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☆
【靖子の日記より】
八月××日 (水) 雨
このごろ、りょうちゃんのことばかり考えている。あたしは、いけない子になっちゃったのかもしれない。それにしても不思議でならない。りょうちゃんと会ったとき、あたしがあんなに平気で話せたなんて。何だか妙子ちゃんの勇気が、あたしに乗り移ったみたいだ。そう思うことがたびたびある。この間もそうだ……りょうちゃんには、どこか変なところがあって、そのきわめつけは、男の子の遊びをほとんど知らないってこと。だから、時々あたしが教えてやる。もちろんそれは、妙子ちゃん仕込みだ。しの竹の節をくりぬいた紙玉鉄砲を作っていたとき、ふっと思ったんだ。「あたしの中に妙子ちゃんがいる。あの、いつでもニコニコしていた、ちょっとおっちょこちょいで、怖いもの知らずな、信念を決して曲げない妙子ちゃんがいる」それは、何だかワクワクするような気分だった。りょうちゃんと一緒にいると、そんな妙子ちゃんを感じることができた。あたしの元気になれるみなもと、あたしの何でもやってみようとする気持ちが、くさりを断ち切って動き出すみたい。だから、友達からいやなこと言われたり、町で怖い出来事に出会っても、前ほど暗い思いに閉じ込められなくなった。いつもりょうちゃんがそばにいて――例えほんとにはいない時でもそばにいて、その景色の中から色々なものをながめている、そんな気がした。あたしは、もう独りぼっちじゃない。二日前に、休み中の登校日があった。久しぶりの学校だった。教室に入ると、あたしは、皆に元気良くあいさつした。教室にいた人達は、ちょっとびっくりして顔を上げたけれど、すぐにまた、いつもの無関心へもどっちゃった。でも、へっちゃら。だってその時、りょうちゃんと妙子ちゃんが、笑いながらあいさつを返してくれるのが見えたんだもの。あたしは、もう独りぼっちじゃない。
りょうちゃんが遊びに来ない雨の日は、りょうちゃんのくれた白い石を、そっと握ってみる。雨粒のような白い石。すべすべしていて、とても手になじむ。その心地よさは、それまでふわふわと舞っていた気持ちを、優しく着地させてくれる。まぶたを閉じると、手のひらからジンワリとした温かさが、身体中にしみてくるのが分かる。それは、お日様が暖かいとか、お風呂が温かいというのとは、ちょっと違う気がする。温度が高いということじゃなくて、色が変わる? そう、景色がパッと変わるみたいなんだ。どんどんどんどん、あたしの身体の中にしん入して、暗くて冷たいかたまりを食べつくしてくれる。そして、きれいさっぱり何もなくなった心のお皿の上に、いつも一つの言葉が乗っかる。
――あたしは、りょうちゃんのことが好き。(つづく)
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十年目の返信
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十一
氏神さまの祭りの日まで、僕は鬱々と過ごした。朝焼けの中にベネチアの風景を見た日以来、靖子は、どこかに喜びをかみ締めながら、シンとしていた。何と言ったらいいのだろう。たとえば、隠し持っていた宝の小箱を、少女がそっとのぞき込んでいる……そんな風に見えた。靖子の瞳に、小さな輝きをとらえるたび、僕はある罪悪感にさいなまれた。彼女と彼女につながる命は、あとわずかしか残されていない。唯一それを知っている僕は、成す術もなく、塞ぎこむばかりだった。心が萎えて、何に対しても興味がわかなかったし、何をしていても、つまらなかった。時々、知らず知らず涙をこぼしている自分に気付いて、困惑することもあった。そんな僕を、兄たちは面白がってからかったけれど、それに反発する気力さえわかなかった。母は、どうしていいか分からずに、僕の顔をまじまじと見つめては、「今夜は、おまえの大好きなハンバーグにするからね」などと、とんちんかんな励まし方をした。横丁の駄菓子屋も、ぺナントレースがいよいよ白熱化する野球中継も、大好きなTVアニメ『海のトリトン』も、ただのっぺらぼうに、僕の前を通り過ぎていった。ずっとこのまま、手触りのない日々が続いてゆくような気がした。やりきれない思い。己の非力さ……押し寄せる圧倒的な暴力は、人々の心を踏みにじり、僕と靖子の絆を永遠に断ち切ろうとしていた。
