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麗らかな土曜の昼下がり、昨夜のアルコールが抜け切れていない。
澱む空気から逃れるように徐に外に出た。
思った通りに秋空は抜けるように澄み切っている。
体内浄化にこれほど良い物はあるだろうか。
そうは言えども今日は予定が無く、外に出たと言っても行くあてなどはない。
珍しく芽吹いた冒険心と好奇心に背中を押され、普段は足を運ぶことのない方角へ心の舵を切る。
この街に越してきて半年が経過していた。
普段は職場との往復のみであり、毎日定刻に起床し同じ電車のほぼ同じ場所に乗る。
普段と同じ仕事をし、ほぼ同じ時間に職場を離れてお気に入りの店で決まった物を食し、そして帰宅する。
決まったレールから外れる事等しなかった。
正しくは考えもしなかった。
しかし昨夜は少々タガが外れてしまったようだ。
珍しく部屋の掃除をした時、埃を被った小説の間からまだ高校生だった頃、命を掛けても良いほど愛した彼女とのツーショット写真が出てきた。
栞にでもしていたのだろうか。
はたまた何かの弾みで入り込んだのであろうか。
ほろ苦く拙い青春と決別するために若かりし頃の荷物は実家に置いてきていた筈なのに。
思い出せばチクリと傷む。
傷を癒してくれるのは共に青春を謳歌した12年物のワイルドターキーであった。
プラタナスはまだ色づいていない。
今年の風は少々優しいようだ。
町はまだ夏と秋の硲に居るようで、店によってはまだ夏物と呼べるものがショーウインドウを飾っていたりする。
鮮やかな夏物のおかげだろうか、街はまだ活気づいているようにも感じる。
石畳の感触を楽しみながら進む。
独特な踏み心地が気持ち良い。
時折流れる澄んだ風が頬を優しくなでてゆく。
ここまで心地よい休日は何年ぶりだろうか。
公園通りと駅前通りが交差する小さな交差点。
澄んだ青空に赤いシグナルが鮮やかだ。
向かい側で信号を待つ幼い子供と若い夫婦。
無邪気な笑顔に優しそうな表情で話しかけているのは父親らしき人物。
その横で柔らかく微笑む女性は母親らしき人物。
絵にかいたような家族のワンシーン。
シグナルは空に溶け込んだ。
交差点を進み、家族と交差する。
楽しげな子供の笑い声が幸せな気分にさせてくれる。
すれ違う時、心の中で彼女につぶやいた。
幸せそうで良かったね。
母親らしき人物はそっと目で私に微笑んだ。
交差点はやがて再び鮮やかな赤い光を放ち二人の間に距離を作る。
行き交わる車達は時の流れ。
様々な色が行き交うように、我々も様々な時間を過ごしたようだ。
そろそろ帰ろうか、ワイルドターキーが家で待っている。
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