する日本しかない。もとより人民元の中国はあてにならない。韓国経済界はもともと、自国の脆弱(ぜいじゃく)な金融事情を踏まえ、日本との通貨スワップ協定復活を熱望してきたが、韓国政府は政治的面子を意識して日本への要望を避けてきた。文在寅(ムン・ジェイン)現政権はどうするか。(産経新聞特別記者・田村秀男)
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