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晩春
★ 葉の裏をめくればひと葉胡蝶かな
★ 年ふるも姐(ねえ)やのままに桑の花
★ 咳一つただ事ならぬ放哉の忌
★ 少女らの語らい行きしミモザかな
★ ムスカリは北の民呼ぶ蒼さかな
★ 春の園横文字だらけの花盛り
★ 命とは斑模様の潮干潟
★ 入学子かたことかたと走り行く
★ 子よ孫よ林檎の花は咲かんとす
★ おやまあと続けば煩い春の蚊ぞ
★ 沈思より醒めて鳴き出す遠蛙
★ 春燈や小袖の裏の淡き影
★ カルメラをほろほろ食へり春の夢
★ 死してなほびつくりしている眼張(メバル)かな
★ 朝顔を蒔いて白露の色にあり
★ ルイーゼと名付けられても猫の春
★ 伊邪那美の忘れ形見と牧開く
★ 常世(とこよ)から戻れやここの磯焚き火
★ 海原を裂きて磯笛なりにけり
★ 浅黄(あさぎ)あり萌黄(もえぎ)もありて山笑う
★ 春暁(しゅんぎょう)や貝売る人の声ひとつ
★ 駘蕩(たいとう)と渡る田風を呑みにけり
★ 蒼天の流るる時や竹の秋
★ 吾子(あこ)なれば苺ミルクのままにあれ
★ きな臭くなって惑うや昭和の日
★ 逃げ水は駱駝の背なで揺れしまま
★ 焼けるまでみんな一緒のめざしかな
★ 風炎(ふうえん)や黄土となりて街は飛ぶ
★ おちこちと干潟の穴や春の果
★ 清冽な雫となりて夏に入る
初夏
★ そよと来てゆらと答へる若葉かな
★ 穴子飯食ふて無聊を癒しけり
★ 葉の裏を見せて哭(おら)ぶや青嵐
★ 乙女らのうはぎに染むるも裾かな
★ コロポックルの足跡見たり蛇苺
★ 首夏なればアンドゥトロワで歩きけり
★ 御仏も三尺下がる楠落葉
★ 朋(とも)寄らば見納めむとて御柱
★ ボヘミアン冷たき汗を宿しけり
★ 時ふりて騅(すい)もおらづや虞美人草
★ 葉陰をば澱(おど)み濃くして烏蝶
★ 気が付けば真つ只中の花茨
★ 夏暖簾色(しき)なき人がくぐりけり
★ 手をかざしコア仰ぎみる薄暑かな
★ 発(た)てば鳴き鳴けば惹かるるひな雀
★ 分け入れば木(こ)の下闇に埋(うづ)む声
★ 海霧(じり)湧きて埠頭たちまち無口なり
★ 動けども動くはずなし樟脳(しょうのう)舟
★ ギヤマンと呼べば緋羅紗(ひらしゃ)の匂ひ立ち
★ 螻蛄(けら)鳴くや背戸に零るる月明かり
★ 夕さればががんぼ煙る手も足も
★ 凪の間に遊ぶ月夜のくらげかな
★ 匂ひだけ訪(と)うて忍冬(にんどう)咲きにけり
★ 捨てし子を止まず尋ねむ不如帰(ほととぎす)
★ 草生(む)してこもる精気や晶子の忌
★ 黄金虫さ迷うファラオの末なるか
★ ソーダ水八分音符にはぢけたり
★ ハンモック吊つてユーミン(遊民?)のリズムを聴く
★ 蔓(つる)垂れてひくりともせぬ噴井(ふけい)かな
★ 卯の花や木戸に掛けたる不在札
★ 影つれて一直線の不如帰
仲夏
★ 青として青に染まずや菩提樹の花
★ 人の世を恋しと訪(と)わむ梅雨の星
★ 枇杷食へば皐月の富士の被さりぬ
★ 転寝(うたたね)を覚めて泡はく金魚かな
★ 佇むは十九の我か五月闇
★ 目覚むればとたんの闇に子規(しき)の声
★ 動ぜずや背広姿が鱚(きす)を釣る
★ 幼子(おさなご)の胸乳(むなぢ)とさぐる夏の浜
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歳時記
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★ それぞれの幼き顔や芋植うる
★ 弥陀仏の哀しき魂(たま)よ春北斗
★ 蕗味噌を食ふて名代の酒三合
★ 卒業子門を出でたり入ったり
★ シャボン玉逢うて別れてまた逢うて
★ 糸瓜を蒔けど子規達(たつ)遠くあり
★ 今日一厘明日は一分の木の芽かな
★ 心には二物のありや養花天(ようかてん)