そんなにっちもさっちも行かない思いが、僕を引きずったのかも知れない。気付くと、彼女の家に来ていた。宵闇は足元から忍び入り、井戸端に茂るノウゼンカズラの花が、夕日色に染まっていた。実をはじかせて遊んだホウセンカは、盛りを過ぎて淡くしおれている。その小さな花壇を隔てて、彼女の部屋が見える。窓辺に座って、靖子が一心に何かを書いていた。夢中になったときの癖で、唇が少しとんがっている。僕は、そっと近づくと、そんな彼女の横顔に見入った。人の気配を感じたのか、ふっと顔を上げ、ちょっと驚いた表情になった。
「りょうちゃん。びっくりするじゃない。そんなとこからのぞかないでよ」
「ごめん。脅かすつもりはなかったんだ。何してるの?」
慌てて隠そうとする素振りに、問いただすと、
「えへへ」と、照れくさそうに笑う。
「何だよ。もったいぶるなよ」
「もったいぶってなんかいないもん。ちょっと、恥ずかしいだけ。でも、いいかな。見せちゃおうかな」
ためらいながら差し出したメモ帳ほどのノートの表には、「日記 樫山靖子」と書かれてあった。
「あのね。もうじき、夏休みも終わるでしょう。そうすると、りょうちゃんは、新しい家へ引っ越しちゃう。今みたいに、しょっちゅうは会えなくなると思うんだ。で、手紙書いたの。それも、十年後のりょうちゃんへだよ。そのときも仲良しでいられますようにっていうあたしの願い……ただ書いただけなんだ。ほんとは見せるつもりじゃなかったのにね、まぁいいや」
僕は、暗い予感に心のふさがる思いがした。何だか、悔しさや、惨めさや、切なさが、いっぺんに押し寄せてきた。
――十年後のりょうちゃんへ
いま、この手紙を読んでいるりょうちゃんは、二十四歳。あたしは、二十二歳。信じられないね。今でも、玉ねぎはにがてですか? あいかわらず、お祭りは好きですか? あたしは、すっかり元気になって、もうぜん息の発作は、起こらなくなりました。それに、あのいまわしい戦争も、「今は昔」のできごとです。
りょうちゃんと一緒にながめたベネチアの風景は、忘れられません。あたし、あそこで出会った人たちを、みんな覚えています。それに、吹いていた風、匂い、降り注ぐ光もね。講堂には、りょうちゃんとあたししかいなかったのに、たくさんの話し声や、笑い声が聞こえました。ほんとにだよ。何だか手を伸ばせば、空に舞う風船をつかむことができるし、足を動かせば、広場の石だたみの上を歩ける、そんな気がしました。そうそう、景色の中にあたしがいたこと、気が付いたかしらん。りょうちゃんもいたね。ゴンドラの上で、手を振りながら笑っていた。ああ、いつまでも一緒にいられるんだって思ったら、急に涙が出てきちゃった。
あの絵に出会えて、あたし、少し変わりました。あの頃は、身体も思わしくなかったし、それに、戦争がだんだんひどくなっていたでしょう。子どものあたしにも、それがよく分かった。友達のきみちゃんや、健一君のお父さんが、南方で戦死したって知らせが届いた。明保君のお兄さんは、ビルマで行方不明になってしまった。あたしの周りに、どんどん不幸が押し寄せてきたのです。そんな友達に会うと、なんて言葉をかけたらいいか分からなくて、ただ黙っちゃうだけでした。あたしの家は、父さんが軍関係の機械を造っていたから、兵隊さんにならなくてよかった。だからいつも、何だかずるをしているみたいで、みんなにすまない気がした。お仕事だからしかたないのにね。もうそんなつまらない遠慮をするのは、やめにしました。あたし、正直に書きます。ほんとのところは、父さんに兵隊なんか行ってほしくない。でも、あのころの様子では、いつなんどき行かなきゃならなくなるか分からないって、心配もあったの。それに、あちらこちらで、毎日のようにこうむり始めていたB29の爆げき。この辺でも、時々、警戒警報が鳴るようになってたし……暗くならない方が、おかしいよね。あたしのどこかに、「もう、いいや」って、投げやりな気持ちがあった。
でも、あの絵を見てから、少し変わりました。これ書くのちょっと恥ずかしいけど、今は二十二歳。自分の将来をしゃべっても、おかしくない年齢だもんね。思いきって書きます。あたし、小さい頃から看護婦さんになるのが夢だった。ほら、ぜん息のせいで病院通いの常連さんだったでしょう。病院には、いやな思い出しかない。ただ、発作が起きて死ぬほど苦しんでいる時、いつも優しく手をにぎってくれたり、背中をさすってくれたのが、看護婦さんだった。どれくらい、あたしの心の支え、励ましになってくれたか知れないよ。そんな経験をたくさんしたから、看護婦さんになりたいって思いました。きっと自分は、看護婦さんに向いていると思う。だって、病気の苦しさを、身を持って知っているんだもん。けれど、戦争が始まっちゃった。明日どうなるか分からないのに、夢なんて見てられないよね。
