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人生とは不思議なものだ。

「生きている間は全く評価されない人生も、死んでからは称えられる」なんてことがよくある。

内田は死んでから愛された。必要とされた。

誰よりも隼人に。

死んでからの名誉など何の意味もない。

死ねば全てはゼロになる。何も感じない。何も伝えられない。


隼人は独りで考えた。

「内田ならこんなときどうするだろう。」

入力する数字をまるで内田に、神に尋ねるように、両手を合わせて考えた。

他の3人はあれこれ議論を交わしている。

「きっと、何かきりの良い数字だんだよ。」

「そうか?俺は何か秘密が隠されているような気がする。相沢はどう思う?」

「わからない・・・。ごめん。」

長く時間をかけてあれこれ言っていたが、だいたいそんな内容の議論を繰り返していた。

3人は迷路の中に迷い込んでしまったようだ。

そして直感的に、いや空気を悟ったのだろうか?

「この謎を解けるのは自分しか居ない」と隼人は感じた。

「4人の命はこの手に委ねられた」と隼人は悟った。


「隼人お前はどう思う?」

「・・・・・・・・・・・・」

「おい、隼人聞いてるか?」

「ああ、ごめん。ちょっと独りで考えさせて欲しい。」

何も思いつかないことには、そうとしか言えなかった。「わからない」とは言えなかった。


隼人が手に握っているのは汗ではなく、爆弾なのかもしれない。

放り出してしまえば、直ちに爆発する。

いつ爆発するかわからぬ危険物を隼人は持って現実と、いやジョーカーと戦わなければならない。

これこそが課せられた宿命なのかもしれない。


隼人が心の中で無音の独奏曲を奏でる最中にも関わらず、3人の観客はおしゃべりしていた。

しかし、全く無駄なおしゃべりだった。答えに行き着くきっかけは何一つ生まれてこない。

そんな状態は、2人の旅人を退屈させてしまった。そして2人の旅人は歩きはじめ、9時の所で足を止めた。

2人の旅人が次に頂上にて出会うとき、爆弾は爆発する。あと3時間・・。

そんなとき、隼人の独奏曲に音が生まれた。

小さな小さな、カスタネットを叩く音。しかしそれは空間を限りなく遠くまで伝わっていった。

「なぁ、ジョーカーの行動には全て意味がある。」隼人がやっと口を開いた。

「それが何だ?」

「何故ジョーカーは7時間に爆破時間を早めたんだ?」

「・・・・・・・・・・」

「12時ちょうどの爆破・・・。なら12という数字を入力すればいいのか?」大橋が言った。

「いや、違う。正確には0時だ・・。そして0という数字は入力不可能・・・。」隼人がきっぱりと否定した。

「うーん・・・・・。」3人はまた迷宮へと旅立った。

しかし確実に隼人の中の独奏曲にはカスタネットという楽器が加えられた・・。

あと1つ・・・何か1つ・・・。

隼人は何か重大なことを忘れている・・。

「俺しかわからないこと・・・。俺しか見ていないもの・・・。何だ・・?何かが・・・何かがあるはずだ・・・。」

課せられた宿命に隼人は苦戦する。ジョーカーからの挑戦状がこれほど難しいものとは思わなかったらしい。

それに、3人の命というプレッシャーが隼人の心を締め付け、視界を狭くした。


「とりあえず、隼人が言う俺たちの教室に行ってみないか?」大橋が提案した。

隼人は何も言わず、首を縦に振った。

4人はゆっくりと歩いて階段を上り、4階の教室へとたどり着いた。

正直言って、相沢はそのことだけでも安堵していた。

気の弱い相沢にとって、この空間は地獄にすぎない。

いつ死ぬかわからない。いつ何が起こるかわからない・・・。

そんな状況を人は嫌うものだ。


教室に戻って隼人はまた思い出してしまう。

非現実を楽しんでいた自分を。友達が殺されたことを悲しみながら、喜んでしまった自分を。

しかし、隼人は今となってはそんな自分を最低と思うことができるようになっていた。

そして自然と涙がこみ上げてきた。悲しさを超えた何かを隼人は独り感じていた。

「何泣いてんだ隼人。なせけねぇぞ。」大橋が食ってかかる。

「うるせー。ないてなんかねぇよ^^」隼人は笑って答えてやった。

「私達、ちょっと前まではこの黒板で授業受けてたんだよね・・・。」相沢が話を変えた。

「ああ・・・。ちょっと前までは・・な・・・。」大橋が懐かしそうにそういうと、4人は黒板に目をやった。

いつもの学び舎の状況を重ねて眺める黒板がいつも以上に輝いて見えた。それはまるで希望の塊のようだった。

そんな希望に満ち溢れた黒板の前で4人はまた迷宮入りしてしまう。

2人の旅人は気付けばもう11時をさしている。もうすぐで頂上へと上ってしまう。0時になってしまう・・。

「なぁ、何で今日先生は”a”を使ったんだろう。。。」大橋がつぶやいた。

「それはきっと、”x”がバツに似ているからだろ?先生は事件を思い出させたくなかったんだよ。」隼人が答えた。

「首をつられたS君の背中にはバツと書いてあったものね・・。」相沢がそう言うと、隼人は急に頭が痛くなった。

それはまるで、何かを誰かが伝えようとしているように思えた。

そして隼人の頭脳はこのとき最高速度で回転し始めた。

「何か・・・その何かが・・・。今わかる・・・。今しかない・・。今しか・・。」


「                    7時間

     ス
     プ
     l
     ン            教室       
                            ジ
                             ョ
                              l
                               カ
                                l
         爆弾            0
                        時     

                                    授
            3.05                    業
                      エ
                     ッ
                    ク
                   ス

C4                         トイレ
         エー                       爆
                                   発
              リ
              モ
              コ
              ン
                          入
                          力

       バツ                     足し算
                  ・
                  ・
                  ・
                  ・ 
                  ・
                  ・
                                      」


全ての単語が頭を行き来する。

「この中に、答えがある・・・。この中に・・。」隼人の独奏曲に新たな楽器が加わろうとしていた・・・。




校舎爆破まであと47分34秒




独奏曲「課せられた宿命」終

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