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https://www.sankei.com/premium/news/180923/prm1809230012-n1.html
2018.9.23 08:00
【田村秀男の日曜経済講座】安倍首相に物申す、消費税増税中止を 日本再浮上の好機逃すな
安倍晋三首相は自民党総裁3選を果たしたが、気になるのは来年10月に予定している消費税率10%への引き上げだ。増税で日本再浮上のチャンスを潰すべきではない。
拙論はメディアでは少数派ながら、一貫して増税反対論を述べてきた。この際改めて安倍首相に増税再考を求める理由はほかでもない。首相周辺の増税延期派の異常なまでの沈黙ぶりだ。
総裁選で、「予定通りの増税実行」を迫った石破茂元地方創生担当相を前にして、安倍首相は「自動車とか、住宅とかの耐久財の消費を喚起する、あるいは商店街等々の売り上げが悪い影響がないように、きめ細やかな対応をしていきたい」と述べた。当たるべからざる勢いの首相を見て、「増税はまずいと、安倍さんに諌言(かんげん)すれば嫌われ、遠ざけられやしないか」と恐れるスタッフもいる。
増税を既定路線と位置づけた首相を周辺が忖度(そんたく)するのはやむなしかもしれないが、政策に関与する者が優先すべきは首相個人ではなく国家・国民の利害であるはずだ。もちろん、消費税増税が日本再生を後押しするなら文句なしだが、現実は逆に動いている。
グラフは地方自治体や厚生年金など社会保障部門を含めた政府全体の負債から資産を差し引いた純負債、金融機関を除く企業が設備や雇用に回さずに手元に留め置く利益剰余金、さらに消費税負担分を差し引いた過去20年間の家計消費の推移である。平成9年度は消費税率が5%に、26年度は8%に上げられた。消費税増税の大義名分は財政再建のはずだが、惨憺(さんたん)たる結果である。純負債は143兆円から713兆円に膨らんだ。
家計消費は増税のたび急激に落ち込んだあと、長期停滞局面に入る繰り返しだ。ようやく回復しかけた19年度の後はリーマン・ショックの直撃を受けたが、9年度の増税・緊縮財政がもたらした慢性デフレのもと、家計の消費マインドは脆弱(ぜいじゃく)だった。
そしてアベノミクスが本格始動した25年度に消費は勢いを取り戻したように見えたが、消費税増税がそれをぶち壊した。安倍首相は10%への税率引き上げを2度延期する決断を下したが、重なる失敗から学ばない財務官僚、有名大学教授そして大手全国紙論説委員たちに安倍首相は包囲されている。
増税による税収の一部を教育無償化財源とするという首相の考えは方便同然ではないか。消費税増税によって中低所得層を最も痛めつけておいて、子弟の教育費負担を軽減するというなら、増税せずに景気を拡大させ、それによる税収増を無償化に充当するのが合理的というものだ。
増税が招き寄せるデフレ圧力は金融経済構造をいびつにする。利益剰余金は20年間で300兆円以上も増え、名目で15兆円余りしか拡大しなかった国内総生産(GDP)とは対照的だ。日銀は超低金利政策を通しており、アベノミクス開始後は異次元緩和政策、さらにマイナス金利にも踏み込んだが、デフレ圧力は去らず、2%のインフレ目標達成のメドはさっぱり立たない。銀行は国内融資より中国など海外向けに血道を上げ、リーマン後の10年間で150兆円も対外融資を増やした。外貨を見せ金にして勢力圏拡張を狙う「一帯一路」の中国は同じ150兆円を国際金融市場から借り入れできた。
1年余り後の消費税増税の結末は火を見るよりも明らかだ。デフレの継続、国民が消費を抑えてためたカネの多くが米英の金融市場を経由して、習近平中国国家主席の野望達成に貢献する。日本が成長を続けるための頼みは輸出であり、支えるのは異次元緩和に伴う円安と景気好調の米国市場だが、「米国第一主義」のトランプ政権が立ちはだかりかねない。トランプ氏はすでに安倍首相に対し、2国間交渉を通じて対米貿易黒字大幅削減を迫ると明言している。ホワイトハウスがその手段としてもくろむのは、為替条項付きの日米貿易協定締結だ。同条項は日銀の金融緩和政策を制約しかねない。
