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【水も滴る……(笑)】
薪窯というのは実に乱暴なもので、
いわば、釉薬を窯の中にばらまきながら
焼成しているようなものだ。
窯の中で薪が燃え、灰となって器にかかる。
この灰のアルカリ分と器の長石分が反応して
ソーダガラスというものに変化する。
もちろん窯内は1300度近い高温だから
ガラスは融けて飴状態になっている。
だからあっちこっちにべたべたとくっつく。
またあるところでは溜って玉のようになる。
窯出ししたばかりの器は、
難破船から引き揚げたお宝みたいにがさがさ(笑)
それをグラインダーやルーターや砥石で磨き、
水洗いしてようやく完成する。
この手間が窯詰以上に神経を使う。
まっ、そのおかげで、
「水も滴るいい男」になればいいんだけど……(笑)
信楽の面白さは、もともとが真っ白い土なので
焼きあがりのバリエーション幅が広くなることだ。
多彩な色調は同じ陶土のものとは思えない。
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焼き物屋
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【やったぜ!! 窯焚き】
午前10時、窯出しを始める。
と詰してあるレンガを一枚一枚剥がすたび、
蚤のような僕の心臓はバクバク(笑)
窯内の様子がだんだん開かれてくる。
焦る気持ちと、待てよという気持ちが
複雑に交差する。
窯口が完全に開き中を照らし出した時、
「やったぜ!! 窯焚き」(笑)
ほぼ期待した色が出ていた。
とにかくありがたい。
窯焚きのメンバーに感謝、感謝である。
これから一つずつゆっくり鑑賞しながら
手入れ作業が始まる。
これでどうにか来年三月の個展は開けそうだ。
やれやれ。
で、明日の日曜日は久しぶりに
ちびっ子たちとたっぷり交歓。
息子夫婦が食事会をするとのことで、
彼らを2時間ばかり預かることになった。
ちびっ子たちが生まれてから
初めてぐらいになるデートかな?
楽しんでいらっしゃい。
で、じいじの方は
天気もよさそうだし、
焼き芋会でもしようかな(笑)
【大いなる喜びへの賛歌】
カーラジオから、
マーラーの四番が流れていた。 フロントガラス越しに、 暗鬱な十一月の曇天は広がり、 それはまるで、 薄紙でできたスクリーンのように、 微分する面影を、 半透明に映し出しては、消した。 焦点の定まらない空から、 零れ落ちてくる鈴の音色は、 只中に座る塊を、 優しい色彩に包んでいた。 そのとき、 激しい動悸と一緒に、 繭玉のような表皮は破れ、 稚けない表情がこぼれ出した。 コケティシュな素振り。 指先の些細な陰影。 じっと虚空を見つめる瞳に宿して、 心をとりこにする。 この曲の抑制された音符たちのように、 人に倍する哀しみや涙を しょわされていながら、
さりげなく明るい。 だからこそ、 目を凝らしてしまう。 おまえというものの塊に巣くった宿命を。 それは、春霞む夕間暮れでも、 夏のハイトーンな陽射しの中でも、 はらはらと散り敷く秋の生業にも、 寒風に立ち向かう旅人のように、
凛と背筋を伸ばしている。 願わくは、おまえの気概が、 天上まで届きますように。 心ある天ならば、 契りある美酒で、 張り詰めた心を 和ませてくれますように。 最終楽章の 「天からの調べ」を聴くたびに、
そう念じずにはいられない。 |
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【されど窯焚き】
7時、朝日を浴びながら攻め焚きが始まった。
煙突から昇る黒煙を見るたび、
武者震いのような心の高鳴りを感じる。
窯焚きメンバーは、いつもの陶芸教室Aさん、
近所の陶芸家Bさん。
すっかり常連になった(というより強制か―笑)
かつての教え子S君とA君。
さらに、今回は多彩な助っ人が手伝に来てくれた。
ありがたい。
【フランス青年と日本のお嬢さん】
縁は異なもので、
8月、かつての教え子たちとビール会を開いた折、
その内の一人が知り合いのカップルを連れて来た。
それがフランス人青年V君と、日本の女性Kさんだった。
その場で意気投合、「窯焚き面白そうですね」
「じゃ、今度いらっしゃい」
ってなことで、手伝ってくれることとなった。
彼のおばあちゃんは磁器制作に携わっているってことだから、
それほど異次元体験ではないのかもしれない。
とにかく好奇心旺盛な青年で、
挿し木から薪運び、はては薪割まで喜んでやってくれる。
どこにも好青年いるもんだなぁ。
Kさんはまた、そんな彼を面白がって見ているところがあり、
なるほどね、いいカップルだ(笑)
【武美カップル参上】
V君、Kさんは共に20代。
