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蜩ノ記,葉室 麟
武士のありようをテーマにしている作品で,もののふとしての有り様は『死ぬことを見つけたり』を思い出しながら,お家のための自己犠牲は『樅ノ木は残った』などを連想させる.主人公はお家騒動に巻き込まれ,執筆中の藩史の編纂のための10年の猶予をもって切腹を命じられる.いかなる申し開きもなさず,淡々と過ごす主人公.傑作. プリズム,百田尚樹 多重人格を扱った恋愛小説.ビリーミリガンの作品を思い出すが,それを換骨奪胎して恋愛小説に仕立てており,簡潔に読ませる筆力がさすが.文章の深みはないが,恋心を必要最小限のワード数で表現しきる職人芸的な筆致がすごい.恋愛小説として現代的ながら純朴ですがすがしい.面白い. 本を出したい人の教科書, どちらかというを執筆のノウハウというより企画本.本つくりを支えた人の企画提案のやり方という感じの本.結構参考になる. ネイティブが教える本当の英語の助動詞の使い方,デイビィッド・セイン will = am going to と教えられるが,実は違う.しかも,ネイティブの口語ではI'll と I will を使い分けている,というような,口語表現に特化した助動詞の使い方を平易に解説したテキストで非常に実践的でアクセスしやすい.まとめられた表現の部分は是非とっておきたいと思った.入門向けにはどうだろうか.いったん文法はある程度学んだ日本人が対象かもしれない.図書館で借りた本だが,買おうかどうか思案中. ソウルゲイジ,誉田哲也 『ストロベリーナイト』につづく,警視庁捜査一課の姫川玲子を主人公としたシリーズ2作目.手首だけが見つかったバラバラ殺人と多重債務問題を絡めたような作品.終末のどんでん返しがそれなりにあってかなりの読みごたえあり.秀作. インビジブルレイン,誉田哲也 官僚組織に立ち向かうという設定で類作も結構あるような設定.ネタバレになるから書かないがちょっと主人公の活躍が無くて哀しいかな. 進化という謎,松本俊吉 現代哲学への招待というシリーズの1冊だと思われる.進化というのは学問的にはダーウィニズムに象徴されるような出来事であるが,その社会的な波及を踏まえつつ,科学哲学として,どのようにとらえればいいのかという論考本.この方面は不慣れでかなり読み応え,噛み応えあり. 緑衣の女,アーナルデュル・インドリダソン シリーズとしてはもっと続いているようであるが,邦訳は『湿地』に続く2作目.アイスランドミステリー.レイキャビック近郊で発見される古い人骨.物語は戦時中の家族を襲う激しいドメスティックバイオレンスと交互に進行する.捜査する警察官エーレンデュルも家庭に問題を抱えつつ,過去の婚約破棄に絡んだ自殺問題と錯綜し,この人骨はいったい誰のものなのか,過去の凄まじいまでの物語はどのような着視点を見せるのか,というところにぐいぐいと引き込まれつつ物語は進む.前作を越えた読みごたえ. |

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