【小説】現実と非現実と

[ リスト ]

残された4人は内田という人間の犠牲によって微かなる希望を手に入れた。

人は皆、鎧をまとって生きている。

生きる途中で拾った鎧、また捨てたはずの鎧・・。

しかし、どんな重装備の鎧をまとっても隠せないものが、そして最も隠したいものがある。

それこそが本性なのだ。

4人は自分が生き残っていることに安堵した。

内田に捧げた涙や言葉は全て真実だった。しかし今感じている安堵感もまた真実であるのは相違ない。

そんなことを知ってか知らぬか、あえて4人は内田については触れなかった。いや、触れたくなかった。自分という本性をどこまでも隠していたかった・・・。


「なぁ、ジョーカーはどうしてここにきてそんな重要なヒントを俺たちにくれたんだ?」大橋が言った。

それは必然の問いだった。確かに、ここまで散々に4人を、いや6人を弄んできたジョーカーが重大なるヒントを与えたのだ。

それはまるで、爆破を回避させることを望んでいるかのように思えてならなかった。

「校舎が爆破されるということは、ジョーカーの身も危ない。だから、爆弾を解除させようとしているのかも?」春日部が提言する。

「それは筋が通らない。ジョーカーは爆弾をいつでも自由に解除できるはずだからな。」隼人が口を挟む。

内田が死んでから、隼人のシックスセンスは何故か研ぎ澄まされていた。

「これは、俺の推理だ。聞いてくれ。」隼人がおもむろにそう言った。

「ああ、話せ。」どうやら3人は聞く耳を持ったようだ。

「ジョーカーは十中八九この校舎内に居る。でなきゃ、手紙なんて置くことはできない。

そして校舎内は驚くほど静かだ。足音なんて、すぐ響き渡るに違いない。

それなのに、俺たちの足音以外は聞こえない。つまり、ジョーカーはあまり行動していない。

気付いたか?最初ジョーカーは『1時間に1個爆弾を爆破させる』と言った。しかしいつの間にかそれす

ら止んだ。このことから1時間に1個の爆発はジョーカーの行動できる時間を作るためじゃないかと推測

できるんだ。」

「待て待て、爆音なんてすぐ止んじまうぞ?」

「いや、瓦礫が崩れる音、それに爆音の後などは人間は足音なんて気にかけなくなるもんだ。

そしてもし今俺が言ったことが真実なら、ジョーカーはその短時間で何をしていた?」

「・・・わからんよ、そんなこと。。」

「思うに、リモコンのセットだ。

何故ここにきてこんなヒントを出したのか?

それはここにきて初めて出せるものだったからじゃないか?」

「考えすぎだろ・・・。流石に・・・。」

「そうか?俺たち以外の生徒を全て眠らせた後でないとセットは難しくなるとも考えられないか?

例えば、誰かが誤って触ってしまったら全てが無駄になってしまうからな。」


「確かに・・・・。」

「そしてだ。爆音は止んだ。そして足音もしない。」

「だからなんだ?」

「俺は4階の俺たちのクラスでジョーカーと対面した。内田によく似たジョーカーだったが・・。」

「だから何なんだよ!?」

「まだ気付かないのか?

その対面の去り際から『1時間に1個の爆弾』は1個も爆発していないんだ!

つまり、ジョーカーが最後に行動した場所は俺たちのクラスなんだ!」

「その話には仮定が多すぎる気が・・。」春日部が言った。

「そうだ。この推理は仮定の上でしか成り立たない。

不確定要素が多すぎることも確かだ。しかし俺は俺らのクラスのリモコンにかけてみたい。」隼人が自分の論理にピリオドを打った。

しかし、何故かこの論理には正当性が感じられた。

「確率は12分の1・・・・。いくら考えても最後は運なのかもな・・。」大橋が静かにそう言った。

「確かに、0.1%でも確率の高いほうにかけるのがセオリーだろう・・。でもまだ5時間くらいあるはずだよね。もっと考えようよ。」春日部が場をまとめた。

「待って。」相沢が急に話に割り込んできた。

「入力する数字はどうするの?」

3人はあっけにとられた。一番大切なことを忘れていた。

本物のリモコンのありかがわかっても、それがわからないければ意味がない。


残り5時間で生死に関わる決断を下すことは苦渋の決断を下すに等しかった。

しかし、時間は待ってくれない。”その時”は必ずやってくる。


このとき隼人の脳裏に内田が浮かんだ。

隼人の推理も、今4人が考えていることも内田の犠牲なくしてはありえない。

「もういいよ。」その一言を最後に死んでいった内田・・・。

隼人はその時、内田の顔を見ることができなかった。

思い出したくない思い出ほど、残酷なほど鮮明に甦る。

あの空間、あの瞬間、あの人間。

隼人にとっては全てが悪夢にすぎなかった。

しかし、隼人は内田に敬意を傾けるざるを得なかった。

2人の旅人は大人は12の数字の、子供は7の数字の所で佇んでいる。

セレナーデを奏でる時間にしては少しばかり遅いのだが、隼人は静かに、そしてしっかしと内田にむけて心で奏でた・・・。


「(なぁ、内田。お前は俺のこと嫌いだったのか?

嫌いだったとしたらそれは仕方ない。

あの時俺はお前の代わりに死ぬつもりだった。

しかしお前はそれすらにも気付いていた。

お前のおかげで俺は今がある。お前は良い友達だ。ありがとう。)」

セレナーデは心という空間を響き渡って、静かに消えていった・・・。



どんなに大切な人であっても

死者は甦らない。

死者に生きるものの言葉は聞こえない。

もし生きている間に、伝えたいことが言えたならば、叫べたならば

もし生きている間に、一度だけでいいから抱きしめてあげたならば、笑顔で見送ってあげたならば

もし生きている間に、少しでも相手の心を感じてあげることができたならば

こんなにも、後悔はしないだろうに こんなにも、苦しくないだろうに

もっともっと、幸せだったろうに

あらゆる望みの言葉は空しく響くだけ

もう届かない もう聞こえない

もう大切な人は死んだんだ。




校舎爆破まであと4時間58分23秒



小夜曲「微かなる希望」終

閉じる コメント(2)

最初からここまで続けて読んだよ〜続きが気になる!!

2008/11/22(土) 午前 0:44 [ chocolat ]

ありがとうございます^^

まだまだ駄作ですけど、頑張りますね。

あと三話か四話くらいで終わるかも〜

2008/11/22(土) 午後 3:43 [ terarara ]



プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事