★ 日送りに踏むは現か幻か
★ 春障子影がこそりと喋りけり
★ 吼(ほ)えすさぶ恋もありなんヒース咲く
★ 己が身を花と咲かせて散る法師
★ 白き尾をのたうつままに春の富士
★ トンネルを出でれば辛夷の花盛り
★ 糸さより明日はカジキとなる身ぞや
★ 月は朧もの問ひたげに田も畠も
★ 春の猫ふにやり蕩けて眠りをり
★ 木の間よりぽつと出でたる桜かな
★ 手折れよと言わんばかりに老い桜
★ ひとひらはひとひらのまま散る桜
★ 揚げ雲雀ぷつんと切れてまつ逆さま
★ 森羅万象目玉けろけろ夜半の春
★ ばか貝を食ふて駄法螺の百万遍
★ 散り桜幾千万里の間(あわい)かな
★ 雨垂れの音高くして桜散る
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一年間で詠んだ句の全を、大河ドラマを風に総集編としゃれてみました。
読み返すと、爺さんの生活も案外めりはりのあるもんだなぁ。
というより、極楽トンボか(笑)
晩冬
★ 冬籠り言ふて手足は動きけり
★ 銀鱗と鰤網あがる荒(すさ)の海
★ 蛇の穴ただ黙々と冬深し
★ 冬の蛾の眠りを覚ます羽音かな
★ 吐く息の長く尾を引く寒さかな
★ 一斉に背中向けたる日向ぼこ
★ 凍て雲は曲がり角ゆく淡き陰
★ 湯気立てて牧ゆく馬ぞ冬の雨
★ 大雪や我もかつては縄文人
★ 香を連れて冬の館を出でにけり
★ 神妙のまといつくよな庭燎(にわび)かな
★ 斯く斯くを生きてしまった寒晒し
★ 受験子の影うらゆらと春隣り
★ 青瓷瓶きりりと立ちて冬椿
★ 納豆汁臭いは我の味なりき
★ 寒稽古テレビでだけにしておこう
★ 満天の中にあるより枯木星
★ はつとして恥じる我あり寒の水
★ 鼻の根を擦つて起きる寒夜かな
★ 越し方のかこち顔する寝酒かな
★ 潜(くぐ)るほど光り千切れて冬木道
★ ビル蕭々(しょうしょう)と春待ち月の今宵かな
★ 着膨れて行き交う人や啜るティー
★ 冬ぼうし揃い被りて婆(ばば)の行く
★ 淡々(あわあわ)と波の花咲く能登路かな
★ 冬浪の砕けし果ては鳥にあらず
★ 埋火の目覚めほつほつ紅の色
★ によつこりとうさぎ顔出す野辺路かな
★ 堀端の石それぞれに日脚伸ぶ
★ 春信の唄を聴きつつ摘む豆
早春
★ 薄紙の削がるるままに浅き春
★ まっさらな顔する人よ春時雨
★ 黒目だけ宙を舞いたる白魚(しろお)かな
★ 襟よせて蕾だんまる余寒かな
★ サワークリームみたいに溶けてゆきたい春の昼
★ 子らもまた雁風呂倣ふ地にぞ住む
★ 孫一才(ひとつ)我六十二にして春の宵
★ 贅沢の極みとばかり春の炉明かし
★ 折れ枝の滴る乳や春嵐
★ 水子とは斯くなるものか春の雪
★ バレンタイン言うたところで栓もなし
★ 春卵こつんと割って食ひにけり
★ じよじよ履いて辿る旅路や春の土手
★ 啄木鳥(けら)のごと畑打つ人の往き還り
★ 朝一番コップ飲み干す雨水かな
★ 霜くすべ闇より暗く包みをり
★ 佐保姫(さおひめ)の潤む吐息や雨の里
★ 万葉の草摘みけらし今とても
★ ブランコの揺れて届かぬ汝と我
★ 陰のまた内に陰棲む朧月
★ 婆座して魚氷(ひ)に上る日和かな
★ 春愁の匂ふネオンや路地の裏
★ 石ころのころばる先に春きざす
★ 春猫を抱いて海鳴り遠くあり
★ 雨止みて大地くゆらす春の陽ぞ
★ 陽炎の向こうにいるは別の我
★ 夜半(よわ)過ぎておとなう月や雛の宿
★ 婆の顔母の顔似る雛(ひいな)かな
★ 鳥雲になれど残るる声ひとつ
仲春
★ 啓蟄や湯殿に軽(かろ)き桶の音
★ あそこには畠あり人あり畦火立つ
★ 風もまた遊びすぎたり春の暮れ
★ マラルメの誘ふが如き春の雲
★ おうという声の聴こえて木の根開(あ)く
★ 長靴に付けば嬉や春の泥
★ 想定内とほざくか今日の春嵐
つづく