あの絵を知ってから、あたし、少し変わりました。目の前のモヤモヤが、急に晴れたみたい。重石の下でつぶれかけていた身体に、突然、新鮮な空気が流れ込んできたみたい。あんな町が、どこかにあるんだもの、人は当たり前に生きていいんだって。笑ったり、泣いたり、怒ったり、夢見たりするのは、自由なんだって。そんなの分かり切ったことなのに、重石の下だと、何も見えなくなる。ねぇ、りょうちゃん。普通に生きていいんだよね。ちょっぴりくやしかったり、哀しかったりすることもあるけど、生きて夢見ることは、すてきだよね。二人の写真を戻してやれたんだもの、大丈夫よね。あたし、もうくよくよしません。戦争なんてぶっ飛ばせです。あっ、いけない。今は十年後だった。
これからの自分ってものを、時々思い描いてみることがあります。看護学校を卒業するでしょう。それから、町の病院に勤め始める。できれば、子どもの看護をしたいな。あたしのように、病気でつらい思いしている子供たちのそばにいてやりたい。
もちろん、仕事ばかりじゃないよ。恋もする。恋って、なんだか、分からないね。時たま、母さんの女学校時代の本を、こっそり借りて読んだりすると、胸がドキドキして、キュッとしめ付けられる時がある。あれが、恋ってもんかもしれない。うれしいのに、急に哀しくなったり、苦しくなったり……身がもちそうもないけど、やっぱり恋もしてみたい。こんなこと、りょうちゃんに書いているあたしって、馬鹿みたいだね。
いずれ、普通の結婚をして、普通の家庭を持つでしょう。子どもは、三人ぐらい欲しいな。いちばん下は、女の子がいい。もう一回、あたしの人生をくり返すみたい。それに、あたしが、どれくらい家族に愛されているか、分かっているもの。なのに、あたしはわがままばかり言っている。いけない子です。だから、あたしがお母さんになったら、そんなことはゆるさない。たくさん愛して、たくさんきびしくする。ちょっと虫がいいかな。
歳を取ったら、ばあちゃんのようになりたいな。何でも受け入れて、平気なの。つらいこともたくさんあると思うけど、あたしみたいに泣いたり、わめいたりしない。いつも、「ヒャッ、ヒャッ」と、笑い飛ばしている。そんなおばあちゃんに、なりたい。ばあちゃんは、ときどき縁側で、日なたぼっこしながらうたたねしていることがあります。なんだか、あどけない置物のようで、うらやましいなと思っちゃう。あたしって、変かな?
りょうちゃん。あの夏は楽しかったね。今でもふり返ると、キラキラした陽ざしの中に、はしゃいでいるあたしたちの姿が浮かびます。ふざけていたものだから、田んぼに転がり落ちて、泥だらけになったことがあったね。西瓜の種を、飛ばしっこもした。桜の木かげで、千代紙も折ったね。りょうちゃんの不器用には、笑ってしまった。
あの日々が、なつかしくてなりません。あの日々が、あたしの全てです。
りょうちゃん。今でも、あたしを忘れないでいてくれますか。今でも、あたしのそばに、いてくれますか――
そこで、手紙は終わっていた。読み進むにつれ、綴られた文面が、霞んで読めなくなった。それは、もちろん忍び寄る夕闇のせいなんかじゃなかった。
その時ふいに、「パーン」と、柏手の鳴る音が響いた。それと同時に、「泣いていたって、何も変わりゃあしないよ」――お茂さんの声が聞こえた。彼女が夫の帰りを待ちわびながら、昭夫少年と二人きりで悪戦苦闘していたあの時代を、今僕も生きているという分かりきった事実が、はっとするほどの驚きと一緒に、胸へと迫ってきた。僕は、固く決心した。
「やっちゃんを、僕の住む世界に連れて行こう。例えそれが時間の掟に背くことだったとしても、僕は、連れて行こう」(つづく)
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十の下
講堂の中は、広々とした空間の気配があった。たとえ暗闇が支配していても、夜目のきき始めた僕らには、隅々まで感じ取ることが出来る。とりあえず、壁際に居場所をしつらえると、初めて、ひと心地付けた。何だかむしょうに可笑しくなってきて、声を忍ばせながら、しばらく笑いあった。
「やっちゃん。とうとう来ちゃったね」
「うん。いま、あたしたちは、あのベネチアの風景の前にいる。そう思うだけで、気絶しそう」
興奮しすぎて、具合が悪くなりはしないかと、心配になった。
「明日の朝だ。朝になるまで待とう。寒くないかい?」
夏だというのに、講堂の中はヒンヤリとしていた。それは、長い間人間の息吹に触れていない寂しさにも似ていた。
