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少年は目が覚めるとあたり一面真っ白だった。
黒も赤も青もない、本当に真っ白なそして、冷酷な世界。
不思議だ。少年が寝そべっていた地面は紛れもなく雪なのに、冷たくない。
そんな不可解な自然現象が、ますます少年を惑わせる。
「ここはどこだ?」ふとつぶやく。
周りには音もなく、その声が千里に響くのみ。
少年はとりあえず立ち上がり、真っ白な世界を足跡をつけながら侵略していった。
どこまで行っても、どこまで見ても、どんなに耳を澄ませても
何も無い、何も見えない、何も聞こえない。
しかし、少年進んでいった。
「何でこんなところに居るんだ?何で真っ白なんだ?」
そんな今更とも思える問いは既に、手遅れで、空しく空に響いてく。
少年が諦めかかったとき、冷酷な世界が少年を誘惑するように、一点の黒を見せた。
少年はとりあえず人間だ。人間は新しいものや周りとは違ったものを求めてしまう。
少年は黒に向かって走る。黒は動かない。ただ待っている。
なぜか走っている少年には歩いているときより、足が重かった。
まるで、白が少年を邪魔するように。そう、雪が足を絡めとっていた。
ふと、少年には雪が冷たく感じられた。
「うおっ」
少年は雪に埋もれてしまった。そして、雪は冷たく、少年を包み込んでいく。
黒はもうすぐなのに、あと一歩が届かない。
しかし、不思議だ。これだけ、体が埋もれて、さらに雪は冷たいのに、少年はくしゃみ一つしない。
いや、しないというよりは出ない。
冷酷な雪は少年をまるで守るかのように、そして止めるかのように、静かに包み込んでいた。
しかし、少年はまだ子供。年は12歳くらいか?
そんなことはどうでもいい。しかし、12歳が重要なのだ。
12歳の少年にはまだ雪の真意はつかみ取れない。そして、少年は雪を掻き分ける。
少年の目には黒しか映らない。
すると、黒が迫ってきた。少年があと3歳年をとっていれば、手の届く距離にまで。
しかし、3歳なんてちっぽけなもんだ。手を伸ばせばすぐに届いてしまう。
少年は埋もれた体を乗り出して、黒に手を染めた。
その瞬間、白は黒になり、あたり一面真っ黒になった。
「何だ? 何だこれは!!」
少年は叫び、恐れた。
もう、自分の腕や足さえも見えない。
冷酷を克服した少年に待っていたものは絶望の黒だった。
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