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今朝早く、僕んちの引越しが始まった。
いつもそうだけど、急に嵐が来たみたいに突然なんだ。
ご主人が、勢いよく部屋に入ってくるとさ、
僕ら兄弟の首根っこを掴んで、
どんどん表へ連れだした。
首根っこだぜ。
人権、いやニャン権蹂躙も甚だしい。
この人のやることは、いつも乱暴でいけないや。
最後に、母さんのジィを抱きかかえて、
外へ出ると、
「オレも独り立ちするんだ。
おまえらも、そうならないとな」
なんて、訳のわからないことをブツブツつぶやきながら、
それまで使っていた、食器や、水入れや、トイレを、
湿っぽくて泥臭い窯場の隅に、置きはじめた。
ほんと、勝手というほかないよ。
確かに、僕らはちょっといたずらが過ぎたかも知れない。
ご主人の大切にしているロクロの上に飛び乗ったり、
作業台で取っ組み合いをして、
乾かしてあった器の隅をちょっと欠いちゃったり
(ほんとに、ちょっとなんだけどな)
いつもはちゃんとおトイレできるんだけどさ、
時には間に合わなくて、
仕事場の奥にウンチしちゃったり・・・
すまなかったと思うよ。
だけど、まだ産まれたての子猫だぜ。
そのくらいは、大目に見て欲しいよ。
それなのに、有無を言わせずだものね。
その辺が、この人の大物になれない所以じゃないかと、
僕らは思っている。
とにもかくにも、今度の家は・・・
家と言っていいのかどうなのかな?
まず、ふかふかの寝床がない。
寝るのは、薄暗い棚の上だぜ。
そこじゃないと、
いつなんどき、カラスや犬に襲われるか知れない。
部屋だって、おしゃれに言えばオープンカフェ風だけど、
どこまでが内で、どこからが外だかわかりゃしない。
もう一つ付け加えるなら、床がひどい。
今までのように、柔らかくて爪とぎのできる木じゃなくてさ、
湿っぽくかび臭い泥だもの。
あぁあ、大人になるってことも、
そう容易いことじゃないね。
でも、たった一つだけいい事もあった。
ほら、それまで鬱陶しいコンクリの天井があったろう。
それがさ、上を見上げれば、
入道雲が浮かぶ、抜けるように青い夏の空。
だから、今日は僕らの「ソラダ記念日」
なぁんちゃってね。
まっ、めげずにやってゆくよ。
これからも、よろしくね。
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