窯ぐれ日記

こともなき世を面白く・・・

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養老孟司の『遺言』

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三月の個展会場は銀座だったから、
出稼ぎ(というのか?―笑)には、京葉線と
地下鉄・有楽町線を使った。
往きの場合、どちらもゆったりと座っていける。
おかげで、会期中に新書一冊を読み切ることができた。
養老孟司の『遺言』。面白かった。
どうもこの頃この手のテーマに弱く、
自然と触手が動く。
まっ、お年頃って事だろう(笑)
以前から彼は、意味だけを追い求める
都市文化というものの脆弱性について
語って来たけれど、
その背景にある感覚所与と人間の意識
――概念化との齟齬を軸にした本書の語りは、
やはり「遺言」ともいうべき示唆に充ちていた。
 
もともと僕らが他者(物)と出会(合)う
出会(合)い方は、感覚所与に他ならない。
黒は単に黒であり、丸は単に丸でしかない。
そこへ意味という価値が付与されると、
人間の意識は概念化の道をたどり始めるらしい。
たとえばここにリンゴがあったとしよう。
犬や猫を始めとした生き物全般は、
感覚所与を抜け出せないから、
リンゴはいつまでも「The Apple」以外の何ものでもない。
ただ人間だけは、様々なThe Appleを集めて、
An Apple」を抽象できる。
この概念化(抽象化)の道は、
言語の働きと密接に繋がっている。
というより、言語そのものと言ってもおかしくない。
だって、概念とは言葉で組み立てる他に方法がないでしょ。
 
さらに続けて彼は、
人間に与えられている特異な脳の仕組みをつまびらかにする。
なるほど感覚所与に生きる動物たちは、
視覚も聴覚も(そのほかの諸感覚も)
バラバラな領域で働いている。
ところが人間に限っては、
この視覚脳と聴覚脳との間に重なった部分――
積集合(二つの集合の重なり)があると言う。
それこそが人間にしかない言語脳(感覚)で、
確かめてみればいい、
眼で文字を追っている(視覚)とき、
僕らは同時に響きとしての文字を読んでいる(聴覚)。
ほらね、言語ってやつは視覚的なのか、聴覚的なのか
分かりゃあしない。
そしてまた、人間に特有なこの機能が
世界に意味(無意味)を付け加え、
世界を概念で覆う。
そうした風景が唯一無比の真実だと思いがちだけれど、
ほんとうだろうか。
単に「人間の意識」という特別なレンズが、
そう見させているだけじゃないか……
と考えるのは、さほど突拍子無いことではない。
養老孟司は、そのポジションに立ながら、
「都市文化の脆弱性」(意味あるものだけを残す抽象性)
ってなものに一抹の不安をずっと抱え続けてきた。
 
ただ本書には、彼の逡巡する姿ではなく、
その障害を飛び越えた遠い眼差しも感じとれる。
それが『遺言』と名付けられた所以なのかもしれない。
視覚に訴えるのが一番手っ取り早いので、
彼が解き明かす言語脳の在り様を図にしてみる。
 
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となるけれど、
これは単なるイマジネーションの産物
じゃない。
解剖学者としての
きわめて生理学的裏付けがある。
他の動物たちと比べ人間の脳は、新皮質
の異常に大きくなってしまったのが
特徴であるらしい。
この広がりの中で、
視覚、聴覚それぞれの情報が
電気的パルスに変換され

混ざり合う連合野なるものが
形成されるというのだから、
視覚脳、聴覚脳と言語脳との交わりは、
科学的にもうなづけることなのだ。
 
この図をじっと眺めていると、
言語脳の成り立ちだけでなく、
あるセクションの出現を目の当たりにできる。
それは、太線で現わされた境界域で、
一方は視覚脳と言語脳の接するところ、
一方は聴覚脳と言語脳の接するところ。
養老孟司はこれらのボーダーラインを、
芸術(もの作り)活動が生み出される場所とした。
視覚脳と言語脳の境には、
絵画や彫刻、さらに広げれば
象形文字やPCのアプリなどが含まれ、
かたや聴覚脳と言語脳の境には、
メロディーや歌詞、詩や擬態語などが生まれる。
概念化(抽象化)を極めていく都市文化と、
感覚所与が息づく自然界とが拮抗する中で、
これらの活動(古くから、絵画や彫刻の造形活動をアポロン的、
音楽活動をディオニソス的と言いならわされた)が、
営々と続けられてきたことに
彼は一縷の希望を見出しているようにも思える。
 