「大丈夫。でも、お尻が冷たいね」
確かに、石の床は芯から冷えた。僕は、リュックの中味を全部外に放り出すと、空になったリュックで簡単な座布団を作ってやった。
「お腹、空かない?」
「うん、空いた。もう、ペコペコだよ」
緊張が解けたせいか、僕らは急に空腹を感じた。さっそく例のチョコレートを手探りで見つけると、半分に砕き、靖子に手渡した。彼女は、ひと口食べるやいなや、
「りょうちゃん。りょうちゃん。これ何? すごく美味しい。いままで食べたことないよ、こんなの」
声を押し殺すのが大変といった様子で、夢中にしゃべり出す。僕は、ちょっとニンマリして、
「チョコレートって言うんだ。美味いだろ。それもファーストだからな」
「チョコレート? あっ、名前は聞いたことある。外国のお菓子だよね。いいな、りょうちゃんの家には、こんなのがあるんだ」
ちょっとすまない気持ちがして、
「とても栄養があるんだ。疲れたときは、最高だよ。甘いし、美味しいしね」
「甘いの食べたなんて久しぶり。二年前にキャラメル舐めたのが、最後かなぁ。今は、ばあちゃんのこしらえたほし芋ぐらいしかおやつないもの」
「あと、もろ味のおにぎりね」
あの時の味が、不意に口中に広がった。僕の時代には、何でもある。駄菓子屋やスーパーに行けば、甘いものから辛いものまで、お好み次第だ。それを朝から晩までポリポリ、カリカリ、食べ続けている。父さんや、母さんに注意されても、お構いなく食べ続けている。でも、それが幸せってことなんだろうか。
(やっちゃん。僕にはほし芋や、もろ味のおにぎりの方が、数倍味わい深いおやつに思えるな。少なくとも、食べるとき、ばあちゃんの顔が浮かぶだろう。あの頑丈でグローブのような手のひらの匂いがするだろう)
ふっと、お茂さんと昭夫少年が、餓鬼のように大豆をむさぼる姿が蘇った。僕がそう思えるのは、ひょっとすると、ほんとうのひもじさを味わったことがないからなのかもしれない。
「あたし、時々思うことある。生まれるときって不公平ね。母さんに話してもらったけど、母さんの子どもの頃って、今よりもう少し自由だったんだって。遊ぶことも、勉強も、もちろん食べることもね。それ聞くと、哀しくなっちゃう。何でこんな時代に、生まれたのかなって。だって、もう少しあとに生まれていたら、こんな美味しいものも、いつでも食べられたでしょう? 思いっきり笑えたでしょう? 何でもおしゃべり出来たでしょう? どこへだって行けたでしょう? そう思うと、哀しくなっちゃう。時代って、不公平ね」
人々の命まで弄ぶという時代の酷薄な不公平さを知っている僕は、何と答えて言いか分からなくなった。ふたたび染み出してくるやり場のない思いを、どうにか拭わなければ
……靖子は、間違いなくここにいる。それだけを、見つめてゆけばいい。
「そうだな、生まれた時で、できることも、できないことも違うね。この間読んでた本の中に、二十一世紀には宇宙旅行も夢じゃない、なんて書いてあった。信じられるかい?」
「宇宙旅行って、あの月や、星に行けるの?」
「そうさ」
「信じられないね。今からじゃ、想像もつかない。その頃の人にも、やっぱりやりたいこととか、できないことなんてあるのかな? あたしね、この頃、あれもできない、これもできないってばかり思うこと、やめにした。そう思うと、辛くなるだけだもの。そうじゃなく、こんな不自由な中でも、やれることがあればそれでいい。ここにいるあたしみたいにね。ほんとのベネチアには行けないけど、夢にまで見たベネチアの写真を見ることができる。りょうちゃんのおかげだね。きっとそれは、二十一世紀の人が、宇宙旅行したのと同じだと思うんだ。あたしの宇宙旅行は、ベネチアの写真を見ること。あたしって、すごいよね。あたしって、幸せだよね」
僕らは、食べたり、おしゃべりしたり、小さな声で唄を歌ったりしながら、このポッカリとあいた時間を、精一杯に噛みしめ、味わった。それは、僕らの置かれている状況――いつなん時、警備の兵隊に見つけられるかもしれない状況を考えると、信じられないことだった。時代が作り出した脅しや、締め付けや、からくりから、不思議なくらい暢気で、自由だった。そんな二人を、誇りたいような、励ましたいような気がした。
「あした浜辺をさ迷えば、昔のことぞ偲ばるる……」
『浜辺の唄』を歌う靖子の声が、急にたどたどしくなると、あとは、規則正しい寝息が、僕と彼女をつなぐ闇の中から伝わってきた。
靖子と一緒に向かえたあの朝のことを、忘れることができない。その後の人生で、何度か心打つ朝焼けの中に佇んだことはあったけれど、あの時ほど、夜が明ける喜びに、震えたことはない。蘇ることの叡智に、勇気付けられたことはない。
