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[本当の住宅の質とは]

"住宅のクオリティは 住み手が仕上げる"

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午前中ずっと降っていた雨が 午後になって上がった
庭に出ると青い空が白い雲の間に広がって 空が本当に高いと感じる


雨で気温が下がったせいだろうか 風もことのほか心地よい
(ここまでは おそらく誰でも一度は経験しているのではないだろうか)


彼はダイニングルームから庭に続く ちょっと広めのテラスに デッキチェアーを持ち出した
ダイニングにあるCDをセットし 冷えた飲み物を運んでこの一瞬を 楽しもうと考えたのだ


ボリュームをしぼって かすかに聞こえるお気に入りの曲 そして五感で感じる大気が彼を
自然の一部としての人間に 引き戻してくれる


グラスの氷が小さく音をたてて滑った

          *          *

私たちが日々暮らしている住宅の場合 真のクオリティとは生活そのものに内在されているもので
家という形にあるのは それを支えるまたはそれらをつくり出す
きっかけとしての クオリティにすぎないのではないでしょうか

たとえ他人から見て どんなに立派な家であったとしても
本当のクオリティはそこに住んでいる 人がつくっていくもので


それらがうまく融合したとき 本当の良い住まいと言えるのではないでしょうか


その証として住み手が替わると その家も精彩を失うということは よく知られていることです


我々のように住宅設計に関わる人間は 装置としてのクオリティをつくることにより
真のクオリティを生み出す お手伝いをしているのだと いつからか思うようになりました


ところで 冒頭のシーンはどこでもありそうなもので「いったいどこがクオリティなの!?」
と思われるかもしれません


しかし 雨上がりのほんの一瞬に 大気の変化を感じ
その場所に自分なりのイメージをつくり


それを実行した「彼」は 生活のクオリティというものを
少なからず 持ち合わせているといってもよいと思います


では このシーンのクオリティは具体的に どのような装置としてのクオリティに
支えられているのでしょうか


ダイニングからデッキそして庭へと続く連続した空間は この家の重要なテーマでもありました


設計者としては 視覚的に魅力があることはもちろん
機能的にも連続した空間となるよう 注意を払いました


都市部での住宅は 当然のようにスペースが狭くなりがちですが 限られたスペースでも
忙しい毎日の中で自然と触れ合い 人間としての自分を取り戻すことができるものです


小さい庭(建ぺい率で余ったわずかなスペース)と小さなダイニングを連続した空間として
豊かさを感じさせるスペースを生み出すことはできないだろうか---------


こんな思いがこの家のテーマでした


そのためにはダイニング・庭の相乗効果に磨きをかけなくてはなりません


ダイニングの床とデッキ(テラス)の段差を数センチに デッキと小庭との段差を10センチと
可能な限り抑えるよう工夫しました


またサッシも開口の幅が最大になるよう考慮し 外気・内気が一体となるように計画したわけです


出来上がった空間はまさに 部屋の中に庭があり 庭の中に部屋がある と表現できるように
内と外が違和感なく交流し 高い相乗効果をあげることができました


「彼」の行動には建物自体が備えたこうしたクオリティが
一役も二役もかっていることは いうまでもありません


そして こうした装置を使いこなすことこそが 大切であろうと思います


「空間は機能を啓示する」
といったアメリカの建築家 ルイス・カーン に敬意を表さずにはいられません




                               創建築アトリエ [今井 均]


住まいと暮らしの百科 マイホームプラン
「建築家3人は語る」  1999.09掲載
(金財マイホームプラン社 発行)
 

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