都市文化の概念化(抽象化)は、
変化のない生活ってものをかたち作る。
夜の来ない昼のような明るさを手に入れ、
部屋に入れば、
(この頃では地下道なんてやつも張り巡らされている)
風も吹かず、雨も降らず、気温は過ごしやすい温度に
設定されている。
ここでは「変わらないこと――いつも同じこと」が、
至上の命題で、どんどん、無色透明、無味乾燥、
無声無臭になっていくのが、都市文化と言えなくもない。
ところが自然界はそのまま感覚に反映される場所だから、
時々刻々変化し、安定を剥がし続ける。
なるほど、両者の狭間に立つ芸術(もの作り)活動は、
自然界に左右される感覚を、
作品という概念に定着させる行為
と言えるのかもしれない。
いわば両岸(感覚と概念)から吹く風に、
いつもさらされ、動き続ける舟に似ている。
 
あれれっ、これって以前ブログに書いた
「情念と理性の狭間にある芸術(もの作り)」と
同じような響きがあるじゃないか。
というよりスタンスはそっくりそのまま。
ただ、風を送る両岸の風景が違う。
養老孟司の言う岸辺は、感覚と概念(抽象)が
向かい合っている。
「情念と理性」が向き合う岸辺も変わらなく見えるけれど、
仔細に眺め返せば、横と縦ほどの違いがある。
養老孟司は感覚所与から概念化(抽象化)していく道程を、
山に例えて話しを進める。
山裾の広がりは、
感覚所与の多様性(個別性)を現わし、
それが概念化(抽象化)されるにつれだんだんと細み、
やがて頂上の一点に収れんする。
「なるほどね」と、うなづいちゃいけない。
ちょっと待て!!(笑)
どうもこの山は豊かな山容をほこるマッスじゃなく、
絵に描いた薄っぺらなものにしか見えない。
 
おそらくそれは、中国の故事(白馬非馬)を借りて彼が語る
「すべての馬の特徴を含んだ理想的な馬」
……山の頂にいるたった一頭の馬、
彼はその馬を「プラトンのイデア」だと言うのだけれど、
いわば、A Horseが、すそ野にいるThe Horseと同じ平面
――唯物という領域でしか語られていないからなんだ。
そんな世界は絵画的な横の広がりから抜け出すことができない。
けっきょく、行きつく先は
カントの4つのアンチノミーによって
がんじがらめにされてしまう。
残念ながら一頭の馬に絞り切れない。
 
更に付け加えれば、
プラトン自身が語る「イデア」は、
The 〇〇の多様性(個別性)と、同一平面上にありはしない。
彼の残した有名な逸話を紹介したい。
「長い間(ひょっとしたら生まれてからずっと)
穴倉で暮らす人間がいたとしよう。
彼が存在として認めうるものは、
わずかなろうそくの光で壁に映し出された
影(二次元)ばかりだ。
しかし、外には光り輝く別世界がある。
この異次元世界がイデアなのだ。……」
どうだろう?
ここでは横の広がりだけでない縦の深度みたいなものが
予感されはしないだろうか。
それはまた、カントによって逼塞を余儀なくされた人間理性を、
理想――祈りのうちに乗り越えようとしたフィヒテ以降の
ドイツ観念論、近代で言うならば、19世紀末の神秘主義、
ブーバーの「我・汝」やユングの「意識・無意識」に
通じるものがある。
やはり僕としては、両岸の旗振りを「感覚と概念」じゃなく、
「情念と理性」の方に軍配をあげたい(笑)
 
とまれどちらにしろ、
芸術(もの作り)活動というものが、
両岸の狭間にある理想――祈りにも似た行為であることに
変わりはなく、
そしてまた、風に吹かれて進む舟のように、
肯定的未来へ向けたベクトルであることに間違いはない。
 
 



今宵の一杯。

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散歩の途中で、タラの芽ゲット。
家の裏庭では、コゴメがにょきにょき生え出した。
今宵の一杯は、タラの芽の天ぷらと、
コゴメのおひたし、マヨネーズ醤油掛け。
メインは好物「ホヤの酢の物」ね。

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これに、昨日師匠からいただいた
特選「山田錦」
なんつう豪華な晩酌だろう。
春たけなわだよね(笑)
 








追伸……三年越しに待っていたアスパラの芽が出た。
今日は二本を収穫。食べるのが楽しみ。

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ひとひらと……

【フィンランドの友】

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フィンランドに住むFBの友人Markkuさんから
絵が送られてきた。
彼の描くものは花や昆虫、動物がモチーフで
根底にアニミズムの気配を感じる。
もっとも、
彼の周辺にはケルトやヴァイキングの神々が跋扈する
スピリチュアル・スペースが広がっているのだから、
あたりまえと言えばあたりまえのことか。
どこか日本の古代神道とも共振する部分があって嬉しい。
さっそく額に入れて飾ろうっと。

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A4ほどの封筒に貼られた切手が
またいい。
ムーミンですよムーミン。
これは、
ムーミン大好きな次男坊の娘に……
 
 





【ちびっ子禁断症状?
 
