窯ぐれ日記

こともなき世を面白く・・・

過去の投稿日別表示

[ リスト | 詳細 ]

全1ページ

[1]

泣いた赤鬼

イメージ 1
(画像は、お借りしました)



ラジオ第一放送に「〇〇相談室」風な子供番組がある。
ちびっ子たちの投書や質問、自己紹介やクイズなど
盛りだくさんなバラエティー仕立になっている。
実はこれ、似たようなものを含めれば長寿番組で、
(放送局もTBSからNHK第一にかわってるけど)
僕がまだ教員をしていた頃、――かれこれ40数年前から、
だいたい同じ趣向で続いている。
その頃の教え子のK君はここの常連だったことを想い出す。
そんな懐かしさも含め、
時々聴くともなく耳を傾けているのだけれど、
先週のテーマの一つが、
節分間近ってこともあり、『桃太郎』だった。
DJが、マイクの向こうのちびっ子たちに呼びかける。
「みんなが鬼に会ったら、
桃太郎みたいに戦う? それとも逃げ出す?
二択だけどどちらかな? 」
実にべたな質問で、
そのうえ大人社会の認識の安直さまで露呈する。
「これって二択じゃないだろう? 」
もう一つ大切な選択肢が抜けているように思える。
「鬼と仲良くなる」……
視野の狭い輩には、思いもよらない発想である。
あの児童文学・『泣いた赤鬼』が不朽の名作である所以は、
ここにある。
それはまた、大人社会ががんじがらめにしている概念
(鬼は邪悪で怖く、人間に害をなすもの)に対し、
実に豊かで示唆に富んだメタモルフォーゼをしてみせる。
以前ブログに書いた「カントの悪魔」とは、えらい違いだ。
あの悪魔たちは、いっ時争いをやめられたとしても、
人間にとって、邪悪な害をなすものに変わりなかった。
 
『泣いた赤鬼』のあら筋を手短に紹介すると、
こんな風になるだろうか。
 
――村人たちと仲良くなりたい、
ちょっと変わり者の赤鬼がいた。
いろいろ手を尽くしてみるけれど、
「鬼はこわいもの」と、思い込んでいる村人たちには
なかなか受け入れてもらえない。
願いかなわずしょぼくれている彼を見かねて、
友達の青鬼が妙案を授ける。
それは……青鬼が村人たちをいじめているところへ
赤鬼が現われ、彼らを助けるというものだった。
この芝居が功を奏し、
赤鬼はたちまち村人たちから歓待され
楽しいひと時を過ごせた。
(とにかく青鬼くんに報告しなくちゃ)
喜び勇み彼の所を訪ねてみれば、もぬけの殻。
青鬼は姿を隠して見当たらない。
戸口にいちまいの張り紙がしてあった。
赤鬼くん、人間たちと仲良くして、
楽しく暮らしてください。
もし、ぼくが、このまま君と付き合っていると、
君も悪い鬼だと思われるかもしれません。
それで、ぼくは、旅に出るけれども、
いつまでも君を忘れません。
さようなら、体を大事にしてください。
どこまでも君の友達、青鬼――
 
なるほどね。概念をメタモルフォーゼするには、
こうした痛みも伴うんだ。
この文学がファンタジーだけでなく、
リアルでもある深さは、こうして生まれる。
 
奥山恵の著した評論『児童文学の新地平 ③』の中に
「出来事のはざまに立つ」という表現がある。
彼女は『ぼくらは海へ』(著―那須正幹)を取り上げながら、
そのエピローグ、いかだを造り大海原に船出して
生死さえわからなくなった二人の友達を思いやる
雅彰という少年と、「はざまに立つ」こととを、
オーバーラップさせる。

 
この少年の祈る姿は、
また『泣いた赤鬼』の姿でもあるような気がしてならない。
 
 


全1ページ

[1]


[PR]お得情報

ふるさと納税サイト≪さとふる≫
実質2000円で好きなお礼品を選べる
毎日人気ランキング更新中!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事