大気の色が目覚めてゆく中に、その風景は潜んでいた。靖子の寝息は、まだ傍らから聞こえてくる。天窓から射しこむ朝の光が、遠い水面からの啓示みたいに、辺りを活気づかせた。そんな気配に浮かび上がった像は、途方ないものだった。「黒板ぐらい」なんてものじゃない。広がりは、講堂の壁面すべてをおおいつくした。いま僕らが夜明けを迎えたように、その風景もまた、「人」という二人の息吹を呼吸して、蘇ろうとしていた。写真ではなかった。それは、信じられないくらい細かく描かれた壁画だった。漆喰で塗り固められた講堂中の壁という壁を、埋めつくした水辺の風景。こんなパノラマは見たことがなかった。まるで、巨大な立体映像の中に、迷い込んだような心持がした。そのけたはずれな大きさを、何に例えればいいだろう――人の姿は、僕の五人分ほどあった――子猫になって人間界をながめたとしたら、ひょっとすると、こんな風に見えるのかもしれない。身体の内側から、頑固な枠組みがほどけてゆく。図柄は、ごくありふれた街場の様子に過ぎなかったけれど、ありふれていればいるほど、画面は生々しい生活にざわめいた。命を吹き込まれた登場人物たちは、たちまち動き出し、それぞれが勝手なおしゃべりを始めた。その声は、壁の奥から響いてくるようでもあり、辺りをふわふわと漂っている輪郭がはっきりしない音色のようでもあった。確かに今、僕らは大きな異国の箱の中にいる。
……礼拝堂の窓から描かれた絵は、一隻のゴンドラが橋を潜り抜けたところから、動き始めた。前方には舟着場があって、何人かの水夫が出発の準備に余念がない。少し目を移せば、朝の光に溢れた広場の石畳が見える。噴水もある。カフェテラスもある。 市 ( いち ) が立つのか、天幕が張られている。売り子が、楽しげに手を叩き合っている。その前を、ひっきりなしに人の波が行き交う。店先に並ぶ野菜たちの色合いは、なんて鮮やかなのだろう。そんな騒がしさをよそに、犬を連れた婦人が、すまし顔で歩いてくる。デッキに座る男は、ちょっと不機嫌。犬の婦人を横目に睨む。犬の鳴き声が、うるさいのかもしれない。広場の中ほどでは、色とりどりな風船を手に持ったピエロが、機械仕掛けの人形みたいに、おどけた振りをしながら踊っている。その周りで、子どもたちが笑い合う。肩を組む。飛び跳ねる。白いひげの靴職人の傍らには、手風琴を奏でる青年がいる。酔いつぶれた男が、ベンチで寝転がっている。道端には、草のツルで編んだカゴがいくつも転がっていて、その間を、空の荷馬車が通る。洗濯物を干す女たちは、手を休めてお喋りばかりしている。そして、そんな町の賑わいを優しく包み込むように、運河の水面がキラキラと、キラキラと輝いている。
ここに集う人たちは、カーキ色一色に染まる靖子の時代とは違って、一人一人が、てんでんばらばらに見えた。そのおかげなのか、絵のトーンは、とらわれの「一途さ」や「勤勉さ」がもたらす窮屈で、重苦しい濁りみたいなものから救われていた。「てんでんばらばら」である事が、澄んだ空気感を生んだ。その空気感は、色として結晶してはいなかったけれど、不思議な輝きをまき散らす透明な光の泡立ちとなり、壁画の全体をおおった。そんなシャワーを浴びていると、気持ちがスキップするようにウキウキしてきて、ラムネ玉をかじったみたいになる。急に、心を掃くような風が吹き渡り、何だかたまらなく懐かしい匂いがした。その匂いの先から、小走りに駆けてくる女性がいる。あれ? 肩にかかる黒髪、背丈も今よりずっと高いけれど、その黒曜石の瞳を忘れはしない。靖子だ。彼女は手を振りながら、「りょう」と叫ぶ。僕はゴンドラの上から、笑って答える。彼女の腕には、彼女の夢が心地よい寝息を立てている……
この箱には、様々な音色、様々な匂いが詰め込まれていた。それぞれは、僕らの日常にない肌合いをしていたけれど、そこが異郷であればあるほど、物語はまた、限りない夢の糸を織り成すことが出来た。その網で絡め取られるものには、靖子のけして手に入らない未来が潜んでいた。僕は、講堂の壁画をもう一度ながめ回した。ここは、今の石室なのかもしれない。どんな時代にあっても、命を生み、育むゆりかごなのかもしれない。
隣りの動く気配に、僕はようやく我に返った。目覚めたばかりの靖子がいた。壁画を瞬きもしないで見入っている。それなのに、瞳の色は穏やかに静かだ。何もしゃべらない。何も表情しない。その動かぬ彼女の中で、すべてが了解された。僕は、声をかけるのもはばかられ、傍らに座り続けるほかなかった。やがて、葉裏からこぼれる雫のように、一粒の涙が靖子の頬を伝い落ちた。
