|
台風が過ぎ去った昼下がり。
夫は、仕事へ出る。
私は、休み。
食料品でも買いに行こうかなと、口ずさむ。
すると夫が、「お休みなんだから休んでいなよ。明日僕が買っておくから」と、言う。
連休二日目だ。
初日は大雨の中の散歩。
二日目にして雲が切れたのだから、私、出掛けたい。
身体がムズムズする。
でも休んでいなよと言われると、そうかそうか休んだ方がいいのよねと、単純に洗脳されてしまう私。
だから夫がバタバタする脇で、夕飯の下ごしらえをすることにした。
小芋を煮付けていたら、一つの事柄が思い出された。
前回、私が食料品を買ったら、五千円かかってしまったという事だ。
久しぶりのスーパーでテンション上がっていたのと、安売りの日だったので他のお客さんに感化されたのだ。
「これで10日もたせればいいのよね」と、己を励ましてみたものの、やっぱり五千円は多かったと反省した。
そうかそれで夫は私をスーパーへ行かせたくないのだなと、思った。
この阿呆な女房を買い物へ行かせると、家計が火の車になると・・・。
私はその事を夫に言った。
すると夫は眉毛を文字通り八の字にした。
その表情で全てが伺えた。
夫は私に休んで欲しいと、心底思ってくれていたのだ。
自分の卑しい考えに、穴があったら入りたくなった。
いや穴がなければ、自ら掘ってでも入りたくなった。
夫が許すと言ってくれるその日まで、二度と外には出ないつもりだ。
けれど夫は、許してくれる。
穴など掘らずとも良いと言ってくれる。
許す変わりに、ゆっくり休んでねと言う。
そういう奴だ。
私が見込んだだけのことはある奴なのだ。
夫は、仕事へ出かけた。
私は夕食の下ごしらえを終えて、炬燵に入った。
夫に言われた通り、ゆっくりまったりしようと意を決した。
買ったばかりの本を少し読むことにした。
それから手紙を書いたり、年賀状の準備をしたりした。
夕暮れの気配を感じて、炬燵を出た。
洗濯物を取り込んだ。
『アイロンをあてなくても皺はとれますよ』と言う触れ込みで買った夫のワイシャツに、珍しくアイロンをあててみた。
あてなくても大丈夫だけれど、あてた方がシャキっとした。
夫は幾つになっても、腹が出ても、白いシャツが似合う。
私は・・・・。
私は幾つになっても穴が掘れる筋肉を保っていようと思う。
恐らく一生、夫には頭が上がらないのだから。
|

- >
- 芸術と人文
- >
- 文学
- >
- ノンフィクション、エッセイ