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元旦から小寒まで *太字は冬の季語
(Face Book 「一日一句」から)
★ 元日。すべてが新鮮に見える。
風らいの 身にも読点 去年今年(こぞことし)
元旦や そっと出したる 足袋の色
★ 二日。何だかなぁ(笑)
初夢も リメイクばかりの 歳となり
★ 三日。てんやわんやのお正月でした。
集ふれば 百歳違いの 三が日
★ 四日。最初からこんな早くては・・・
まっさらな 時を刻んで はや四日
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大雪から大晦日まで *太字は冬の季語
(Face Book 「一日一句」から)
★ 寒く乾燥しきっているのに、
どこかが潤っている。
微かにも 土の声きく 霜夜かな
★ 窯焚きが終わり、深夜に祝杯を挙げる。
独り居の 酒の肴や 隙間風
★ 老母の部屋の引き戸を開けると、
いつも炬燵に入り、綿入れを着た彼女の背中がある。
それはかつて妹を背負っていた姿につながる。
ねんねこの 背なはしづかに 多弁なり
★ そうでしょう?
極月や ふとんの中の まるきもの
★ あれほど陶酔させられる匂いもない。
眠りから 覚めて夢見の 根深汁
★ 三島由紀夫の描いたビジョンと
対峙する時なのかもしれない。
四畳半 居ても立っても 憂国忌
★ 出会いの分だけ別れもあるなぁ。
冬の潮 往きて帰らぬ 道もあり
★ 昨日は兜屋画廊へ、
ブラジル生まれの好青年、ラファエル・リマ君の個展を拝観。
強風が吹き抜ける冬空の都会で僕の見た風の姿、二題。
木枯しや 銀座二丁目 交叉点
★ 昨日の続き。
からころりん 転がり出でし からっ風
★ 従姉の納骨式で大月の猿橋というところへ出かけた。
途中、中央線は日野付近で多摩川を渡る。
色彩のない風景に一本の黒い川筋。
くだら野を 裂きて流るる 魂(たま)の川
★ 途中、上野原を過ぎたころから山間となり、
陰影の濃い山肌にうっそうと裸木が茂る。
降り注ぐ微分された陽光。
冬木立 万華を浴びて 生えにけり
★ 途中、鳥沢の辺りは、広い渓谷になる。
向かいの山の中腹に、小さな集落が見える。
遠き家(や)に ぽかり冬日の 留まりぬ
★ 墓は集落のはずれ、小高い山の頂にあった。
起伏のある冬景色の底に、人々の暮らしが沈潜する。
落日の 置き忘れたり 冬紅葉
★ この快感がたまらない。
手にかろく 土の響くや 大根引
★ ということで・・・
初雪や 千両万両(せんりょまんりょ)の 角隠
★ 今日は、「ザ ロンゲスト デイ」の反対(笑)
電車の車窓から町を眺めていると、
それぞれの家の窓に閉じ込められた夕日が・・・
窓窓に 落日のある 冬至かな
★ でしょ!
かいつぶり きょとんと出でし 池の面(おも)
★ 下町散策は、師走に限る。
凍雲や 根岸界隈 辻のうら
★ 希望さえあれば生きられる。
この世から虚無がなくなりますように。
星蒼く 博士の夢む イヴの夜や
東の博士たちは、メシアに会えるだろうか。
★ 空気が重たいからかなぁ。
わらし子の 行儀よさげな 冬座敷
★ いっただきまーす(笑)
風呂吹きの ほろりほどけて 肌の色
★ ことさら哀れを誘う鰯です。
涙目に 海原恋ふる 鰯かな
* 涙目の鰯=潤目鰯、ちょっと変化球投げてみました(笑)
潤目鰯は冬の季語。
★ 菊の花というと雨月物語の「菊花の契り」
あれは、男色物語だという説も・・・へこ(笑)
菊枯れて 左門の約も 哀れなれ
★ 何もなかった・・・にはできないか(笑)
ふうふうと ひと年(とせ)散らす 蕎麦湯かな
★ まっ、それが人生?
煩悩の つき終わらねど 除夜の鐘
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