「さぁ、やらなくちゃ」
そうきっぱり言うと、彼女は手のひらで涙を拭い、ポケットから薄紙に包んだペンダントを取り出した。蓋を開け、二人の写真を食い入るように見つめてから、ちょっと諦めるような表情になって、それを床と漆喰の壁が作り出すわずかな隙間に埋め始めた。食べ物にありつけた子ウサギみたいに、彼女の唇が、小さく動くのが見えた。「く」の字に曲げられた背中に、高窓から一筋の淡い光の束が差し込み、そこだけがなにやら祝福の言葉を浴びているようだった。それは、母の胎内にいる赤子の姿にも似ていた。漆喰の屑で、すっかり隙間を埋め戻すと、彼女は僕のほうを振り向いて、
「もう、大丈夫ね」と言った。何だか憑き物が落ちたようなサバサバした顔付きだった。(つづく)
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柔和になった殺し屋君は、満足げに喉を「クゥ、クゥ」と鳴らしている。
「怖がっちゃだめ。それから、意地悪な気持ちもね。心の中で、大好き、大好き、って唱えるの。そうすると、だいたいの犬や猫は、噛み付いたり、逃げたりしないよ」
そんなものかと思う。でも、半信半疑だ。
「りょうちゃんも、さわってごらん。気持ちいいよ」
そう言われても、さっきまで僕らをかみ殺そうとしていた輩だ、簡単に信じることは出来なかった。恐る恐る、手をかざしてみた。犬の温かさが伝わってくる。体温とは、こんなにホッとできるものなのか。僕も、奴にペロリと顔を舐められた。
「さっ、のんびりしてられないね。早いとこ、講堂に潜り込まなくちゃ」
すっかり、靖子に主導権を奪われた形で、あとに従う。その後ろを、番犬失格の番犬が、尾を振りながらついて来る。侵入路は、すぐに見つかった。軍の目論見で建物は残されていたものの、手入れなどまったくされていなかった。西側の窓ガラスの一つが、大きく壊れていた。気を付けながらくぐれば、通り抜けられないこともない。靖子は、最後に犬の首を抱きしめると、注意深く講堂の中へ滑り込んだ。僕も、すぐあとに続いた。(つづく)
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十の上
裏庭に着いたとき、靖子は、小さな黒いかたまりになって、うずくまっていた。
「やっちゃん」僕は、辺りに注意を払いながら、声をかけた。黒いかたまりが崩れて、その中から、ためらいがちに手が伸びてきた。握ると、小刻みに震えている手は、しっとりと汗ばんでいた。(大丈夫だ)心の中でそう呟き、声に出しては、「行こう」とだけ促した。彼女は、小さくうなずいて、歩き始めた。処暑を過ぎたとはいえ、昼間の熱気をたっぷり吸った夜風は、うっとうしく身体にまとわりつく。すぐに、ぐっしょりと汗をかいた。緊張しているせいか、虫の音や、かえるの声が、ワンテンポ遅れて聞こえた。僕らは、ほとんど言葉を交わさなかった。それなのに、なんだかたくさん話しているような気がした。手のひらから伝わるこの温かさも、隣りを行く確かな足音も、あと数日したらなくなる。煙のように消えてなくなる。知ってしまった靖子の 運命 ( さだめ ) は、気持をあちこちに揺さぶり、ややもすると、救いのない大波に飲み込んだりもしたけれど、「今、この時」にだけ、碇を下ろしておこう。余計なことは、思うまい……僕は、そう決めた。手をつなぎあっている靖子は、間違いなくここにいた。それだけを、見つめてゆけばいい。
ペンライトの光に浮かび上がった夜の景色は、見慣れた物たちをデフォルメする。渡りなれた橋も、角の雑貨屋の前に佇むポストも、それぞれの後ろに見慣れない影を引きずっていた。その影は、手元の灯りが動くたび、伸びたり、縮んだり、ざわめき合った。辺りが、そんなものの怪の世界におおわれても、怖くはなかった。何よりも靖子といられることが、僕を勇気付けた。
「やっちゃん。大丈夫か? もっとゆっくり歩こうか?」
「大丈夫。ちょっと、ドキドキしてるの。トンネルをくぐるの少し怖いけど、外に出れば、あのベネチアの風景があるのね。どんなだろうって思うと、胸がキュッとする」
手をしっかり握り返しながら、靖子が言った。
「そうだね。やっちゃんの父さんは、大きい写真って言ってただけだろ。どのくらいなんだろう? ばあちゃんの腰巻ぐらい?」
クスリと笑う。
「畳一枚? 黒板ぐらいあったら、ちょっとビックリだぜ。明日の朝が、楽しみだね」