前回から手伝ってくれている武美出身のSa君は、20代半ば。
そんな彼がバイクの後ろに彼女を乗せ参上してくれた。
彼女も武美卒で、なっ、なんと20代前半。
御古屋窯もずいぶん若返り、華やぎがあるなぁ。
とにかくSa君は頑張り屋で、今回のこじれた窯を何とか踏ん張り、
最高温度1278度をたたき出してくれた。
若者二人で挿し木している姿は、
何んともほほえましかった。
【Su君のこと】
今回の窯焚きでは、
近所に住むSu君ご夫妻も顔を見せてくれた。
彼は一級建築士で長柄町の榎本に設計建築事務所を開いている。
自然に返る(帰る)素材を使う彼の建築手法は、
手間のかかる分だけ温かみがある。
施工まで職人たちと一緒に手掛ける姿勢は、
未来型の建築士を見る思いがする。
彼との縁も異なもので、実は僕がかつて赴任していた学校の
卒業生だったのだ。
ということは、S君やA君の後輩ってことになる。
東京の多摩地区と房総の臍、長柄を結ぶ縁。
これもまた、「楽しからずや」だな。
【相変わらず放蕩息子な窯】
前回は温度が上がり過ぎて困ったのに、
今回は1230度を超えたあたりから一進一退。
「多くべ」を始めると、更に温度が低くなり元へ戻らない。
「こいつめまた放蕩を始めたな」
そんな兆候は最初からあった。
いつもと違って窯前が異常に熱く、
その上挿し木の燃えが良くない。
それなりに温度は上がっていくけれど、どこかおかしい。
嫌な予感がした。
案の定、ぐれだしちゃったんだよね(笑)
実は、どんな時でも温度を上げる挿し木の方法はあるけれど、
それをしちゃうと、窯内一番前の列しかおき(灰)がかからない。
そこで窯焚き終了まぎわまで待って、Aさんの適切な指導により、
Sa君たちにこの方法で挿し木してもらった。
やったぜ、1278度!!(笑)
その時ひょいと「多くべ」の新しい方法を思いついた。
「これはいいかも」
それほど温度を下げずに「多くべ」が出来そうだ。
さっそく来年二月の窯で試してみようっと。
午後6時、煙突から紅蓮の炎が立ち上る。
窯焚きは、こうでなきゃ。
金曜日の窯出しまで、
じくじくとブルーになっちゃうんだけど……(笑)
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さっき20時に予定通り窯の火が入った。
さぁ、泣いても笑っても最後まで突っ走るぞ。
と、覚悟しつつも今回の窯焚き、暗雲垂れこめる先行き。
実は昨日の昼、
近所の産直へ出かけたかみさんからSOSの電話。
「車が動かなくなっちゃった」
かみさんをどうしたらいいかより、
明日からの窯焚き大丈夫かの心配が先に立つオレ(笑)
灯油の調達や突発的出来事の解決や、
食料調達に欠かせない足。
急遽、保険会社のロードサービスへ電話して
レッカー車を呼び修理工場へ・・・
走行距離17万キロでぼちぼち寿命とのこと。
けっきょく今生ではおそらく最後になるだろう
車の買い替えになっちまった。
窯焚き一合目も登っていないのにこの難関。
やれやれ、今回も前途多難だぜ(笑)
ここは「電車もねぇ、バスもねぇ」だから
車は暮らしの生命線。
故障したりするとたちまち日常が立ちいかなくなる。
で、今日は今日とて
かみさん、隣町に住む嫁さんに助っ人を頼み買い物へ……
嫁さんはもちろんもも姫を連れてやって来た。
ああしばし、汗、汗の窯焚きから解放されて
癒しタイム(笑)
「虫さん、あたしのこと好き? 」 さぁてあとひと踏ん張り。
30束薪掃除をして、午前2時ごろ薪の炙りから
バーナーに替える。
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先週の土曜日に施釉陶器の釉薬かけ。 日曜日に窯奥の窯詰が始まった。
いつものことだけど
「この山登れるんだろうか」
これからの難所、
難所続きの一週間を思うと、
それだけで気分はブルー。
とにかく自作自演(笑)
テンション上げて乗り切らなくちゃ。
月曜日からいよいよ
焼き締め陶器(火前)の窯詰。
こちらは
ジグソーパズルをやっているようで、
案外好み。
ただ「獲らぬ狸の皮算用」
――欲の皮が突っ張っているから、
最良な並べ方を求めて神経はくたくた。
今回はまず窯床に敷く陶板(陶画)の並べ方を
シミュレーションしてみた。 そのおかげかどんどん仕事がはかどる。
火曜日に三分の二程度終了。
今日水曜日に、 いよいよ最終段階……最後の一枚を
ぴたりとはめなくちゃ。
これから数時間が一番頭を悩ませるところ。
とはいえ、予定通り今日中には
窯詰終了しそうだ。
明日の午前中にと詰(窯の口をふさぐ)
して、金曜日に薪掃除。夜八時に火が入り、
土曜日、日曜日と焚き続ける。
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