固より、米中貿易戦争は日本再生の絶好の好機になりうる。中国はトランプ政権の強硬策の直撃を受け、成長市場幻想がはげ落ちている。日本企業の多くは北京の反発を恐れてひそかに、対中投資の縮小、撤退を検討している。だが、国内市場はデフレ、需要減というなら、投資の転換先は米国、中国以外のアジアということになりかねない。企業の有り余る巨額資金は国内で行き場がないままになる恐れがある。
安倍首相がアベノミクスの総仕上げを目指すなら増税中止を宣言すべきなのだ。
(編集委員) |
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2018.9.24 22:57
米中貿易摩擦 「中国封じ込め」日本の選択は 編集委員・田村秀男
中国旗と米国旗=16日、北京(AP)
トランプ米政権が発動した2000億ドルの対中制裁関税は、中国封じ込めの本格化を告げる。
トランプ米大統領の対中強硬策は、旧ソ連を崩壊に導いたレーガン政策を思い起こさせる。1980年代、ソ連は急増するエネルギー輸出収入を原資に軍事攻勢をかけた。米国は高金利政策をとり、エネルギー価格を暴落させた。経済がジリ貧になったゴルバチョフ政権(当時)の自由化改革の結末は、共産党体制の崩壊だった。米国が基軸通貨ドルを武器に覇権への挑戦を許さない構図は「米中貿易戦争」もしかりである。
中国人民銀行が流入するドルを固定した基準レートで買い上げて人民元資金を発行する中国は、旧ソ連以上のドル依存型システムである。リーマン・ショック後、現在までの10年間の中国の対米貿易黒字の累計は2兆8500億ドル、人民元発行増加額はドル換算でやはり2兆8500億ドルだ。
膨らむ外貨準備のうち、米国債運用分は3分の1にすぎない。米軍情報筋によれば、中国人民解放軍がやはり全体の3分の1相当を仕切っているという。この仕組みこそが、中国の高度成長と巨大経済圏構想「一帯一路」、南シナ海埋め立てなどの対外拡張策、軍拡、ハイテク窃取のエンジンになってきた。
トランプ氏の決意は固い。今回を含め対中輸入制裁対象額は年間2500億ドルに上るが、さらに2670億ドル相当に関税を課す検討に入ると表明。合計額はこの6月までの対中輸入額と一致する。制裁関税を通じてトランプ政権は対中貿易赤字を2000億ドル削減するつもりだが、そうなると年間で1500億ドルの黒字の中国の国際収支は大赤字に転落する。
ドル利用の道も断つ。20日にはロシアからの兵器購入を口実に、人民解放軍の資金運用の元締めである共産党中央軍事委員会装備発展部と李尚福部長を制裁の対象に指定し、米金融機関へのアクセスを禁止した。8月には、海外勢力による米国の投資ファンドを通じた米ハイテク企業投資を制限する国防権限法にトランプ氏が署名した。
問われるのは日本の対応だ。経団連は「一帯一路」への協力に、邦銀は国際金融市場を通じた対中融資に血道を上げ、緊急時に互いの通貨を融通しあう「通貨交換(スワップ)協定」の早期再開を政府に催促する。いずれも窮地に立つ習近平政権を後押しする。安倍晋三首相は26日にトランプ氏と会談するが、対中強硬戦略にどうすり合わせるのかが焦点になりそうだ。
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http://www.sankei.com/economy/news/180924/ecn1809240008-n1.html
2018.9.22 10:00
【田村秀男のお金は知っている】親中派にだまされるな 日本企業や邦銀のためになる?「日中通貨スワップ協定」実は習氏の尻拭い
中国の対外債務と邦銀の対外債権
中国が米国の対中制裁関税「トランプ弾」に直撃され、メディアは世界の金融市場不安をあおり立てるが、浅慮に過ぎる。トランプ政権の対中強硬策なかりせば、中国は従来通り債務主導で傍若無人の対外進出策をとり続け、金融市場と安全保障両面で世界不安がどうしようもなく高まる。(夕刊フジ)
米中貿易戦争はエスカレートする一方だ。トランプ政権は24日に中国からの輸入2000億ドル(約22兆円)分を制裁対象に追加する。すでに制裁開始済みの500億ドルと合わせ2500億ドルに達するが、トランプ大統領は中国が追加報復すれば全ての対中輸入品に25%の制裁関税を適用すると表明している。トランプ政権はこれによって年間3800億ドルに上る対中貿易赤字を早急に2000億ドル削減する目標を立てている。