努めておどけた口ぶりをして見せたけれど、内心は、彼女が喘息の発作をおこしはしないかと、びくびくしていた。もうこれ以上の緊張は、彼女に背負わせたくない。それが、そのときの偽らざる心境だった。
川原に下り立ったとき、「りょうちゃん。ほら、蛍」
靖子が、拍子抜けするように、ぽつりと言った。指差す方を見上げてみると、なるほど青白く呼吸する小さな光点が、頼りなげにフワフワ舞っていた。
「ほんとだ。今ごろ蛍なんて、変だな」
「変だけど、確かに、蛍だよ。飛び方がそうだもの。皆より育つのがちょっと遅かったのかな。あたしみたい。仲間がいないから、かわいそうね」
大きな闇空の中で、たった一つ舞うその姿は、大海に漂う小船の灯りみたいで、いかにも心もとない。
「僕みたいに、寝ぼすけだったんじゃないか。あんまり水の中が居心地よかったからさ、のんびりしすぎて出てくるのが、遅くなっちゃった。ほら見てご覧よ、飛び方も居眠りしてるみたいだぜ」
靖子は、また、喉の奥でククッと笑った。しばらく二人は、明滅する光りを、ぼんやりながめていた。夜気の底に、木立の匂いが濃い。
蛍が視界から消えたのを潮に、いよいよ大木台へ向かうことにした。入り口を塞いでいた板塀を取り除くと、中からかび臭く冷たい空気が、流れ出てきた。
僕らの戦いは、ここから始まる。三十年後にこの場所へ来ている事実が、不思議に思えた。それは、フィルムを逆回転させたときみたく、視覚に滑稽な動揺を引き起こした。それでも、三十年前の穴は、三十年後とさほど変わらない姿で、そこにあった。この穴は、下調べしてある。往復もした。間違いない。靖子を目的の場所まで、届けることはできる。何度も自分に念を押した。それよりも、彼女がトンネルを怖がりはしないか、心配だった。ペンライトがあるとはいえ、たいした明るさでもない。暗く、長く、湿気のこもった穴倉は、男の僕でさえ、あまりいい気分のものじゃない。これでもしコウモリでも住み着いていたら、回れ右して、逃げ出したいぐらいだ。靖子は、大丈夫だろうか? 途中で、「引き返す」なんてダダをこねられたら、どうしよう。それでも、彼女を引っ張ってゆくだけの気構えが、僕にはあるだろうか……
そんな取り越し苦労は、する必要もなかった。はじめは、首筋に水滴がしたたるたび、小さく悲鳴など上げていた靖子なのに、慣れてくればへっちゃらで、「今度は飲んで見せるからね」とおどけながら、天井に向かい大口を開けたりする。飛び出ている岩を触ったり、コケの匂いをかいだり、頬に伝う雫を舐めたり……そんな彼女の仕草を見ているのは楽しい。
「何だか、動物の身体の中にいるみたいだね」
僕の傍らで柔らかい魂が、廻り、跳ね、スキップしている。待ち受けている困難をしばし忘れて、僕らは、はしゃいだ。もっとも、そうでもしない限り、隠れている不安や、恐れが焙り出てきて、一歩も前へ進めなくなりそうだった。とにかく今は、このままでいたい。朝までの時間は、たっぷり残されていた。
「やっちゃんとは、よくトンネルをくぐるな」
「これで、二度目よ。そうたびたびじゃないよ」
前々から、聞きたいことがあった。僕と再会した日以来、靖子は、一度もあのずい道を抜けて、僕の世界へ来ることがなかった。
「やっちゃんはさ、この間のトンネルくぐって、僕と会った神社には行かないの?」
「えっ、りょうちゃんは、あそこへ行ってるの? あたし、行き方が分からなくなっちゃった。何度か探してみたのよ、トンネルを。でも、見つからないの。道は間違っていないと思うんだけど、トンネルだけが開いていないの。何だか迷子になったみたい。あたしじゃないよ。トンネルがね」
「だって、あそこには、幾度か行ったことあるんだろう?」
「ううん、あの時の一回きり。何だか変な日だったな。家へ上ってくる土手のところに、桜の木があるでしょう。あの下で、本を読んでいたの。そうしたら、急に用事があるって気がして、それは、はっきりわからないけど、とっても大事な事のような気がして、いてもたってもいられなくなっちゃった。誰かに手を引っ張られるみたいに歩いて行ったら、知らない間にあの神社にいたの。半分夢の中にいる、そんな不思議な気持ちがしたよ。その時の一回きり。でも、おかげでりょうちゃんに会えたんだけどね」
そうか。そういうことだったんだ。僕は、「今」に現われた靖子の意味を、何も分かっていなかった。パンドラの箱に最後まで残された「悪」――あの未来をのぞいてしまうという「悪」じゃないけれど、たとえ自覚がなかったにせよ、靖子は、越えてはならない橋を渡ってまでして、僕を迎えに来てくれた。僕という未来を、迎えに来てくれたんだ。
