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縁側からただただ、雨が降る様子を眺めている・・・。 まだお昼だから、お店の外を歩く人も少なければ、ここの店「三浦屋」の看板を眺める者もいない・・。 「深〜〜雪ちゃん!!」 そう呼ばれ、私は振り向いた。 「小巻ちゃん。」 ・・・同じく、この三浦屋で働く唯一といっていい、仲良しの小巻ちゃんだった。 「な〜〜に、見てるの?」 小巻ちゃんはそういうと、よっこいしょ・・とばかりに、私の隣に座った。 「う〜〜ん、特に見ているものはないんだけれどね・・・雨見てるとぼうっとしただけや。」 「ほな、私もそうしよ。」 これが、私と小巻ちゃんのお昼の日課。 そしてほんのつかの間の休息の時間・・・。 「はぁ〜〜・・もうすぐ、姐さんとお別れだねぇ。」 「そうだね〜〜。」 姐さんと言うのは、このお店、いや吉原と呼ばれる世界で人気一番の太夫、小紫姐さんのことだ。 私たちが見習いの頃から太夫となっていたお人で、私たちを一人前にすべく、お世話してくれた姐さんだ。 今じゃ、同じ店にいながら滅多に会えないし、気軽に話せるお人じゃないのだけど・・・・。 「ああ、二人ともここにいたんかえ??」 とそのとき、その噂の小紫姐さんがひょっこりと現れた。 もちろん、慌てて正座をしなおす私たち。 「本当、あんたたち、全く性格は違うのに仲良しさんだね〜〜。」 私と小巻ちゃんは顔を見合わせて、ふへへへへ・・・と照れ笑い。 すると忙しい姐さんが珍しく、縁側に腰をかけた。 「もうすぐ、私はここからいなくなるけれど・・・あなたたち二人のことは心配だわ・・・。 いいこと、小巻。 あなたは贔屓筋が多いからその分妬まれやすいことはわかるけれど、もう少し周りを見て真実をみるんやで。 深雪、あなたも同じく周りを見ること。・・独りじゃないんだからね。」 姐さんは優しく私たち二人の頭をなでてくれた。 そしていつも通り、南蛮渡りという、色々な色の金平糖をくれるのだった。 「いやあ・・・だから姐さん、好きやわぁ〜〜!!」 「うん、そうそう♪」 ひとつ、またひとつ・・・口に広がる甘味にうっとりしながら、小巻ちゃんとたわいもない話をするこの時間がたまらなく落ち着く・・・。 だけれど・・・・
「そろそろですよ。」 現実は待ってくれない。 「あ〜〜〜〜い!!」 私と小巻ちゃんは声がした階下に返事をして、のそのそと立ち上がった・・・。 |
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