現在、国際金融不安の元凶とされる中国の債務は銀行、「影の銀行」合わせた総社会融資ベースでみるとリーマン・ショックから現在までの10年間で5倍、対国内総生産(GDP)比は10年前の1・1倍から2・1倍に跳ね上がった。
急速な債務膨張を支えてきたのが対米貿易黒字である。米国の対中貿易赤字は10年間合計で2・85兆ドルで、中国人民銀行はドル換算でほぼ同額の人民元資金を発行してきた。人民銀行資金は商業銀行などを通じて同国の融資総量(債務にほぼ匹敵)を19兆ドル以上増やした。
この「錬金術」を可能にするのが、中国特有の通貨金融制度で、中国人民銀行は自身が決める基準交換レートで流入するドルをすべて買い上げ、人民元資金を市中銀行経由で企業、地方政府、家計へと供給する。人民銀行は外貨を裏付けにして融資を加速させ、不動産開発や工業生産に振り向ける。同時に、対外投資や軍拡にも外貨を投入してきた。
習近平国家主席肝いりの巨大中華経済圏構想「一帯一路」の推進や、南シナ海などへの海洋進出はリーマン後の米金融緩和に支えられてきたわけだ。
米中貿易戦争はそんな習政権の野心に冷水を浴びせる。中国の国際収支黒字は年間1000億ドル前後だから、トランプ政策は中国を赤字国に転落させる腹積もりだ。外貨不安を抱える中では対外進出策も思うに任せられなくなる。
窮地に立つ習政権が頼りにするのが世界最大の債権国日本である。グラフは中国の対外債務と邦銀の対外融資の推移である。中国は対米貿易黒字や外国からの対中直接投資を通じて外貨をためてきたが、海外企業買収や資本逃避のために外貨流出も激しい。そこで外債発行や銀行借り入れを通じて対外金融債務を急増させている。
それに最も貢献しているのが日本の金融機関だ。邦銀は10年間で国際金融市場に1・36兆ドル資金を供給してきたのに対し、中国は海外からの借り入れを1・4兆ドル増やしている。親中派の経団連や財務・経産官僚、日銀は日中通貨スワップ協定締結が日本企業や邦銀のためになると言い立てるが、だまされてはいけない。それは習氏の尻拭いなのだ。(産経新聞特別記者・田村秀男) |
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2018.9.22 10:00
【田村秀男のお金は知っている】親中派にだまされるな 日本企業や邦銀のためになる?「日中通貨スワップ協定」実は習氏の尻拭い
中国の対外債務と邦銀の対外債権
中国が米国の対中制裁関税「トランプ弾」に直撃され、メディアは世界の金融市場不安をあおり立てるが、浅慮に過ぎる。トランプ政権の対中強硬策なかりせば、中国は従来通り債務主導で傍若無人の対外進出策をとり続け、金融市場と安全保障両面で世界不安がどうしようもなく高まる。(夕刊フジ)
米中貿易戦争はエスカレートする一方だ。トランプ政権は24日に中国からの輸入2000億ドル(約22兆円)分を制裁対象に追加する。すでに制裁開始済みの500億ドルと合わせ2500億ドルに達するが、トランプ大統領は中国が追加報復すれば全ての対中輸入品に25%の制裁関税を適用すると表明している。トランプ政権はこれによって年間3800億ドルに上る対中貿易赤字を早急に2000億ドル削減する目標を立てている。
現在、国際金融不安の元凶とされる中国の債務は銀行、「影の銀行」合わせた総社会融資ベースでみるとリーマン・ショックから現在までの10年間で5倍、対国内総生産(GDP)比は10年前の1・1倍から2・1倍に跳ね上がった。
急速な債務膨張を支えてきたのが対米貿易黒字である。米国の対中貿易赤字は10年間合計で2・85兆ドルで、中国人民銀行はドル換算でほぼ同額の人民元資金を発行してきた。人民銀行資金は商業銀行などを通じて同国の融資総量(債務にほぼ匹敵)を19兆ドル以上増やした。
この「錬金術」を可能にするのが、中国特有の通貨金融制度で、中国人民銀行は自身が決める基準交換レートで流入するドルをすべて買い上げ、人民元資金を市中銀行経由で企業、地方政府、家計へと供給する。人民銀行は外貨を裏付けにして融資を加速させ、不動産開発や工業生産に振り向ける。同時に、対外投資や軍拡にも外貨を投入してきた。
習近平国家主席肝いりの巨大中華経済圏構想「一帯一路」の推進や、南シナ海などへの海洋進出はリーマン後の米金融緩和に支えられてきたわけだ。
