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急に蛸飯が食いたくなった。
蛸飯は味もさることながら、
独特の匂いが懐かしい。
以前のブログに、
「高校三年の三学期から一年ほど、
すぐ上の姉とアパート住まいしていた」ってなことを書いた。
じつはこのアパート、アパートというより下宿屋風で、
一階の奥には大家さん一家が暮らしていた。
家族は小河内村の出身で、ダム建設に伴い
ここ、国立へ移って来たのだという。
置物のようなおばあちゃんが一人、
いつも、店番のごとく電話番をしていた。
母や友人からの数少ない電話だったけれど
彼女に呼び出されるたび、なんだかとても申し訳ない気がした。
だからという訳でもないが、
こちらから電話するときは、
よっぽど急でない限り、公衆電話を使った。
もっとも高校生の分際で
急を要するような出来事はほとんどなかった。
一番近いボックスは、歩いて五分ばかりのところにあった。
国立音大付属小学校の正門前。
この小学校の敷地の奥は音大生の寮になっていた。
そこから時々楽器の音色や、歌う声がもれ聴こえた。
出会いというのは不思議なもので、
一歳年上のかみさんが、
ちょうどそのころここの寮生だった。
いやはやなんというニアミス……
もとい、深い縁だったろう(笑)
もちろんそれを知ったのは、
十数年あとのこと。
思春期の悶々とした心をかかえながら
小銭を握りしめ電話を掛けに廊下へ出てみると、
時折り大家さんの棟から
蛸飯の香ばしい匂いが漂ってきた。
今頃の季節だったと思う。
下宿屋の蛸飯炊くる匂ひかな
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2017年04月10日
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