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★ 菊枯れて左門の約も哀れなれ
★ ふうふうとひと年(とせ)散らす蕎麦湯かな
★ 眼を閉じて何を隠さん冬帽子
★ 煩悩のつき終わらねど除夜の鐘
★ 風来の身にも読点去年今年(こぞことし)
★ 元旦やそつと出したる足袋の色
★ 初空やそれぞれの顔それぞれに
★ 初夢もリメイクばかりの歳となり
★ 初笑ひこねて丸めて収めけり
★ 幼子の指差す先や飾り凧
★ 集ふれば百歳違ひの三が日
★ まつさらな時を刻んではや四日
2013年一年間で352句でした。
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歳時記
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晩秋
★ 改札を抜ければそこに秋うらら
★ ペコちゃんと姉妹になれりいわし雲
★ 流木やしがらみ深きそぞろ寒
★ 潮騒の途切れ途切れて夜長かな
★ 天高し湯舟に浮かぶ雲ひとつ
★ 濁音の崩れて哀し秋の波
★ 万丈(ばんじょう)の秋潮あらば死もあらば
★ 磯鴫(いそしぎ)や波すれすれを真一文字
★ 蟻もまた土のう積みをる野分かな
★ 行く秋や怖くないもんと滑り台
★ 満身に綺羅を浴びたや草紅葉
★ 声音(こわね)かへ人恋しやと百舌の鳴く
★ 秋ともし僕が僕だと知りにけり
★ 味噌だれに酒一合の後の月
★ 穭(ひつじ)田の無闇矢鱈な青さかな
★ 新ばかり付いて気忙な秋の末
★ 一つぶん枝をたわめて柿揺るる
★ 奥山に獣哭(こく)する夜寒かな
★ 秋の炉や沈思の底を覗きをり
★ 木犀の深き闇より匂ひけり
★ ひそとして廻(めぐ)る宇宙や星流る
★ 切れ端を折ってばかりの秋時雨
★ 病棟の夫婦善哉(めおとぜんざい)秋暮る
★ でんとして動かぬ猫の冬隣
★ 藁(わら)にほは埴輪のごとく立ちてあり
★ 坂鳥や啼いて入り日を追ふままに
★ 青虫の右往左往と這ひにけり
★ 残る虫湯殿に熱き湯の充てり
★ 姉逝くやひとつ宿借る栗の虫
初冬
★ ターナーの雲流れ来たりて冬に入る
★ 小春日やひよいと出でたる過去の恥
★ 冬の朝まずは五体を伸ばしけり
★ 風垣に干したままなり土の塊(くれ)
★ ああでなくこうでもなくて暮れ早し
★ 枯るるほど一心不乱の芒(すすき)かな
★ ひと雫垂れて情けの寒牡丹
★ 警策の音割れてあり冬安居(ふゆあんご)
★ ラヂヲからノイズこぼれて冬北斗
★ ビルの間に覗く富士嶺(ね)の冬日かな
★ 間引き菜の芯したたかに鐘氷る
★ 寒空や地球がまるく見へにけり
★ ちとふくれちとへこみたる冬雀
★ 路地裏に出汁の匂ひや夜半の冬
★ 着膨れの子ら睦まじく見へにけり
★ 荷を解かば異郷を見たり冬林檎
★ 見まごうや漁師家業の蓮根堀
★ おい留よあいなご隠居鴨の陣
仲冬
★ 微かにも土の声きく霜夜かな
★ 独り居の酒の肴や隙間風
★ ねんねこの背なはしづかに多弁なり
★ 極月やふとんの中のまるきもの
★ 眠りから覚めて夢見の根深汁
★ 四畳半居ても立っても憂国忌
★ 冬の潮往きて帰らぬ道もあり
★ 木枯しや銀座二丁目交叉点
★ からころりん転がり出でしからつ風
★ くだら野を裂きて流るる魂(たま)の川
★ 冬木立万華を浴びて生えにけり
★ 遠き家(や)にぽかり冬日の留まりぬ
★ 落日の置き忘れたり冬紅葉
★ 手にかろく土の響くや大根引
★ 初雪や千両万両(せんりょまんりょ)の角隠
★ 窓窓に落日のある冬至かな
★ かいつぶりきよとんと出でし池の面(おも)
★ 凍雲や根岸界隈辻のうら
★ 星蒼く博士の夢むイヴの夜や
★ わらし子の行儀よさげな冬座敷
★ 風呂吹きのほろりほどけて肌の色
★ 涙目に海原恋ふる鰯かな
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★ いらぬ方(へ)へ鳥ちぎれ行く野分かな
★ 埋(うづ)もれし木の香覚ますや野分あと
★ 人ざわざわ車かつ飛ぶ昼の月
★ 名月や砕けて満山光りなり
★ 月今宵白蛇となりて海渡る
★ 不知火やせん無き人と会ひにけり
★ ふた年(とせ)の契り果たすや花しようが
★ 時々刻々四方八方ちちろ鳴く
★ からからと音のするなり曼珠沙華
★ 刈萱(かるかや)をしみて雫となりにけり
★ 雨垂れのさまざまにある雨月(うげつ)かな
★ 疾(と)く飛べば逃げられむとや飛蝗(ばった)ども
★ 影長し共に刈り込む秋の草
★ 靴紐を結びなほして秋遍路
★ 秋日影ちよいと顔出すおこじよかな
★ 秋の潮真砂女が恋の寄せ返し
★ 温(ぬく)め酒迷い猫が来にやんと鳴く