「たまたま」なんてことじゃない。どうしてそうなったか、分からない。だけどそのおかげで、僕は、何度も時間を往復するキップを、手に入れた。「隣の公園へ行く気軽さ」で、時間をワープできたのは、「おかしな話し」でもなんでもなかった。思いの強さだけで叶えられる夢ってやつは、ひょっとすると、あるのかも知れない。とにかく大切なのは、靖子の選んだ水先案内人が、この僕だったってことだ。
やがて、横穴は行き止まりになった。ここから竪穴をのぼれば、もうそこは大木台の通信基地になる。警固の兵隊がいないことを、祈るほかない。靖子を下に残して、のぼり始めた。鉄梯子の冷たさが手に貼りつくようで、気持ちはいやがうえにも引き締まった。一歩、二歩、三歩……彼女の不安げに見上げる顔が、ペンライトの淡い光の中で遠のく。石の蓋までたどり着くと、「灯りを消すように」と下へ合図を送った。たちまち辺りは闇に侵食され、心細さがどっと押し寄せてきた。とにかくやるしかない。僕は、思いきって石の蓋を横へ動かした。満天の星空が飛び込んできた。地上に頭を突き出し、しばらく回りの様子をうかがった。慣れてくると、闇は見返すことができるもので、昼間そこにあったものたちは、同じようにそこにある気配を、発散していた。すぐ横にある大きな建物の影は、レンガ造りの講堂に違いない。遠く二つともされた灯りは、裏門の常夜灯だろう。人の話し声はしない。物音もしない。辺りは、体温の感じられない無機質で満たされている。「大丈夫」僕は、下へ向けて、ペンライトの灯りを二度、短く点滅させた。靖子の小さな足音と、息遣いが近づいてくる。
表へ出てみると、そこは土がむき出しの通路のようなところだった。これなら、作業はしやすい。それにしても、あっけなく大木台に立っている自分が信じられず、何だか拍子抜けした気持ちがしないでもない。あれほど、心悩ませた三十年前の通信基地は、目の前にあった。だからと言って、まだ気持ちを緩めることはできない。
「さぁ」という思いで、もう一度裏門の周辺をうかがった時、二つの目玉がこちらを見据えるように光っていた。まるで、消し忘れた暗号みたいに……さっきまで、その辺りは、闇色に塗り込められていたはずだ。余り不意なことだったので、一瞬、嘘の中にいるように思えた。できればそのまま、ほんとの嘘になって消え去ってくれれば良かった。なのにそいつは、夜目にもらんらんと輝いて、敵意をむき出しにしている。犬だ! 軍用犬に違いない。背筋に冷たいものが流れる。うかつにも忘れていた。警固の兵隊より、もっと鋭い嗅覚と天性の猜疑心で、敵の侵入を察知するものがいたことを。とっさに、靖子を背中にかばったものの、執るべき手立ては何もない。万事休すだった。二人の夢を打ち砕く悪意が、ゆっくりとこちらへ矛先を向けた。「ガァルルル」野性味をおびた、低い唸り声がする。食い殺されるという恐怖は、僕の思考を完全に麻痺させていたけれど、何としても靖子だけは助けなきゃいけないという意志が、かろうじて僕をその場に立たせていた。犬の吐き出す生臭い息が、顔にかかる。「もうだめだ」そう観念した時のことだ。背中から「ルゥ、ルゥ、ルゥ」という、か細い声が聞こえた。もちろん僕には、振り返って声の真意を確かめる余裕なんて、これっぽっちもない。悪意を放つ二つの光源から、目を離すことができなかった。靖子を抑える手に力が込もった。「ルゥ、ルゥ、ルゥ」声は、か細いながら、しっかりと相手に向かって、投げかけられていた。相手とは、もちろんこの殺し屋にだ。ずいぶん長い時間、睨み合っていた気がする。でもあれは、ほんの十数秒のことだったのだろう。二つの目玉から、急に殺気が消え、子牛ほどもある大きな塊が、尾を振りながら擦り寄って来た。靖子は、僕をおしのけると前へ出た。
「いい子、いい子ね。よしよし。友達が欲しかったのね。撫でてやるからこっちにおいで」
犬は、嬉しさを体中で表現しながら、身をよじるように彼女に近づくと、手といわず顔といわず、処かまわず舐め回した。
「くすぐったいって、こら」
と叱りながら、靖子は、小さくケラケラと笑っている。僕は、何だかキツネに摘まれた気分で、事の成り行きを見守った。とりあえずは、かみ殺されずにすんだみたいだ。安堵感が、腹の底から湧き上がってきた。
「あたしね、ほら、学校休んでばかりでしょう。だから、近所の犬や猫と仲良しなの。すぐに、友達になっちゃう。みんな、喉やお腹を撫でてもらいたくてしょうがないのよ。ねっ、気持ちよさそうでしょ」(つづく)
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