米中貿易戦争はそんな習政権の野心に冷水を浴びせる。中国の国際収支黒字は年間1000億ドル前後だから、トランプ政策は中国を赤字国に転落させる腹積もりだ。外貨不安を抱える中では対外進出策も思うに任せられなくなる。
窮地に立つ習政権が頼りにするのが世界最大の債権国日本である。グラフは中国の対外債務と邦銀の対外融資の推移である。中国は対米貿易黒字や外国からの対中直接投資を通じて外貨をためてきたが、海外企業買収や資本逃避のために外貨流出も激しい。そこで外債発行や銀行借り入れを通じて対外金融債務を急増させている。
それに最も貢献しているのが日本の金融機関だ。邦銀は10年間で国際金融市場に1・36兆ドル資金を供給してきたのに対し、中国は海外からの借り入れを1・4兆ドル増やしている。親中派の経団連や財務・経産官僚、日銀は日中通貨スワップ協定締結が日本企業や邦銀のためになると言い立てるが、だまされてはいけない。それは習氏の尻拭いなのだ。(産経新聞特別記者・田村秀男)
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https://www.sankei.com/premium/news/180915/prm1809150006-n1.html
2018.9.15 10:00
【田村秀男のお金は知っている】自民総裁選に物申す、「消費税増税中止」の議論を
リーマン・ショック後の家計消費(名目額)
自民党総裁選では、安倍晋三首相と石破茂元地方創生相の両候補とも、来年10月の消費税増税を既定路線としている。恐れ多いが「ボーッと生きてんじゃないよ」と言いたくなった。2014年度の消費税増税で激減した家計消費に追加増税の追い打ちをかけて、大規模な自然災害が多発する日本列島の国土保全や地方創生を図れるとは、甘すぎる。(夕刊フジ)
グラフは10年前のリーマン・ショック前後からの家計消費動向である。リーマン後、急速に落ち込み、アベノミクス開始後に急回復したが、増税で台無しだ。最近になって持ち直す兆しが見えるが、3%の税率上げ幅分を差し引くと、消費水準は10年前を大きく下回る。
安倍首相は来年の再増税について「自動車とか、住宅とかの耐久財の消費を喚起する、あるいは商店街等々の売り上げに悪い影響がないように、きめ細やかな対応をしていきたい」と述べたが、小手先の対応に腐心するよりも、すっぱりと中止を宣言すべきではないか。
石破氏は「経済の7割は個人消費が支えている。個人が豊かにならなければ消費は増えない」と一見もっともらしく語るが、所得がわずかに増えたところで、消費税増税で年間8兆円以上も家計からカネを吸い上げ、内需を抑圧しておいて、どうやって賃金が上がると言うのだろうか。他方で「地方創生」を最重要目標に据えるが、飼料代が増税分だけ負担増になるのに、卵1個の出荷価格の1円上げすらままならぬ地方の養鶏家の苦境にどう応えるのか。
消費税と自然災害は無関係とみなす向きもあるだろうが、天災はすなわち人災である。人災とは政策の無為または失敗を意味する。国土の安全は治山治水インフラ、それを維持、運営するコミュニティーと組織・機構が整備されなければならない。支えるのはカネである。
財務官僚が政治家やメディアに浸透させてきた「財源がない」という呪文こそは、国土保全に対する危機意識をマヒさせ、インフラ投資を妨げてきた。「財政健全化」を名目にした消費税増税によって、デフレを呼び込み、税収を減らして財政収支を悪化させ、さらに投資を削減するという悪循環を招いた。「備えあれば憂い無し」という常識が失せたのだ。
東日本大震災に限らない。今夏、中国地方を襲った豪雨災害や、北海道地震後の全道停電、交通マヒでも、政府・与党はもっぱら事後の大盤振るまいに汲々とし、緊縮財政を支持するメディア多数派は「想定外」だと済ます当事者の無責任ぶりを見過ごしてきた。
もとより、国家の政策とは、安倍首相が強調するように「政治主導」で決まる。家計簿式に単純な収支計算によって国家予算の配分を決める財務官僚にまかせる従来の方式では大規模で長期にわたる資金を動員する国土安全化計画を遂行できるはずはない。
多発性の災害までが加わった「国難」に対処する手始めは、消費税増税の中止など緊縮財政思考の廃棄とすべきではないか。(産経新聞特別記者・田村秀男) |