★ 桐一葉(ひとは)腐れて穴の二つかな
★ 風ほそみ陽はほろほろと秋の暮れ
★ 長き夜や温(ぬく)たき土を食むみみず
★ エイリアンにどこか似ている竈馬(いとど)かな
★ 伐られれば響きを残す竹であり
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晩夏
★ どこもかも華氏(かっし)居座る暑さかな
★ 落し文戻らぬ時のここあそこ
★ 今日もまた命零れて空(から)の蝉
★ バルドーもソフィアもおわすサンドレス
★ 蚊遣火の絡めば解ける手管かな
★ 片蔭り船酔ふ如く街にあり
★ はつしはつしと命途切れて誘蛾灯
★ 風死んで信号の色失せにけり
★ 内と外二つ灯して蛍かな
★ 金魚鉢向こうの目玉が覗きをり
★ 日焼子の矢玉の如く駆けぬけり
★ 腰の肉肩の肉鳴動歩荷(ぽっか)ゆく
★ 氷旗ただ蒼天に翻り
★ ケルンとは導なき身の導かな
★ 優曇華(うどんげ)のきざす一寸に宇宙かな
★ アイスクリンアイスクリンと呼んでみる
★ 番号で呼ばるる御代や茗荷汁
★ 靴先のそっと置かるる大暑かな
★ 腐草蛍となりて我訪(と)わむ
★ 涼風や勝手口から納戸まで
★ 夕顔の咲いてしじまの一つづつ
★ 雪渓に入れば太古の風となり
★ 足元に雲気絡まる夏の月
★ 晒し鯨で飲むが親父のかたちなり
★ うたた寝に弥勒のおわす泉殿
★ 籐椅子や夢二が女(ひと)の腰のしな
★ 日向水この世の懈怠(けだい)を吸ひにけり
★ 味噌の香やあつきが故の茄料理
★ ひと雫垂れて安居(あんご)の僧しづか
★ 泥壁にぬめり眼の守宮棲む
★ 湧く雲や草なほ猛き夏の果て
初秋
★ 石の影水の音にや秋ぞ立つ
★ 凌霄(のうぜん)の仄かに灯る比丘尼寺
★ 願糸掛けて夢路の左見右見(とみこうみ)
★ 凡百も影は影なり原爆忌
★ 居るかいな木の実落ちたり背戸の夕
★ スーパーのそこだけ奇(あや)し草の市
★ 契りおく安寿の魂(たま)よ萩(おぎ)の声
★ 仰ぐれば雲の先なり律(りち)の風
★ 畠(はた)せわし婆の迎ゆる敗戦忌
★ 独り居のまだらに更ける夜長かな
★ 踏み分けむなびかぬ草や龍田姫
★ 秋澄むやお山の大将我ひとり
★ 爺婆の想ひ熟れたる西瓜かな
★ 稲妻や温気(うんき)裂きたる一二太刀
★ 蓬莱の玉(ぎょく)とみえたり芋の露
★ 砧(きぬた)打つ声三界に邪宗門
★ 寝返れど手足決まらぬ処暑の節
★ さ夜(よ)問ふや草間の陰の秋蛍
★ 往き往きて秋の蛍や道暗し
★ 屈託を背負ってそぞろの病蛍
★ 門(かど)出でな吹きゆく風に明けの月
★ 蓑虫の沈思黙考だらりかな
★ かんざしに挿してやりたや葛の花
★ 人声にや目覚めそむれば秋の蝉
★ ピッツァ焼く八月大名これにあり
★ ハメルンも処かはれば風の盆
★ 諏訪の海秋雨そぼつ兎かな
★ 真帆片帆光しづめて秋の汐
★ 秋日傘ちよつと傾(かしげ)て影の行く
★ 秋づくや間近の声に驚きぬ
★ なぶられて辞儀するだけの捨案山子
仲秋
★ けふはけふあすはあしたの槿(むくげ)かな
★ はやぶさは礫となりて消えにけり
★ 呟きも先ほそまりぬ水引の花
★ 夕に咲く花白粉を何としよう
★ 万葉の麗人立てり紅の稲
★ 移ろひの心隠して秋の虹
★ 磯狩りの背より暮れゆく秋日かな
★ 熊襲(くまそ)なる荒ぶる顔も野分かな
★ 爺婆のりんごの籠に眠りをり
つづく
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★ 紫陽花の色捉へむとおさな指
★ 仮相(けそう)なればうふふいひひの夏芝居
★ 夏ぐれや岳(がく)という名の児は明けし
★ レジメ散らす風に目覚めの麦の秋
★ 破調かな万緑(ばんりょく)に雉の高鳴き
★ 紫陽花や更紗(さらさ)の如く暮れにけり
★ 短夜やテレビの声の遠くあり
★ 五月雨(さみだれ)て軒うつ先の大河かな
★ 荒南風(あらはえ)を捲いて海鳴り轟きぬ
★ 路地裏の猫も忙し梅雨晴れ間
★ おちこちと華を残して草刈りす
★ ちちんぷいぷいスーパームーンになれぞかし
★ 人声の角(かど)曲がりゆく端居(はしい)かな
★ 雨雲を除(の)けて顔出す雲の峰
★ 古巣よりここは居良いか烏の子
★ 白服の固まってをり散ってをり
★ 斑猫(はんみょう)の飛べど定めのなき身ぞや
★ 音はせで音溢るるや風鈴草
★ 夏布団掛けてはぐってまた掛けて
★ 止む雨のまだ降り濡(そぼ)つ半夏生(はんげしょう)
★ 軒忍ぶ篤志(とくし)の人の住むと言ふ
★ 音絶えて後(のち)の風鈴鳴りにけり
★ 扇ぐたび思案に止まる団扇かな
★ 青時雨 優しき嘘に嵌(はま)りけり
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