ひと月あまり、やれ窯焚きだ、やれ器の手入れだ、
やれ展示会だってことで、
ちびっ子たちに会うことが出来なかった。
気持ちのどこかが硬直してくるような気がしていた。
先週の土曜日、三男坊家族と、
日曜日には長男坊家族と久しぶりのご対面。
たちまち心はほぐれた。

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三男坊の息子たちは蕪や大根を抜いたり
ハーブの匂いを嗅いだり、石やレンガを
ひっくり返して
冬眠している虫をさがしたり、
相変わらず足の向くまま、気の向くまま
いっ時も休むことを知らない。
もちろん現代っ子だから
部屋に入れば動画でアニメを見たり
TVゲームに興じたりしているけれど、

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このバランス感が嬉しい。
もちろん今のご時世、映像機器を全否定などできない。
ただ、頼り過ぎるのも、またいかがなものかと思う。
だって映像から情報を得ているときは、
視覚と聴覚しか使わないじゃん。
それに比べて自然の懐へ入れば……
大根を抜いたり虫に触れば触覚が、
ハーブの匂いを嗅げば嗅覚が、
ちょっとつまんで口に含めば味覚がと、
ことほどに全感覚を総動員できる。
だから、
映像から得られる能力は知識という「量」となり

自然から得られる能力は知恵という「質」になる。
これからの時代どちらがちびっ子たちを幸せにできるのだろう?
 

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次の日、長男坊家族と一緒に
近所のダム湖で開かれている
和太鼓の演奏を聴きに行った。
こちらもずしんとした体験。
視覚、聴覚だけじゃなく、
腹に響く触覚も一緒に味わえる。
辺りには人いきれと、
美味しそうな出店からの匂い。
風のひんやりとしたそよぎが頬をなでる。

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借景に、八分咲きぐらいの桜と、
湖面を光らせたダム。
ねっ、オールラウンドでしょ(笑)
ちびっ子たちはこうして根太く
バーチャルでない記憶ってものを
手にいれる。
バーチャルがいけないと
言ってるんじゃない。
五感を働かせなければならないときに、

視覚と聴覚に頼り切った狭い間口にしてしまえば、
後々、バーチャルから豊かな想像(創造)を
生み出すことはできない。
知識は測りやすいから、ついついおもねってしまう。
猛省すべきは大人にある。
 
 
【ひとひらと……】
 
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                       (樹木葬霊園入り口にある山桜の大木)


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今年の彼岸は展示会の最中で墓参りできなかった。
今日(4月3日)遅ればせながら
父母の墓前に手を合わせた。
ここへ来るといつも西行の歌を想い出す。
願わくは花のもとにて春死なむ
その如月の望月の頃           西行
 
返しに、「ひとひらとひとひらと散る桜かな」             
                  潤太




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春に花咲き、若葉が萌え、
夏に入道雲立ち、蝉しぐれ降る。
秋に色づく木々に、律の調べを聴き、
冬に山々はうっすらと雪景色する。
こんな地に父、母は眠る。
やがてそう遠くない将来、
僕も妻とともにここが終の棲家となる。
さぁこれから、「死出への不安」ではなく、
終の棲家が待つ安堵を少しずつ育てていこう。
 
 





ギャラリー・ゴトウでの展示会を終えた。
ほっとしたひと時、
昨夜は、お客にいただいた美酒に舌鼓を打った。
この一週間、久しぶりの再会、新しい出会いと
盛りだくさんなドラマがあった。
己の作り出した器の中で……だから味わいは格別。
特に初めて試みた陶画は、晴れの舞台で
新しい焼き物の可能性を見せてくれたような気がする。
ギャラリー・ゴトウでの二年後の発表を約して、無事終了。
ご来廊いただいた皆様、ありがとうございました。
明日から、新たな一歩が始まる。
 
ようやく、オープン前の会場写真をアップ。

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【木工も楽し】

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ここ数日木工漬け。
木は陶土とまた違った手触り、質感があって楽しい。
小物を乗せる台と、食器を並べるテーブルが完成。
テーブルは縦80数㎝、横150㎝の大きさだから
かなり難儀した。
今回は念願の柿渋で表面を塗装。
会場にどんな風合いを醸すか、
ちょっとワクワクしている。
 
 
 
【このひと時がたまらない(笑)】

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陶画や花器の梱包が終わった。
作品を乗せる台やテーブルも完成した。
ほっと一息。
後は明日の搬入を待つばかり。
ちょっと自分にご褒美して、
好物のホヤの刺身を新作の角鉢に盛ってみた。
とりあえず前夜祭ということで、
いただきまーす(笑)





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