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こんな夢を見た。
こんな書き出しで語るのは恐れ多いが、しかし、私も一応小説家である。
小説家といえるほどの、身分ではないし、実力でもないが、敢えて言ってみたい。
こんな夢を見た。
鳴り響くほどの轟音、深く暗い闇
社会にありふれたものが何故か家の内にある。
まるで僕を誘うように、まるで闇へと誘う様に。
気づけばここは知らぬばしょだった。
一睡の眠りのうちに僕はどこに来てしまったんだろう。
覚えているのは何段ものコンクリートを踏みつけて、ここまであがってきた事実たち。
さらに、下を見ればいかにも高そうな絨毯、上を見れば映画でしか見たことの無いようなシャンデリア。
そして、そんな優雅な、そして恐ろしいその場の空気。
そんな全て未経験の果てを尽くして、僕はドアを開いた。
誰かが待っている。確かに僕の少し前に立っている。
しかし、何か変だ。様子が何か・・。
その何かが気づけない。何か重要なことを見落としている。
空々漠々として、そして朦朧として。
まるで幻影なる夜の月を眺めているかのように、言葉では表現できぬ感覚に、そして寂寥感に襲われた。
話しかけても振り向かない。
何故そこに立っている?
僕はまだ何かに気づかない。
ひょっとして人間ですらないのだろうか。いや、人形にしてはできすぎている。
ひょっとしてこれすらも夢なのだろうか。いや、夢の中で夢を見るほどまだ可笑しくなっていない。
不意に、カーテンが閉ざされて光が遮られた。
誰が、閉じたかはわからない。しかしそんなことはどうでもいい。
慌てて、カーテンを開きなおす。そして、また夜の月を見ると、誰も居なかった。
いや待て。後ろに誰か居る。
夜の月が消えたのなると、そこにあるのは朝日だろうか。
「誰だ」
不意に口から飛び出した。
返事が無い。
仕方ないから振り向いてみると、そこには朝日も居なかった。ましてや夜の月など居るはずもなかった。
流石に、怖くなった僕はまたドアに手をかける。
しかし、あと一歩が及ばない。何故だか知らないが、ドアは開かない。
もうどうしようもなく怖くなって、ガラス窓から飛び降りた。
飛び降りた後に、後悔した。恐怖はこれほどまでに、人を見失なせるものなのだ。誰もが、冷静を欠いてしまう。その時点で負けなのだ。
自分はこれで死ぬのだな。そう覚悟を決めたとき、地に足が着いた。
一体自分はどこに来ていたのだ。
何段もの階段を上り、上に這い上がって降りた先は、地の果てだった。
僕は確かに見落としていた。
僕はそこには居なかった。
そう思った矢先、急に時計が目に入る。
21時43分をさしていた。
いけない、早く起きて勉強しなくては。
そんなことを思って、ドアに手をかけた。
ドアは予定通り開いてくれた。
確かに、僕はここに居る。
もう既に、夢は覚めていた。。。
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