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今週から急に忙しくなった気がする.
大明国へ,参りまする,岩井三四二 勘合貿易を開くために足利義満が明に送った遣明使を舞台している.主人公は土官と呼ばれる幕府の役人の責任者だが,ちょっとのんびりとしたサラリーマン風情.これに正使である僧侶団,同乗する商人が入り交じって,足利義満の陰謀もきな臭い異臭を発揮しつつ,次から次に問題が発生する.あまりドラマチックと言うより比較的に常識の範囲内で物語が展開して,勧善懲悪,スリル,サスペンスというよりサラリーマンの共感みたいなものが根底にある.本筋とは全く関係ないが,主人公の趣味は賭け碁で,三目半負けというのがあったが,この時代,コミは無かったのでは(笑). 一手千両―なにわ堂島米合戦,岩井三四二 世界最初の組織的な先物取引所といわれる大坂堂島米会所を舞台とした仕手戦物語.友人の不審死を調べるうちに堂島を牛耳る大店の悪事に気付き,乾坤一擲に仕手戦を仕掛ける若者の物語.やや前半はキャラ立ちが薄いようにも感じるが,仕手戦が始まってからは,特に先物相場が分かっていると胃が切れるような緊張感がある.一気読みさせる一方で,著者独特のややシニカル,あるいはストイックな展開があり,このあたりは読者により評価が分かれるかもしれない. 雪冤,大門剛明 2009年横溝正史ミステリ大賞受賞作.冤罪を取り扱った社会派ミステリー.「走れメロス」との対比で語られる複雑に絡まった過去と人物で中盤以降はどんでん返しの連続.感情移入しにくい,技巧的すぎで必然性が理解しにくい難点はあるが,あつかったテーマと巧妙さは補って余りある. 99%の誘拐,岡嶋二人 身代金誘拐をあつかったハイテク犯罪だが人間物語でもある.展開が非常に速くて読みやすくエンターテインメント小説としてすっきりと読み終えることができる.まだ携帯電話が出る前のモデム通信の頃の作品ながら,そのあたりを使ったことがある人間にとっては余り古さを感じさせないが,1990年前後の空気を知らないと時代錯誤的に感じるかもしれない. パーフェクト・プラン,柳原慧 第2回「このミス」大賞受賞作のノンストップ誘拐コメディー.身代金ゼロ誘拐,幼児虐待,ヘッジファンド,ES細胞から代理母まで有りとあらゆるテーマを突っ込みつつ,ぎりぎりのキャラ立ちで最小限に文字数を削った痛快娯楽作品.この職人芸に脱帽. |

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